791 名前:吸血鬼22:2007/02/02(金) 22:54:33 ID:uUGesDo40
頬が紅潮して息があがる。
声を抑えようと奥歯を噛み締めるが、弓なりにそって
身悶え突き出す胸を容赦なく攻められ、まるで
ねだっているような高い声が出てしまう。
首を左右に振り、再び腕をのばし、必死に逃れようと
あらがうクラウスの顎が掴まれて固定させられた。
「あっ‥」
バルドの瞳が少年の潤んだ瞳をとらえた。
瞳と瞳が交わる。
熱くなった体に胸を大きく上下させて、荒い呼吸を
続ける少年を静かな表情が見下ろしている。
「バ‥ルド‥」
口づけするような距離で
吐息と共に言葉が落ちて来た。

「「慰めて」やる」

衝撃が全身を貫いた。


792 名前:風と木の名無しさん:2007/02/02(金) 22:55:54 ID:Jp6ijROaO
しかししたらばでは不評

793 名前:吸血鬼23:2007/02/02(金) 22:57:18 ID:uUGesDo40
ヒュッと息がつまり、クラウスの瞳が驚愕に揺れる。
全身から力が抜けた。
カウチに体を沈めて大人しくなったクラウスの
唇にバルドが軽く口づけを落とし、愛撫を再開する。
時が止まってしまったかのように呆然と虚空を
見つめる見開いた瞳からこらえていた涙が一筋こぼれ落ちた。
‥違う。
自身を再び擦られて体を包むマットに爪をたてる。
流れる先走りがいまや下腹を伝いカウチをも濡らしていく。
‥違うのだ。欲しかったのは‥‥
バルドの指が緩急をつけながらもクラウス自身を
激しく扱き、みだらな水音が響いた。
「やあっ!ああっ!あっ、ぅん」
自分の声がどこか遠くで聞こえる。
「ああっ!」
勃起した自身の根元から先端へと舌がなぞった。
湧き出る先走りを舐めとるように動く舌が先端を擦り、
クラウスの足がガクガクと震えだす。
「やあっ、ああっ、あああっ」
無意識に逃げる腰を押さえ、バルドは先端の窪みに
舌を食い込ませ、軽く甘噛みをすると口内に含んだ。


794 名前:吸血鬼24:2007/02/02(金) 22:58:04 ID:uUGesDo40
唾液をたらし、大きくのけぞったクラウスの
口から嬌声がほとばしる。
「っあああああっ!!」
暖かい口内に含まれあっけなく弾けた
それを飲み下したバルドの喉が上下する。
熱い息を吐き半開きになっている口からのぞく
舌をバルドの舌が捉えて唾液を吸う。
交わる唾液は精液が混じって苦かった。

先が見えない。
違う、見たくないのだ。
この同情めいた行為の意味を。
‥求めたのは、ただ一緒に‥‥‥
「バ‥ド‥、つ‥れて‥いっ‥‥」
少年の震える腕がゆっくり持ちあがりバルドの首を絡めた。

795 名前:吸血鬼25:2007/02/02(金) 22:58:59 ID:uUGesDo40
痛いのだろう。
少年と繋がった部分から赤い血が零れ落ちる。
アドルフとヤンに散々突かれ切れた粘膜は、
バルドによってまた新たな血を流していた。
しなやかな上半身をさらしたバルドが
よつばいのクラウスを覆っている。
痛いんだと思う。
そう思いながら、それでもバルドは激しくクラウスを突き上げた。
「ああっ、つっ、は、うう、んんぅ」
汗を散らしながら上げる少年の声は甘い中にも苦痛が混じっている。
腰を強く引き寄せ、悲鳴を上げて髪を振り体を反らすクラウスの
背中に赤く色づく唇で口づけを落とす。
「あ‥っ、ああっ、バル‥‥‥つれ‥‥て‥」
うわ言のように繰り返すかすれた声に
心臓から全身へと言葉では言い表せない
何かが、波紋のように広がっていくのを感じる。
充足にも似た感覚にバルドの眼光が増した。
「連れて行って」と少年が繰り返す度に、心が震える。
矛盾している。
クラウスの肌と部屋を包む血の香りに麻痺しかける中、
頭のどこか冷めた部分が自嘲した。
この行為になんら救いはない。
強いていえば自己満足だ。
バルドがつけた新たな赤い花が少年の
体のあちらこちらに色づいている。
忘れるなと。
忘れてくれるなと。
その体に、心に、刻み込む。

