カチャッ...
「なぁに? ママに電話?」
ベッドの上にある棚に受話器を戻した直樹を、女はからかうように言った。
「まぁ、そんなとこだな」
電話の時と同じ、ぶっきらぼうな口調で返す。
親が家にいる時は外泊でも電話しない直樹だったが、
雪乃とふたりの時は遅くなる時でも必ず電話を入れていた。
そうしないと雪乃は夕食も食べず、寝ずに直樹の帰りをずっと待っているからだ。
直樹の返事を確認した女は、先ほどまで舐めあげていたものに再び舌を這わせた。
「んっ...ぴちゃっ...んむっ」
再開された舌による愛撫によって、垂直にそそり立つ直樹の剛直がぴくぴくと震える。
女はそのサラサラの黒髪を何度もかきあげながら、男の弱点ともいえるべき箇所を執拗に責める。
「んぷっ...んふっ...んんっ」
念入りに血管の浮き出た裏筋を舌でなぞり、そのままカリ首をチロチロと刺激する。
女の卓越した舌技にも眉ひとつ動かさず、じっとその様子を見つめる直樹。
それでも先走り汁は尿道からこんこんと溢れさせており、女はその全てを舌ですくって飲み下す。
「あ、そうだ」
女は途中でぷはっ、と剛直から口を離し、ソファに置いていたハンドバッグの中から
リボンに包まれた小さな箱を取り出した。
「はい、チョコレート」
ベッドの上の直樹に投げられた箱は、ぽん、と直樹の膝の上に落ちる。
「ま、あんだけ貰ってりゃいらないかもしれないけど」
そのハンドバッグの横にある紙袋を見ながら皮肉っぽく言う。
「.....」
直樹はその箱をじっと見つめた。
今日は朝からチョコレート責めだった。
クラスメートや下級生、はたまた上級生や大学生までが顔を朱に染めながら、
直樹にチョコレートを手渡していった。
だが...その度に直樹は、女性たちに雪乃の顔をだぶらせていた。
毎年...雪乃は手づくりチョコレートをくれる。
きっと今日も、チョコレートを作って自分の帰りを待っていたに違いない。
「.....」
なおも無言で、その箱にかけられたリボンを解く。
それを見た女の眉が嬉しそうに上がる。
だが、直樹はリボンだけを手に残すと、電話機の横に箱を置いた。
「.....なあ、これで髪を縛ってポニーテールにして、続きをやってくれないか」
手にしたリボンを女の方に向ける。
女はふっ...とがっかりしたようなため息をついた後、
「いいわよ...でも直樹にそんな趣味があったなんてね」
リボンを受け取った。
「んぷっ...んむっ...んっ」
そのつやつやとしたロングヘアをリボンで結び、ポニーテールにした女は、
再び直樹の剛直を口に含んでいた。
くぷくぷと口の中に自らの剛直が出入りするのが見え、その運動にあわせてポニーテールがぱたぱたと揺れる。
その様子に雪乃を連想してしまった直樹の全身に、さざ波のような快感が押し寄せる。
「(直くん...あたし、直くんのためだったら何だってできるよ...ほら)」
直樹の頭に響く、雪乃の声。
「ううう...っ」
その声で更に官能が高まり、眉をしかめ、気持良さそうにうめき声をあげる直樹。
今までは女の愛撫に表情ひとつ変えなかったのに、髪型を変えた時点でまるで童貞のような情けないうめき声をあげ、
今にも果ててしまいそうな表情になった直樹。
直樹の妄想の中では、今、自分の剛直を咥えているのは雪乃ということになっていた。
女は不思議に思ったが、自分の口技で感じてくれているものだと勘違いし、はりきって口を動かす。
「(こんなに大きくして...あたしの口の中...気持ちいい?)」
直樹の頭の中には、妄想で生み出された雪乃のやさしげな声が響いていた。
肉厚の唇をすぼめて全体を包み込むようにしながら、かぽっ、かぽっ、と空気を吸い込んで咥え、
限界まで咥えこんでから、亀頭を喉の奥でつまむようにして、きゅっきゅっと締めあげる。
直樹の長大な肉棒を全て口に収めることできないが、その状態からずずずと吸い込みながら口から肉鞘を離していく。
「(直くん...直くんのおちんちん...おっきくて口に入らないよぅ...)」
瞳の端に涙の粒を浮かべながらも、咥えきれていないものを健気に口に入れようとする雪乃。
「うくっ! くううっ! うっ!」
びくん!びくん! と身体を震わせ、前かがみになりながらあえぐ直樹。
ポニーテールになった女の後頭部を押さえつけ、より深く咥えさせようとする。
「んむっ!? むうぅ」
頭を押さえつけられ女は目を白黒させるが、それほどまでに求めてくれるのが嬉しくなり、抵抗せずに従ってしまう。
「(あたしのお口のなかにいっぱい出して...ね...おねがい...)」
もう直樹には女の苦しそうな声も耳に入らない。
聞えているのは雪乃が男根請いをする甘い声だけだ。
「(直くん.....直くん.....直くん.....直くん.....)」
直樹の頭の中には雪乃の声が、絶え間無く響いていた。
呼ばれるたびに脳がバチバチとスパークするような快感が襲ってくる。
あっという間にのぼりつめてしまう直樹。
その直後、キューンと玉袋が縮みあがるような強烈な射精感が続く。
「うくっ! うううっ! 雪乃っ! 雪乃っっっ!!」
大声で雪乃を呼び、女の後頭部を押さえつけたまま、口内めがけて腰をバスバスと打ち込み、
どぴゅっ! ずぴゅっ! びゅびゅっ!
