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チョコレートみたい 第二話
コギト=エラムス/文


 「カレーできたよ〜」

 直樹が風呂からあがってしばらくして、キッチンから雪乃の明るい声が聞えた。

 

 直樹が食卓に向かうと、そこにはカレーのほかにサラダ、煮付けなどが置かれていた。

 なぜか、直樹のカレーだけはトンカツが盛られていた。

 

 「えへへ、直くんカツカレーが好きなんだよね? だからカツカレーにしといたよ」

 まるで自分のことのように嬉しそうに言う雪乃。

 ネコのイラストが刺繍されたかわいらしいエプロンがよく似合っていた。

 

 「お前はいいのか?」

 「私、そんなに食べれないもん」

 「そうか」

 

 直樹は椅子に座ると、いただきますも言わずにカレーを食べはじめた。

 

 「どお? 美味しい?」

 身を乗り出さんばかりに顔を突き出して聞く雪乃。

 

 正直な所、直樹がカレー好きになったのは雪乃の作るカレーが原因だった。

 それほどまでに、雪乃のカレーは直樹の好みに合っていたのだ。

 

 「まぁまぁだな」

 だが正直には言わない直樹。

 ぶっきらぼうに答えてスプーンを口に運ぶ。

 

 「よかったぁ...」

 ほっとした表情の雪乃。

 エプロンを外し、椅子に座ると、

 「いただきます」と言ってカレーを食べはじめた。

 

 カレーを食べる雪乃をちらりと見る直樹。

 なぜか雪乃の額には玉のような汗がいっぱい浮かんでいる。

 「......汗いっぱいかいてるな? 大丈夫か?」

 

 「そ、そうっ? そんなことないよっ」

 あわてておしぼりで額を拭う雪乃。

 

 雪乃の変化の原因にやっと気づいた。

 「...嘘つけ、唇がタラコみてーになってんじゃねーか」

 

 「えっ?」

 

 「...まったく、辛いのが苦手なくせに無理してんじゃねーよ」

 

 「えっ、無理なんかしてないよ」

 きょとんとした表情の雪乃。

 

 ...そうか。

 雪乃にとってはこれが当たり前だったんだ。

 俺に気遣うということ自体、当たり前にしてきたことだったんだ。

 それに俺が気づいたというだけで、雪乃はなんにも変わっちゃいない。

 

 「次からはお子様カレーにしとけよ」

 普段は素直な雪乃も、この時ばかりは不服そうな顔をしていた。

 

 「だって...直くんの好きなもの...私だって好きになりたいんだもん...」

 普通の子供の兄弟というのは、年下が年上の行為を真似たがるものだ。

 だがこの姉弟においては逆で、子供の頃から雪乃はいつも直樹の真似をしたがった。

 

 「まったくお前は...ガキの頃から変わってねぇなあ.....」

 直樹があきれたように言うと、

 「うん...」

 雪乃は、こくりと頷いた。

 

 . . . . .

 

 「ふぁ〜あ」

 歯でも磨いて寝ようかと、洗面所に向かう直樹。

 

 洗面所の鏡を覗いていると、浴室からシャワーの流れる音が聴こえてきた。

 

 顔をあげ、浴室の扉を見る直樹。

 今は、両親は旅行に行っていて留守だ。

 従って、風呂に入っているのは姉である雪乃ということになる。

 

 くもりガラスの向こうに、小さいけれどしなやかな肢体が見える。

 

 「.....」

 直樹は無言のまま入り口に近づき、気づかれないように少しだけ浴室の扉を開いた。

 

 たちこめる湯気の向こうに、姉の姿はあった。

 鼻歌を歌いながら、楽しそうにシャワーを浴びている。

 

 小さくて、しなやかなその身体。

 まるで、妖精の水遊びのようであった。

 

 くるりと後ろを向いて、背中を洗う雪乃。前面が直樹の前に晒される。

 

 つやつやとした美しさの髪。水滴がまるで朝露のようについて、キラキラ輝いている。

 まだあどけなさを残す顔。

 乳房というにはおこがましいほど僅かに膨らんだふたつの隆起。

 奥までよく掃除された慎ましやかなヘソ。

 ぜい肉の全くついていない引き締まった腰。

 小ぶりだが、見るからに柔らかさの想像できる臀部。

 そして...

