演劇部の発表会まで、あとわずかの夏休みのある日。
啓介と顔をあわせないように運動部のグラウンドとは離れた場所で休憩する詩織。
いつもだったら、グラウンドの近くのベンチで啓介といっしょに休憩するのだが、
あの陵辱の日以来、詩織は啓介をさけるようにしていた。
「もう何日...啓くんの顔、見てないかな...」
詩織は以前よりも、啓介のことを考えるようになっていた。
ほんの短い時間でも、啓介の顔が頭をよぎるようになっていた。
そう思いながらふと視線を上げると、詩織にとっては懐かしいその姿があった。
「け...啓くん...?」
太陽を背に、あのいつも見ていた啓介の広い肩幅があった。
詩織がまぶしそうな顔をしたのは、太陽のせいだけではなかった。
その広い肩幅は、詩織の隣にどっしりと腰をおろす。
「演劇部のほう、どうだ?」
空を見上げながら、啓介は言った。
「えっ...あっ...うっ...うん」
まるで初めて会う男の人と話すように、緊張に強張りながら、なんとかそれだけ答える。
「大田から聞いたよ」
詩織の顔を見ずに、啓介は言う。
「えっ.....!?」
その一言に、詩織の体は凍りついたようになる。
一体、大田から、何を聞いたのか。
もし、あの日の出来事を啓介に知られたら、生きていけない。
自分の体から出たものとは思えないほど冷たい汗が、背筋をつたった。
「ごめんな...俺、早とちりしてた」
詩織の方を見た啓介は、いつもの、あたたかい日差しのような笑顔を見せた。
詩織の大好きな、啓介の笑顔。笑うとこぼれる白い歯も、あの時のままだった。
「え.....」
混乱する詩織に、啓介は続けた。
「あの日...詩織と大田がラブホテルに入るのを見て...ショックだった。くやしかった」
「あの後、何をやっても詩織のことが気になって、何も手につかなかった。
初めてだよ。俺がトレーニングをしなかった日は」
「苦しかった。
でも.....詩織はもっと、苦しかったんだよな」
「大田から聞いたよ。俺に自分の気持ちを気づかせるために、ひと芝居打ったって」
「ごめんな。俺、詩織の気持ち、ずっと気付かなかった」
「俺は...詩織とは小さい頃からずっと一緒にいたから...
詩織が側にいるのが当たり前だって、思ってたんだろうな」
「でも...俺はやっとわかった...なくしそうになって、やっと...」
向き直り、真剣なまなざしで詩織を見る。
「俺は詩織が好きだ」
いつも詩織が夢みていた台詞を、啓介は口にした。
「えっ...あっ...」
詩織は抱き寄せられる。広い肩幅に包み込まれるように。
「俺と、ずっといっしょにいてくれ」
「け.....啓くん.....」
いままで流した涙とは、明らかに違う涙が、自然と詩織の瞳からこぼれ落ちる。
広い胸板に、身をあずける詩織。
啓介の汗の匂い。それすらも愛しむように、詩織は身を寄せる。
そっと、頭に啓介の手が触れ、撫でられる。
「啓くん.....」
一生のお願いを使えるとするならば、詩織は間違いなく「ずっとこのままでいたい」と答えるだろう。
それほど啓介の抱擁は温かく、詩織を包み込んでいた。
胸板を通して聴こえる、啓介の心臓の音。
トクン...トクンと、それは詩織に心地よいリズムを与えていた。
「詩織.....詩織?」
しばらくして、啓介が心配そうに詩織をのぞきこむ。
そこには、安らかな寝息をたてる詩織の姿があった。
ふと、目を覚ます詩織。
がばっと起き上がり、あたりをきょろきょろと見まわす。
白い天井、ベッド、カーテン.....そこは、保健室だった。
「け...啓くん!? 啓くん!?」
まるで親とはぐれた迷子のように、泣きそうな顔をしてあたりを見まわす。
その声にカーテンが少しだけ開き、きらめき高校の保健教諭の顔がのぞく。