そのまま喉元深くに挿し込んだまま、射精する。
「うぐっ! くううう! ううううっ!」
剛直がびくんびくんと脈動しながら精液を射出するのにあわせ、気持よさそうにうめく直樹。
「ぐぶっ! うぶっ! んぶぶっ!」
いきなり口内で爆ぜた剛直、その鈴口から勢いよく飛び出た精液がびちゃびちゃと喉にかかり、
思わず咳き込んでしまう女。
咥え込んだままけほけほと咳こみ、剛直と唇の間から、ごぶっ!、とあふれた精液が飛び出す。
勢いあまった精液が、鼻から鼻水のように、ぶっ!、と飛び出す。
「けふっ! くふっ! こほっ! こほっ!」
なんとか剛直を口から引き抜いた女は、苦しそうに胸を押さえて咳き込み続ける。
口の中に入った精液が、咳き込むたびにぼたぼたとシーツにこぼれる。
咳き込む女を尻目に、直樹は立ち上がり、服を着はじめた。
咳き込みが終わり、女が涙ぐんだ目で直樹を見る頃には、
「じゃあな」
直樹はそれだけ言って、部屋を後にしようとしていた。
バタン!
勢いよく扉が締められ、部屋にひとりとり残される女。
咳き込みもおさまり、やっと喋れるようになったのに...。
「ゆきのって...ゆきのって誰なのよおぉ...」
泣きそうな声をあげる。
ベッドの上にはリボンのみが解かれただけで、手つかずのチョコレートの箱が残されていた。
「馬鹿野郎ぉ...」
がっくりとうなだれる女。
鼻から出た精液が、とろり...と垂れ落ち、口の中に入る。
「直樹のバカヤローッ!!」
その精液を拭いもせず、扉に向かって枕を投げつけた。
当の直樹はというと、一刻も早く家に戻るべく夜の街を走っていた。
今日はあの女の所に泊まるつもりだったのに、直樹自身も当惑していた。
理由はわからないが、今は早く雪乃の顔が見たい、あのあたたかい笑顔に出迎えられたいと思っていた。
. . . . .
