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遥かな時代の階段を(中編)
コギト=エラムス/文


 次にやってきたのは...薄暗い路地だった。

 

 「へっへっへっへっ...」

 

 何やら...嫌らしい笑い声が聞こえてくる。

 俺は顔だけ出して、その声のする方向を見た。

 

 そこには...中学生の時の俺と詩織、そして複数のガラの悪い男たちがいた。

 

 思い出した...

 俺は中学校の修学旅行の時、詩織と同じ班になったんだ。

 で、その旅行先の奈良で詩織とふたりの時に地元の不良に絡まれたんだ。

 

 そこで俺は、詩織を置いて逃げようとしてたんだ。

 

 「くらいなっ!」

 ぼかっ!

 「ぎゃあ!」

 「け、健くんっ!?」

 

 だが、運悪く不良のパンチをくらって一発で気絶したんだ...。

 

 あの後、俺は病院に運ばれたんだよな...、

 不良たちが気絶した俺に手を出さなかったから、軽い脳震盪ですんだんだけど、

 詩織のおかげで不良たちには絡まれるし...修学旅行はメチャクチャだったんだ。

 

 「こいつ、二度と立ちあがれねえようにボコってやろうぜ!」

 気を失ってる俺に向かって不良の一人が言った。

 

 え!? おいおい! 俺は助かるんじゃなかったっけ!?

 俺はびっくりした。たしか殴られた1発以外は外傷がなかったはずだけど...。

 

 不良のひとりが俺の身体を蹴り上げようとサッカーボールを蹴るみたいに足を踏みこんだ。

 

 だが、次の瞬間、

 「け、健くんっ!!」

 詩織が俺の身体をかばうように覆いかぶさってきた。

 

 どすっ!!

 

 「くふっ!!」

 詩織のわき腹が蹴り上げられる。

 

 いきなり俺をかばった詩織に驚く不良たちだが、

 「おい! どけっ! このアマッ! 痛いめにあいてぇのかっ!!」

 

 不良たちは言いながら俺をかばう詩織の背中をどすどすと蹴りつける。

 

 不良たちの蹴り上げに耐えられなさそうな詩織の細い身体。

 「あうっ! くうっ! かはっ!」

 だが...詩織は俺をかばったままそこから動かない。

 

 やがて...不良たちは、

 「ケッ...シラケちまったぜ!」

 唾を吐きつけてどこかへ行ってしまった。

 

 「けふっ...けふっ...こほっ」

 腹を蹴られたのか、むせる詩織。

 

 顔から制服から、蹴られたせいで砂埃にまみれてうす汚れている。

 

 「け...健くん! しっかりして! 健くんっ!」

 だが...その砂埃を払いもせず、気を失った俺のことを心配してる。

 

 .....俺が、脳震盪だけで済んだのは、詩織がかばってくれたからなのか?

 .....そういえば、俺が修学旅行に復帰した時、詩織は顔や腕に包帯を巻いてたな...。

 俺は病院で気がついた時、詩織がいなかったから見捨てられたと思って、あれから暫らく詩織とは口をきかなかったんだ。

 

 ...に、似合わねぇことしやがって...。

 

 「健くん! しっかりして! いやあ! 健くんっ!」

 俺は、詩織の叫び声を聞くのが辛くなって、

 逃げるように「時空間物質転送装置」の「未来」のボタンを押した。

 

 . . . . .

 

 次にやって来たのは...綺麗に整頓された部屋だった。幸い、部屋には誰もいなかった。

 部屋の中にはかわいらしい熊のぬいぐるみやクッションなどが置いてある...。

 

 ここは...どこだ?

 

 あたりを見まわす俺は、その部屋の窓からの風景を見てハッとなった。

 「ここは...詩織の部屋か!」

 詩織と俺は家が隣どうしだ。

 窓から見えるあの家は、間違いなく俺の家だ。

 

 場所はわかったが...今は何時なんだ?

 「時空間物質転送装置」の日付を見てみると...、

 

 「卒業式の前日じゃないか!!」

 卒業式の前日ということは、タイムスリップを開始した日の一日前ということになる。

 

 なんてこった。

 詩織の過去をメチャクチャにしてやろうと過去に行ったはいいが、もう前日まで来てるなんて。

 

 「時空間物質転送装置」の情報表示用の液晶には、タイムスリップに必要な燃料があと1回分しかないと表示されてる。

 このまま過去に行ってもいいが、そうなると確実に現在には戻れなくなる。

 タイムスリップする前は現在に戻れなくてもいいと思ってたが、

 未来が変わってズタボロになった詩織の惨めな姿が見れないのはなんだか癪にさわる。

 

 よし! 今からでも遅くない!!

