カトレアはもう数時間もずっと座したまま動こうとしない
また対面に座る魔術師も同様…けっして動こうとも口を開こうともしない
カトレア「知ってるんだろう…あんたなら、リリーの躯はどうすれば元に戻るんだ?」
既に何度目になるのか…幾度となく繰り返される同じ質問
魔術師「………ふぅ」
根気勝負の我慢比べ…勝ったのはカトレアだった
魔術師「しかし、それを知ってもきっと貴女には不可能なのですよ」
カトレア「どういうことだ?」
魔術師「彼女は、リリーは言わばバフォメットの眷属でもあるのです…眷属を消す為にはどうすればいいのか、言うまでもありませんね」
ドッペルゲンガーを倒した時…眷属であったナイトメアたちは消えるように異界に戻っていった
すなわち
カトレア「まさか…」
魔術師「確かにバフォメットを倒せば彼女の躯は元に戻るかもしれません…しかし、その際彼女自身が存在していられるかどうかは正に五分五分なのですよ」
あまりに分の悪い賭けだ…なにしろ前提としてバフォメットを倒すことが条件なのだ
聞いたことがある
グラストヘイム古城に住まう悪魔…その力はドッペルゲンガー等比べ物にならない…
カトレア「……他には…他には無いのか?!」
魔術師「私は今まで十数年も調べ続けてきたのですよ…行き着いた結果は其処でしたがね」
今まで幾度と無くバフォメットの討伐に加わる機会はあったのだ
しかし魔術師にはどうしても参加することは出来なかった
それどころかバフォメットの討伐を阻止しようとしたことさえあったのだ…
一重にリリーを守る為だけに…
「そうなのね…先生、カトレア」
カトレア「なっ?!リリー!」
聞かれた…否、当然だ
リリーにとっては少なくともこの町の会話などすべて聞こえている筈なのだ…
魔術師「リリー…貴女が決めなさい」
自分は臆病者かもしれない…だが、既に封印は限界だ…このままではいずれ封印の崩壊は避けられない
部の悪い賭けに掛けるしか道が無いのだ…
リリー「…黙ってやられる気は無いもの…それに母様の敵討ちにもなるのよね」
其処に居たのは泣き虫リリー等ではなく魔術師としてのリリーの顔があった
魔術師「判りました…では、今回は私も参りますよ…古い知り合いにも声を掛けておきましょう」
最も既に古い知り合い等死に絶え残っているものは極僅か…連絡さえつくかどうか判らないのだ
援軍は…期待できない
ティア「ミルフィーさん…行くのですか?」
ミルフィー「勿論ですの…リリーちゃんは…大切なお友達ですの♪」
ティアは迷っていた
悪魔と悪魔の戦い…その中で聖職者である自分はどうすべきなのか
普通に考えれば教会に連絡に奔らなくてはならない
リリーは悪魔なのだ…でも、仲間でもある
…しかし、そんなことは言い訳に過ぎなかった
震える足…体中鳥肌が立つ
ティア「わ、私は…やっぱり」
ー怖いー
心底恐怖を覚えた
死ぬかもしれない、きっと無事では済まない
ドッペルゲンガーにあれ程苦戦したのだ
それをはるかに上回るバフォメットに立ち向かう勇気など…無い
ティア「ゴ、ゴメンなさい!」
急に立ち上がったティアが荷物を抱えて部屋を飛び出していく
しかしミルフィーは慌てる事無く準備を進める
ミルフィー「でも…きっと来てくれますの」
だって、ティアは仲間なのだから…
カトレア「揃ったか?…じゃぁ行こうか」
明朝、準備を終えたカトレア、魔術師、リリー、ミルフィー…しかし、結局ティアは現れなかった
プリースト無しでグラストヘイム等自殺行為に等しい…しかし、誰もそのことは口にしない
仕方ないのだ…強制は出来ない…死なない保障など何処にも無いのだ
魔術師「ヘブンズドライブ!」
リリーの師だけあって魔術師の魔力は目を見張るものがある
リリーの十八番を奪うような罠をはった戦い…オリジナルはこの魔術師だったのだ
竜族の闊歩する大地を進む一行…やがてグラストヘイムの城門が見えてきた
ミルフィー「お、おっきいですのぉ〜」
げんなりしそうだ…是ほど広いとは思わなかった
敵の影こそ殆ど見えないものの恐らくその城内は魔物たちの巣だ
キリキリと弦のしなる音…風を切って飛来する矢がリリーの首に目掛けて放たれた!