「...あ〜あ、せっかく直くんに食べてもらえそうなチョコが出来そうだったのに...」
目の前の食卓に広げられた悪戦苦闘の跡を、うらめしそうな目で見る雪乃。
今まで毎年手作りのチョコレートを直樹に渡してたのに...今年はそれも無理になった。
雪乃の想像の中で、喜んでチョコレートをほおばる直樹の顔が、がらがらと崩れ去った。
「はぁぁ...片付けよ」
うなだれたまま立ち上がり、後片付けを始めようとしたその時、
ガチャッ
玄関の扉を開く音が。
「!?...まさか...直くん?」
あわてて玄関へと駆け出す雪乃。
玄関で見たものは、もうあきらめていた直樹の姿だった。
「な...直くん!! お、おかえりなさいっっ!!」
感極まって叫んでしまう雪乃。
「...!?」
その絶叫にももちろんびっくりしたが、
直樹は迎えに出た雪乃を怪訝そうな視線で見ていた。
雪乃は鼻先にちょこんと溶けたチョコレートを乗せ、
身に付けたエプロンにも溶けたチョコレートの跡がペンキのようにべったりと付いている。
360度どこから見ても、今チョコレートを作ってますといういでたちの雪乃だったが、
それよりも直樹を戦慄させたのは、料理が上手な雪乃がこれほどの姿になるということは、
一体どんなチョコレートを作っているのだろうかという事である。
「...? どうしたの?」
だがそんな直樹の思いも微塵も感じとれず、不思議そうな表情の雪乃。
とりあえず気づかないふりをしてやろうと思い、靴を脱ぎながら雪乃に紙袋を渡す。
「おら、お前にやる」
貰ったチョコレートが入った紙袋だ。
雪乃はそれを胸で抱きしめるように受け取り、中をのぞきこむ。
中には派手な包装でリボンをかけた大小さまざまな大きさの箱が入っていた。
「わあっ、いっぱいだねっ!」
それがバレンタインデーのチョコレートであることはすぐにわかった。
子供のようにはしゃぐ雪乃。
「.....って食べないの?」
だがすぐに我にかえって聞く。
「俺が甘い物ダメなの知ってるだろーが...お前が喰え」
雪乃の顔を見てほっとした直樹は、いつものぶっきらぼうな口調に戻る。
「えっ? そんなのくれた子に悪いよ...」
戸惑った様子の雪乃。たしかに甘い物は大好きだが、気持ちの入ったものを食べるわけにはいかない。
「じゃあ燃やして風呂沸かすときの燃料にでもしろ」
吐き捨てるように言う。
直樹にとっては、雪乃からのチョコレート以外は何の価値もないのだ。
「う、ウチはそんな古い型のお風呂じゃないよぅ...」
困った顔をして直樹を見つめる。
その雪乃を玄関に置き去りにして、
「あー、腹へった、メシ喰わせろ、メシメシ」
ずかずかと居間へ歩いていく直樹。
その背中を見て、ハッとなる雪乃。
「ちょちょちょちょちょっと待ってえぇ!」
今、居間に行かれるとチョコレートを作っていることが直樹にバレてしまう。
もうチョコレートまみれの姿で出迎えた時点で直樹にはバレているのだが、
雪乃はまだチョコレートを作っていることを直樹には秘密にしてあるつもりである。
身長差があって肩には手が届かないので、
脇の間から手を出し、がっ、と背後から抱きつくようにして直樹を止める雪乃。
だが体格差で、そのまま廊下をずるずると引きずられる。
しばらく雪乃を引きずった後、
「なんだ?」
直樹は立ち止まって雪乃の方に向き直る。
雪乃が必死になって止める理由ももう直樹にはわかっているのだが、
意地悪をしてみたくなり、わざと知らないふりをしてみる。
「え、えーっと、今ちょっとダメなの」
きょろきょろと定まらない視線。裏返った声。
雪乃は小さな子供並にウソをつくのが下手だ。
思わず吹き出しそうになるのをこらえる直樹。
「何がダメなんだ?」
なおもとぼけたフリをして聞く。
「あの...そのっ、あ! 今お風呂沸いてるから、先に入ってさっぱりして! ねっ!」
なんとか話をはぐらかそうとする雪乃。
「風呂? いいよ、俺メシ喰いたい」
ふたたび居間に向かって歩き出す直樹。雪乃をずるずると引きずりながら。
「だ、だめーっ! お、お願い! お風呂に入ってぇ!」
祈るように叫ぶ雪乃。
「わかったわかった、先に風呂に入ってくるよ」
やれやれといった様子の直樹、もう意地悪はやめておいた。
「うんっ! じゃあゆっくり入ってきてね!」
居間の前で立ち止まり、浴室に向かう直樹にぱたぱたと手を振る雪乃。
その振る小さな手のひらにも、溶けたチョコレートがくっついていた。
それを見てまた吹き出しそうになってしまう直樹。
直樹が浴室に入ると、居間からはぱたぱたと雪乃が忙しそうに走りまわる足音が聞えてきた。
その足音に混じって「きゃあっ!」という雪乃の悲鳴や、
ガシャーンと何かが崩れるような音も聞えてくる。
「おいおい...大丈夫かよ...」
その音を聞き、苦笑いしながらシャワーの蛇口をひねる直樹。
でも...帰ってきてよかったと思っていた。
「チョコレートみたい 第五話」の続きです。
あら、オチついてねぇや。
実をいいますと、この「チョコレートみたい」は他のお話に比べて短い時間で書いてます。
他のお話はだいたい1時間くらいで書いてるんですが、この「チョコレートみたい」はだいたい30分くらいしかかかってません。
別に手を抜いてるわけでもないんですが。やはり時間をかけてないだけあって変さ加減が半端じゃないですね。
まあいいか。
ジャンルが「フェラ」になっているのは、冒頭で妄想フェラをしてるから.....。