ファースト・オフ



 昔何かの本で読んだことがある。太陽が黄色く見える。確かにその通りだ。
 昨日松田さんとチャットしていて寝たのは5時を回っていた。
 最低最悪の朝。出掛けに靴紐は切れる、黒猫には横切られる、乗ろうと思っていた電車には後一歩で間に合わない…。散々だった。
 カジュアルシャツに柄物のネクタイ。ちょっと窮屈に見えるかも知れないから白のニットのカーディガンを羽織り、濃紺のダウンジャケットを着た。洗い晒しのGパンに、コンバースのバッシュ。待ち合わせの喫茶店のウィンドウに映る自分の姿を横目でもう一度チェックしてドアを開けると、辛気くさいベルがチリリと音を立てた。
 初めてオフに参加した時だってこんなに緊張しなかったのに、もう頭に血が上っている。顔が熱い。
 この喫茶店は、いつも生井さんが待ち合わせに使う所で、奥の卓が異常に広く30人以上詰めることが出来る。
 「どうしたの?遅いじゃない」
 生井さんが笑いながら一番奥の席で手を振っている。他にも見知った顔がちらりほらりと…。併せて15・6人が興味津々と言った感じで闖入者を観察する。
 うん、冬休みでも何でもない日曜日に、これだけの人数を集めるのは生井さんの人徳のなせる技だろう。
 「ごめんなさい。ちょっと寝過ごしちゃって…」
 ボクはいそいそと生井さんの示してくれた席へと座る。
 「時間を持て余してる浪人生のくせに、時間ギリギリなんて許せないわ」
 隣に座っている、既に顔なじみの花の女子大生サクラちゃんがボクの脇腹を小突きながら小声で言ってきた。
 向かいにやけに男前なのがふんぞり返るという形容詞そのままで座っている。
 年の頃なら30代前半。ちょっと見スポーツマン系の浅黒く健康的に日焼けした肌、均整のとれた野性味溢れる体躯。
 それに比べるとボクときたらてんで童顔で寸足らず。分厚いビン底眼鏡の、いかにもって言う感じのオタクなので、こういった人前に出ると何だかちょっと引け目を感じてしまう。
 いつもはキャピキャピと騒々しい女子部のみんなも、それとなく遠巻きに静かだった。
 何か凄く嫌な気配…いや、予感がした。
 生井さんの主催のオフに出るのはこれが3回目かな?自己紹介は会の中盤、盛り上がってきた頃に行うと言う、ちょっとしたシークレットパーティーめいた生井さんらしいイタズラ心のあるオフだ。
 「よっ!始めまして」
 男前がボクに向かって片手を挙げて挨拶してくる。
 「始めまして」
 唇の片端をちょっとだけ上げて笑い、ウィンクを投げながらその男前が言った。
 「噂通り…いや、それ以上にカワユイね。宜しく」
    やっぱりこれって松田さんなんだろうな。それしかないよね…。
 松田さんはニコニコして、いかにも満足げに頷いた。もうすっかりスケベ爺の域に達していた。
 あぁ、何か今回のオフってものすごく荒れそうな予感…。


 「ほい、アトム水」
 「ん…?」
 額に乗っかっている冷たいタオルを除けると、松田さんのかっちょいい顔が超ドアップでせまっていた。
 「うわぁ」
 び、びっくりしたぁ。ボクが焦りまくっているのを見て松田さんはくすくす笑いながら、水の入ったグラスを渡してくれる。
 ボクが素直に受け取り、冷水を喉に流し込むのを微笑みながら見て、松田さんは胸ポケットからタバコを取り出した。
 「こ、ここ何処ですか?」
 気を取り直して聞く。あんまり松田さんがスケベなメールやらページを送り飛ばしてきていたので、ボクは妙に意識していたようだ。
