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プレゼント プロローグ
夜行性/文


  六月の下旬梅雨明けまではまだ少しかかるはずだが、雲ひとつ無い五月晴れの日曜日、ここビッグサ○トには多数の人間が集まっていた。

              『 只今より、第・・回こみっくパーティーを開催いたします』

  恒例の牧村南女史によるアナウンスでイベントは始まった。

  「にゃははー、ゴメンゴメンちょっち遅れちゃったねー」

  ボーイッシュなショートカットの少女が、よく通る声でコスプレ広場にいた三人の少女達に笑いかける。

  マントをなびかせ、冬に新作が出たエアランドアームズUのガッシュのコスチュームに身を包んだ少女は、羽賀玲子。

  声を掛けられた少女達は、歴代の格闘ゲームのヒロインの達コスチュームに着替えている。

  ナコの夕香、桜の美穂、ワルキューレのまゆ。

  以上四名がコスプレをメインに参加しているサークル"チーム一喝"のメンバーだ。

  「予定の時間を三十分も過ぎてますよ」

  「どーせ、彼氏の所に行ってたんでしょ、私達とは最近プライベートでも付き合いが悪いもんねー」

  「ボク達を差し置いて一人で彼氏を作っちゃったんだもんねー」

  「女の友情は儚いと言うのは本当ですね」

  口々に不満を並べる彼女達に玲子は拝むように手を合わせ、頭を下げている。

  「だからゴメンて言ってるじゃない、それに千堂君とはあんまりデートもできないんだ。いっつも千堂君の所で売り子をしてる瑞希ちゃんに邪魔されちゃうんだよ……トホホー」

  頬を染めながら、それでいて落ちこんだ声音でつぶやくようにした言い訳を聞き三人が不思議そうな顔をする。

  「瑞希さんと言うと去年何度か一緒にコスをした方ですよね」

  「ああ、あのピーチのコスした子ね。確か同じ大学だったっけ」

  「カワイカッタよねー、ボク楽しかったよ。でもそんなに悪い子には見えなかったのにねー」

  眉をひそめる三人を見渡し、慌てた玲子は手を振りつつ言葉を続ける。

  「うーん、性格が悪いってわけじゃなくて、どっちかって言うと一緒にいると楽しい事の方が多いんだけど、二人だけでいる時間が全然なくなっちゃうんだ・・・。それに邪魔されるって言うよりもタイミングの悪さって言うのかな、二人きりになれるときに限って電話が来たり、差し入れを持って来るんだよ」

  にゃはははといつものあっさりとした笑顔で話す玲子を他所に三人は顔を寄せて話している。

  「……邪魔されてますね」

  「それとなくね」

  「ボクもそう思う」

  「…何か良い方法が無いかな」

  「………、こんな手は使いたくは無いのですが、弱みを握ってお引取りを願うのはどうでしょう」

  「わー夕香ってば過激」

  「…で?具体的にはどうするの?」

  「それはですねー……………………」

  「…………?」

  「………!!」

  「……………………」

  「くーっ、楽しそー!」

  「ひょとしてボク達って悪人?」クスクス…

  「ねーねー、なんの話し?久しぶりに集まったのに一人にしないでよー」

  「「「ヒャッ!!!」」」

  すでに悪巧みとなっていた三人の会話に玲子が割って入ってきた。慌てた三人は、ひきつった笑顔で誤魔化すと不思議そうな顔をした玲子を引きずる様に、ブラザー2のスペースに連れて行った。

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     『四時になりました。第・・回こみっくパーティーを閉会いたします。皆様お疲れ様でした』

