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出臍委員 前編
コギト=エラムス/文


 詩織の顔色で、恐怖を限界まで煽ったことを確認すると、生徒会長は口を開いた。

 「では...始めます」

 それは、まるで死刑宣告をするような、冷たい声だった。

 

 銀色のペンチが目がくらむほど輝いたかと思うと、詩織の腹部にひんやりとした感覚が走る。

 「ふぐぅーっ!?」

 それをペンチの冷たさであると理解し、もう正気を失って身体をよじらせ、逃れようとする詩織。

 

 そんなもので何をするのか、考えるだけで背筋が寒くなり、背中が冷や汗でじっとりと濡れてくる。

 「んぐぅー! ふうううぅーっ!」

 いくら叫んでも、口を塞がれているのでくぐもった声にしかならない。

 いくら暴れても、2人の男子生徒にしっかり身体を押えつけられて逃れられない。

 

 まさに処刑されるような異常な光景。

 だまってその執行を見守る生徒たち。

 耳を塞いでしゃがみこむ他のクラスの「ヘソ委員」の少女たち。

 正体を失った美少女のもがく様に、固唾を飲みこむ男子生徒たち。

 

 張り詰めた空気の中、しんとした体育館に響くのは詩織のくぐもった悲鳴だけであった。

 詩織の全身は言いしれぬ絶望が支配していた。

 いくら暴れても男の力にはかなうはずもないのに、恐怖で思考力を奪われた詩織は身体を軋ませながらもがき続ける。

 首を振るたびに、詩織のさらさらの髪の毛が揺れる。

 肩を縮こませるたびに胸元できちんと結ばれたレモン色のリボンがふわふわと揺れる。

 腰をよじらせるたびに短く切りつめられた制服の裾がぱたぱたとたなびく。

 きっちりとプリーツのはいったブルーのスカートが、暴れるたびに揺れ、きれいな脚がちらちらと見える。

 はがいじめにされた腕は、悲痛に空をかきむしっている。

 

 少女は額に玉のような汗をいくつも浮かべながら、全力で抵抗した。

 身体の可動する場所は全て力いっぱい動かして。

 まるで蜘蛛の巣に絡めとられた蝶のように。

 

 そして...遂に毒の牙とも言えるべきものが、美しく喘ぐ蝶に振り下ろされた。

 ひんやりとしたペンチの感触が、ヘソの中全体に広がる。

 ペンチがヘソの奥に入ってきたのだ。

 

 「えいっ」

 生徒会長はペンチの先でヘソの奥の肉をつまむと、小さく声をあげ...挟んだ肉を力いっぱい引いた。

 

 がりっ

 

 「んううううううううううーっ!!!」

 引き出された瞬間、詩織の口からは断末魔のような悲鳴が搾り出される。

 それは口を押えられていてもなお、体育館中に響くような大きな声だった。

 内臓を引き出されるような激痛に、背筋をブリッジのように反らす。

 白目を剥いたままガクガクと身体を痙攣させ、髪を振り乱す。

 振り乱した前髪が汗で額にはりつく。

 身体をねじらせるようにぶんぶんと左右に振り、狂ったように暴れる。

 

 不意に、腹の肉を引きちぎられるような痛みから解放された。

 生徒会長が肉をつまむのをやめたのだ。

 それを合図に、詩織を押さえつけていた男子生徒がぱっと離れる。

 

 「う...あああ...」

 詩織は全身汗まみれの身体をのけぞらせたまま、口を金魚のようにぱくぱくと動かしている。

 

 「あああ......」

 そしてそのまま腰が抜けたようにその場にペタンとくずれ落ちた。

 

 振り乱した髪で表情はわからないが、はぁはぁと小さな肩が上下し、処刑の壮絶さを物語っている。

 

 その詩織を...影が覆う。

 「これから...こうやってあなたにはデベソになってもらいます」

 呼吸を整える詩織を見下ろしながら、生徒会長は冷たく言った。

 

 「う...ううっ」

 詩織は振り乱した髪も直さず...顔をあげ、生徒会長を見た。

 

 「き...如月...さん」

 そして...生徒会長である少女の名前を呼ぶ。

 

 少女の名前は、如月未緒といった。

 生徒会長になるまでは、病弱で大人しい文学を愛する少女だったのに...、

 そもそもこの引っ込み思案な少女が生徒会長になったのは奇跡に近いものだったが、少女はそれから変わってしまった。

 眼鏡の奥にあったやさしげな瞳は...今はもう見られない。

 

 少女は詩織の呼びかけには答えず、背を向けて壇上へと戻る。

 まるで...それは自分の名前ではないように。

 

 「これで...全校集会ならびに、藤崎詩織さんの”出臍委員”就任式を終わります...