 

 「えっ...?」

 直樹は我が目を疑った。

 「は...生えて...ない?」

 

 湯気でよく見えないが、雪乃の股間はつるんと何も生えておらず、幼そうな割れ目があるだけだった。

 直樹は年齢の割にそこその女性経験があった。その相手は直樹より年上もいれば、年下もいた。

 だが、どの相手の股間にも黒々とした若草があった。

 

 ギンッ! と音をたてんばかりに、直樹の男性自身が反応した。

 だがそれも気づかず、ただただ目に焼き付けるように雪乃の股間を見つめる。

 

 やがて、雪乃はシャワーを止めると、湯船にほっそりとした足をつけた。

 

 ちゃぷん...と小さな波紋をたてて、雪乃の身体が湯船に沈む。

 

 だが、すぐに、

 「直くんに...直くんにキスされちゃった...」

 とつぶやいた後、

 恥ずかしそうに俯き、顔の半分くらいまでを湯船に沈め、ぷくぷく口から泡をたてていた。

 

 「(雪乃...)」

 弟からのキスであんな仕草を見せる雪乃。直樹は素直に「かわいい」と思った。

 

 プルルルルル...

 

 電話のベルに、ハッと我にかえる直樹。

 「(なんだよ...)」

 いい雰囲気を邪魔され、心の中で舌打ちすると、廊下の電話へと歩いていく。

 

 受話器を取り、

 「もしもし?」

 いかにも不機嫌そうな声で応対する。

 

 「直樹? あたし、あたし」

 相手は、今つきあっている女だった。

 逆ナンパで知り合ったOLだ。

 付き合っているとはいえ、自分のことをどうせ遊びくらいにしか思ってない女だ。

 

 「...なんだよ?」

 

 「これから出てこない?」

 あたりが賑やかだ。きっと酒でも飲んでいるんだろう。

 

 「いまそんな気分じゃねーんだ、じゃあな」

 今はこの女と話す気分じゃない。

 直樹はさっさと受話器を置こうとする。

 

 受話器を置こうとした瞬間、

 「あっ、ちょっと直樹!?」

 と、驚いたような声が聞えたが、かまわず受話器を置いた。

 

 あの女のことだから、また電話をかけてくる。

 直樹は電話機のモジュラージャックを乱暴に引き抜く。

 

 「せっかくいい所だったのによ...」

 吐き捨てるように言った後、直樹はハッとなった。

 

 「(いい所だった...?)」

 

 「なんであんな幼児体系の女の風呂を覗かなきゃなんねーんだ」

 言葉ではそう言っているものの、直樹の男性自身は正直で、スウェットの股間が盛り上がり、

 さながらテントのようになっていた。

 

 雑念を振り払い、再び洗面所に向かう。

 今度こそ歯を磨いて寝ないと。

 

 浴室の扉を閉めてこなかったので、少し空いた隙間から湯船が見える。

 ちらりと湯船の雪乃を一瞥すると、浴槽にもたれたままぐったりとしている。

 「.....?」

 不審に思い、声をかけてみる。

 「雪乃」

 だが、返事はなく、ぐったりしたままだ。

 「まさか!」

 直樹はあわてて浴室に転がりこんだ。

 

 直樹は風呂の中からのぼせた雪乃を救出すると、バスタオルだけを巻いて雪乃の部屋に運びこむ。

 雪乃の身体の重さはほとんどなかった。

 部屋に入ってバスタオルのままベッドに寝かせる。

 

 「うう...ん」

 赤く火照った顔の雪乃。時折、うなされたような声をあげる。

 まるで熱にうなされているようなその顔は、あどけない顔ながらも独特の色っぽさがあった。

 

 直樹はごくり、と唾を飲み込んでその顔を見る。

 

 「うう...ん」

 ころりと小さな身体が寝返ると、巻いていたバスタオルがはらりと外れ、一糸まとわぬ姿を晒した。

 「雪乃...」

 いけないとは思いつつも、つい食い入るようにその肢体に見入る直樹。

 

