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セフィロス…俺はお前を許さない…
俺の細胞、俺の精神、俺の魂が千々に引き裂かれても
貴様を憎むこの気持ちだけは薄れやしない
強くなりたかった。
父を知らぬ俺は「男は女を守る物」と固く信じていた。それは母の強い願望であったかもしれない。母を守り、愛する女を守るそれが男にとって正しい生き方であると信じる息子の俺にその信念を押しつけた母は、満たされない、弱く、哀しい、そして愚かな女だったのだろう。
俺は思い通りに人生を切り開く他者を寄せ付けない力が欲しかった。
強くなりたい切実に願った。何を切り捨ててもいい、力さえ手にはいるならば…
俺も愚かな人間の一人だった。
あの人の手に触れるまでは…
「クラウド、久しぶりね」
ティファはにっこり微笑んで手を差し出した。その手を握りながら、どこか非現実的な感情を覚えた。
何かが足りない。何か大事な物を忘れている気がしてならなかった。
「希望通りソルジャーになれたようね」
ティファの笑顔はどこか遠くを見つめるような瞳をしていて、何故かとても寂しげに見えた。
「こんなスラム街に住んでいる私達とは、もう全然身分が違うのね」
−そんなこと気にしていたのか…
「そんなこと気にしていたのか。バカだな。俺は神羅とはもう関係ない。…俺はソルジャーを辞めたんだ」
チクリと胸が痛かった。何かが足りない。誰か大事な人がいた筈だ。自分の左側に喪失感が漂う。
どうして俺は神羅を辞めたんだろう。
ほっとしたようなティファが俺の頬に手を添えた。
「クラウド…?」
無意識の内に涙が流れ落ちていた。ティファの白い華奢な手がそれを拭っていた。
「クラウド?」
躰の中を冷たい風が駆け巡っている。
俺は何をしたい?俺は、俺は、俺は…何が欲しい?
複雑に混じり合った感情は俺を頭痛へと追い込んでいった。
−許さない…
誰を?
−許さない 許さない 許さない 許さない 許さない…
「クラウド!!」
−この手を離さない…
ティファの白い手が見える。細くしなやかな腕…
と、突然胸の中に広がる一面の降るような星空。そして炎の中に立ちつくす一人の男の姿が…
セフィロス
−神羅を、セフィロスを倒す。
「金を払うなら、君達の計画に手を貸すよ。神羅を倒すためにね」
歯車は終末に向かって動き…出す…
fin.
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