Jealousy

 

 

 

 

 その痕をジョーの身体に見つけたのは偶然だった。

 昨日の晩、アルベルトがリビングに帰って来なかったのはそんな理由なのだと瞬時に理解した。
 アルヌールがジョーを起こしに行った時変だと気付くべきだった。
 ジョーの襟元から紅い鬱血が覗いた時、後頭部をハンマーか何かで力いっぱい殴られた気がした。

 何ておめでたくて馬鹿な男だ。俺はその時になって始めて自分の気持ちにはっきりと気が付いたのだ。
 ジョーを自分の物にしたい。あの細い身体を組み敷き、俺の手で快感に翻弄される姿を見たかったのだ。なのにジョーは儚すぎて、俺に笑いかけるあの笑顔を自分の手で汚してしまうのが怖かったのだ。
 おずおずとアルベルトに微笑むジョーを見ると、俺の中に暗い炎が燃え立つのが判る。

「何だかジョーは急にきれいになったんじゃないか?」
 ジョーとギルモア博士が出掛けた後、雑談の合間にブリテンが言った。アルヌールの肩がぴくりと反応する。
「何だか艶っぽくなったよな」
 何気ない一言が胸に突き刺さる。ジョーの緩やかな変化は、それでも誰の目にも明らかなのだ。

 戦況が激しくなってからこっちジョーは笑わなくなっていた。それは何時もの事で、強すぎる責任感によく胃を痛めているようだった。眠りも浅く貧血を起こしていることも知っている。
 だが今までは誰もそんなジョーの心労をきれいさっぱりと拭い去ってやることは叶わなかった。
 それをアルベルトはたった一晩で払拭してしまったのだ。

 俺は壊してしまうのを恐れて、他人に掻っ攫われてしまったのだ。

「そう恨みがましく睨み付けるな」
 すれ違いざまアルベルトは俺に言い捨てて廊下に消えた。かっと血が上る。
そう俺はアルベルトを憎んでいた。誰にでも気付かれる程だったのかもしれない。
俺は知らずアルベルトを追い掛けていた。なのにアルベルトに追い付いてその顔を見てしまうと何も言えなくなってしまう。言いたいことは沢山有ったはずなのに……。
「とりあえず中にはいれ。皆に聞かれたい話ではないんだろう」
 促されアルベルトの私室に入った。すぐさま用意された飲み物を手に、どう切り出すことも出来ず黙ってグラスを空ける。アルベルトの目を見ることが出来なかった。
「で、何が言いたいんだ?」
 多少酒が回った頭でアルベルトの声を聞いている。俺はアルベルトに何が言いたいんだろう?

--ジョーを返してください--

 一体誰に? ジョーは誰の物でもない。そんな事は判っている。
 いつまでも口を開かない俺に業を煮やして、アルベルトは不敵な笑みをたたえながらこっそりと打ち明ける。
「ジョーのあの顔は可愛かったぞ」

がたんっ

「お前はわかっていて俺をからかっているのか?!」
 ジョーを抱きたい……。俺のほの暗い心の深淵を覗かれた気がする。
「それでお前はどうしたいんだ?俺を殴って気が済むのならそうすればいい」
 アルベルトの胸倉を掴み上げながら俺は考える。
「ジョーを抱きたいなら抱けばいい」
「……出来る訳がない……」
 そう出来る訳がないんだ……。全身の力が抜けて行く。このまま床に座り込んで、泣いてしまえれば良かったのに……。
「ジェット……」
「笑うなら笑え。俺には出来ない。……そんな勇気ない」
 何時もの自身満々の俺は、何処に行ってしまったのだろう。こんな感情なんていらない。こんなのがスラムで名をはせたシャーク団のリーダー、ジェット・リンク様だなんて大笑いもいいところだ。
 アルベルトの顔なんて見たくない。俺はアルベルトの胸元から手を放しひざまずくように座り込んだ。
「こんなことでは、あいつは壊れやしない」

 アルベルトの唇が下りてきた。俺は何の躊躇無くそれを受け入れた。
「愛しいと思うこの行為に、何か躊躇う理由があるのか?」
 アルベルトの手がするりとシャツの中に入って来て、俺の胸を弄る。乳首を探り当てられたのと、快感が背筋を走り抜けたのは同時だった。
「っん……あぁっ……」
 布の上からそこを握られて、身を捩って逃げようとしたのだが、震える体は言うことを聞かない。
「お前の身体にジョーの好い所を教え込んでやるよ」
 片方の乳首を指で、もう片方を舌で転がされると俺の雄の部分が頭を持ち上げるのが判った。
「アルベルト、止めろ……」
 俺の声は恥ずかしいぐらい上擦っていて、ちっとも迫力がない。アルベルトの手はするりと下着の中に侵入して直に握ってくる。
「ジョーはもっと素直に感じていたぞ」
 アルベルトはもうジョーの全てを知っているのだ。ジョーのあの時の顔も、声も……。鼓動が急に早くなる。

--この手で本当のジョーを知りたい……--

 これはただの欲望だ。判っているんだ。
 俺は抵抗を止めて、アルベルトの為すが侭に身体を開いた。


 俺の中にアルベルトが入って来ると、ベットが軋んだ。予め指でよく慣らされていなければ、俺の身体もベットと同じように悲鳴を上げていたに違いない。
 それでも想像できないほどの衝撃が俺を襲ったのだが、ゆっくりと挿入が繰り返されると萎えかけていた物が再度屹立する。
「焦らずにすれば痛くはないだろう?」
 アルベルトの声が結合部分から響いて来るようで、火の点いた身体に油を注いだ。
「がっついてジョーを壊すな……」
 押さえようとしても声が漏れる。遠くでアルベルトの声が聞こえる。何を話しているのか良く判らない……。
「ジョーは初めてなんだからな」
「!!」
 一際強く突き上げてアルベルトの律動が止まった。内壁に打ち付けられる感触で俺も同時に達した。

「……な……何だって……?」
 息を整えながら掠れる声で問うが、情け無いほどに迫力が無い。そんな俺を奴は乱れた様子も無く、何時も通りにシニカルな笑いを浮かべている。
「だから、ジョーを壊すなと言っているんだ。あいつはまだ男を知らないんだからな」
「だ、でっでも……昨日お前が……?」
 むかつく事にアルベルトは楽しそうに声をあげて笑い出した。奴を殴ってやりたくても身体はまだ言う事を聞かない。
「昨日は……ジョーの……出してやっただけで、まだ……食っちゃいないぞ」
 俺は無償に腹が立った。早とちりの俺に、アルベルトに、更には無関係のジョーにさえ……。
 軋む身体に鞭打って適当に服を着け、まだ笑いの発作が収まり切らないアルベルトの部屋を後にする。
「ジョーには優しくしてやれよ」
 楽しそうなアルベルトの声が聞こえる。俺の足はジョーの部屋へと向かった。


Fin.

 

 

 

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