忘れてしまえと言えない自分の弱さに瞳を閉じた。

796 名前:吸血鬼26:2007/02/02(金) 23:00:12 ID:uUGesDo40
クラウスを仰向けにして何度目かの口づけをかわす。
身を起こそうとした左手を掴まれた。
「バル‥ド‥‥」
快感に酔い荒い息を吐きつつ何かを恐れるように
バルドを呼ぶ声に、動きを止める。
「‥‥私と同じになるという事は血を求めるという事だ」
激情は去り、静かに語るバルドが、
掴まれた左手を少年の頬にそっと添えた。
指先に熱がとけ込むように伝わってくる。
「わ、か‥っ、てる」
バルドが軽く首を振った。
「わかっていない、クラウス。人間の血だ」
「そん、なの、わか‥‥‥」
「人間を殺せるか」
体を震わせ絶句したクラウスの瞳が歪んだ。
「‥‥おまえに肉親達と同じ種の人間を殺せるか。
『ワインと薔薇だけで生きる』‥生きていけると
 いうだけだ。その本質は人を襲って生きる存在。
 そういうものになれるか」
そんな自分を毎夜訪ねてくれた少年。
別れの時が迫っていた。
「‥‥な、れるよ‥‥だか‥ら」
そう答えたクラウスの声は硬く震えている。
唐突にバルドがクラウスの首筋に顔を埋めた。
ビクッとクラウスが硬直する。


797 名前:吸血鬼27:2007/02/02(金) 23:01:10 ID:uUGesDo40
バルドの吐息が首筋を這い、舌で舐められる。
牙が、触れた。
二本の牙が首筋に。
鼓動が全力疾走したように早くなる。
体が震える。
視線を虚空に定めたまま、動けない。
‥‥‥気づかれてはならない。
この震えは歓喜の為でなければならない。
あんなに望んだじゃないか。
一緒に行きたいのだと。
連れて行って欲しいと。
その気持ちは変わらない。
わかっていたはずだ。
二度と見れぬ日の光を。
二度と会えぬ家族を。
人の生き血を吸う存在を。
なのに‥‥‥

喜びだけでない震えが体を襲っていた。


798 名前:吸血鬼28:2007/02/02(金) 23:02:34 ID:uUGesDo40
血を吸うという行為をただ漠然と考えていた。
吸血鬼が明確な意思を持ち血を吸うと吸血鬼になり、
それ以外で血を吸うと命を落とす。
人間を殺す。
殺すという言葉が重くのしかかる。
自分達が餌を狩るのと同じだ。
ただ追う対象が変わるだけ。
人間に。
それが恐い。
当たり前だ、自分はまだ人間なのだから。
人間でなくなったなら、恐くなくなるのだろうか。
恐いなんて思いたくないのに。
裏切りたくないのに。
‥体の震えを抑えたいのに止まらない。



799 名前:吸血鬼29:2007/02/02(金) 23:03:14 ID:uUGesDo40
チュッと唇が首筋に触れて離れた。
クラウスの瞳が揺れて潤んでいく。
ハッと一度だけ肩で息を吐き、
おそるおそるバルドを見上げた。
いつものように穏やかに微笑んだ彼がいた。
目頭に熱が集中して、肩が上下する。
ゆっくりと細くなったクラウスの瞳から
とめどなく涙が零れ落ちる。
諭されたのだ。
連れては行けないと。
「バル‥ドっ、ご‥め‥っ、っ、バルド」
嗚咽でうまく言葉が出ないクラウスを
柔らかな金色が迎える。
ジジジと音をたて、油が切れたランプの灯が消えた。
そっと少年を抱いた吸血鬼がその肩口でささやいた。
「クラウス、ありがとう」
別れの言葉はどこまでも優しかった。


800 名前:吸血鬼 終了:2007/02/02(金) 23:04:17 ID:uUGesDo40
暗夜に目覚めると少年がいた。
昨日、夜明けとともに村へ帰っていったはずの少年が。
吸血鬼だと確かに自分は名乗ったはずだ。
澄んだ金色を少年が見つめる。
「おはよ」
夜なのにおはよって変な感じだけど。
そう言って微笑んだ少年に少し驚いたふうの
吸血鬼がそっと微笑み返した。

長い夜が明けて、気づくとクラウスは
一人カウチに横たわっていた。
服も身につけていたが、引きちぎられたシャツはない。
代わりに大きな黒い上着が着せられていた。
あんなにただよっていた血の香りはなく、
床に広がった血のあともない。
あの二人の遺体もなくなっている。
後で聴いた話だが、ヴァンパイアを退治にいった
二人が帰ってこないと、街からやってきた幾人かが
森に入り二人の遺体を見つけたそうだ。
城からそう離れてはいない場所だったらしい。
慌てて地下室に向かおうとした足を止めて、
しばらくぼんやりと立ち尽くした。
もう、地下室には何もないだろう。
バルドは、出て行った。
戻らない日々に胸が悲鳴をあげたが、
枯れてしまったかのように、涙は出なかった。
城を、出た。
鮮やかな金色が脳裏をかすめ、振り返ったクラウスは。
やがて木々の隙間からのぞく朝の光へと一歩を踏み出した。



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