541 名前:テュランの筏1/15:2007/01/18(木) 12:02:52 ID:qg4wNRbU0
十三日目

昼近くまで、僕とクリフは、水平線に目をこらしつづけた。
楊玲の喘ぎ声を、日常の延長として、耳にとらえながら。
けれど、どこまでも空と海は完璧に二分された青を見せていた。
クリフは立ち上がった。僕もそれにつづく。
トランクに腰かけた藤吾が、接近に気づいて顔を上げた。
ポケットから奇怪な道具を取り出し、にやりと笑う。
この何日か、恥辱にあまんじず、耐えてきたからこそ、それは忌々しく禍禍しいものと一層感じられた。
「俺は、命令にしたがいに来たんじゃない」
クリフはぴしゃりと言った。藤吾は少しだけ眉をひそめる。
しかし、いやな笑いは、もう彼の顔の一部と化していた。
「十四日目に助かると、あんたは言った。けれど……まったく陸が見えてこない。
あんたの言葉がほんとうなら、とっくに見えてなければおかしい」
疑いを抱いた強い調子で、クリフは挑んだ。藤吾はくっと笑って、目を細めた。
「……俺はいかだが全く動いていないのを知っている」
真実を暴露するクリフを、藤吾は前髪を払ってあしらった。
彼は明らかに、嘲っていた。僕らを愚か者だと見下していた。
左手の甲を顎にあて、手首に光る腕時計に話しかけるように、小さく唇が動いた。
それは誰にも聞き取れなかった。僕はおろか、飛びかかろうと距離をつめるクリフにさえ。

542 名前:テュランの筏2/15:2007/01/18(木) 12:04:08 ID:qg4wNRbU0
「甘い希望をもたせて……最後にそれを打ち砕いて、懐柔しやすくする。
それがお前の狙いだったのかっ! もう俺たちは言いなりにならないっ!
これは、正当防衛だっ……」
自分に言い聞かせるのか、拳を振り上げながら叫ぶクリフ。
僕はあわてて加勢しようと駆けつける。作戦などなきに等しい。
身一つの僕らが上位に立てるのは、人数。
楊玲はとりあえず無視して、僕とクリフ。
藤吾を海に突き落として、水中に引きずり込めば……交互に呼吸して、勝てる。
もう殺人を厭っている場合ではなかった。
藤吾が降伏すれば、それで生きる道はあるが……可能性は非常に低いだろう。
そんな事を考えていたから、僕は藤吾のテュランたるゆえに気付けなかった。
その時には遅かった。
右ポケットに手をいれたままの、藤吾の危険を……最終兵器を。
バチン! といかだ全体が轟いた。昼間の陽光よりさらにまぶしく、海上を照らした。
焦げくさい匂いが、一瞬鼻先をかすめた。
まずい、と思ったが突進する足は止まらず、そのまま僕は餌食になってしまった。
藤吾が無造作に手を伸ばして向けるのは……スタンガン。
再びいかだ上で炸裂する閃光。胸の表面をビリ、と走った衝撃に全身がはじけた。
頭の芯がスパークする。膝から力が抜ける。
床に倒れたというのは……顎をぶつけた感覚で知った。

543 名前:テュランの筏3/15:2007/01/18(木) 12:05:01 ID:qg4wNRbU0
マヒして不自由な顔を、それでも動かすと……離れた位置でクリフも倒れていた。
うつぶせに、しかし鉄の意志で頭だけは起こし、憎憎しく藤吾をにらみつけている。
しびれる腕に力をこめ、起き上がろうと懸命になっている。
僕ら二人を見下ろし、藤吾はにんまりと唇を歪めた。
「楊玲」
そう言って、顎をしゃくった先は倒れ伏す僕だった。
飼主に忠実な番犬のように、楊玲はうなづき返し、僕の背中に馬乗りになった。
ズン、と圧迫され僕の内臓は無理やり歪められた。
背骨が折れそうに痛み、呼吸も満足に出来ない。
体格は同じくらいなのに、栄養状態がよく、肌も血行がめぐっている彼と、
ここ数日絶食に近い食生活を送ってきた僕との決定的差がここに現れた。
僕は、もがいても彼を振り落とす事が出来なかった。
「……、……」
楊玲は分からない言葉で、僕にささやきかける。
……何なんだ、その達観したような笑みは?
僕は怒りが湧きあがるのを感じた。
全身全霊をこめて腕を持ちあげようとするが、栄養不足の身体は気力についていかない。
その時、カシャリと鎖の音が響いた。