「ニューマ!」
気配を消し木陰からガーゴイルの放った矢…しかしリリーには判っていたのだ
千里の先を見渡す目が…ガーゴイルのはなった矢も…それを防ごうとしていた仲間の姿も捉えていた
リリー「遅刻よ、ティア…後で覚えておきなさいよ!ヘブンズドライブ!!」
地中から突き出した無数の石柱が悪魔を貫きカトレアの抜いたツヴァイハンターに叩ききられた
ティア「御免なさい…ふふっ…ちょっと破門されにいってきたものですから…」
事も無げに言ってのける…やはり教会からは破門の通達が降りてしまった
ティア「ふふっ…これで私も破戒僧ですね」
カトレア「いっそ鞍替えしたらどうだ?モンクなんてのもいいぞ」
ティア「えぇ…でもまだ神のご加護は失われていませんから…今は皆さんのお力になれますよ、速度増加!ブレッシング!キリエエレイソン!マグニフィカート!グロリア!イムポティオヌマス!アスペルシオ!!」
フル支援を掛けると一斉に城内に飛び込んでいく
「おまちしておりました」
勢い勇んで飛び込んだ城内で出迎えたのは…
カトレア「お、女…の子?」
メイドの服に身を包んだ少女
アリス「アリスと申します、お見知りおきを…主がお待ちですこちらへ…」
箒を携えたまま奥に進む少女…
魔術師「明らかな罠というものですね…」
リリー「えぇ、階段の先にざっと見渡しただけで三桁の敵がいますよ?」
カトレア「まぁバレバレなのは一緒だろうしな」
ミルフィー「虎穴に入らずんば虎子を得ずですの」
ティア「そうですね…それに…そろそろですから、ふふっ」
カトレア「そろそろ?」
ティア「内緒です♪」
そう、ティアが遅れたのにはもう一つ理由があったのだ…
女「ハァ…ヒグッ?!カハァ…」
女が犯されていた…恐らくは近くを通りかかったたびの者であろう
その女の周りには食い散らかされた人肉の欠片…蹲るように人肉を貪り食うゾンビプリズナー達
女は地獄のような光景の中で既に正気は失われたのか、どんなに犯されようとも音のような呼吸音だけを繰り返すだけだ
フェイスマスクを付けたファンダーク、筋肉の塊のような魔物が女を軽々と持ち上げると一行に見せ付けるように腿の腱が引き裂ける寸前まで大股開きにしながら重力によって女の陰部に剛直を埋め込んでいく
一行の目の前で剛直で女の腹部まで盛り上がりそうなほど激しく突き上げながらドロドロと黄ばんだ液体を結合部から溢れ零しながら何度も何度も突き上げる
カトレア「テメエ等!止めろ!」
リリー「待ちなさい、カトレア…ただの挑発よ」
ツヴァイハンダーを抜き今にも躍り掛かりそうなカトレアを引き止める
ティア「酷い…」
ミルフィー「罠…ですの?」
リリー「両側に弓ね、下からは不死の群れ、おまけに影にとんでもないのが潜んでるわ」
確かに言われてみればその部分だけは石畳でなく土がむき出しだ
泥にまみれながら息も絶え絶えな女の膣が引き裂けんばかりに押し広げられ事実裂けてしまっているのか鮮血さえ陰茎を伝い落ちて地に沁みこんで行く
女「…ひぁぅ……ぁぅ」
リリー「しかも、三文芝居よ…あの女も…敵よ!いくわよ、行き成りメテオストーム!!」
尚も女を突き上げるフェンダークが膣口から白濁した粘液をたれ零す女の膣内に新たな樹液を放つと同時にリリーが詠唱さえ殆ど省略しながら直接隕石を召還した!