 「都内のビジネスホテルだ。お前さん覚えてないのか?」
 う〜〜ん。顔見せの後、カラオケになだれ込んで騒ぎまくり、居酒屋で更に飲んでやけに松田さんに絡んでいたことは覚えている。
 「…?」
 マジに考え込んでしまうボクの顔を見て、松田さんは思い切り吹き出した。
 「お前、女だったら絶対やばいぞ。いつもあんなに飲むのか?」
 「…いつもは…コップに1・2杯です…」
 「睡眠不足に定量オーバーだな」
 「……ハイ…」
 いったい誰のせいでボクがこんなにペースを乱されているのだろう。
 笑う松田さんの顔は嫌味がなく爽やかで、ボクの自尊心を酷く傷付けた。
 最近はずいぶんと明るくなったと思っていたボクだけど、やはり元々は『オタク』とか『根暗』と言われ続けていただけあって、人と比べると性格は暗い方だろうし、人付き合いもあんまりうまい方だとは思わない。
 何せ口下手で話す言葉を探している内に会話はどんどん流れていってしまい、つかまえる糸口は見つからなくなってしまう。
 だからこんなボクがパソコン通信で、たくさんの友人が出来るとはましてやこんなに人気者になってしまうなんて思いも寄らなかったし、未だに結構信じられない気持ちがどこかに残っていたりする。
 ボクは本当にコンピュータの前に座ってキーボードに触っていなければ、自信なんて一欠片も湧いてこない平々凡々のオタク少年でしかなかった。
 「おい、俺を置いてあっちの世界に行くな」
 「え?」
 松田さんの声に思考の深い淵に落ちて行きそうだったボクは慌てて現状を思い出した。
 「あ、ごめんなさい。ちょっと物思いにはまっちゃって」
 照れ笑いしながら頭を掻いていると、かっこいい松田さんの顔が再びアップになる。
 「俺といて他の男の事でも考えてた?」
 「え?えぇ??」
 「バカ、冗談だよ」
 ボクが目を白黒させていると松田さんはニヤニヤと笑った。
 室内はいかにも寝るだけの部屋で、狭い空間の中にシングルベットが二つぎゅうぎゅうに押し込められており、TVも冷蔵庫も見あたらない。申し訳程度に、応接セットもどきのソファー二つとミニテーブルがあるだけだった。
 松田さんは空いている方のベットに腰をかけ、赤くなったり青くなったりするボクを面白そうに見下ろしている。
 「しっかし、アトムって本当に想像通りだなぁ…」
 「??想像通り?」
 「19って年の割には、えーっと…」
 「全然ガキ臭いとか?」
 「いやいや、そんなんじゃなくて…細い…うぅん違うなぁ…」
 「か細い」
 「バカ。そんなんじゃねぇ…そうだな、脆いとか儚いとか…」
 「儚い??」
 思ってもいない単語が出てきてボクが目を丸くしていると、松田さんは真っ赤になって鼻の頭を掻いた。
 「俺は理系だからうまい言葉が見つかんねぇんだよ。その…何か手で掴んでないとどっか行っちまいそうだとか、守ってやりたいような…」
 「ま、松田さん、それって男に対する形容じゃない…」
 「女じゃないなんて見りゃわかるけど、何て言うか…男を感じさせないって言うか……・そうだ、不思議な生き物みたいだ…うん」

 「何ですか…それ」
 何か支離滅裂で訳の分からない事を言われて、がっくりと力が抜けてしまった。
 「ちょっと試させてくれ」
 そう言うと松田さんは電光石火の素早さで、ボクの唇に自分の唇を重ねて来た。
 あまりの出来事にボクの思考能力は停止してしまい、拒む事も跳ね飛ばす事も出来なかった。まぁ、体力差から言ってもそれをするのは無理なのだが…。
