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奥の花は手折られて 3
SIS/文
じょん/画


  サーシャ王女の寝室は一国の姫君としてはさほど大きくも無く、質素であった。

  育ちなのだろう。一国の主というよりも軍人である父の性質を受け継いだか、飾り付けや雰囲気でわずかに女の子を主張している程度でむしろ清潔感がすがすがしさを満たしている、そんな部屋であった。

  その部屋で、今、サーシャは辱められている。

 

  ――イヤっ、イヤぁっ……こんなのイヤあっ!

  心の中でサーシャは叫ぶ。

  陵辱が始まってから1時間。中年貴族であるコッダはその性格に合わせたのか、単に性趣向なのか、ネチネチとサーシャの肉体をいたぶっていた。

  サーシャにとっては永遠にも等しい拷問であっただろう。目は霞み、下着姿の体は――手枷は外されていたが――すっかりと抵抗できなくなっていた。火照った体には汗も浮かぶ。

  彼女の肉体は今や彼女の意思から離れ、コッダの言葉に従う操り人形となっていた。そればかりか体に染み込んだ闇魔法が肉体を淫らに反応させ、サーシャの性的な琴線を掻き鳴らす。

 「次はですね。そのかわいらしい指で私の服を優しく脱がすのです……そう、馬乗りになったままで」

  コッダの口から発せられる淫猥な命令に従順に従うサーシャの体。細い指が男物の服のボタンを一つ一つはずしていく。

  半裸の姿でコッダの肥満した腹に太ももと尻を密着させたサーシャは、イヤでもコッダの肉体を直に感じざるを得ない。コッダのでっぷりとした体。そこからじわじわと伝わる体温と汗。生娘であるサーシャにとって異性物のような生き物に生身を触れているだけで、おぞましいほどの嫌悪を覚える。

  ――離れたい。逃げ出したい。……助けてっ……!

  心の中は拒絶の感情でいっぱいに占められていた。でも、体は離れようとしない。それどころかコッダの脂肪の塊のような腹や胸、腰といった上半身の体を撫で回しながら少しずつ衣服を外していく。

  ――こんなこと、したくないっ。したくないのにぃっ……。

  やめられない。

  オトコの服をじっくりと脱がしていく行為。オトコの肉体をまさぐるかのようなサーシャの指。それらは不潔な背徳感を際立たせ、潔癖だったはずのサーシャの心に別の因子を植え付けていく。冷たかった細い指や手は、いつしかコッダの体温が移ったかのように熱を帯び始める。

  ――……これが……オトコの人の肉体……。

  やがて、コッダの上半身は裸になった。

  サーシャにとって初めて見て、初めて触れるオトコの裸体。それは丘のようにでっぷりとした腹で、生き物である証拠に生きた体温と湿気があった。

  そしてそんな息づいている色欲の塊に体を密着させている自分。サーシャの背筋にゾワっとしたものが走る。

 「さて。あなたはわたしに抱き付いて、この体の感触を十分に味わうのです……胸、舌、唇。すべてを使って覚えなさい」

 「…………!」

  コッダの言葉が耳から入り理解に達すると、サーシャの無言の拒絶は絶叫にまでなっていた。しかし、彼女の肉体は言葉に逆らうことなく、コッダの大きな腹に自らをうずめる。

  ――っ! っっ!!

  サーシャの顔全体も、胸も、お腹も。コッダの汗ばみ始めたスベスベとした贅肉の弾力をイヤと言うほど味合わされる。彼女の顔面は贅肉の中に埋まり、中年の欲望にまみれた汗のにおいがサーシャに取り込まれる。キャミソールの薄布一枚にだけ包まれた可憐と言っていい彼女の胸、腹、腰にも、ムニムニとした不気味な肉の感触と欲望に火照った体温を布地越しに押し付けられる。

  今や、サーシャは肉に犯されていた。

  もう何も考えられない状態にまでにサーシャは追い詰められている。感情の許容範囲をとうに超えたこの異常なシチュエーションは、うら若き姫君にとって到底耐えられるものではなく、感情と思考が麻痺し逃避に堕ち込んでいく……。

  ――わたし……コッダの体を……?