 詩織の弱みになるようなものを探すんだ!!

 またはアイツが大事にしてるものがあったらそいつをブッ壊してやる!!

 

 俺は詩織の部屋を探してみることにした。

 

 「これは...?」

 勉強机の引き出しをあけた俺の目に、一冊のカギつきのノートが飛びこんできた。

 

 「ひょっとして...日記帳か!」

 それは落ちついた装丁の分厚い10年日記だった。

 

 これに詩織の人には言えない弱みが書いてあるんじゃないかと思い、カギをブッ壊して日記帳を開いた。

 

 

  明日はバレンタインデー。

  健くんにあげるチョコレートを腕によりをかけて作った。

  いつもより...大胆に「I LOVE KEN」とチョコレートに書いた。

  これを見たら健くん...私の気持ちに気付いてくれるかなぁ?

 

  修学旅行の自由行動の時、怖い人たちにからまれ、乱暴された。

  私はちょっと怪我しちゃったけど...幸い健くんは軽い脳震盪だけですんでよかった。

  でも...病院から帰ってきた健くんは、私が声をかけても返事をしてくれなかった。

  私...何か健くんの気に障るようなこと、したのかな...。

  言ってくれれば謝るのに...。

 

 ...その日記は6年分くらいあったが、ほとんど毎日といっていいほど俺のことが書かれていた。

 なんでだ!? まさかコイツは、日記でもネコかぶってんのか!?

 俺はページをめくった。

 

  明日の卒業式で...伝説の樹の下で健くんに告白しようと思う。

  これで私の気持ちが通じなかったら...健くんのことはきっぱりとあきらめようと思う。

  ずっと...ずっと好きだったけど...。

 

 

 ガチャ...

 

 その今日の日付の日記を読み終わると同時に、俺の背後で部屋の扉が開いた。

 

 「えっ!? ...け、健くんっ!?」

 部屋に入ってきたのは詩織だった。

 誰もいないと思っていた自分の部屋に俺という存在を認め、びっくりしている。

 

 俺は素早く行動した。

 

 「どうしてここに...きゃあっ!?」

 何か言おうとした詩織の胸倉を掴んで、ベッドに引きずり倒す。

 

 そしてそのまま、馬乗りになる。

 

 「ね、ねえ、健くん、どうしてあなたがここにいるの?」

 自分の置かれている状況もお構いなしに、戸惑った表情で聞く詩織。

 

 「ま、窓から入ったんだよ!」

 俺は咄嗟にウソをついた。

 

 明日は卒業式だけど...今からでもまだ間に合う!!

 コイツを犯して...ズタボロに犯して...コイツの人生を奪ってやる!!

 

 俺は詩織のブラウスをボタンごと引きちぎった。

 

 「あ...っ!?」

 驚く声をあげる詩織。

 

 ぶちぶちぶちぶちっ!

 

 あたりにボタンがはじけ飛び、白いブラが見える。

 

 こ...これからお前をメチャクチャに犯して一生残る傷をつけてやるぜ...!!

 さあ、泣け! わめけ!! 泣き叫べ!!!

 

 「..........」

 だが...詩織は抵抗しない...。

 ブラウスを引き裂いた瞬間は驚いた顔をしていたが、

 今では黙って瞼を閉じたまま、されるがままになっている。

 

 ???

 どうしてだ...?

 これから、俺みたいな馬鹿でブ男で運動音痴の男にいいようにされるんだぞ!!

 どうして...どうして抵抗しない!!

 

 「お...おい! 詩織! やるぞ! いいのか!?」

 俺は宣言する。

 

 だが...コイツは...

 「うん...健くんだったら...いいよ......」

 瞼を閉じたまま...ゆっくり...頷いた。

 

 そして、瞼を開ける。

 瞳がうるうる潤んでる...その瞳で、俺を見つめながら、言う。

 「でも、やさしくして...は...初めてなの...」

 言いながら、恥かしそうにうつむく。

 

 この時ばかりは、俺の胸もドキリとさせられた。

 

 ...い、いやっ!

 この女はこうやって男に媚びるんだ!!

 お、俺は騙されんぞ!! 初めてなんてウソだろっ!!

 き、きっと挿入一歩手前になって、

 「あなたの粗チンなんて入れてどうしようっていうのよ、バーカ」

 って言ってあざ笑うにきまってる!!

 

 ど...どこまでも俺を馬鹿にしやがって!!

 

 「んむ...っ!」

 俺は詩織の唇に吸いついた。

 

 

 


解説

 「遥かな時代の階段を(前編)」の続きです。

 

 次回はちゃんとHあります!

 


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