「クリフ君か……君は思ったより克己が強すぎた……はかどらない」
藤吾はそう言いながら、身動き出来ないクリフに、革の首輪を巻いた。

544 名前:テュランの筏4/15:2007/01/18(木) 12:06:03 ID:qg4wNRbU0
正面には長い鎖がつき、端は藤吾の手ににぎられている。
ちらりと僕の方を見、クリフに向き直る。
「意志の弱い二人は簡単におとせると思ったが……ま、朱に交われば赤くなる、と言ったところか」
鎖を乱暴に引くと、クリフは苦しげに呻きながら、引かれるままに身を起こす。
藤吾の前にさらけだされたクリフの胸の先端。そこに透明な二つの何かがつけられた。
透けるプラスチック製の……吸盤だ。
「なっ……」
絶句したクリフは、振り外そうとマヒの残る身体を左右に揺らした。
が、それはとても弱弱しく、胸の突端に吸いついたものは、びくともしない。
クリフの抵抗など意にも介さず、藤吾は片手でさぐったトランクから、手馴れた様子で品を取り出す。
「君のおかげで、日程がだいぶん狂ったよ。
楊玲はいいが、君たちは五日分も消化していない。
意志の弱そうな智士君の方は、一日でもかなり進められるだろうが……君は、ね。
短時間に集中して教えこむしか、あるまい?」
決して藤吾は質問し、意図をたずねたのではなかった。
鼻が近づくほど、顔が接近して行なわれた、威圧。脅し。
クリフが怯んだすきに、藤吾は手の中のものを突っこんだ。クリフの口に。

545 名前:テュランの筏5/15:2007/01/18(木) 12:07:00 ID:qg4wNRbU0
ゴルフボールより一回り小さなボールに、両端に黒いゴムがのびている。
指先でつついて口内に押し込むと、藤吾は手早くゴムを首の後ろに巻きつけ、結んだ。
「んぅ!」
口を強引に開かれたまま、閉じられない状況に陥り、クリフは大きく目を見開き、何かを発した。
もうそれは、誰にも聞きとる事ができない。
トランクから新たな品を取りだし、藤吾は鎖を引いて、クリフを物理的に大人しくさせた。
「サイズが小さいが……まぁ、がまんしろ」
藤吾は袋のラベルに目を通した後、不吉な事を口にした。
けれど、決して中断しようとはしなかった。
表面が黒光りする、皮のパーツ。革ひもで装着する、衣服の部品は、とても禍禍しかった。
肩と二の腕、手首、足、脛、腿、腰などと言った部分が、黒皮に包み込まれていく。
いや……強引に押し込まれていく。
サイズが小さいなんてものじゃない。伸びない素材を強引に、身体に合わせているだけだ。
その証拠に、クリフは身をよじり、呻き声をあげ、割れんばかりに目を見開き、皮膚が苛まれる苦痛を訴える。
黒い皮と白い肌、美しいコントラストにクリフは包まれ、苦悶の表情を見せている。
よほど苦しいのか脂汗が流れ、それはよりいっそうクリフを扇情的に見せた。
その皮の衣服は何せ……胸や股間を隠すパーツが、最初からないのだから。
にやにやと観察をしながら藤吾は、革ひもを結びあげていく。

546 名前:テュランの筏6/15:2007/01/18(木) 12:11:11 ID:qg4wNRbU0
「なかなか……ボンデージの似合う肌の色じゃないか……」
感想なのか、それとも嘲っているだけなのか。
クリフは後者にうけとり、頬を恥辱に赤く染めた後、んんっ、とわめいた。
「ええと……あとは」
藤吾はまだトランクを探っている。
僕は押さえつけられている腹で懸命に呼吸して「やめろ!」と叫んだ。
それはむなしく海上にこだまするだけだった。
小さな箱を取りだし開ける。藤吾の手には小さなリング状のものがあった。
近づいていくその先は……クリフのペニスだった。
手がふれた瞬間、クリフは嫌悪に顔を歪める。
が、藤吾はおかまいなしに一通りさすりあげ、それからゆっくりとリングを通しはじめた。
根元にしっかり収まると、藤吾は満足そうに手を離す。
「では、仕上げだ」
鎖の持ち方を変えると同時に、クリフの向きを仰向けからうつぶせにする。
抵抗むなしく、藤吾に尻をつきだした、卑猥な体勢をとらされる。
容赦なく、なめるような視線で見まわしクリフの羞恥をさそった後、藤吾はポケットからもったいぶって取り出す。
男根を模した……口に出すのもおぞましい……道具であった。
ゴムだかプラスチックの素材で、毒々しい色をしている。
藤吾はもう、よけいな口をはさまず、右手のそれを、あやまたずにクリフの後孔へ進めた。

547 名前:テュランの筏7/15:2007/01/18(木) 12:12:17 ID:qg4wNRbU0
首をめぐらせ、その様子を見ていたクリフの抵抗は……悲痛なものだった。
前進して逃れようとする行為は、鎖を引かれ、激しい呼吸困難とともに引き戻される。
咳きこむ声は、口枷にふさがれ、奇妙な色にくぐもっている。
咳きこみ力が抜けたところで、藤吾は力をこめて、突き入れる。
「ん、んむっ!」
クリフは限界まで目を見開き、その後痛々しく瞳は閉じられた。
僕はもう見ていられなかった。
無理やり蹂躙された後孔からしたたる血の音だけでも、卒倒してしまいそうだった。
水気をまったくもたない、無理やりに突き進む音。
内壁をえぐって、傷つけることもお構いなしに、藤吾は道具の挿入を終えた。
鎖を手に立ち上がる藤吾は、クリフの無残な後孔を気にした様子もなく、さて、と呟きポケットを探った。
痛みに呻くクリフの身体が、ビクンと音を立ててはねた。
そして身をよじり、何かをふるい落とそうとする無為な努力がつづく。
藤吾は無慈悲に鎖の幅を制限したし、刺激を高める胸の責め具は、外れることはなかった。
「これが、ローターか。じゃ、こっちが」
そう一人つぶやき、藤吾は反対側のポケットに触れる。
「んぁっ!」
クリフの身体は大きく、のけぞるように動いた。
首といわず、上半身といわず、鎖が許すかぎりその身を振る。