  コッダの言葉を思い出した。この肉体を味合う……。

  サーシャの細身の体が動き出す。コッダの腹の上に埋め込まれるくらいにまでしがみついたまま、前後に蠢動し始めたのだ。

  それはあたかも年端も行かぬ少女が不釣合いにも歳をとった中年貴族に愛人としての求愛を求め、甘えているかのようにも見える。それほどまでに背徳的で異常性を伴う光景である。

 「ん……ふ……んふっ……」

  肉に埋もれて呼吸も満足にできないサーシャから漏れる鼻息が荒くなる。

 「そう……いいですよ……。舌も使って……」

  よく分からない。分からなくなっている。

  顔に密着したブヨブヨの皮膚に唇を這わせると、舌がチロリと覗き、唇とともに這い始める。コッダの腹にはナメクジの通った跡のように、ネバった液体の筋が残る。サーシャから漏れた唾液だ。

  ――冷たい……この感じ……。

  唇と舌から伝わる初めての触覚。そして、しょっぱいような味覚。こんな感触など想像すらしたこともないサーシャにとって、この未知の感覚は嫌悪とも不潔とも混ぜ合わされた奇妙で避けるべきものだった。

  しかし、止まらない。止めたいのにやめられない。

  コッダの命令でも淫らな呪術によるものでもない、サーシャの中で何かが生まれようとしている。嫌悪と背徳を強制的に刻み込まれることで、奥底に何かが滲み出てくる。

  染まっていくことを体現するかのように、舌の動きが次第に大きくなり、濡れた唾液が広がっていく。体全体の動きも大きくなっていくと、サーシャの股間に何かが触れた。

 「きゃっ」

  ――な、なに?

  本能的に引いたのは、そこから出ている淫らな熱気を感じ取ったからだろう。……それは下着越しにも見て分かるほどに肥大化した、コッダのペニスだった。

 「い、いやっ」

  避けようとしたサーシャの両肩をコッダが掴み、押し戻す。

 「おしつけて。続けなさい」

  ビクんっと一瞬の抵抗の後、サーシャは従う。

奥の花は手折られて 3

  ――そ、そんな……コッダの、あんなのが……わたしに……。

  目を逸らそうとしても、それを追ってしまう。自分のそこがテントのように張ったコッダの下着に、恐る恐る近づいていく。

  まだ触れてもいないのに、伝わるはずのないペニスの熱量がサーシャの大事なそこに熱く移り始める。禍々しい何かが伝播したかのように、熱く息づき始めているのはコッダのモノだけではなかった。

  そして、触れる。

 「――ひっ!?」

  直接伝わる、硬く熱いモノ。それがサーシャの股間に押し付けられる。

  固体のように硬く、でも生き物のような弾力。そして体温以上に発している熱いばかりの熱。

 「そのまま、こすって」

  コッダの無常なばかりの命令が響く。コクンと力なく頷くサーシャの瞳には強い意志の輝きはとうに失せ、抵抗に疲れた霞んだ色が浮かんでいた。

  ――これは魔術のせい……こんなこと、わたしはしたくない……でも仕方がない……抗えないの……。

  誰にともなく弁解を心の中で繰り返すサーシャ。それは裏返せば、いま自分が為している淫らな行為そのものを認め始めたとも言えなくもない。言い訳しつつも、ヤラしいコトを続ける。続けようとしている。

  ずっ、ずっ、ず……。

 「ん、く、くんっ」

  サーシャの恥丘とコッダのペニスが下着越しに擦れ合わされる。そこから生まれる刺激は、背徳や嫌悪とも合わさって、より淫らな刺激となってサーシャに返ってくる。そして、それはサーシャが初めて味合わされる種類の感覚であった。

  ――熱い。硬い。ジンジンする……。

 「血は争えませぬな、サーシャ様」

  コッダがニヤつきながら話しかける。

 「やはりあなたはリーザ様の娘だ」

 「んくっ……お前なんか、お前なんかに……おぐっ!」

 「拒みたくても求めてしまう……肉欲に溺れたい自分を抑えようとする、その顔……そそりますなぁ」

 「ひ、ひぃっ! やぁっ!」

  首を必死に振って拒絶する。しかし、男と女の性器はより強くなすりつけ合う。動きも早くなる。

 「くぁ、ぁぅっ、く、くぅっ」

 「ひょっとしてサーシャ様、感じていますな?」

 「そんな……、違うっ」

 「しかし、下穿きはもう湿っていますぞ」

  コッダの言うとおり、性器同士が擦られている下着はぬっとりと湿り始めている。そこは湯気が出そうなほど熱く火照り、熱気とともに臭気まで発するかのような空気を醸し出している。コッダ自身の先走りの液、そしてサーシャからにじみ出た淫らな体液が互いの下着を滑らせて混ざっていく……。