 今の状況を理解しようとして、業務放棄するボクの脳に賢明に活を入れようと頑張っているのを尻目に、松田さんは事もあろうかボクの口腔に舌を押し込みかき乱すように中をまさぐった。
 「や…あ…」
 ボク達の隙間から必死で抵抗するボクの声が漏れる。しかし、それはよくあるAV女優の声のように甘えた喘ぎ声にしか聞こえない。ボクの錯覚だろうか。錯覚であって欲しい。
 男としての最後の根性をかき集めて松田さんの胸を両手で力一杯突き飛ばした。
 が、このウェイト差は神様にだってどうしようもなかったらしく、松田さんの体はびくともしなかった。
 その間に松田さんの右手は、Gパンの上からボクの股間をやんわりと握り締めた。
 ボクとしては力一杯暴れまくったつもりなのだが、松田さんにとってはへとも思わない程度だったらしい。
 暴れて暴れて暴れて…酸素が尽きた。声は漏れても息は出来なかったらしい。力無い抵抗はあっさりと押さえつけられ、松田さんの唇が離れても深呼吸を繰り返すしか出来なかった。更にうなじに舌を這わされても動く事は出来なかった。
 くすぐったい筈の行為に、それ以外の感触がボクの背中を駆け抜けた。その時、Gパンのジッパーを下げる音がした。
 「松…田さん…だめ…」
 傍若無人な手を払い除けようともがくボクの両手を、松田さんの左手が一纏めに押さえつけてしまった。ボクは涙で潤んだ目で松田さんを睨み付けるしかなかった。
 さっきまでの印象はきれいさっぱり払拭され、松田さんの瞳は獣のように光っていて恐ろしかった。ボクは息を飲み、ぎゅっと目を閉じた。
    怖い…
 思い掛けず涙が一筋こぼれていく。それを松田さんの熱い唇が拭った。
 竦み上がったボクの分身に、松田さんの指が絡んできた。
 「ひ…んぅ…」
 言葉は出なかった。松田さんの唇が耳たぶをなぶり、舌がいやらしい音を立てて耳を愛撫する。
 熱い吐息と声がボクを呪縛するようだった。
 扱かれもしていないのに松田さんの右手の中でどんどん大きくなり、快感を誇示している。
 「アトム」
 松田さんがボクを呼ぶ。甘い声が掠れている。松田さんも興奮しているようだった。
 二度目の口接けの時には、頭の中はもう真っ白だった。
 「お前が色っぽいから悪いんだぜ、アトム」
 松田さんはボクの首からネクタイをシュッと抜き取り、ボクの両手をそれでベットサイドに縛り付け、ゆっくりとシャツのボタンを外し始めた。下着とGパンを一気に引き下げられても、抵抗する気力も体力も思考も微塵も湧いてこなかった。
 自ら着ていた服を剥ぎ取っている松田さんの姿がぼやけて見えるのは、ボクが眼鏡をかけていなかった所為だけではなかった。
      ギッ
 安いベットのスプリングが軋んで松田さんが戻ってきた。
 ボクの上に覆い被さり両手で頬を包み込んでキスをしてくれた。それは今までで一番優しく甘い、そして激しいキスだった。
 ボクは誰が教えてくれた訳でもないのに、松田さんの舌に自分の舌を絡めた。
 無機質な室内に濡れた音が響く。今両手の戒めを解いてくれたなら松田さんの背中に手を回してしっかりと抱き締めていただろう。
 僕たちの唾液は混じり合い、ボクはそれを美酒のように飲み込んだ。舌を絡めたまま松田さんの手は徐々に下りてボクのウィークポイントを探る。快感に震え溺れそうになると、松田さんの舌がボクを追い上げる。
 その右手がボク自身にかかるとあっけなく爆発してしまった。

