ヤンキーは琴音の腕を引き寄せた。振り解こうとしても力では適わない。
雅史「離せ! 姫川さんは関係ないだろう」
監督「もちろんだとも、君が逃げろなんて言わなきゃいくらでも誤魔化せたんだがね。今更、おとなしく帰って貰えないだろう」
監督は苛立ちを隠せないでいた。雅史が自分の世間体より、この少女の身を心配しているのに驚いていた。坊やだと思っていたら、男の子だったか・・。
監督「姫川さんだっけ、今日はお家でお留守番のようだから僕達と一緒に来てもらおうか。雅史くんはどうするかね。帰ってもいいんだけど」
皮肉を込めた監督の口調に、雅史は琴音だけは許してくれるよう食い下がる。
雅史「お願いします。僕はどうなってもいい姫川さんを帰してくれ」
監督「ああ、やっぱり子供だね。君の口ぶりを聞いて警察に連絡しない人はいないだろうに、どんなことでもして彼女を守りたかったら、自分は変態でこの人達は僕の友達なんだ、今日はごめんとか言っておくんだ彼女は君を軽蔑するだけで済んだんだ。もはや遅いがね。彼女は君と同じ立場になってしまった」
雅史「そんな」
自分の迂闊さを呪った。琴音を巻きこんだのは自分なのだ。よく考えれば、関係者を増やすのを一番恐れているのは彼らなのだから。
琴音「痛い、離して」
ヤンキーに腕を捻られて、もがいている琴音。
監督「あんまり乱暴にするな」
手首を握られたままの状態で琴音はオロオロと雅史達の顔色を伺う。危機的状況に置かれているのがわかる。
琴音「・・帰して下さい」
監督「明日の朝には帰れるよ。それまで付き合ってもらおう」
琴音「嫌です」
きっぱりと断る。
監督「立ち話もなんですから」
ヤンキー「こい!」
琴音の手を引張って歩き出す。
琴音「助けてー、誘拐よー、誰かー」
大声で助けを呼ぶ。
ヤンキーは、慌てて琴音の口を押さえる。乱暴な動きを噛みついて直を叫ぶ。雅史もつられて助けを呼ぶ。格好など気にしてはいられなかった。
監督「うるせえ」
しずかに怒って二人の顔を叩く、興奮した二人は直を叫んで見せるが、その度に監督のビンタが飛ぶ。頬痛みで次第に冷静さを取り戻して行く。
監督「大人しくしていろ」
監督の迫力に呑まれて完全に気後れしてしまった。男達が堅気ではないのを思い出した。眼光は、争い事が苦手な二人を震え上がらせるには十分だった。
監督「お嬢ちゃん、名前」
琴音「・・・姫川 琴音です」
本名など教える必要も無いが、ウソを咎められるのを考えると素直になってしまう。弱気な心に食われてしまった。
監督「ついて来い」
一行は誰も口を開かないで車まで歩いてきた。車はカメラマンがドアを開けたままエンジンを始動した状たでいた。最悪、逃走する準備を整えていたのがわかる。男達の手際の良さに二人は寒気を覚えた。
監督「琴音ちゃん。逃げられちゃ困るんでね。服を脱いでくれないかな。下着はいいからさ」
従順になった琴音に恥かしい命令をする。
琴音「・・・・」
監督「ダメ? それじゃ、脱がして上げよう。この場合だと下着も一緒に脱がしちゃうんだなこれが」
砕けた感じで言う。冗談のように言っているが、本気なのは、この場にいる全員が知っていた。優しさの裏に残忍なものを隠そうともしていない態度に琴音は恐怖を覚える。
琴音「警察に訴えますよ」
琴音は勇気を振り絞って吐き出すようにいう。その言葉を吐いただけで胸が締め付けられそうにまる。
監督「困るな。そしたら逮捕されて牢屋に入れられちゃうな。未成年の誘拐だもんな」
腕を組んで困った演技をする。
監督「それで、雅史くんは退学。ブルマを履いてアダルトビデオに出演したんだ。当たり前だよね。今日だけ我慢してくれれば何もしないよ。弱みを握って保険が欲しいんだ」
表情は笑ったままだが目は笑っていない。雅史を見捨てれば助かると示唆しているのだ。当然、琴音の性格を見抜いての事だ。これで、琴音は進んで身を任せるだろう。長年の経験が告げているのだ。
琴音「言うことを聞きます」
雅史「・・・ダメだ。姫川さん」
琴音「そのかわり佐藤先輩を許して上げてください。どういう経緯があったかわかりませんが、私が身代わりになります」
自分の胸に手を当てて、毅然とした態度で答える。