  これから藤崎詩織さんが ”出臍委員”になるにあたって生徒の皆さんには協力をお願いすることがあるかもしれませんが...

  その時はよろしくお願いします」

 淡々とした口調でまとめる未緒。

 

 詩織は黙って赤く腫れあがったヘソを押えていた。

 

 . . . . .

 

 それから...詩織のデベソ委員になるための日々が始まった。

 ヘソ委員とは大きく違っていたのは...ヘソゴマを溜めなくても良くなったこと。

 他人のヘソに入っていたヘソゴマを入れなくて良くなったのはかなりの救いだったが...、

 今度は自分の身体が直接いじられていく感覚に、少女は戸惑っていた。

 

 まず、朝はヘソ委員と同じように登校し、生徒会でヘソのチェックを受ける。

 いつものように早めに登校した詩織は足早に生徒会室へと向かう。

 そして、他の「ヘソ委員」がヘソゴマのチェックを受けている横で、

 ヘソの部分をビデオにおさめられ、生徒会史にこと細かな観察日記をつけられる。

 乙女の控えめに窪んだヘソをまじまじと接写され、詩織の顔は自然と上気してくる。

 「経過は順調のようですね...」

 恥かしそうに俯く詩織を見ながら...未緒は満足そうな微笑を浮かべた。

 

 チェックを終え、教室に戻ると男子生徒3人から身体を固定される。

 以前、朝礼でやった時のようにはがいじめにされ、口を塞がれ、足に抱きつかれ、動けないようにさせられた後...、

 銀色のペンチでヘソの奥の肉を掴まれ、力いっぱい外に引き出される。

 この痛みは...毎日味わっても馴れるものではない。

 しかも...詩織のもがき苦しむ様を男子生徒たちはぎらつかせた欲望の視線で見るのだ。

 たしかにやりたい盛りの男子高校生にとって、学園のマドンナとも言われた少女の苦しみにあえぐ姿は格好の自慰のネタとなるのだ。

 男子生徒たちを喜ばせているとは知らず、

 詩織は恐怖におびえた視線でペンチを見ていやいやをし、まるで強姦でもされるかのように押えつけられ、

 苦痛に眉間をしかめながらくぐもった悲鳴をあげ、処理を受ける。

 引き出された瞬間は詩織の全身は硬直し、背筋を限界まで反らして腹を突き出す。

 背筋を反らすたためただでさえ短い制服の裾がずり上がり、ブラが見えそうになるのだが、詩織は激痛でそれどころではない。

 

 集まった男子生徒たちは詩織の恐怖に怯える仕草と、強姦されるような扱い、

 そして肉を引き出された瞬間に見せる、まるで破瓜の痛みを受けたような反応、

 更には詩織の美しく窪んだヘソがデベソになった様を想像し、股間を熱くさせるのだ。

 

 その後...赤く腫れ上がったヘソの穴に指を突っ込まれ、塗り薬のようなものをまんべんなく塗られる。

 詩織は引き出された直後なのでまるで気を失ったかのようにぐったりとなっている。

 足の拘束だけは外され、はがいじめにされたまま、ごつごつした指をヘソに突っ込まれる。

 指の先には塗り薬であるクリームのようなものが付けられ、その指先でヘソの中をかき回されるのだ。

 詩織のヘソは男子生徒の指よりも小さく、指をズボッと挿入されると押し広げられるようになる。

 そこをかき回されるものだから、詩織の縦長のヘソの形は醜く崩れる。

 水っぽいその液体をつけた指でかき回されると、クチュクチュと音がする。

 そして、あふれた薬液が挿入された指とヘソの間からつぅっと垂れ落ちる。

 まるでそれは...女性器を想像させた。

 指を入れられ、クチュクチュと水っぽい音をたて、あふれた液がゆっくりと垂れ落ちる...。

 指を挿入している男もそれを連想しているのが、わざとクチュクチュ音をたて、執拗にヘソの中を嬲る。

 ギャラリーを楽しませるようにヘソの中でクイクイと関節を曲げ、ズボズボと指を出し入れする。

 乱暴にかき回され、詩織のヘソは面白いように形を変える。

 男子生徒たちは詩織をとり囲み、その様子を瞬きをするのも惜しむように見つめるのだ。

 