 「思った以上に敏感だな」
 松田さんはちょっとびっくりしたように笑い、手の中のボクの吐き出した物をペロリと舐めた。
 「俺が男のザーメン舐めるなんてな…」
 松田さんは又笑ったがボクにはそれどころではなかった。
 いくらSEXが初めてだって(その相手が男だって女だってこの際関係ない)相手の手がちょっと触れただけでイってしまうなんて。それがよりによって松田さんの…いや、男の手に放ってしまうなんて…。
 ボクがパニクっている間に松田さんは再びボクをしごき始めた。
 「やぁ…松……ん」
 今イったばかりなのに、又頭をもたげ始めているそれに松田さんは柔らかく熱い舌を這わせた。
 「!!!!」
 ボクの悲鳴は言葉にならなかった。 裏側をすうっと舐め上げたかと思うと、片手でしごきながら先っぽを吸い上げてみる。
 堪らなくなって出そうになると、根元をきつく握り締めたり軽く歯を当て痛みでボクを引き留める。
 あまりに濃くて深く終わりのない快感で、内股の筋肉がヒクヒクと軽い痙攣を起こしている。息が上がってしまい自分の唾液が上手に飲み込めない。
 「アトム…かわいいよ…」
 「…も、もう……」
 涙が溢れていた。体全部が性器になったみたいに疼く…。
 「おねが…許して…」
 「SMにはまる奴の気持ちがわかるな」
 もう、松田さんの言葉なんて聞こえない。ボクの頭の中には『早く、早く、早く…』それだけしかなかった。
 松田さんの手が放れ、思い切り吸い上げられると同時に放ってしまった。
 「!あ…あぁん…」
 引きずるような甘い声とごくりと何かを飲み下す音が遠くで聞こえ、そしてボクは意識を手放した。

     ぴちゃぴちゃぴちゃ…
 何の音だろう。思った瞬間にある一点に淫らな感触を覚え、完全に覚醒した。
 他人に晒した事なんてなかった場所に、松田さんは舌を使っていた。
 「や…止めて。松田さん…そんな…っ」
 声が掠れた。中に松田さんの舌が入り込んで来たのだ。
 「そんなに締め付けるなよ、舌が千切れちまう」
 松田さんは舌の代わりに指を差し込もうとしたが、それは無理だった。
 「や……痛い!」
 松田さんの肩に足を片方ずつのせられゆっくりと開かされても、そこは松田さんの指を受け入れることは出来なかった。みっともない格好のままボクは泣き出してしまった。
 何もかも暴き出されてしまって、もう恥ずかしさなんて何も残っていなかった。
 「ちょっと待ってろ」
 惨めなボクをそのままにして、松田さんはバスルームに消えて行った。
 ボクは泣き続けた。父さんが死んでしまった時でさえ、僕はこんなに泣かなかったと言うのに…。
 「しけたホテルだ」
 松田さんが何か持って帰ってきたけど、涙で潤んでしまって何も見えない。
 ただ、こんな事されても松田さんが側にいてくれてボクはほっとしていた。
 腰の下には何かが引いてあるようで、松田さんの座っているあたりから見るとボクの恥ずかしい部分が全てさらけ出されている筈だ。
 「今度は、多分大丈夫だ」
 ちゃぷんと音がする。松田さんの持ってきたのは、どうやら水の入った洗面器らしかった。
    水で濡らせば挿る?そう言う意味なの??
 松田さんの意図が掴めなかった。再びそこに指をあてがわれて、それがひきつれる痛みを呼ぶのだと構えたがさした抵抗もなくぬるりと中へ挿った。
 「ローションも何も置いてやがらん。次の時は用意して置くから、今日は石鹸で我慢してくれ」
    せ…石鹸?
