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悲しみを燃やして act.2
コギト=エラムス/文


 「まぁ...とてもおきれいですよ」

 鏡の前に立つベルダンディーの美しさに感嘆する女性。

 

 「ありがとうございます...」

 僅かに頬を染め、穏やかな笑みを鏡ごしに向けるベルダンディー。

 

 白いバラの花をあしらったレースのティアラ、

 白い肌をより際立たせる白いレースのミット、

 大きく開き、パニエの入った胸部、幾重にもレースが織り込まれたロングスカート、

 天使の羽根のように後に続く薄いヴェール。

 

 純白のウエディングドレスに身を包んだ女神、ベルダンディーは誰が見てもため息が出るくらい美しかった。

 

 「(螢一さん.....)」

 純白の女神はまた、思い人の名前を心の中で呼んだ。

 

 昨夜、螢一から首を締められた時はびっくりしたが、

 その後、螢一はこの場所まで来るように言った。

 ここ数日、螢一の様子がおかしかったので心配をしていたベルダンディーだったが、

 今は幸せな気持ちでいっぱいだった。

 

 螢一がベルダンディーを呼び出した所は...結婚式場だった。

 到着するなり控え室に案内され、スタイリストからこのウエディングドレスを着せられた。

 始めは戸惑うベルダンディーだったが...着付けが終わる頃には、

 もう女神ではなく、一人の恋する女性の表情へと変わっていた。

 

 「さぁ、新郎様がお待ちです...参りましょう」

 スタイリストの一言に、はっと我にかえるベルダンディー。

 

 スタイリストはベルダンディーに手を差し出していた。

 

 「はい...」

 その手にそっと手を重ねるベルダンディー。

 

 一瞬女性の口元が歪んだが、ベルダンディーはそれには気づかなかった。

 

 . . . . .

 

 「では...お幸せに」

 式場の大扉の前で、取ったベルダンディーの手をゆっくり降ろすと、スタイリストは新婦に向って会釈した。

 

 「ありがとう...」

 微笑みかえすベルダンディー。

 

 スタイリストがベルダンディーの側を離れた瞬間...目の前にある大きな両扉が開かれた。

 廊下に差し込む白くまばゆい光...眼前に広がる白い大理石のチャペル。

 

 その一番奥にある...誓いの壇上に腰かける、螢一の姿。

 

 「螢一さん...」

 タキシード姿の螢一を嬉しそうに見つめるベルダンディー。

 

 他には誰もいない...ふたりだけの式場。

 だが、ベルダンディーは他に何もいらなかった。

 

 「そっ...そこから動かないで」

 駆け寄ろうとしたベルダンディーを螢一はあわてて言葉で制した。

 「ゆ...床を見て」

 なんだか落ち着きのない螢一の一言。

 言われて、ベルダンディーは視線を床に落とす。

 

 螢一のいる壇上までのヴァージンロードには、白い濁液がずっと筋になってこぼれていた。

 

 「.....?」

 その濁った液を不思議そうに見るベルダンディー。

 

 螢一の心がチクチクと痛んだ。

 扉を開けた時、ベルダンディーはとても嬉しそうに自分の名前を呼んでくれた。

 その表情を...その気持ちをぶち壊すようなことを、自分はこれから言わなくてはならないのだ。

 

 だが.....言わなくてはならない。この...この愛しい女神を救うために。

 

 ぎゅっ、と拳を握り締め...螢一は無理矢理腹から声を絞りだして言った。

 

 「よっ...四つんばいになって...そっ...そのバージンロードにこぼれている液を...

  き...綺麗に舐めとりながらここまで来るんだ」

 

 「えっ.....」

 女神の表情がはっきりとわかるほど曇る。

 

 緊張して、額にどんどん汗が浮かんでくる...心の中で何度も女神に謝りながら、螢一は続けた。

 

 「オレの言うことなら...なんでも聞くんだろ?」

 チャペル内にこだました...その一言。

 

 自分を愛してくれている証として、女神には頷いてほしかった。

 だが、心の中に...ズキンズキンと針が次々と刺さっていくような...その場から逃げ出したいような罪悪感にも苛まれていた。

 このまま...軽蔑してくれてもいい、嫌いになってくれてもいい。

 螢一はそうも思っていた。

 

 女神の薄く紅の塗られた唇が...ゆっくりと動いた。

 「はい...螢一さんのおっしゃることなら...」

 わずかに潤んだ瞳で...まっすぐに螢一を見つめるベルダンディー。

 まるで命令されたことが嬉しいかのように微笑んでいる。

 

 ドクン!