降り注ぐ隕石群が女とフェンダーク達の中央に落下していく
直後…女がフェンダークを片手で持ち上げると隕石に叩きつけるように放り投げて見せた
ジルタス「ふふふっ…残念ねぇ、折角お楽しみの真っ最中だったのにねぇ」
ボロボロだったはずの衣服が自然と女の体を覆い始めるとその手に鞭が握られた
カトレア「チッ…なんてこった」
ティア「あれも…悪魔」
ミルフィー「き、来ますの?!」
突如、女の周りの土が一気に膨れ上がると後から後から手が地中から生えたかと思いきや死者の群れが現れた
そればかりか陰に隠れていたレイドリックアーチャーを初め彷徨う者や手の化け物、スティング…アノリアン、ジョーカーにライドワード更には残る二本の魔剣までもが階段を駆け下りるように押し寄せてくる!
ティア「皆!少しの間持ちこたえて!」
ティアが地にワープポータル用に場所をメモし始めた
魔術師・リリー「アイスウォール!!」
二人がかりで氷の壁を張り巡らせる…しかしとてつもない大群…長くは持たない
カトレア「いくぜっ!スピアブーメラン!」
剣から槍に持ち返ると槍を振りかぶり敵に投げつけた
ミルフィー「このままじゃジリ貧ですのぉ!ハンマーフォール!」
魔術師「ロードオブヴァーミリオン!!…やれやれ、キリがありませんねぇ」
リリー「でも、本命はこの向こうにいるのは確かなのよね、ストームガスト!!」
ティア「もう少し…もう少しで…間に合って!」
カトレア「ティアッ!もう持たないぞ!」
氷の壁に亀裂が走り徐々に壁にほころびが生じた時…
ティア「いえ、間に合いました!ワープポータル!!」
光が溢れると本来一方通行の筈の光の中心に人の影が出た
プリースト「ごきげんようティア、こっちは準備良いわ、繋ぐわよ!」
それはティアの同僚のプリースト…教会から破門はされたものの同門の門弟達から見捨てられたわけではなかった
リリー「準備?…ティア貴女一体何を…」
最後まで言い切る前に光の中に続々と現れた援軍!
騎士を初めアサシン、ハンターブラックスミス等様々な職業の者たちが一気に現れたと思いきや大群にもまったく怯む事無く我先にと一気に切りかかっていく
しかし…妙だ…皆、一様に目に光が無い
BOT「やぁ!ボクBOT!でもご主人様はばれてないと思ってるから気付かない振りしてあげてね♪」
BOT「こんにちわ!私はBOTですよ〜!皆さん通報よろしく!うはっwっをwwkうぇwww」
BOT「いえ!違います!BOTじゃありません!通報しますよ!」
BOT「御免なさい、横殴っちゃいました、わざとじゃないんです!!」
……………
さしものリリーにも二の句は告げられない
ティア「ふふっ…アコライトさんとプリーストさん達の協力で今イズルード4階、ピラミッド3階、蟻地獄、炭鉱等からオートマータさん達を片っ端に闇ポタしてもらってるんです」
ミルフィー「うぁぁぁぁ…ですのぉ」
カトレア「…頭痛くなってきた」
魔術師「兎に角、今のうちに行きましょう!」
BOTと悪魔達の大混戦を迂回するようにしながら奥に駆け上がっていく
少々の敵は漏れたとはいえそれそらも高速移動のBOTに切り伏せられた
BOT「やぁ!ボクBOT!でもご主人様はばれてないと思ってるから気付かない振りしてあげてね!w」
徐々にその声も遠ざかり階段を駆け上がる一行の目に映る広間…そして奥の玉座に座す山羊の角を持つ巨大な悪魔の姿が…遂に見えた
カトレア「……あれが」
ミルフィー「おっきいです…の」
ティア「な、何?…物凄い威圧感…こんなに離れてるのに」
リリー「…あれが…仇」
身の丈はゆうに10メートルでは効かないほどの巨躯を誇り手にした大鎌が鈍い光を放っていた
噴出す瘴気が部屋に充満し生半可な冒険者では吸い込んだだけで唯では済まない
魔術師「…バフォメット…行きますよ」
詠唱動作に入る魔術師…しかし玉座の周りに一斉に姿を現す悪魔の眷属達が一斉に飛び掛ってきた!