 松田さんの指がぐるりと中を掻き回した。ぬちゃっと音を立てる。それはあのキスの時よりも、耳を愛撫された時よりも、ボクには大きくて淫らな音に聞こえた。
 指を挿られても痛くはなかったのだが女の子のように『良い』とも感じなかった。ただ、多分そんな所に物を挿れた事がなかっただけに物凄い圧迫感があった。
 松田さん自身も女の子とは勝手が違うらしく、焦っているようだった。執拗に指を抜き差しし中を探っている。
このままどうなるんだろうとボクが思い始めた時、松田さんの指がボクの中の一点を探り当てた。
 「ん…あ…」
 それに松田さんも気付いたらしく、その一点を責め立て始めた。
 「…や…あ…くっ」
 指の数が二本三本と増やされても気にならない程、ゆっくりと丹念に時間をかけてボクを追い上げて行く。
 ゆっくりと着実にボクの体は松田さんによって作り替えられて行く。
 「あ、嫌だ…」
 指が抜かれた時にはもうボクの体は震えていた。行かないでと肉襞が縋り付くように絞まるのさえわかった。
 「もっと良い物をやるよ」
 部屋の中にはボクの汗の匂い、そして一際高く石鹸の香りが上がった瞬間だった。
 「!!」
 熱と衝撃と痛みは指なんて問題にならない。
 松田さんがボクの事を慮って思い切りゆっくり挿入してくれたのだが、それがボクにとっては逆に苦痛を長引かせる結果になった。
 だが、信じられない事にボクのとは比べられない程の大人のそれが、ボクの中にすっぽりと挿ってしまった。
 「アトムの中…熱いよ」
 「あ…あ…ひぃ」
 松田さんが動き始めた。ボクの中をゆっくりと、そしてどんどん早く…。
 内蔵が引きずり出されるんじゃないかと思う程の痛みが、他の何かにすり替わって行く。
 松田さんに深くキスされ、きつくしごかれ、そして犯されて、ボクは涙と鼻水と唾液と汗と、ありとあらゆる物で汚れながら、それでもボクはやっと自由にして貰った両手で松田さんの首に抱きすがった。
 「う…」
 一際深く突き刺された時の松田さんの低く短いうめき声に、ボクは何もかもを手放した。

 「ちょっとキスしてみるだけだったんだ」
 気が付いたらさっきとは別のベットに寝かされていた。体は綺麗に処理されていた。
 起き上がろうとするボクを松田さんは慌ててベットに押し戻して、いきなりの台詞だった。
 「アトムがあんまり可愛くて…ついムラムラと…」
 …そうか、松田さんにとってはボクはついムラムラ程度だったんだ。最中の囁きも『好きだ』とか『愛してる』とか言われていなかった事に初めて気付いた。
 急に恥ずかしくなってボクは俯いてしまった。
 「その…強姦とか訴えられても仕方ないし、そうして貰っても…」
 俯いたボクを松田さんは力一杯誤解したみたいだった。
 「今までこんなに理性がぶっ飛んだ事なかったもんだから…悪い」
 松田さんはベットの下でいきなり土下座した。
 「済まなかった。こんな事で許されるとは思わないが、取り合えず謝らせてくれ!!」
 「くすくす…」
 「…アトム?」
 「バカだなあ。何マジになってるんですか?松田さんらしくない」
 ボクはまだちゃんと笑える。ほら…
 「こんなのいつも通り、一晩限りのお遊びでしょ?ボクも気にしてませんから…」
 松田さんににっこりと微笑んだ。ついムラムラだったのなら冗談にしてしまえばいい。笑って終わりにすればいい。
 なのに松田さんはボクの頬にそっと触れた。
 「嘘吐きアトム…涙が出てるぞ」
 鼻の奥がつんと痛んだ。同時に涙が洪水のように溢れ出た。ボクは慌てて唇を噛み締めたが遅かった。
 「ボクはそんな物?」
 「?」
 「ボクは松田さんにとってそんな物なの?」
 一度堰を切ってしまった涙と感情は容易には止まってくれなかった。
 「…すきなのに…」
 泣きながら『何でボクは松田さんの前で泣かなくてはいけないのだろう』と自分自身を呪った。
 なのに松田さんはそんなボクを、ぎゅうっと抱き締めて口付けてきた。
 「俺は好きになった女しか抱かないぞ」
 長いキスの後にぽっつりと言って、もう一度もっと深くキスをした。
 体の節々が痛かったけれど気にならなかった。
爬虫類と違う、柔らかくて暖かい肌に触れて、初めて心地よいと感じた初めての夜だった。


            ・・・・・・・・・・・OFF



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