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太陽の中の殺人者(上)
ヨッシ―/文


  予告編

  愛してくれた人が、人種問題に巻き込まれ無実の罪で殺されてしまう。

  神と恋人に仇を誓った、アカネ・テンドーは、愛銃コルト45を片手に

  保安官達に殺戮・拷問を繰り返すが、同時に自分も破滅の道をたどる。

  アカネ・テンドーの波乱の一生を描くウエスタン小説である。

 

  時は、1880年。

  誰もいない長く続く道には人影も無ければ家の影も無い。

  そこに、二人の馬に乗った人影が見えた。

  服装、ガンベルトからしてガンマンとわかるが女性である。

  彼女の名をアカネ・テンドー(天道 あかね)という。

  もう一人も女性だ。

  しかし、服装は当時の女性の一般着である。

  名をアカリ(雲竜 あかり)といい二人は歳が16、15と若く親に捨てられた姉妹。

  特にアカネは、人を殺した事があり出所してからはアカリと共に放浪生活をしている。

  しかし、二人の食料は尽き、同時に無一文であった。

 「おなか減ったよ、お姉ちゃん。」

  と普段は泣きごと言わないアカリだったが今日は違った。

  それもそのはず、二人は、五日間何も口にしていない。

  アカネは、必死に家を探すがそれも見つからない。

  太陽から出る熱線は、二人の体力をじわじわと奪い取っていく。

  アカネの愛用銃、コルト45とガンベルトも今は光の反射する鏡になっている。

  それと反対に、アカリのために買ってやったガンベルトは荷物のなかに埋もれている。

  アカリは、銃を好まず心優しい少女であり、平和を愛する少女であり

  姉のアカネは、粗忽者で短気でありとこんなに差がでる姉妹もそうめずらしくはない。

  アカネは、馬の上でグッタリして綱を引いているアカリに声を掛けた。

 「大丈夫か?アカリ?」

  じーと、アカリが、アカネの方を見た。

 「大丈夫よ、これくらい。」

 「あと、もう少し我慢してくれよ。」 

  二人は、馬を歩かせ、同じ景色が続く道のりを、いつ着くかわからない家の灯

  に向かって進んでいた時に、あかりの両手が

  ドっと、身体が一回叩き付けられた後、バウンドしてそのまま動かなくなった。

 「おい!」

  アカネは、絶句をあげた後、急いでアカリの下に急いだ。

 「しっかりしろ!」

  うつ伏せになって倒れているアカリを仰向けにした。

  アカネは、瞳孔を開いているアカリに頬を叩いて反応を調べたが反応はない。

  しかし、息はしている。

  アカネは、腰に着けてある容器から残り僅かな水をアカリの口に入れた。

 「おい、しっかりしろよ。」

  あかねは頬を叩いた。

  僅かながら、意識が戻った。

  こうなれば、僅かな望みを賭けて、この道を通る人に

  助けてもらうしかないと思った。

  しかし、この時のアカリは、脱水症状を起こしていて極めて危険な状態だ。

  アカネは、丁寧にアカリの頬から出る汗を拭き取りながら助けを待った。

  そして、幸運にも馬車がアカネ達の方角へ近づいてきた。

 「馬車だ!」

  アカネは、手を肩幅いっぱいに振った。

 (助かるかもしれない。)

 「助けてくれ!」

  アカネの声で、馬車は近づいてきた。

 「おい、どうした!」

  馬車を運転していた人物が、真っ先にアカネの下にかけつけた。

 「助けてくれ!」

  アカネは、慌てふためき、かけつけてくれた人物にいきさつを説明した。

  助けてくれた人物は、わかったらしく

 「よし、馬車に運ぼう。」

  なんとか、馬車には誰も乗っていないので

  アカネは、荷物も一緒に乗せてもらい、助けてくれた人物もアカリを乗せた。

 「ここから、牧場まで一気に突っ走るぞ!」

  馬車が、牧場に向かって走っていった。

 

 「名前は?」

  アカネは、助けてくれた人物に尋ねた。

 「ロバート・ショー。」

  と呟いた。

 「ごめん、助けてくれて。」

 「気にすんなよ。」

  アカネは、苦しそうにしているアカリを楽させようと、首に巻きつけているバンダナを

  使い、額に出る汗を拭き取りながら話す。

 「ここから、どれくらいだ?」

 「1.2キロ、すぐ着くさ。」

  今度は、手綱を持ちながらショーが話しかけた。

 「おい、なんていう名だ?」

 「アカネ・テンドーよ。」

 「お嬢さんが、銃持って何やってんだ?」

 「何も。」

 「ということは今、銃も役立たずで

  食いモンに困っていらしゃるのか?」

  アカネは、驚いた。

 「なぜ、わかった?」

  ショーは、にやけた。

 「若い頃、同じ経験したもんでね。なんせ、俺は50歳。

  妻は、逃げられ、昔の悪党も、今は伝説さ。」

  そして、馬車はショーの家路に向かって走っていた。

  途中でショーは、馬の綱を持ちながら歌を歌っている。

 「♪さよなら、アメリカ美人。

        もう、合えないよ♪

         愛しているのさ、いつまでも♪

          この気持ちいつまでも♪」

 

