大臣達が良からぬ企みを企ててから、少し後。
メタ=リカーナの王女、シーラは、自室の窓から城下を見下ろしていた。
城門は幾つも破られ、戦火は町並みを崩していた。
シーラは、敵の目的が自分であることを、まだ知ってはいなかった。
ただ、王族、そして王が倒れた今の国権所有者である事実が、彼女を危険から遠ざけていた。
「D・S…」
どこか頼りない(好意的に見れば)騎士団よりも、圧倒的な力で自分を守ってくれる男の名前を口にする。
王女である自分に対して、今まで他のどんな男とも違う態度で接してくる傲慢で不遜で好色な男。
シーラはいつの間にか、そんな男に惹かれ始めていた。
彼だけが、シーラを女として扱い、「王女」という封印から、彼女の女としても本能を解放した。
だが、彼の中にシーラの居場所はない。少なくとも、一般的な常識を前提にしての話ではあるが…
(D・Sは全ての女性に対し、等しく愛情を注げることを自称し、また一部実践しているのが…)
彼の愛情は、自分ではない一人の少女に向けられている。
シーラは、それを知っているため、密かに想い、胸を痛めるだけだった。
しかし、このように追い詰められ、絶望が間近に迫っている状態では、どうしてもD・Sに会い、守ってもらいたくなる。
今、D・Sはこの城にはいない。
先日、シーラと共に出撃し、その後、別ルートで反逆軍団の四天王の一人に会いに行っていた。
噂では、D・Sの昔の恋人であったという…その事実が、シーラの心を苦しめていた。
いつ戻るとも知れないD・Sを待ち、窓から外を見つめ、時が流れていった。
どれくらい想いに耽っていたのだろうか、シーラは自室の扉がノックされる音によって、急に現実に引き戻された。
「!…誰です?」
慌てて返事をしたシーラの耳に、扉越しに声が聞こえる。
『姫様…大臣にございます…』
「大臣」と名乗るのも間抜けた名乗り方ではあるが、シーラは恐らく彼らの名前を知らない可能性もあり、賢明とも言える。
「どうしたのです?こんな時間に…」
あまりに突然の来訪者に、シーラは驚きを隠せなかった。
『実は…姫様に内密にて、非常に重大な…そう、メタ=リカーナの命運を左右するお話がございまして…』
シーラは、世間知らずであっても頭が良い。当然、突然の大臣の訪問に疑問を覚えている。
しかし、「メタ=リカーナの命運」と言われては、応じないわけにはいかない。
それも、この国の中枢にいる重臣(と、シーラは認識している)が、こんな時間に内密で訪れているのだ。
「内密…お父様やジオにも言えないことなのですか?」
「はい…姫様でなければ、この国を救う事は出来ないのでございます。」
大臣の言葉に、シーラの心が騒ぐ。
政に関しては、書物で学ぶだけで実態を知らず、自分の国の政治形態がどういう現実であるかも分からない。
戦いはシーラの体を傷つけることを恐れる忠臣たちによる、加減された稽古を受けただけに過ぎない。
どんなに庶民に愛され、臣下に慕われようと、実際にはシーラの出番はどこにもなかった。
それ故、先日はD・Sを封印から解き、シーラ自身も彼に同行することで、国のために活躍することを望んだ。
その冒険で、多少懲りたとは言え、居場所がない自分が「国を救う」ことが出来るといわれ、シーラは高揚していた。
「…分かりました。お入りなさい。」
高揚は、冷静さを消し、悪意を見抜くことを放棄してしまった。
シーラは、自ら悪意の塊を招き入れてしまったのである。この先に何が訪れるかも見抜く事は出来ずに…
扉が開き、どこか落ち着かない5人の大臣が部屋に入ってきた。
「今より、内密にて国の行く末に関わる会議を行う。何が起ころうと、例え国王と言えども、この部屋に入れてはならぬ。」
大臣の一人が、入室の間際に、シーラの部屋を警護する騎士に言い含める。
「…はっ!」
愚直な騎士は、大臣の言葉を疑うこともなく、与えられた命令を忠実に守りぬくこととなった。
騎士には分からないよう、ニヤリと邪な笑みを浮かべると、大臣は扉をしっかりと閉める。
そして、シーラに向き直った時には、その邪な笑みは消え、沈痛な表情に変っていた。
「実は…姫様には、我らを救っていただきたいのです。」
「…?どういうことです?」
シーラが不思議そうな顔で尋ねる。国を救うということと、大臣を救うということが結びつかない。
「実は…彼ら4大臣が…辞任を申し出ております…」
できうる限り沈痛な面持ちで、シーラにそう告げる。
他の四人も追随し、申し訳なさそうな、情けない表情を浮かべていた。
「え…!?なぜです…どうしたというのですか…?」
国王であれば、この無能者の申し出と同時に、後任の選定を始めるところであるが、シーラは違う。
政治の実情を知らないが故、『大臣がいなくなっては、国が危うくなる』、シーラはそう危惧してしまっていた。
(…かかった!!)