  南女史による閉会のアナウンスが会場内に響くと会場のあちこちから拍手が響く。閉会時の恒例の風景だ。

  ブラザー2のスペースは撤収のために荷物をまとめている途中だった。

  「今日も、沢山の人が来てくれたね和樹」

  長い髪をリボンで横にまとめた活発そうな女の子が弾むような声と、笑顔で隣の男に話しかけている。

  「そりゃそうだ、綺麗所のコスプレ女子大生が五人も売り子をしてくれりゃ嫌でも手に取ってくれるさ、サンキュー瑞樹」

  和樹と呼ばれた男が笑いながら礼を言うと、瑞樹と呼ばれた女の子が頬を染めて荷物をまとめだす。

  「気にしなくてもいいよ、和樹の漫画が沢山の人に読んでもらえるんだから。それにコスプレも楽しいしね。沢山の人に見られるって結構気分が良いし」

  と、何かに気が付いたのか悪戯っぽい笑みを浮かべながら和樹に振り返り。

  「まあ感謝してるって言うんだったら打ち上げは奮発してよね、甲斐性の無い男は彼女に嫌われるぞ」

  和樹の手が止まる。聞きなれた声が近づいてくるのに気が付いたらしい。

  「にゃははははーせんどー君お待たせー。早く打ち上げに行こーよー」

  玲子を先頭に"チーム一喝"のメンバーがやってくる。

  「お待たせいたしました」

  「ボク達の方は終わったよー」

  「何かやることがあったら手伝うよ、招待された身だけど何もしないのも心苦しいし」

  いきなり華やかになった雰囲気に和樹は眩しそうな笑顔で撤収の続きを始める。

  「ありがとう、あとは大志の荷物だけだからいいよ、まったくあいつときたらすぐに行方を眩ますからな……サボることには努力を惜しまん」

  「心外だな、マイブラザー!まるで我輩が何の努力もしていないような言い草ではないか」

  いきなり背後から掛けられた声に驚くことも無く、和樹は大量の紙袋を指差す。

  「判ったからおまえは自分の荷物を持っていけ後はそれだけなんだから」

  「ううーむ、同志和樹よ、我輩の手にこの荷物の量はちと酷ではないか?どうしても一つがあぶれてしまうのだが…」

  「早く来なさいよ和樹!みんな待っているんだから…なーに?また大志が足を引っ張ってるの?そのぐらいの荷物なら、こーやって、こ−しちゃえばいいでしょ………ほらっ行くわよ」

  「マイシスター瑞希よ、この状況は少し息苦しいのだが」

  「なかなか酷い仕打ちだと思うぞ…」

  瑞樹の仕打ちとは、荷物用のビニール紐で紙袋の一つを背中に縛り付けると言うものだった。ただし、たすきがけの変形のように縛ったため、前から見るとヤバイ感じで胸元に結び目が交差している。Mの字が似合いそうなスタイルだ。

  "チーム一喝"のメンバーには大受けだったが、二次会場の居酒屋までの道程は、大志にとってオタクの十字架を背負わされたようなものだったろう。

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  「和樹、恥ずかしいからあまりくっつかないの」

  「いや、そのセリフは俺に言われてもどうにもならないんだが…」

  「にゅふふふ……、せんどー君これも美味しいよー、食べさせたげる,はいっアーン」

  「ああーっ」

  居酒屋の座敷に賑やかな声が響く。

  「うーん、んん……んぐっ」

  「ほら、美味しーでしょー」

  「だからやめなさいって、玲子さんもこいつを甘やかすとろくな事にならないわよ、朝起こすときなんかもすぐに寝なおそうとするし、先週だっていきなり呼び出したかと思えば夕食を作ってくれとか言われるし、二股掛けてるようなものじゃない」