「あらあら...お目覚めね」
いま自分がおかれている状況を理解しようとせず、すがるような目で詩織は言う。
「先生...あ、あのっ、啓くんは!?」
この教諭も詩織のことはよく知っていたが、
こんなに取り乱した詩織を見るのは初めてだった。
「そ、そんな泣きそうな顔しないで...麻生くんなら練習に戻ったわよ」
いつも落ちついており、優雅ささえ漂わせる詩織だったが、今はそんな雰囲気はかけらも感じさせなかった。
あまりのギャップに内心驚きながらも、詩織をあわててなだめる。
「え...」
きょとんとする詩織。
「あなたが寝ちゃったから麻生くん、ここまであなたを届けてくれたのよ」
ウインクをしながら続ける。
「あなたがあんまり気持ち良さそうに寝てたから、起こすのが気の毒になったんですって」
詩織の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「でもほんと、子供みたいに安らかな寝顔だったわよ、あなた」
陵辱の日以来、啓介のことを思って枕を濡らす日が続いた詩織は、慢性的に睡眠不足だった。
詩織にとって、啓介の胸はまるで赤子のゆりかごのように安らかなものだったのだ。
その日の夜、お互いの部屋ごしに啓介といっぱいおしゃべりをした。
そして、デートの約束をした。
次の日。
演劇部の練習のため、朝早くから学校へと向かう詩織。
その途中で、詩織の顔を曇らせる人物が現れた。
「麻生とはヨリが戻ったって顔してるな」
大田は開口一番、そう言った。
「大田くん...」
なぜ、啓介にひと芝居うったなどと言ってくれたのか、
「詩織がボクの言う通りに未緒に薬を運んでくれたからね。その御褒美さ」
詩織が聞こうと口を開く前に、大田は見透かすように答えた。
「明日、啓介とデートするんだろ?」
デートのことは、まだ誰にも言っていない。
「えっ、どうしてそれを...?」
詩織は大田と話していると、まるで魔法使いか超能力者とでも話しているような錯覚をおぼえるときがある。
「ボクは詩織のことならなんでもわかるのさ」
それすらも見透かすように、大田はふんと鼻を鳴らした。
「はい、じゃあこれ」
大田はポケットからなにやら取りだし、詩織の手を取り、その手に握らせた。
詩織の手の中には、ぶっきらぼうな透明の包み紙にはいった飴玉と、
小さなコブが二つ重なりあったような消しゴムみたいなものがふたつ。
「何.....これ?」
詩織の表情が、少し翳りを見せる。
「デートの最中、その飴玉を舐めるんだ」
「えっ...?」
話が見えない。
「で、その消しゴムみたいなやつはデート中、詩織のオマンコと尻の穴に入れとくんだ」
話が見えた。
まるでそれをするのが当然のことのように、大田は説明する。
「嫌だなんて言わないよね? 言ったら今すぐにでも啓介に本当のことを言うからね」
詩織は啓介に嘘をつきたくはなかったが、本当のことをばらされてしまうと啓介に会えなくなってしまう。
詩織はそれだけは何としても避けなくてはならなかった。
大田のくれた、おそらくは忌まわしきプレゼントを、ぐっ、と握りしめる。
「わかったわ.....」
意を決したように詩織は答える。
大田との取引は、いつも詩織にとって選択肢の無いものばかりであった。
特に、この事に関しては。
「飴玉はね、デート中ずっと舐めててね。途中で噛んで呑みこんだりしちゃダメだよ
それと、その消しゴムみたいなのはコブが大きい方を上にして入れてね」
かるく咳払いをしたあと、大田は続ける。
「あと...飴玉を舐めてるふりしたり、オマンコと尻に入れてるふりをして
ボクとの約束をやぶった場合.....」
詩織にとって最も聞きたくないことを大田は続ける。