あまりに容易く、シーラは彼らの罠にかかってしまっていた。
それを悟った瞬間、あまり乗り気ではなかった大臣達も、ここぞとばかりに計画成功のために動き始める。
「妻や娘、母と離れ、この危険な王城に留まっていることにより、安らぐこともできず、心労で、もう限界でございます…」
空々しい理由を口にする。
人情に訴えるとは言え、非常に個人的な理由。
国政に携わる者の発言としては失格だが、人情的に訴える方法は政治に疎いシーラの心をこれ以上ないほどに揺さぶっていた。
「彼らはこう申しておりますが…後任はまだ見つかっておりませぬ…大臣が不在となれば、国は混乱してしまいます…
しかし、もう限界でございまして…一秒でも早く、この緊張から解放されたいのです…私を含めて…」
シーラには分からないよう、微妙に嘘を混じらせた大臣は、チラッとシーラを見上げて様子を観察する。
騙されたとは思いもせず、戸惑い、そして同情した表情を浮かべたシーラが、困った顔をしている。
「何とか…思い留まってはいただけないでしょうか…?せめて、後任の方が見つかるまで…」
「いえ、申し訳ないのですが…王は倒れ、騎士団は頼りにならず…いつ攻め入られるか分からぬ恐怖…
そして何より、姫様お気に入りの、あの男の傲慢さに…我らはもう限界なのでございます。
後任を見つけ、仕事を引き継ぐには、時間がかかりますが…それに耐えられそうにはありませぬ…」
シーラの言葉を予想していたように、大臣が反撃する。
誰の目から見ても傲慢なD・Sの存在、そしてシーラが彼を気に入っている事実を持ち出して、シーラを追い詰める。
「た、確かに…ですが、D・Sは…」
「ええ、分かっております。彼は姫様の命を救い、侵略からこの国を守っております。
ですが、彼を重用することで、我らは苦しみ、更には民の苦しみに繋がるのです。」
ある点で図星を突かれ、窮したシーラを、大臣は畳み掛けるように追い込む。
押されているシーラは、言葉の真意、矛盾を見抜くことが出来ず「民が苦しむ」という駄目押しに揺らいでいた。
「民が…ですが…」
「無論、D・S殿がいなくては、この国は滅ぼされてしまうでしょう。
しかし、彼がいては、我らは耐えられず、今すぐにでもこの城を去りたいのです。
このような無礼な願い、病床の王には、とてもお話できませぬ…
そこで、王女である姫様に、決めていただこうと、我らは内密に参上した次第でございます。
姫様も十分に成長なされ、国政に携わるお力はあると、我ら一同は評価しております。
さあ、二つに一つをお選びくだされ…D・S殿を取るか…我ら、即ち民の生活を取るか…」
ズイッと大臣たちがシーラに詰め寄る。シーラを評価することで、逃げ場を完全に絶つ。
いくら賢くとも、このような不自由な、そして卑劣な二択を迫られたことのないシーラは、答えに窮し悩んでいた。
民のことを思うと心が痛む、しかし、D・Sの存在は公私両面から失いたくなかった。
民を救うためには、大臣の存在が必要不可欠。そこで、シーラの脳裏にアイデアが浮かぶ。
要は、後任が見つかるまで、彼らに何とか我慢してもらえれば良いのだ。
そして、彼らの辞任の理由は心労。何とかそれを癒してやることができれば、後任が見つかるまではやり過ごせるのでは…
「後任が見つかるまで、何とか辛抱してもらえないでしょうか?