 その身体は高校生とは思えないほど未熟で、直樹のクラスメートの女の子のほうがまだスタイルが良かった。

 悲しいほど凹凸の少ないその身体。

 

 改めて股間を確認した直樹は、驚きの声をあげた。

 「ほ...本当に生えてない...」

 つるんとした卵に、一本筋が入っているだけのような雪乃の股間。

 

 直樹は、いつになく昂ぶるのを感じた。

 

 震える手で、その股間の割れ目に手を這わせる。

 ぴったりとした割れ目に、少しだけ指をいれ、筋に沿ってツーッと撫でる。

 

 「ん...なお...くん...」

 雪乃の声に一瞬ドキッとして手をひっこめるが、ただの寝言だった。

 

 再び手を這わせ、割れ目を押し広げてその中に隠されたものを見るべく、筋に指を添える。

 

 「雪乃.....」

 直樹の雄の情欲は、姉弟の禁忌をも乗り越えようとしていた。

 

 姉のくせに子供の頃から泣き虫で、いつも俺の背中に隠れていた雪乃。

 辛いものがだめなくせに、俺に合わせてくれる雪乃。

 小さな身体のくせにお姉さんぶって、いつも俺のことを心配してくれる雪乃。

 

 血の繋がった姉の、その女の中枢を見てしまったら、ふたりの関係はどうなってしまうのか。

 考えると少し怖くなったが、雄の情欲は血の繋がった姉を、ひとりの少女として認めていた。

 

 「雪乃.....」

 決意をしたように姉の名前を呼んで、ぐっ、と指に力を入れる。

 

 ぱく...

 遂に、直樹の指は雪乃の割れ目を押し広げた。

 その奥には、秘肉の薄い、ピンク色の女性自身があった。

 何者からも触れられたことがないとわかる、ピンクパールのみずみずしい色。

 まるで、禁断の聖域のような美しさだった。

 

 何度も生唾を飲み込みながら、その神聖なまでの美しさの女性自身を、瞬きも惜しむほどに見つめる直樹。

 

 無意識のうちに昂ぶった男性自身を鎮めるために、手でしごきあげるのも無理のない話だった。

 

 スウェットから取り出した男性自身を、最初からトップスピードでごしごしとしごきあげた。

 指で押し広げた女性自身を見ながら、空いた手で男性自身を慰める行為。

 

 「雪乃...ううっ...雪乃...っ!」

 はぁはぁと飢えた野良犬のように呼吸が荒くなってくる。

 

 ふと、ベッドの小棚の上に、かわいらしいケースに入ったリボンが置いてあるのが目にはいった。

 雪乃はポニーテールをまとめるために、たくさんのリボンを持っている。そのうちのひとつだ。

 

 「雪乃...っ!」

 直樹はケースに入ったリボンをわし掴みにし、それを自らのペニスに巻きつけた。

 

 自らのグロテスクなペニスに巻きつくかわいらしいリボン。

 これは、雪乃のあのサラサラの髪の毛を束ねていたものだ。

 

 「うう....」

 そう考えるだけで、血液が逆流するほどの異常な昂ぶりを覚えた。

 手でペニスをしごきあげるたびに、繊維の擦れる音が部屋に響く。

 

 しゅっ しゅっ しゅっ しゅっ

 「うぐっ! うっ! 雪乃っ!! 雪乃っ!!」

 直樹は何度も姉の名前を呼んで、果てた。

 

 直樹の手と、雪乃のリボンにべっとりと付着した精液は、いままでどんな女を抱いた時よりも多かった。

 

 「.....」

 獣欲のエキスをたっぷりと吐き出し、急に冷静になる直樹。

 

 電話の呼び出しに応じていれば、あの女ともセックスしていただろう。

 だがそれよりも、雪乃を思ってした自慰の方が、何倍も気持ちよかった。

 

 「なんで...だよ...なんで...こんな女に...」

 

 その事実が、直樹をより困惑させるのだった。

 

 

 


解説

 「チョコレートみたい 第一話」の続きです。

 今回は純愛じゃないですが、一応★ひとつということにしておきました。

 


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