「明日の11時15分、駅前のオーロラスクリーンに詩織の処女喪失ビデオが流れるからね」
明日、11時に啓介が家に迎えにくる。
そしてまず、駅前の映画館で映画を見る。
詩織の住む街の駅の前の通りには、新宿のアルタ前を彷彿とさせる巨大なオーロラスクリーンがあり、
通行人の目をひいている。
そして、詩織の家からそこに行くまで、15分。
詩織の顔が青みを帯びてくる。
「そうなるとどうなるか、頭のいい詩織ならすぐわかるよね」
教えたつもりはないが、大田はふたりのデートの開始時間、そして行く先まで知り尽くしている。
でなければ、こんなことを言うわけがない。
そんな相手を誤魔化すことなど、不可能に近い。
大田は釘を刺す意味で、そんなことを言ったのだ。
「じゃあね、明日はがんばってね」
大田はうつむいたままおし黙った詩織に背を向ける。
詩織の晴れた心に、すこしづつ暗雲がたちこめていた。
次の日。
大田にあんな約束をさせられたものの、啓介のデートが楽しみであることには変わりはなかった。
うれしさのまりほとんど眠れなかった。
朝も啓介が迎えにくる何時間も前に起きて、念入りに身支度を始める。
時間をかけて、丹念にシャワーを浴び、普段はほとんどしない薄化粧をし、とっておきの下着を身につける。
特に啓介とのデートで何があるわけでもないのだが、啓介の前では特に綺麗でいたかった。
時間をかけて詩織は準備を進めていたが、その中でももっとも時間がかかったのが、
大田からもらったピンク色の消しゴムのような物体を挿入する瞬間だった。
詩織は何度も躊躇し、何度も手を戻しながら、なんとか自分の体内にその忌まわしき物体を招き入れた。
その消しゴムのような物体は、まるで大田の指先のように嫌悪にあふれる存在感を詩織に残した。
そして、クローゼットの奥から、前の誕生日に啓介からもらったワンピースを取り出す。
男たちの精液の染みこんだこのワンピースを、詩織は何度捨ててしまおうかと思った。
だが、啓介のプレゼントを、捨てることはできなかった。
陵辱の日の夜、止まらない涙のままでワンピースを何度も何度も手洗いした。
男たちの精液を全て落とすように、何度も、何度も。
また、このワンピースを着る日が来るなんて、詩織は思いもしなかった。
そのワンピースは、染みこむほど男たちの黄ばんだ液を浴びたとは思えないくらい、
一点の曇りもなく白く輝いていた。
詩織は頭をふるふると振って忌まわしき思い出を振り払う。
頭を切り換え、ワンピースに袖を通す。
ワンピース同様、あれほど男たちに汚されたとは思えないほど、詩織は清潔感にあふれていた。
それは、迎えにきた啓介も同じ気持ちだったであろう。
純白のワンピースに身を包んだ詩織を、まるで天使でも見るかのような目で見る。
「綺麗だよ...詩織」
言ってからはにかむ啓介。
「あ...ありがとう」
その顔を見て、詩織の心がぱっと明るくなる。
いつもとは違う、新鮮な気持ちでふたりは歩き出した。
歩きながら飴玉を舐める行為は、詩織にとっては「はしたない」部類に入る行為だった。
詩織は口の中にある飴玉を啓介に悟られないようにしながらおしゃべりをする。
駅前に着き、オーロラビジョンの前を通過するとき、詩織の中に侵入したものが、僅かの間、震えた。
「あっ...!」
詩織はいままで忘れていたものを思いだし、立ち止まる。
絶妙なタイミングで震え出した、詩織の中のもの。
それは、詩織のデートを常に監視しているという、大田の遠方からの合図でもあった。
あたりをきょろきょろと見まわし、それらしい姿を探す。
「どうした...詩織?」
急に立ち止まり不安げな表情になった詩織に、啓介は声をかける。
「え...あっ...ごめんなさい、なんでもないの」