548 名前:テュランの筏8/15:2007/01/18(木) 12:13:04 ID:qg4wNRbU0
藤吾がつけ加えなくとも、クリフが腰を振り、
それを落とそうともがかなくても、僕にはその淫靡な音の発生源が分かった。
クリフの後孔にくわえこまれた、道具……バイブレーターだ。
敏感な二点を同時に責められる刺激に……クリフは目を閉じ、必死に唸り、
身体中から汗を流すほどの必死さで振りほどこうとしていた。
しかしそれをあざ笑うかのごとく、藤吾はポケットに入ったリモコンを操作する手を決してとめない。
残酷な言葉を投げかけ、鎖を引き、強弱、大小のリズム、時間差をおいた責めで、クリフの抵抗を一蹴する。
どのくらい時間がすぎただろうか。
数分かもしれないし、もしくは一時間と言われても、納得してしまったかもしれない。
口枷にはばまれてくぐもっていた声が、ただの熱い息と化した。
クリフの冴えた瞳は、にごり、うるみを帯びている。
上下していた肩は、その場所を腰にうつしたようだった。
全身汗ばむ肌は、上気して色っぽいピンクをしていた。
だが、その快楽も一瞬。すぐにクリフの声は恐ろしさに怯える色をもった。
「……んぐ、んん!」
身をよじり、痛みの表情を隠そうとしない。
左右に振られる腰、その間で揺れるクリフのペニスは……
生理的反応の勃起を、その根元にはめたリングによって拒否されていた。

549 名前:テュランの筏9/15:2007/01/18(木) 12:14:03 ID:qg4wNRbU0
「ぁあ、んんっ!」
興奮など人の意思で止められるものではない。
下半身に集まり、止らない血流を、むりやり収める輪に、
クリフは苦痛の全てを支配されてしまっている。
「ぐ、ぐっ、んんんんっ!」
いやいやと頭を振り、目尻からこぼれる涙。
口枷がなければ、その唇は懇願を作っただろうし、
両手は床についていなければ、胸の前で祈りの形に組まれただろう。
藤吾はしばらくその様子を、にやにや笑いで観察しつづけた。
尻にさわり、リモコンで刺激を増し、さんざんに悪魔のような所業でいたぶった後、
涙の跡を残すクリフに、耳を近づけささやいた。
「外してほしいか?」
クリフに、他になにができただろう。彼は涙のたまった瞳で、こくりとうなづいた。
その素直な反応に、藤吾は満足そうに首を振り、乱暴とも呼べる手際で、後孔をいたぶる道具を抜きとった。
「んぁ! んっ」
一瞬痛みに顔をしかめたクリフは、それでも片方の責めから解放され、息を吐いた。
が、ほんとうに恐ろしいのはこの後だったのだ。
「かわりに、これを挿れてから、だ」
クリフの腰に手をおき、もう一方の手でスラックスのファスナーを引き下げる藤吾。

550 名前:テュランの筏10/15:2007/01/18(木) 12:15:05 ID:qg4wNRbU0
彼の股間はすでに昂ぶっており……僕はその後の凄惨さを想像して……想像して……想像など、許されない。
許されるはずがないっ! お前みたいな奴が、クリフを汚す権利など、持っているものかっ!
とうとつに僕を支配したのは、強い怒り。心の底から憤怒が立ち上ってくる。
「どけっ、楊玲!」
僕の乱暴な口調に、ぽかんとした表情を作る、その一連でさえ、スローモーションだった。
神経から分泌されるアドレナリンが、時間も動作も、ぎゅっと縮めていたのかもしれない。
振り回した手は、僕の怒号をすべて含めて、楊玲の顎にヒットした。
彼が倒れるのも確認しないまま、僕は駆けた。タープに手を入れて、一番重い容器を拾う。
両手で抱え、キッと藤吾をにらみつけた。
白いスーツの男は、敵役にふさわしい笑みで、すでに右手にスタンガンを用意していた。
クリフの鎖は放していたが、さんざんに責めさいなまれた彼は、意識を失っているようだ。
……僕が、僕がクリフを救わなくちゃ!
僕は意思を強く灯した。今なら瞳の炎で、藤吾を炎熱地獄へも送ってやれるはずだ。
『……君は意思が弱そうだから……』
『……意思の弱そうな智士君……』
……お前が、お前がそう言った。違うって事を、今、見せてやる。
……弱くなんてない、クリフを守るためなら、お前だって打ち砕いてやる!


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