監督「無理だ。さっき、雅史くんは自分をおいて逃げろと君に言った。退学覚悟で警察に駆け込むよ。言うことは聞いてもらうが、身代わりにはお互いになれないよ。それは君達が相手を思いやって自分を犠牲にしているからだよ。悪い大人として忠告するが・・・」
途中で言葉をとぎる。
監督「どっちかが逃げたら、残った方にたっぷり罰を与える。これだけで二人とも逃げられなくなってしまうんだ。わかったら脱いでくれないかな?」
琴音はTシャツの上から、肩で止めるワンピースという格好で、腰にリボン型のベルトを巻いていた。ベルトを解いて肩のボタンを外すとワンピースが落ちた。次いでTシャツを脱いで両手で胸を隠す。
上下とも水色のブラジャーとショーツだった。足は白のハイソックスとスニーカーだった。
監督「靴を脱げ、雅史もだ」
大人しく靴を脱ぐ。
監督「二人とも手の平を組んで腕を伸ばせ」
戸惑いながら従う。
監督「動くなよ。動いたら二人で商店街を素っ裸で走らせるからな」
雅史「・・・」
琴音「・・・」
監督は皮ひもを取り出す。まず琴音の手首を縛って、そのまま腰に一回りさせる。緩んでいないことを確認すると臍の下から股の間を通ってお尻のワレメに疎って皮ひもを通す。しきりに腰を振る琴音に尻を叩いて動くなの意志を伝える。
琴音「何を・・・」
監督「少し痛いぞ」
股縄を思いっきり引張る。アソコとお尻の割れ目に皮紐が食い込んでいく。あまりの痛みに爪先立ちになって痛みから逃れようとしたら、そのまま荷物のように持ち上げられてしまう。
琴音「痛い、痛い。降ろして・・」
引き絞られた股縄と腰回りの紐を結んでやっと地面に足を着くのを許される。
琴音「きつい・・。弛めて」
監督「雅史くんの番だ」
同じ様に雅史を縛っていく、琴音の場合と違って股間に余計なものがある雅史は股縄は許された。その代わり手首のあまった皮紐は琴音の腰回りに結ばれる。これでは雅史が動く度に琴音の股縄を引張る羽目になる。
監督は琴音の手首に新たな皮紐を足して歩き出す。二人は首輪をされた犬のようについて歩くしかなかった。
監督「乗るぞ」
窓いう窓には、外から中を伺えない様にブラックフィルムが張られている。護送車のようなイメージを連想する。二人は白いワゴンに乗り込むしかなかった。逃げる機会はありえない。自由になる時は、総てが終わった後だろう。
乗り込んで扉が閉められる。サイドブレーキが引かれ車は動き出した。運転はカメラマンが助手席にヤンキーが座る。後部座席は取り外されていて、黒いゴムマットがしかれている。
雅史、琴音、監督の順番に乗り込んでいる。
琴音は小動物のように怯えきっている。拉致されているのだ。
監督は琴音の髪を掴んで乱暴に顔を上げさせる。
琴音「ひ、やめて」
雅史「乱暴するな! 大人しくしているだろう!」
雅史が抗議する時、手首の紐が動いて琴音の股間を刺激する。
琴音「痛い・・・。佐藤先輩、動かないで下さい」
雅史「ごめん・・」
監督は人差し指を指しこんで股縄をちょんちょんっと持ち上げる。
琴音「・・・や」
びっちりと食い込んだ縄は少しの刺激でも琴音を悶えさせた。
ヤンキー「いいな。俺にもヤラして下さいよ」
監督「ついたらお前がやるんだから黙ってろ」
ヤンキー「何処いくんすか」
監督「今いったらつまらんだろ」
ウキウキしてヤンキーは前を向き直した。
雅史「何処に行くんですか? いつ帰してくれるんですか?」
監督「場所はお楽しみだ。いいとこだよ。もっとも君達にとってはどうかはしらんが」
携帯電話を突き出す。
監督「連絡してくれ、妙な真似したら二人とも帰れなくなるよ」
黙って受け取って自宅の番号を押す。三回の着信音の後、雅史の姉が電話口に出る。
雅史「もしもし姉さん? 雅史。今日は浩之の所に泊まる。え、あかりちゃんはいないよ。二人だけ、邪魔なんかしないよ。うん、うん、それじゃ」
電話を切って監督に返す。
監督「誰だ浩之って?」
雅史「友達。たまに泊まるから怪しまれないよ」
しばらく無言で車は目的地に向ってひた走って行く。
琴音「・・佐藤先輩」
震えた声。
雅史「なに?」
琴音「藤田先輩を巻き込まないで下さい・・・」