その声に、ふと我にかえる詩織。
オーロラビジョンを見上げると、上に掲げてある電光掲示板の時計は11時15分をカウントしていた。
もし、大田の約束を破っていたらあのオーロラビジョンにはおぞましい映像が公開されていたのだ。
そう考えるだけで、詩織はぞっとなった。
「なんだ? 気になるテレビでもやってんのか?」
啓介もつられてオーロラビジョンを見上げる。
「ううん、なんでもないの。行きましょ」
顔を戻し、努めて明るく振舞う詩織。
見えない鎖に繋がれた詩織の、デートが始まろうとしていた。
映画館。
今話題のラブロマンス物を選んで入ったふたり。
上映中、ふと詩織の方を見る啓介。
詩織は座ったまま腰をくねらせ、背筋を反らしてあごをあげたり、そうかと思うと前のめりになっていきなり顔を伏せたり、
時折「んんっ」とくぐもった声をあげながら、ビクン、ビクンと腰を浮かせて跳ねたりしていた。
その詩織の顔は、眉間にしわをよせ、もどかしそうな、何かをこらえるような表情だった。
肘掛の上で繋いだふたりの手から、じっとりと汗をかいていることを啓介に伝える。
時折、きゅっとその手を握りしめてくる。
もちろん、詩織の中で暴れまわるふたつのものが詩織をそうさせているのだが、
事情を知らない啓介は不思議そうな顔をしていた。
定期的に詩織を責めあげるふたつのもののおかげで、詩織は映画どころではなかった。
映画が終わるまで、詩織はふたつの物体に何度か気をやらされた。
喫茶店。
運ばれてきたアイスコーヒーにミルクを入れ、詩織に小さなポットを差し出しながら啓介は言った。
「詩織、ミルクは入れるか?」
「あっ、あ、ありがとう」
詩織は急に背中に虫でもはいったように、もどかしそうに背中をくねくねとさせる。
「なあ、映画の最中どうしたんだ? 気分でも悪かったのか?」
「えっ...なんでも...あんっ...ないの」
しゃべっている途中で詩織は急に泣きそうな顔になった。ますます不思議そうな顔をする啓介。
喫茶店の外で、ふたりの唇の動きから会話の内容を読んで詩織の中に入ったローターのスイッチを巧みにオン、オフする大田。
必死になって平静を装う詩織だったが、リモコンスイッチを入れると覿面に反応を見せてくれる。
それはまるで大田の持つスイッチと詩織の表情が連動しているかのようであった。
こんな大勢の人がいる前で、詩織ほどの美少女をスイッチひとつでいいように嬲れる快感に、大田は夢中になった。
「そういえば、演劇部の発表会、近いんだろ? 大丈夫なのか?」
「あ、うん、私は今回は...うんっ...ざ、雑用係だから」
しゃべっている途中、おかしなところでつっかかる詩織。
「えっ、今回は出ないのか?」
「あうんっ...うん...今回のヒロインは...うくんっ...きっ、如月さんなの」
しゃべっている途中、体をよじらせる詩織。
「如月...? ああ、あの眼鏡かけた子か」
「うん、私なんかより...あうっ...え、演技ずっとうまいし」
しゃべっている途中、何度か体をビクン、ビクンと震わせる詩織。
「詩織も演技うまいだろ」
「んっ! そっ、そうかな...?」
泣きそうな顔なのに、眉毛をハの字にして必死に笑顔をつくる詩織。
「残念だな...詩織が出るんだったら見に行こうかと思ってたのに」
「でも、如月さんが着る衣装...あんっ...わ、私がデザインしたの...んううっ」
最後の言葉がうめき声のようになる。
「へえ、そうなんだ、たしか、ロミオとジュリエットだったよな。じゃあドレスなんだ」
「あっ! う、ううんっ...うん、そうなの。かわいいドレスよ」
だんだんと顔が上気してくる詩織。
「詩織がデザインしたドレスかぁ...どんなのなんだ?」
「えーっとね、あん! パ、パニエが入ってるドレスなの」