 「こんなのっ、違うぅっ!」

 「なら自分で」

  サーシャの細い手首を掴むと、コッダはそれを自分の下着の中、自分のオトコのモノに導いた。

 「確かめて御覧なさい?」

 「ひ……」

  その不気味なもの。熱さといい形といい、サーシャにとって想像外の異形の生き物。反射的に手を引っ込めようとしてもコッダの握る手が離そうとしない。

 「な、なに、コレっ?離してっ! イヤぁぁぁっっ!」

 「これが、あなたを女に仕立て上げるのです……」

  とても正気など保ってられない。自分の秘所に、その肉棒の熱さと硬さが伝わり、体液の交じり合う感触が伝わっている……それが自分の手によって押さえつけられ、導かれているのだ。精神的な拒絶が限界を超え、半狂乱となってサーシャは激しくもがく。

 「ヤぁぁっっ! こんなの絶対にイヤあああっっっ!!」

 「そのまま押し付けてしごくのです。やさしく、はげしく」

  手のひらに直に伝わる忌まわしき欲望。その闇のエネルギーはおぞましい物体として硬さや熱を伝え、時折ビクつくかのように脈打つ。不気味な感触。

 「や……やぁっ……こんなのっ……絶対っ……」

  コッダのペニスを握らされたサーシャは、指の一本一本を熱い棒に絡めていく。指先がコッダの陰毛に絡み、チクチクと刺激を受ける。そこはコッダの体の他のどの部分よりも熱くヌメっているようにサーシャには感じられた。

  ――汚い……こんなの汚いよ……

  コッダの腰に乗ったままのサーシャは、再びコッダへもたれかかり体を密着させる。右手はオトコの下着に手を突っ込んだまま、中でゴソゴソと蠢く。

 「そのまま、さっきのように自分のに当てて。そして擦るのです」

  自分の掴んでいるモノを、手を添えたままヴァギナに押し付けさらに動き出す。さっきより強い感触、そして淫猥な刺激。

  じゅ、すず、じゅ……。

  音も熱気も臭気も漂いそうな、中年男と乙女の淫欲な行為。暗く淫らなおぞましさは熱となり波動となって、手と股間の両方からサーシャに侵食していく。

  何より、自分がこんなおぞましい行為をしていること……サーシャの澄んでいたはずの心にも、次第に染めていく闇色の何かが確かにあった。

  ――この感じ……ヤなのに……汚いのに……助けてよぅ……。

  ヴァギナから溢れる刺激。その刺激はイケないこと、ヤラしいこと。汚らわしいこと。

  それを自分からペニスを握り、自分で腰を押し付けて、さすって……。自分で刺激を求めて…………。

  その淫らな刺激を求めて。

  熱が、生まれる。

 「あ、ぁ、ぁ、ぁ…………んぁっ」

  今やサーシャは熱に浮かされている。手の動きも、腰を押し付ける行為も、自ら求めるかのように、せわしく淫らに蠢動する。

  欲情している。

  顔は赤く火照り上気し、口の端からよだれが妖しく垂れている。弱まった意思に取って代わるかのように、鈍く暗い光が瞳の奥深くに灯り始めている。

 「ぉぅ……サーシャ様、いいですよ……そのまま、そのまま……」

 「ん、ん、ん、んぅっ……!」

  コッダも激しく動いている。下から突き出し回転するかのような動きはサーシャの淫欲を更に加速させる。

 「や、っぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ!」

  感極まる先がそこにある。流れ込むかのような淫楽が、熱さも淫らな刺激が、その頂点が近い。サーシャも形振りかまわずそれを求めようとする。

 「あ、あ、あ、ぁぁぁぁ……!!」

 「おぅ、お、ぉ、ぉ、ぉ……これは……」

 「もうっ、ダメぇっっ!!」

  ビクんっっ……。

  一筋の大きな衝撃がサーシャの背筋を走り抜ける……。

 「ぁぁ…………」

  それは。

  サーシャの知らなかった、未知の到達点。

  淫らと汚辱の先にあったその頂上が、初めてサーシャの体を貫いた。そして、何も知らなかった無垢な少女の体に刻み込まれる。

  ――これ……なんなの……。

  先ほどまでに散々に苛まされた嫌悪感も、なにもかもが霧散するかのように、その新しい感覚に溶け込んで行く……。

  が、現実は続いている。

  コッダの下からの突き上げは、サーシャの付け根を強く刺激し、余韻に浸るサーシャを我に返させる。

 「! あぁっ、コレ、なによぉっ!!」

  急に戻された現実と、継続して襲ってくる強い刺激。絶頂の残りも相まってサーシャを再び淫らに押し上げる。

 「やだぁっ……またっ……や、ヤぁぁっ!」

  思わず反射的に、コッダのペニスを強く掴む。

  コッダのペニスにピクンっとした微妙な感触。サーシャの本能にヤな予感が走る。

 「ヤ、ヤだ……なにっ?」

 「おぅっ……!」

  瞬間。

  びゅくんっ……。

  熱く放出されたものが感触となって、サーシャの手の平から手首、腕、コッダと密着させていたお腹に急激にはじける……。

 「きゃっ」

 「ぉぉぉ…………」

 