  勢いに乗って言い放った瑞希のセリフに残りのメンバーがいきり立つ。

  「千堂さん酷いです」

  「それじゃあ玲子が可哀想じゃない」

  「浮気をするような不届き者にはこの戦女神の剣で裁きを下してあげよう」

  「だああー、それはどこから出したんだー」

  手荷物に入れてあったコスプレ用の剣を素早く構えたまゆが和樹ににじり寄る。

  「そんな事は気にするでない、同志和樹よ。その位の事に動じていては我等の野望の実現など夢の彼方に去ってしまうではないか」

  「いや、その前に身の危険だろーが、瑞希何とかしてくれ」

  「自業自得でしょ」

  「おまえのせいだろー」

  ジト目で言い放つ瑞希には訂正もフォローも期待できないと悟った和樹に、救いの女神が手を差し伸べたのは、まゆの剣が振り下ろされる寸前だった。

  和樹の体が横に引っ張られ、そのまま柔らかい物に頭が包まれる。

  「れ、玲子…」

  和樹の頭を胸に抱きしめたまま潤んだ瞳で玲子がまゆを見つめる。

  「まゆ、千堂君に怪我をさせたら許さないよ」

  「……う、うん…」

  気圧されるように引き下がるまゆと、思わずシリアスなシーンに突入したため動きの止まってしまった瑞希達。

  玲子が腕に力を込めながら瑞希に向かって語りだす。

  「二股でもいいよ千堂君、瑞希ちゃんなら…。浮気されるのは悲しいけど、瑞希ちゃんは私なんかより付き合いは長いし料理も上手だし、千堂君が選ぶのならしょうがないかなと思うよ…」

  寂しそうにけれど明るい笑顔を瑞希に向け、さらに力を込めて口を開く。

  「でもね、負けないから。瑞希ちゃんが千堂君を好きなのと同じくらい私も千堂君が好きなんだから」

  真正面からの宣戦布告。酒に酔った玲子が自分の台詞に酔いながらも始めて瑞希に対して語った本心だ。

  ただし、周りのギャラリーの存在をまったく失念していたが。

  「よく言ったわね、玲子」

 パンパンパンパンパン!(畳を叩く音)

  「ブラボー。その心意気に我輩は素直に感動したぞ!。同志和樹よ貴様の行く手には幾多の苦難が待ち受けていることだろう。しかし!それを乗り越え我等の野望を実現させるために更なる力を身に付けるのだ!」

 パンパンパン……(さらに畳を叩く音)

  「ボクは玲子の味方だよ」

  「瑞希さんもライバルとして玲子に負けないようにしてくださいね」

 パン……パン……パン……(力なく畳を叩く音)

  「なっ何で私が和樹なんかで玲子ちゃんとライバルに…ならなくちゃ…」

  頬を赤く染めながらも何とか強気になろうとしている瑞希が視線を泳がせながら呟いた。

  「それに肝心なのは和樹の方だし…って、和樹!!」

  「えっ、せんどー君がどーしたの?」

  玲子が抱きしめた和樹を見たときそこにあったのは玲子の胸に顔を埋めたままぐったりとした和樹だった。

  その表情は苦悶とも言えず幸せそうともいえなかったが。

 

 続く

 


解説

  皆様始めまして、夜行性と申します。

  この度当サイトに感化されて、一本書き上げようと筆をとりました。

  今回はプロローグですが、…………ごめんなさい初めて書いたくせにエロが無いです。

  おまけに状況の説明が不十分かもしれないのでここでフォローしてしまうことを懺悔します。

 

 ・ こみっくパーティーの玲子エンドの後日談になります。

 ・ 和樹と玲子は、半同棲生活をしています。

 ・ チーム一喝のメンバーは和樹と同じ大学に在学していることになっています。

 

  時間軸と状況ははこんなところです。その他の細かいところはPC版の方の記憶に沿って書いているので、記憶違いや、細かい設定のずれなどもあるかもしれません。(DC版はコマンドが難しくて…(へたれゲーマーなもので…)

  皆さんの突っ込み及びフォローは大歓迎です。

  場合によってはそれをネタに何か書けるかもしれませんし。

 

  今回はプロローグですので次からはエロを書きますよ。

  俺は瑞希をいぢめたくて書き始めたんだから。

  うーん、しかしここには一茶様が居るからなぁ・…………………頑張ります。

  足元とは言いませんが、影を踏めるぐらいには追いつきたいですね。それが受けた恩を返すことになると信じて。

  それでは次回予告『第一話 盗撮写真の詰め合せ』 をお楽しみに、(してくれるかな)

 


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