しゃべってる途中で体をひときわ大きく、ビクンと震わせる詩織。
「ふーん、綺麗なんだろうな」
「いつか着てみたいなって気持ちをこめてデザインしたの...はんんんっ...んうっ」
しゃべってる途中で色っぽく背筋を反らし、あごを突き出す詩織。
「詩織の着てみたいドレス? ウエディングドレスみたいなのか?」
「えっ...あぁん、そっ、そんな...あぁん...かっ、感じかな」
しゃべっている途中、肩をくいっ、くいっ、とよじらせる詩織。
「へえ...色は何色なんだ?」
「しっ...し、白なの...んっ」
だんだんと涙ぐんでくる詩織。顔はもう真っ赤になっている。
「じゃあそのウエディングドレスを着るのが夢なんだな詩織は」
「はぁ...ううんっ! はぁ...うんんんっ! はぁ...はぁ..」
啓介の問いには答えずに、身をちぢこまらせテーブルに頭をこすりつけるほど頭をさげる詩織。
「おい、詩織、気分でも悪いのか?」
見かねた啓介は心配そうな表情で詩織の手を握りながら聞く。
「はぁ...はぁ...だ、大丈夫、はぁ...き、気にしないで...はぁ...はぁ...」
まるで熱病患者のような呼吸になってくる詩織。
「でも、顔真っ赤だぞ? 熱でもあるんじゃないのか?」
「ほ、ほんとに、ホントに大丈夫なのああああああんっ!」
詩織の最後はほどんど言葉にならず、語尾が急に上がる。
きゅっと力いっぱい啓介の手を握りしめる。
詩織の声に何事かと周りにいる人達の視線が集中する。
黙ったままうつむき、ピクン、ピクンと震える詩織。
「おい、詩織!?」
心配そうにのぞきこむ啓介。
少しして顔をあげる詩織。
「だ、大丈夫。心配かけてごめんなさい」
その顔は笑顔だったが、泣きべそをかいていた。
「(イッたみたいだな...少し休ませてやるか)」
大田は満足したようにリモコンをポケットにしまった。
もうこの時点で、詩織の真新しいショーツは水に濡れたようにぐっしょりとなっていた。
それから喫茶店を出て、ウインドウショッピングを楽しむふたり。
あれほど詩織の中を蹂躙したふたつのローターは、すっかりおとなしくなっていた。
詩織は啓介との楽しいひとときの中で、その動かなくなったふたつの存在を忘れようとしていた。
しかし、詩織は気づいていなかった。
大田の渡したピンクローターは振動するたびに少しづつ上にあがるような機構になっており、
映画館と喫茶店で詩織を嬲ったふたつのものは暴れながら詩織の奥を進んでいき、
今にも詩織の中枢を突かんとしていることを。
夕暮れの公園。
オレンジ色の空を瞳に落としながら、ふたりは歩いていた。
談笑しながら、歩いていたふたりは、ふと立ち止まる。
いままで話に夢中で気づかなかったが、まわりは抱擁をかわすカップルばかりであった。
熱い抱擁を見せつけられ、凍りついたように動かなくなるふたり。
やがて、詩織は上目づかいで啓介を見上げる。その頬はわずかに上気している。
その顔に、啓介は意を決したように詩織に手をのばす。
「あっ...」
詩織の肩が、しっかりと抱かれる。
啓介の真剣なまなざしに、射抜かれたように動けない詩織。
「啓くん...」
潤んだ瞳で、啓介を見る詩織。
詩織の体が、ぐいっと啓介に引き寄せられる。啓介の厚い胸板に飛び込む詩織。
その衝撃で、前歯にコツンと飴玉が当り、真っ二つに割れた。
その真っ二つに割れた飴玉から、どろりとした液体がこぼれ、詩織の舌に触れる。
「!」
その味を感じたとたん、咄嗟に目をつぶってしまう詩織。
忘れたくても忘れられない忌まわしき味、精液の味。
いや、味だけではない、飴玉からこぼれた液体は他ならぬ精液であった。
まるで詩織の口内を蹂躙するかのように口いっぱいにその存在を知らしめる。