  ショーは、馬車を停止させて言った。。

 「見てみな。」

  アカネは、馬車のドアを開けた。

  辺りは、周囲4kmはあろうかという広大な牧場で何百頭の牛が声を上げながら優雅に歩いている。

 「さあ、運ぶぞ。」

  意識がもうろうとしているアカリをショーが運び、アカネは荷物持ちだ。

  そして、ショーは牧場の中にポツリと建っている家の中にアカリを運んだ。

  アカリは、ベットの上に寝かされた。 

  アカネも、アカリの下に駆け寄った。

 「今夜が、正念場だぜ。」

  ショーは、薬と水を持ってくるため部屋を後にした。

  アカネは動いてくれないアカリの手を握った。

 「がんばってくれ。」

  何と、アカリの体力はアカネとショーが思っていたよりも回復が早かった。

  しかし、アカネは妹の事が心配でショーとその助手のいる食卓を何度も離れていた。

  その回数が、10回に達した時、ショーが声を掛けた。

 「アカネ、心配するな。

  あんな病気すぐ治るさ。」

  ショーは、持っていたコップを置いた。

 「だが、俺の時代に付いた名誉ある傷は、なくならないがな。」

  と、しゃべった後、大笑いする。

  アカネは、席についた。

  そして、ショーは、腕を見せた。

  腕には、10cmの傷がある。

 「これはな、ナイフで決闘したときに受けた傷だ。

  まあ、この傷を受けた時、我を忘れて相手をめった刺しにしたけどな。」

  アカネは、笑った。

 「なかなかのもんじゃないか。」

  ショーは、アカネの胸に触った。

  その光景を見ていたショーの助手、ブルマンはおもわず声を出してしまった。

 「あっ!」

  アカネは、ショーの頬を、思いっきり張った。

 「あんた、なにすんの!?」

 「俺は、昔オーストラリアに行って女とヤりまくっていたが

  お前の胸は、一番出来が悪いな。」

 「なんだと!」

  アカネは、ショーの襟首を掴んだ。

 「一番、気にしている事を・・・!」

  ショーは、笑ってごまかした。

 「そんなことはないぜ、冗談だよ。」

  ブルマンが、誤った。

 「酒を飲むと、こんな風になるんだよ。」

  アカネは、ショーの襟首を離した。

  ショーが、酒の入っているコップを持った。

 「乾杯しようぜ、アカネの胸に。」

  アカネも酒の入っているコップを持った。

 「乾杯しようぜ、ショーの名誉ある傷に。」

  そして、三人は乾杯した。

  コップに入っている酒が揺れる。

  そして、二人は大笑いした。

  ショーが、アカネに言う。

 「お前の、ヤキモチをやくところがおもしろいんだよ。」

  家の窓から見える景色は、空に満月、雲一つ無く、人一人もいない。

 「なんだ?」

  アカネは、感づいた様に席から離れ窓の方に向かった。

 「今、人の気配が・・・!」

  ショーが、アカネに声を掛けた。

 「草のざわめきさ。」

  あかねは、再び席に座り、話題を変えた。

 「ところでさあ・・・。」

  そして、飾ってあるライフルに指差した。

  そのライフルには、英語で“インディアン撲滅'と書かれている。

 「どうしたんだ?このライフル。」

  ショーは、コップに残っていた酒を飲み干し、アカネに話した。

 「実はな俺は、悪党から足を洗うために軍隊に入ったんだ。

  まあ、ある事件がきっかけでな。

  牧場から、町までは1.5キロあるんだがその町で、殺人が起こった。

  殺されたのは、少女(06)で若かった。

  その少女は、この町を収める保安官の娘で、怒った保安官は

  この町に旅の途中で立ち寄っていたインディアンである男性を捕まえた。

  彼は、保安官との取り調べで必死に“自分は無罪だ!!’と訴えた。

  だが彼の願い空しく、三日後、彼は縛り首になった。

  それから三日後、別のインディアン民族がやった事が分かって

  彼の無罪は証明された。」  

  ショーは、一息つくために酒を自分のコップに注いだ。

 「むなしいな。

  彼は、もうすぐ結婚するはずで幸せを掴む直後だったのにな・・・。

  それから、この町や周辺にいるインディアン民族を全滅するために軍隊が作られた。

  俺は、その軍隊に入った。

  そして、軍隊に入った者にこう継げられた。

  “かたっぱしから、女、子供を問わず片っ端から殺していけ!’