あなた方の心の苦しみ、何とか癒すことができるように計らいますので…
ご家族が心配ならば、何とか会えるように手を尽くします。望みがあるのならば、できうる限りのことをいたしますから…」
シーラの賢さに、大臣は心の中で舌を巻いた。同時に、シーラの賢さが彼らの計画の後押しをすることとなり、ほくそ笑む。
「おお!シーラ様…何という優しいお言葉…!我ら一同、感激の極みでございます!」
大臣達は、絨毯に額を擦り付け、ひれ伏すように感激の涙を流している…ように見せ、隠し切れない邪な笑みを隠していた。
「今すぐに家族を探し、連れて来るのは無理な話…しかし、我らは一刻を争うのです…
しかし、代わりと言っては何ですございますが…男というものは、女性の存在に安らぎを覚えるのでございます。
母に抱かれ、優しく撫でられることは、何よりも心が安らぎます。
それでその…今しばらく、その大きな慈しみの心で、この憐れな年寄り達を子供のように甘えさせてはいただけぬでしょうか?」
大臣達の瞳は、まるで子供のようにキラキラと輝き、シーラを見つめる。
(彼らも…私を…女として見てくれている…)
自分を「女」として扱っているという言葉が、シーラの心に揺さぶりをかけてしまう。
何とも乱暴な論法にシーラは戸惑ったが、純粋な彼女には大臣達の汚れきった企みなど、看破できるはずがない。
シーラは、知りうる男女の営みの知識を総動員しても、母親のように男に接することがいけない、とは思いつかなかった。
むしろ、母が子を慈しむ行為は尊ばれこそ、忌むべきこととは思わない。
(無論、それは母親が子供にするからであって、汚れた大人に対して行うのは、問題の方が多いのだが…)
「抱きしめ、撫でてくださるだけでよろしいのです…どうか!民を、いや、国を救うためにどうかぁ!」
声を揃えた五人が勢い良く土下座する光景は、ある種壮観であるが、シーラは戸惑っていた。
しかし、「国を救う」と言う言葉、そして自分にしかできないと言うキーワードに、シーラの心は動かされていた。
無論、本能が危険と疑問を知らせているが、追い詰められた状況では、考え直すことも出来ない。
「…分かりました…」
土下座をしたまま、計画の失敗を覚悟し始めた大臣に、シーラはそっと近づく。
いくら何でも、この老人達が、自分に邪な感情を抱いているとは思えず、またD・S以上の接触を行うとは思えなかった。
未だ土下座したままの大臣の頭を、恐る恐るそっと撫でる。
「お…おぉぉぉ…姫様ぁぁ…」
頭を撫でられた大臣が、ブルブルと震える。感激にではない。計画の成功を確信したからである。
「少し…おかしな気分ですが…お母様の代わりになれるよう、がんばります。」
おずおずと手を伸ばし、そっと大臣の頭を抱きかかえる。
男を抱きしめるようにではなく、あくまで子供をそっと抱くように、何の負い目もない完璧な抱き方である。
シーラの死角となる位置で、大臣はガッとガッツポーズを取っていた。
もしも、声を上げることが許される状況ならば、確実に雄叫んでいただろう。『YEAH(イェア)!!』と。
獣欲を解き放ち、シーラの胸に顔を擦りつける寸前まで陥るが、実行前に深呼吸して理性を呼び戻す。
深呼吸により、深く息を吸うと、シーラの高貴な香りが吸い込まれ、意識が遠のいてしまうが、
それでも計画の本当の成功のために、魂を削る思いで必死に堪える。
「姫様…ワシは、頭を撫でてくださいませんか?」
仲間の成功に、鼻息も荒く、もう一人が進み出る。
「え?え、えぇ…こうでしょうか?」
すっかりと髪も薄くなった頭に、シーラの美しい手が乗り、そっと優しく頭を撫でてて慈しむ。
(ご、極楽じゃぁぁ…撫でられるだけで、イってしまいそうじゃぁぁ!)
もう口走りそうになるのを、唇をきつく噛んで押さえ込み、その手に頬ずりしたくなる衝動を、爪が食い込むほど強く拳を握って堪える。
発情期の犬が、下腹を撫でられるだけで絶頂を迎える…それとほとんど同じ感覚。
先行してシーラに慈しまれた二人にとっては、極楽にいながら地獄を味わうような苦しみだった。
「姫様…どうか、私にもお慈悲を…」
本当の目的など忘れてしまいそうになりながら、もう一人が進み出る。
「あ…はい…でも、両手が塞がってしまいました…もう少し待ってはもらえませんか?」
片手で頭を抱き、残る一方は薄い頭を優しく撫でている。
シーラの母性に包まれた二人は、恍惚としながら脱落し、自らシーラから離れることはありえない雰囲気である。
「それでは、私は膝枕をしていただけませぬか?子供の頃、母に膝枕をされるのが一番心安らいだものでして…」
モジモジと不気味に寄って来た大臣の発言に、シーラは戸惑いつつも、抱かれ撫でられている大臣の満足そうな
顔(子供の無邪気さからは遥か遠いが…)を目にし、彼らに安息を与える喜びから、その膝を許す決心をする。
「分かりました…さあ、どうぞ…」
薄っすらと微笑みを浮かべ、膝枕しやすいように、少しだけ膝を崩して迎える。
「ひ…ひ…姫さまぁ〜んっ!」
まるで旧世界を股にかけて活躍した怪盗(3代目)さながら、大臣は宙を舞い、シーラ目掛けて飛び込んでいった。
しかし、感極まった大臣の狙いは太ももではなく、もっと密やかな場所であった。
(いかん!それはまだ早い!)