 螢一の中で、またあの黒い血が...騒ぎはじめた。

 その瞬間...チクチクと胸に刺さる罪悪感が、

 まるでツボを刺激されているような甘美な愛撫となって胸を包み込む。

 固く握りしめた拳の力が...ゆっくりと抜けていく。

 

 ベルダンディーはウエディングドレスの裾を丁寧に巻き込んでひざまづき、

 上体をかがめて床に両手をつき、四つんばいの格好になる。

 

 ピカピカに磨かれた大理石に映りこむ自分の顔をじっと見つめるベルダンディー。

 

 「さ、さあっ、早くするんだ」

 その言葉はさっきよりも自然と出た。なんの衒いもなしに。

 

 「はい...」

 四つんばいになったまま返事をすると...ベルダンディーは顔を床に近づけ...

 

 ぴちゃっ...

 「んっ...ん」

 その床に垂れ落ちた液をすくうように舌で舐めはじめた。

 

 濁液が舌に触れた瞬間、生臭い匂いが鼻腔を抜け、口全体に苦味が広がる。

 「んっ...」

 あまりのひどい味に眉をしかめるベルダンディー。

 だが...それを懸命にこらえてそれを飲み込んでいく。

 

 ベルダンディーの小さな舌が...チロチロと床を舐めているのが見える。

 舐めとるたびに、天使の羽根のような透明のヴェールがふわり、ふわりとなびく。

 

 「(女神が...女神が...オレの...オレの言うがままになって...

   オレの精液を...犬みたいに舐めてる.....!!)」

 その瞬間、螢一の身体中を駆け巡る黒い血が、まるで石油のように燃えはじめた。

 

 カッ、と燃え上がらんばかりに身体の芯が熱くなるのを感じる。

 

 「ただ舐めるだけじゃ駄目だ、液を口の中に含んで、たまったら身体を起こしてオレの方を身ながら飲み込むんだ」

 その身体を焼く炎の勢いに身を任せ、さらに過酷な条件をつけ加える螢一。

 

 それを聞いて顔を起こそうとする女神を見て、

 「舐めながら返事をするんだ!」

 チャペル中に響きわわたるような声で怒鳴りつける。

 

 あわてて女神は床に舌を這わせ、ペチャペチャと精液を舐めながら少しだけ顔をあげ、上目づかいに螢一を見る。

 「ふぁい...」

 そして機嫌を伺うような表情で返事をする。

 

 螢一の身体からは邪悪な思念が感じられない...となると、

 これは螢一本人が本当に望んで命令していることだ。

 ベルダンディーに拒否する理由はどこにもない。

 むしろ自分に命令してくれたこと、自分を必要としてくれたことを喜びたいところだ。

 だが...やはり普段はあんなにやさしかった螢一のこの豹変ぶりに、女神は戸惑っていた。

 

 ぴちゃぴちゃと床を舐める音が響きわたる。

 チャペルは賛美歌などを歌うため、よく音が響くように作られている。

 音をたてるものがないこの空間で、

 聞えるのはベルダンディーが精液を舐めとる音と、ウエディングドレスの布ずれの音だけだった。

 

 「(ベル...ダン...ディ...)」

 その光景を、螢一は何度も唾を飲み込みながら見ていた。

 

 美しく聡明な女神が犬のように這いつくばって、床に垂れた自分の精液を舐めつづけている。

 美しいものをとことんまで貶めるような、そんな行為。

 螢一の身体の内で燃えさかる被虐の炎は、とどまる所を知らなかった。

 

 「んっ...んっ...ん」

 ベルダンディーは螢一の言いつけ通り、精液を舐めつくしてもその床を綺麗にするようにぺろぺろと舐め続けた。

 