 この薬液のおかげで詩織のヘソの腫れはすぐにおさまるのだが...多感な少女には過酷すぎるほどの屈辱と羞恥を受けるのだ。

 

 詩織の下校を追いかけまわしていた投稿写真雑誌のカメラマンたちは毎日接写している詩織のヘソの変化にすぐに気付いた。

 「ヘソ出し女子高生...デベソになる!」という大きな見だしと共に各誌で特集が組まれた。

 構成は詩織の全身、顔のアップ、ヘソのアップであるのは以前と同じだったが、

 日々刻々と変わっていく詩織のヘソを毎日接写したものを並べ、変化の順を追って説明がなされていた。

 その特集を読めばたしかに詩織の身体の僅かな変化が手に取るようにわかった。

 アイドルも顔負けの美少女のヘソを見られるだけでも男にとっては刺激的であるというのに、

 その女の子が日々刻々とデベソになっていくのだ。

 そもそもデベソというのは漫画のさえないオヤジの象徴みたいなものであった。

 その「さえない象徴」に詩織の身体は一部とはいえ作り変えられようとしているのだ。

 かわいらしい顔からはとても想像できないギャップに、男たちは狂喜した。

 

 帰宅する詩織のヘソをパシャパシャと連続で撮影しながら、カメラマンは聞こえるような大きな声で言う。

 「やっぱりあの子...だんだんデベソになってきてるよ...」

 「ほんとだ...ピンク色の中の肉が見えてる...」

 「すげえ...あんなかわいい子がデベソになんのかよ...」

 

 いくら揶揄されても、いくら写真を撮られても、詩織にヘソを隠すことは許されていない。

 

 「あ...赤くなってるよ...かわいー」

 「やっぱりデベソを見られるのが恥かしいんだろ」

 「しかしプニプニしてて柔らかそうだな...あのデベソ」

 「完全にデベソになったらお願いして一回触らせてもらおーぜ」

 「そうだ、それよりも完全にデベソになったらさ、付録で等身大ポスターでも付けようか...あの制服姿でさ」

 「どうせならあの子が笑顔でデベソの肉を摘みだしてるやつにしようぜ...びろーんってデベソを摘んでもらってさ」

 「どうやって撮るんだよ、そんなもん」

 「いや、そりゃ本人に頼むんだよ...カメラ目線でな」

 「ハハハハハ! そりゃいーな!」

 

 屈辱と恥辱に顔を俯いたままの詩織の気持ちを踏みにじるかのように...男たちは愉快そうに笑った。

 

 . . . . .

 

 それから...ヘソ委員よりも数倍過酷な仕打ちを受け続け、何日かが過ぎた。

 まだデベソとは呼べないが、ヘソの奥の肉がだいぶもり上がってきている。

 毎日の行為は無駄ではなく、着実に詩織を「出臍委員」へと変えていっているのだ。

 

 そして、いつものように朝早く、生徒会室でチェックを受ける詩織。

 「だいぶ...良い形になってきましたね」

 かわいらしくぴょこんと飛び出たヘソのピンク色の肉を見ながら、未緒はやさしく言った。

 

 詩織はうつむいていた顔をあげ、未緒の方を見る。

 

 「では...次のステップに行きましょうか」

 そう言う未緒の手元が、窓から差し込む光りを受けてキラリと輝いた。

 

 「?」

 目を細めてそれを確認する詩織。

 

 それは...銀色のピアスであった。

 

 

 


解説

 新シリーズ「出臍委員」です。

 

 説明させていただきますと、ストーリーの大まかなところはサクラ様のリクエストを使っています。

 如月未緒が生徒会長なのもそれからです(如月さんの性格とは全然違いますが...後にその理由がわかります)。

 デベソになる方法はサクラ様と雀様のリクエスト(?)を全部盛りこもうかと思っています。

 

 次回以降はもっとデベソになっていく詩織ちゃんの心理描写に重点を置きたいと思います。

 


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