(貴様の先行で、計画をフイにするわけにはいかんのじゃ!)
まだ順番待ちをしていた二人が瞬時にアイコンタクトを取ると、宙を舞う大臣の足を掴み、ダイヴを阻止する。
阻止されなければ、空中で一気に服を脱ぎ捨て、下着一枚になってしまっていたことだろう。
空中で足を掴まれた大臣は、そのまま顔面から床に落着し、ピクピクと痙攣する。
しかし、それでもズルズルと床を這い、何とかシーラの膝の上に頭を乗せると、そのままガクッと全身が脱力していた。
「あ…あの…?大丈夫なのですか…?」
心配するシーラに、力尽きたはずの大臣が腕を持ち上げ、親指をグッと突き立てて見せる。
半ば意識を失いつつも、その顔はこれ以上ないほどにニヤけていた。
「さて…ワシは…姫様、その美しい髪を触らせていただけないでしょうか?」
仲間の暴走を止めた大臣が、何事もないかのように申し出る。
「…はい…どうぞ…」
すでに両手、脚は塞がっており、これ以上何かをしてやる余裕もないシーラは、戸惑いながらも
自分から何かをする必要がなさそうな要求に応じる。
大臣はいそいそと背後に回り、シーラの髪を弄びながら、手に取った髪を顔に近づけ、クンクンと嗅ぎ始める。
4人がそれぞれ、シーラからの愛情を受けると、最後の一人がゆっくりと口を開く。
「うーん…これは困りましたな…これでは、私の入る余地がない…」
その言葉に、4人がピクッと反応する。
同時に、それぞれが目で合図を送り、シーラに気がつかれないよう、小さく頷き合う。
「実は…私が一番、母への愛情に餓えておりまして…」
本当に寂しそうに、最後の一人が静かに語る。
「まあ…そうでしたか…」
シーラは4人にまとわりつかれながらも、大臣の寂しそうな様子に心の底から同情する。
「しかし、彼らをどかして、私が恩恵を受ければ、仲違いは必至。そうなっては、姫様の尽力も無駄になりますな…」
まるで孤独な子供のようなオーラを発し、シーラの同情を更に強くする。
「そうだ…こんなことを姫様にお願いするのは、無礼極まりますが…
ほんの少しの間で構わないのです…その胸に、抱いていただけませんでしょうか?」
シーラの目を見据え、静かに賭けに出る。
シーラは、さすがに絶句し、拒絶の言葉を考える。
しかし、寂しそうな瞳に射抜かれると、断ることが酷く残酷なように思えてしまっていた。
様々な考えや、疑問が頭を巡るが、優しさゆえに生じた罪悪感は消すことは出来ない。
『民のため…そして、何よりも彼の心を救うため…何も恥じることはない…』
そんな声が、自分の下腹から頭に響く。それは母性なのか、それとも別な何かなのか…
「……分かり…ました…でも、恥ずかしいので、ほんの少しだけですよ…」
シーラが、少し顔を赤く染めながら、ようやく決心する。あくまでも、母性からの善意である。
しかし、大臣にとっては、それは違う意味を持っていた。
「ありがたき…幸せにございます…!!」
零れ落ちる涙をように腕で俯いた顔を覆い、シーラに近づく大臣。
聖母のような微笑みで迎えるシーラとは対照的に、大臣の顔は色魔さながらの顔だった。
仲間達が見守る中、ゆっくりとシーラの胸に頭を近づける。
聞こえる鼓動は、自分の体内から響くものか、それとも空気を隔てたシーラのものなのか…
残り少ない、わずかな髪に、シーラの服が触れる。
(いよいよだ…!)