  最初、サーシャは何が起こったのか理解できなかった。

  絶頂でよどみかけた意識を、淫らな刺激で無理やり戻され、そして自分の手と腹に広がった熱い衝撃。

  「何かが終わった」と、どこかで考えると空虚な中に意思が戻り始めてくる。

  ――わたし……コッダのお腹の上にいる……。

  どこかに合わせていたものではない、無意味に天井に浮いていた視点がハッキリしてくると、下を見下ろす。

  そこにはコッダが下品な顔を満足そうに蕩かしていた。荒い呼吸を示すかのように、肥満した腹が上下している。

  ――手が……コッダの下着の中に……。

  引き抜こうとすると、ずるりと滴る感覚。熱いトロミのついた濁液と冷たい空気。……手は、濡れていた。

  ――なに、この乳液?

  臭気は、たちどころに広がる。鼻腔にその空気が入るときに、その液体が自分の腹から下の体中に、下着にまでネットリと沁みこんでいたことに初めて気づいた。

  その際に目に入る、コッダのペニス。

  呆けた頭の中ではそれが何なのか分からなかったが、自分についている液体が、その先端から溢れている。

  ――ああ……。これコッダの…………。

  意識が戻ってくる。

  ドクン。

  胸騒ぎ。何か大切なものを失ったような、急に襲ってくる孤独のような不安感。

  ――わたし……抵抗できなくって……コッダの言いなりになって……。

  ドクン。

  ――コッダの服を脱がして、裸になって……。

  ドクンドクン。

  ――だ、抱きついて……舐めて……唇まで奪われて……アソコを舐められて……わたしもイヤらしいことを……。

  自分のした忌まわしい行為が、肌にそのときの感触が……ぞわぞわと蘇ってくる。

  ――コッダの……オトコのあそこを……。

  やだ。思い出したくない。これ以上、知りたくないっ。

  ――握らされて……しごいて……。

  生理的嫌悪。汚辱。性的な刺激。そして自分の中に生まれた、淫猥な肉欲。

  ――自分のに、押し付けて……さらに強く……。

  思い出されたのは忌まわしい行為だけではなかった。今までになかった刺激。背徳的な忌避すべきイヤらしい「感じ」。そして。

  ――そのコトに魅かれてしまった……わたし……!

  どくんっ…………。

  コッダの射精。サーシャのお腹で弾けたあの感触……! 体に受け止めたのは、染みこんだのは、コッダの欲望の精液。

  そして最も認めたくなかったこと……そのとき、サーシャは……。

  ――わたし……穢されて……悦んでいた……!?

 

 

 「いっ……イヤァァァァぁぁぁっっ!!!」

 

 <続>

 


解説

 SISと申します。ご無沙汰でございました。

 この作品を読んで下さってありがとうございます。

 

 えっとティアリングサーガねたで「奥の花は手折られて」。王妃と王女があんなコトされちゃう話。今回はその第二話、第三話です。

 ……って、第一話を掲載したのって、いつでしたっけ?(夏です) それ以前に誰か覚えているのでしょーか?(難しいところです)

 

 前作ではデブ中年のコッダ君がリーザ王妃をいぢめていましたが、今回からようやくサーシャ王女に毒牙を向けます。

 しかし、連載モノ――1回しか掲載していない代物にそんな呼称が当てはまっているのかどうか、疑問ですが――をしばらく放ったらかしにしておくと、以前に考えていたことなんて、本当にどこかにいってしまいますねぇ。

 その一方で、眠っていた文章を改めてチェックしてみると「うゎっ、分かりづれぇ!」ってなことも浮き彫りになったりしますし。

 

 

 前回書いた時は小説の執筆は初体験だったのですが、今回も実質上2回目です。相変わらず初心者同然。

 当然、文章書きとして訓練されているわけでもなく、ひじょぉぉぉぉに稚拙だなぁと自分では思っていますが、どうでしょう? 見るに耐えられる文章が書けたかどうかが……不安です。

 一応、読みやすい文章――元ねたを知らない方にも――を目標に書いたのですが……上手くいかないものですね。

 

 できれば、で結構ですので、感想をお願いします。反応があると非常に嬉しいし励みにもなります。

 でもできれば「文章はこうした方がいいのでは?」「ここが分かりづらい」「構成もこの方が……」等の、技術的な指摘もあると次回作へのバネにもなって、ありがたいと思います。

 

 それでは、今年もよろしくお願いします。

 

 

 …………次は、いつになることやら? すでに構成グチャグチャだし。

 


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