カトレア「いくぜっ!ツーハンドクイッケン!!」
ツヴァイハンダーを掲げ金色の光を放ちながら悪魔の群れに切りかかる!
ミルフィー「ラウドボイス!アドレナリンラッシュ!オーバートラスト!ウェポンパーフェクション!マキシマイズパワー!!…是だけは本当は使いたくありませんでしたの!メマーナイト!!」
自ら禁じていた業の封印と財布の紐を解きZenyを撒き散らしながら叩き潰す!
しかし、敵も今までの雑魚とは違う
振り降ろされたツヴァイハンダーに牙で噛付くと力比べになってしまったカトレアに別のバフォメットJrが飛び掛る!
リリー「セーフティウォール!!」
小さな鎌が結界に弾かれるもわらわらと群がるJr達が結界に切り込みあっという間に亀裂が入っていく
カトレア「クソッ!これでどうだ!ボーリングバッシュ!!」
廻りの敵を全て巻き込みながら吹き飛ばすも…それだけでは死んでくれない…直ぐに起き上がると再びカトレアと更にはミルフィーにも群がる悪魔達
ティア「ヒール!キリエエレイソン!!リリーさん!此処は私達が…行って下さい!」
リリー「…えぇ…死なないでよ、皆」
仲間を残し単身仇に向かいなおすと魔法の射程内まで一気に切り込んでいく
バフォメット「ククック…」
声というよりも音のような哂いを上げながら腰を上げた悪魔が大鎌を構えると振りかぶる!
リリー「お久しぶりかしらね!そして…さようなら!ユピテルサンダー!」
目が眩むほどの光量を保つ雷球が駆け抜け悪魔に向かい打ち出された!
一閃…鎌を奮っただけで雷球が弾け消し飛ぶ
バフォメット「こんなものか?…我が娘とはいえ所詮人の子…出来そこないよのぉ…」
リリー「クッ…言うなぁ!!」
顔を紅潮させながら忌むべき事実を告げられ怒りに燃えたリリーが詠唱動作に入り魔力を増幅させ始めた
バフォメット「出来損ないに用は無い…消えるがよい」
悪魔が鎌を掲げ魔力を増幅させていく…
悪魔とリリーの間の空間が強大な二つの魔力に歪む…空間が捩れながら強い圧力に圧縮されたように縮み出す
バフォメット「ロード・オブ・ヴァーミリオン!」
リリー「メテオストーム!!」
核爆発のようなエネルギーの塊と召還された燃える隕石が衝突すると強いエネルギーを保ちながら押し合う
続々と降り注ぐ隕石と続く爆発…拮抗していた…
しかし…拮抗とはほんの少しの力の差でも崩れる物
魔力では悪魔に一日の長があった
押し合い圧し合い歪みきった空間が二つの大魔法の威力を保ちながら一気にはじけた!
カトレア「クッ!リリー!!」
悪魔達と切り結びながらなんとかリリーに追いつこうとする仲間
…しかし…悪魔の眷属は主のいる限り消えることは無い…
轟音と爆風…そして煙が晴れたとき
リリー「…ぅ…ぁぁ」
吹き飛ばされたリリーに覆いかぶさっていた一人の影
魔術師「ふふっ…リリー…何時も言っているでしょう…魔術師たるもの…常に冷静に…在れと」
その躯はすでに下半身が焼け焦げ、深く被っていたフードは燃え尽き、燻したような匂いを立てながら炭化していた
リリー「…せん…せい」
リザレクション等で治せる範囲ではない…治すべき躯の半分以上は炭となり崩れ落ちているのだ
魔術師「リリー…貴女は…人の子ですよ…哀れな…されど愛おしく可愛い我が娘…」
ずっと…心の中では呼んでいた…厳しい教え故に許されなかった呼び方
リリー「…おとう…さま」
返事は…もう無かった」
ハーデス「さくさくいきましょう〜」
カナ「うぁ…滅茶苦茶だよぉ」
マナ「いかにもラグナロクらしいといえばらしいのですけど(汗」
ハーデス「今時GHにだって普通にBOT徘徊してたしなwww」
カナ「今頃はどうなってるんでしょうね?減ったのかな?」
マナ「判りませんね、見て無いですし…赤石みたいにゲームガード入れば消えるんでしょうけどね」