詩織が目を開けると、肩を抱いた啓介の唇が迫ってきていた。
「!!」
詩織は声をあげずにビクリとなる。
詩織が目を閉じたのを、啓介はキスを求めているサインだと勘違いしたのだ。
ゆっくりと迫ってくる啓介の顔。
しかし次の瞬間、詩織の中に入れられたふたつのものが暴れだした。
「んっ!」
詩織もすっかりその存在を忘れていたものが急に活動を開始した。
声を必死にこらえようとするが、この時ばかりはくぐもった声をあげてしまう。
思わず吹いて口の中のものを吐きだしそうになってしまう。
そんなことをすれば啓介の顔に精液をぶちまけてしまう事になる。それだけは、と必死でこらえる。
詩織の唇に、啓介の唇が触れた。
本来ならば涙を流してしまいたくなるほど嬉しい出来事なのだが、
口の中の精液と振動するもののせいで詩織はそれどころではなかった。
「!!!」
啓介の舌が、詩織の唇のを割って入ろうとしてきている。
この口の中のものがなければ、詩織は少し恥じらいながらも喜んでその舌を、自らの舌で迎え入れただろう。
だが、今そんなことをしたら口の中に精液があることがバレてしまう。
必死になって体をこわばらせ、唇をかたく結ぶ詩織。
間をおかず次々と詩織を襲う出来事に、詩織の頭はすっかり冷静さを欠いていた。
ぐいぐいと強引に割って入ろうとする啓介の舌を、詩織は必死に唇と歯でガードする。
本来は受け入れたくないものが、詩織の口と大事な部分に易々と入りこんで詩織を蹂躙し、
本来は受け入れたいものを、必死になって拒む。
やがて、振動音が聴こえてきそうなくらいの勢いで、詩織の中を蹂躙するふたつのものの速度が増した。
奥まで入りこんだものは小刻みに震え、詩織の子宮をお構いなしに何度も何度もノックする。
「んんんっ!」
耐えられなくなり、詩織は肩にかかった啓介の手をふりほどき、ハンカチで口を押さえて顔をそむけてしまう。
その瞬間、詩織の中で暴れまわっていたふたつのものが、嘘のようにピタリと大人しくなる。
しかし、自分のした行為にすぐに後悔し、啓介の顔を見る。
これではまるで、啓介のキスに気分が悪くなったみたいではないか。
啓介は明らかに失望したような顔をしている。
「ご...ごめんなさい!」
あわてて詩織は啓介の体にすがりつくようにして謝る。
「いや...いいんだ。あせった俺が悪いんだ」
がっかりしたような啓介の顔。
「ち、違うの!」
啓介は少しも悪くない。少しも。
「ごめんな、詩織は嫌がってたのに無理矢理しちゃって」
再びやさしい啓介の表情が戻ってくる。
「そ、そんな...」
私は嫌じゃない、ちっとも嫌じゃない。
しかし、なんと言って弁解すればいいのか、わからない。
「そろそろ帰ろうか」
啓介は気をとりなおした様子で、いつもの笑顔を向ける。
「うん.....」
詩織は視線を合わせず、ただうつむいて返事をするしかなかった。
「医用蛭04」の続きです。
掲示板にも書いたとおり、仕事先で書いたんですが、忘れてきちゃいました。
でも更新できないのもなんなので、改めて思いだしながら書いたつもりなんですが、
いつもの何も考えない手法のせいで、まるで違う話の内容になってしまいました。
あれ? 詩織ちゃんと愛ちゃんが酷い目に会う話のはずだったのに、なんでか啓介くんとデートしてるよ!?
我ながらびっくりしました。
まあ仕事先に忘れてきた話はいずれ掲載いたします。
ローターを入れてお散歩という内容は以前「ふたりH」の「散歩」で書きましたが、
あの出来に全く納得がいかなかったので今回再挑戦してみました。どうですか?
でもこの内容、小説「続放課後マニアクラブ」にも似たようなシチュエーションがありましたな。
似てるけど、嫌らしさは全然こっちの方が下ですな。