 そして、言いつけ通り精液は飲み込まず口の中に溜めている。

 やがて...口の中に溜まった精液を飲み込むために顔を上げる。

 

 ひざまずいたまま螢一の顔をじっと見つめるベルダンディー。

 まるで...主人を見つめる犬のような従順な瞳で。

 

 その潤んだ瞳に、螢一の心の内に燃え上がる炎がますます加熱していく。

 

 そしてベルダンディーは、螢一の目を見つめたまま、

 「んっ...こくっ...こく」

 口の中に溜まった精液を、ゆっくりと飲み干した。

 

 白い首筋にあるのどが上下し...次々と口の中に溜まった精液を飲み下していく。

 「んぅ...こくっ...こくん」

 螢一の精液は特別に濃く、女神の喉にからみついてなかなか飲み込めないでいた。

 少し苦しそうに眉間にしわを寄せて、何度も何度も喉を鳴らして健気に飲み込もうとする。

 

 「んっ...こくんっ」

 全てを飲み込んだ女神は、ほんの僅かに微笑む。

 唇の端から、口に残った精液が筋となってつぅっと垂れ落ちた。

 

 「よし...次は舌じゃなくて、口で吸いとりって溜めて、こっちまで這ってくるんだ」

 今度は...自分でも驚くほど動揺せずに命令することができた。

 身体の内を焦がす、黒い炎。その炎に後押しされるように。

 

 「はい...螢一さん」

 ほんのり頬を染めた女神は、素直に返事をすると再び這いつくばって床にキスをする。

 

 「んっ...ん」

 そして、小さくうめいた後、

 

 ずずっ...ずずずっ

 

 すするような音が、チャペル内に響きわたる。

 

 すすりあげの後、ベルダンディーが唇をつけていた床の部分の精液が...

 まるで掃除機にでも吸い込まれるように口の中へと入っていく。

 

 「唇を離さずに! 床に唇をつけたままこっちに這ってくるんだ!」

 更に女神を貶めるような一言。

 

 「ふ...ふぁい...」

 床とキスしたまま返事をするベルダンディー。

 

 まるでカメレオンのような姿勢で、床に唇をつけたまま移動するベルダンディー。

 「んふぅ...ふぅっ」

 唇を床でこすられ、時折苦しそうな声をあげる。

 

 ずるずるっ...ずずずっ...

 

 ズルズルとチャペル中に吸引音を響かせながら、精液を吸い取り、

 そして口の中に含み、クチュクチュと唾液と混じる音を響かせる。

 その下品極まりない音は...美しい女神を完全に貶めていた。

 

 何度味わっても慣れない苦味に、女神は時折むせて咳き込んだ。

 「んっ...けふっ...けふ」

 だが螢一の言いつけ通り、苦しくても健気に唇を床から離さなかった。

 

 あの日...マーラーが言った言葉を、心の中で反芻する螢一。

 「(女は...共存するものではなく...隷属させるもの...)」

 女の意のままに操る喜びに...螢一は目覚めはじめていた。

 

 ずるっ...ずるずるっ...ぴちゃ...ぴちゃっ

 「んっ...んんっ...ん」

 歩けばほんの数秒のヴァージンロードを、長い時間をかけて這っていく女神。

 それは...崇高な女神をただの奴隷として貶める儀式のようであった。

 

 やがて...螢一の足元にこぼれ落ちた最後の精液を...女神は舐める。

 主人の足元にひれ伏す奴隷のように。

 

 すすっ、とウエディングドレスの布ずれの音をたてて顔を起こすベルダンディー。

 

 レースごしに見える...頬を染めた女神の表情。

 女神は螢一の足元にひざまずいたまま...

 「んっ...こくっ...こくん」

 螢一に見下ろされながら、精液を飲み干した。

 

 「螢一さん...」

 まるで慈しむような瞳で...螢一を見つめるベルダンディー。

 

 だが螢一には...まるで主人に尻尾を振る犬のように見えた。

 

 床に這いつくばっている時に前髪についた精液が雫となって.....ぽたり、と床に落ちた。

 

 

 


解説

 「悲しみを燃やして act.1」の続きです。

 やっぱりベル様はウエディングドレスですね。

 


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