雅史「・・・・・・・・・ごめん」
ヤンキーが下笑いを浮かべる。
ヤンキー「琴音ちゃんは藤田先輩が好きなんだ」
琴音は押し黙ったまま答えない。
沈黙は肯定を意味していた。
雅史は琴音の思いの深さに嫉妬を覚えた。浩之と琴音にどちらに対してかは解らない。それよりも、さっきの電話であかりの名前が出ても何も感じなかった。今の琴音の浩之への恋心のほうに侘しさを感じる。
雅史は琴音のことが好きでいるのに気づいた。
車は国道沿いの妙に立派なラブホテルの地下駐車場へと消えて行く。対して大きくも無い建物なのに地下駐車場は地下3階まであった。二人を乗せたワゴンは奥へ奥へと降りて行く。
地下3階。他に駐車している車は無い。
監督「ここだ。降りろ」
皮紐を引張る。股間の刺激を弛める為にイソイソとついて行くしかない。雅史は琴音の痛みを和らげるように張りつくようについて来る。
理緒「あひゃっ!・・お許しを・・」
駐車場に女性の悲鳴が響く。ついで、肉を打つ音。雛山 理緒の声だ。もっとも地下では反響して女の声だとしかわからない。そばには宮内 レミィがいるのだが雅史達の方からでは確認することはお互いに出来ないでいた。
監督「先客がいたか」
悲鳴を聞いて、二人はガタガタと震え出した。
SM。
鞭やローソクを使う。
監督「ここはラブホテルだが、別名SMホテルとも呼ばれている。その手の趣味の人の御用達の店だ。おい、さっきにいってろ。ちょっと挨拶してくる」
ヤンキー「解りました。いつもの部屋でいいんですか?」
監督「ああ」
監督はなおも悲鳴と肉を打つ音のする方に歩き出す。
二人はヤンキーに連れられてエレベータに乗る。中は豪華な装飾を施されていた。琴音は既に恐怖の余り涙目になっている。
琴音「ごめんなさい。ごめんなさい。佐藤先輩、わたしがいけないんです」
泣きながら歩かされる琴音。
雅史「・・・どうして? 悪いのは全部ぼくじゃないか・・」
泣きそうな声で雅史が答える。
琴音「みんな不幸にしちゃうんです。わたしなんか生まれてこなきゃよかったんだ」
鼻声で独白する。
琴音「ごめんなさい。ごめんなさい。グスッ」
琴音は不思議な能力で不幸を呼んできた。自分に関ったばっかりに佐藤先輩を不幸にしている。今の琴音は、浩之に会う前の一人ぼっちの姫川 琴音に戻っていた。
全てを避けて、未来さえも閉ざしたあのころに。
雅史「僕は姫川さんが好きだ!」
突然の告白に沈黙が刺す。
ヤンキー「ラブコメは後でな」
扉が開いて窓一つ無い真っ暗な部屋が目の前にあった。
突然の告白に、した方もされた方も心臓が早鐘のように打つ。
明かりがつく。
鉄格子の中にはX型の張りつけ台に三角木馬、様々な鞭が掛かっている壁。端っこには安っぽいベットがある。ソファーに膝ぐらいのテーブル、そしてロッカー。
二人は、ほとんど同時に逃げ出そうとする。皮紐で拘束されている以上、ヤンキーの腕一本で振りまわされる。琴音の股間に二人分の遠心力がかかる。激しい苦痛。
琴音「あうああっ」
二人はその場にへたり込んだ。
ヤンキー「ひゃひゃひゃひゃ。たっぷり遊んでやるからよ」
ヤンキーの笑い声が高らかに響く。それは始まりのラッパであるかのように・・。
ども、井川 正寿です。
まーた。引っぱちゃった。反省・・。
これが僕の味だと思って優しく(中村 玉緒を見るように)見守って下さい。
琴音と雅史が両思いになれるかどうかは行き当たりばったりです。作者は何も考えていません。
理緒とレミィはファミレスの情事の後に連れこまれているわけです。その話しもいずれ書きます。雅史編では出演予定は無いんじゃないかと、自信が・・。
久しぶりに解説らしい。
井川日記
会社の休業が決定しました。2年間、休眠します。
3月ぐらいから、更新スピードは確実に落ちてしまいます。
楽しみにしている人(いるのかな?)もうしわけありません。
2003年度には、おそらく早くなっていると思います。それまで2月いっぱいは全力で書かさせていただきます。見捨てずに応援してください。PNも絶対に変えないで何年かけても完結させます。
こんな私に励ましのメールを。
本当に皆さんのメールを見ると活力が溢れ出てきます!!