  だから、俺は言うがままに片っ端から殺っていった。

  今も忘れられねえ、女と子供の悲鳴。

  悲鳴が上がった後、殺した武器が真っ赤になっちまう。

  なんか、その後、空しさが残された。

  まあ、民族差別が招いた結果だろうな。」

  ショーは、十杯目の酒を飲み干した。

 「今でも、自分が銃で殺している夢でうなされている。」

  アカネは、ポツリと言った。

 「なんか、むなしいな。」

  ショーは、わずかに残っている酒の、水面に写っている自分の顔を見ながら歌った。

 「さよなら アメリカ美人♪

        もう 会えないよ♪」

  しばし、沈黙が流れた。

  やがて、ショーがブルマンに

 「ちょっと、ギターを貸してくれ。」

  ショーは、ブルマンからギターを渡されると歌を歌い始めた。

 「♪拝啓、アカネさん お元気でお過ごしでしょうか

   暑中見舞いのつもりが ポストにたどり着けずに

   残暑見舞いになってしまいました

   みちのく旅したお土産に 浜辺で拾った星の砂

   九月というのに東北は  まだまだ猛暑が続いています

   ああ会いたい ああアカネさん

   内気なこのおれ笑うよに お空でカラスが鳴いている

   お池でアヒルが鳴いている

   愛は果てなく遠いです 好きだ・・・あかねさん 敬具♪」

   そして、ギターを弾いているショーの手が止まった。

 「どうだ?」

  ショーが言った。

  アカネが頷く。

 「いいじゃない。」

  という風に今夜は、盛り上がっていた。

  それから時計が、二時を指した頃

 「私ちょっと寝るわ。」

  アカネは、ベッドを貸してもらいアカリと同じ寝室で寝ることにした。

  ショーが、アカネに声を掛けた。

 「今日は、ゆっくり寝な。」

  アカネは、食卓のある部屋を後にした。

  残されたブルマンとショー。

 「俺達も寝るか、ブルマン。」

  アカネは、服を脱ぎ、ベットに横たわっていた。

 (ショーって変人だな。)

  虚空を見上げていた。

  と考えている内にアカネの意識がもうろうとしてきた。

 (私も、早く寝よ。)

  そして、アカネが完全に熟睡した後、それを見計らったように寝室のドアが開いた。

  無論、アカネは気付いていない。

  ショーは、アカネが寝ているベットに向かった。

 「おい。」

  ショーの声に、アカネが目を覚ました。

 「ショー?」

  アカネが、目をこすりながら言った。

 「まさか、夜這いしにきたんじゃないだろな?」

 「夜這いしに来たって言ったらどうする?」

 「私のコルト45が火を吹く事になってショーの顔に空洞ができる。」

 「ならば、そのコルト45が俺の手元にあったらどうする?」

 「まさか・・・!」

  アカネは、枕下にあったコルト45を探したが見つからなかった。

  そして、コルト45の銃口がアカネの顔に向けられた。

 「ずるい!不意打ちなんて!」

  しかし、ショーは無言でゆっくりと引き金を引いた。

  アカネは、目をつぶった。

  ついに、弾は発射されたとアカネは思っていたが転じて弾は発射されなかった。

  ショーは、一笑いした。

  と、同時にアカネはショーの頬を今まで以上に思いっきり張った。

 「君の、驚いた表情が見たくて・・・。」

  ショーの頬が、赤くなっている。

 「は!? 何考えてんの!?」

  アカネは、コルト45を取り上げると立ち上がった。

 「もうちょっと、プロポーズの方法があんじゃないの?

  あんた、ほんとに悪党ね!」

  ショーは、笑いながら言った。

 「アカネこそ、俺に告白したかったんじゃないのか?

  例えば、俺に乳を触られた事なんかほんとは嬉しかったんじゃないのか?

  “私に興味を持ってくれた!’って思っちゃたりしたりして。」

  アカネは、赤面して何も言えなかった。

 「俺が、“拝啓、あかねさん’を歌ったのは君に対してのプロポーズだ。

  そして、今からする行為も・・・。」

 「早くいってよ、そう言う事。」

  とアカネは、ショーにくちづけをした。

  ショーは、驚いていた表情を見せる。

 「やっぱ、アカネはかわいいよ。」

 「まさか、愛するとは思わなかったけどね。」

  二人は、またキスをした。

 「何か、不思議な気分だ。

  君のキスがこんなにおいしいなんて。」

 「そうかな?」

 「舌もおいしいぜ。」

  アカネは、うれしがった。

 「こんなに、ヤキモチ焼いていた私がバカみたいじゃない。」

  と言っている内に時計は夜中の三時を過ぎていたがそんな事は気にもせず

  二人は、お互いを愛し合っていた。

 

 

 


解説

 初めて、西部小説を書きましたが

 まだまだ未熟で、予定外の展開になってしまいました。

 でも、魔界転生2と平行しながら書いていこうと思っています。

 

 主な登場人物

 

 アカネ=テンドー  放浪生活をしている女ガンマン。

 (天道 あかね)  助けてもらったショーの事を好きになる。

           ちなみに、アカリは彼女の妹である。

 

 アカリ=テンドー  アカネの妹。

 (雲竜 あかり)  旅の途中で、脱水症状を起こし命が危ぶまれたが

           ショーに助けられたことで一命を取り留める

 

 ロバート=ショー  牧場を営んでいる中年男で、アカネ達を助ける。

           アカネを好きになる。

 

 長くなりましたがよろしくお願いします。

 


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