残る僅かな距離を、一気に詰める。
脂ぎった醜い頭に、フニッと柔らかい肉の感触が伝わる。
「お…おぉぉ…雄雄雄雄雄雄雄ッ!」
旧世界で武神と呼ばれた空手家の不肖の弟子が発したとされる雄叫びを再現し、大臣は感涙を溢れさせた。
その雄叫びは、彼ら5人の作戦の本格始動の合図となった。
5人それぞれの目が、妖しい輝きを放ち、慈愛の微笑を浮かべているシーラに向けられる。
「シーラ様の手…とてもなめらかな関節と皮膚をしていますね…白くってカワイイ指だ。
頬擦り……してもいいですか?頬擦り…すると、とても落ち着くんです…」
頭を撫でられていた大臣は、おもむろにシーラの手を掴み、旧世界にいた異能の猟奇殺人と同じ台詞を吐くと、
アフウウウ…と不気味なため息を漏らしながら、シーラの美しい手を嬲るように頬に擦りつける。
「な…?」
当然、滲み出るようないやらしさを発しながら豹変した大臣に嫌悪感を感じながら、シーラが手を引こうとする。
「シーラ様…綺麗な首筋ですなぁ…」
シーラの肩に抱かれていた大臣は、油断していたシーラの首筋に顔を寄せる。
フガフガと強く鼻息を鳴らしながら、シーラの白い首筋を嗅ぎまくる。
「あっ…くっ…やめ、やめなさい!何をするのです!?」
元来、敏感なシーラだが、D・Sと冒険をした際、彼の手によって、性感を開発されてしまっている。
(剥き出しの太ももを愛撫されただけだったが、彼の手にかかれば、それだけで十分だった。)
毅然と立ち向かおうとも、シーラ自身の敏感さが、その意気を挫いてしまっていた。
「何と触り心地の良い脚なのでしょう…」
畳み込むように、膝枕されていた大臣が、その脚を撫でまわす。
「きゃうっ…うっ!あぁぁ…!ふ…ふぁ…不埒者…っん!」
込み上げる怒りも、D・Sに嬲られた記憶も生々しい脚を撫でられては、怒りに集中することはできない。
ピクンピクンと体を振るわせ、何とか逃げ出そうともがくが、その様子は更に彼らを駆り立てる。
「どうなさいました?姫様…何やら落ち着かない様子でいらっしゃいますが…?」
髪を弄んでいた大臣が、シーラの耳にそっと息を吹きかけながら、舌を伸ばして耳たぶをチロチロと舐める。
「ふぁ!この…不埒者ぉ!ん…っ!」
身を竦ませながらも、何とか卑劣な男達を一喝する。
「おやおや…姫様、いかがなされたのですか?そんなに暴れては、私の顔が、その柔らかい乳房で滅茶苦茶になってしまいますぞ?」
シーラが身を捩るたび、胸に顔を埋めていた大臣は、その顔を柔らかい乳房で蹂躙され、至福を味わっていた。
ハッとして胸元を見下ろすシーラの瞳が、大臣の目と見詰め合う。
これ以上ないほどいやらしい笑みを浮かべた大臣は、シーラの乳房に手を伸ばしていた。
ムニュムニュと胸をまさぐられ、恐怖に駆られたシーラが、ようやく罠に嵌ったことを実感する。
「このような…このような卑劣な真似を…おやめなさい!!」
「卑劣?何のことでございましょう?姫様がお許しくださったのですよ?
姫様が拒まれるのでしたら…仕方がない…我ら一同、この場で直ちに辞任させていただきますが…?」
その言葉に、シーラがビクッと身を竦める。
その瞬間、抗議への報復のように大臣達の責めが本格化した。
手に頬擦りしていた大臣は、舌を伸ばし、手をベロベロと舐め始める。
「姫様の手…本当にお美しゅうございますな…
この手で、ご自分を慰めたりなさっているのですか…?」
「何を言っているのです!……そのようなこと…いたしません!」
大臣の下劣な問いに、シーラは怒りも露わに手を振り解こうとする。
「本当でございますか?どれどれ…」
大臣はおもむろにシーラの指に吸い付き、指を吸いたてながら舐めまわした。
「な、何を…や…やめ…んっ…」
敏感な指先から妖しい感触が伝わり、シーラの体に微弱な電流が流れる。
「ぷふぅ…何とも甘露な蜜のお味がしましたぞ…それも、新鮮な…ね…」
ジュポッという音と共に大臣が指を吐き出し、ニタリとシーラに意味ありげな笑みを向ける。
「そ…そのようなは…ことありません…無礼な…」
明らかにシーラの勢いが弱まり、その頬を赤く染める。
事実、シーラは大臣達が訪れる少し前、D・Sを想い、体を持て余して、自慰を行ってしまっていた。
「ふむ…?では、ワシの間違いでしょうか…?では、今一度確かめてみましょうか…?」
大臣はそう言うと、再びシーラの指に吸い付き、次々と五指を嬲る。
指先から指の股まで一本一本ねちっこく舌を絡ませ、文字通り味わう。
秘め事を暴露され、絶望的な気分に陥るシーラに、更に責めの手が強められる。
「姫様がそのようなことをなさるとは…いやはや、驚かされましたわい…ヒッヒッヒ…」
耳を責める大臣は、耳を舐め、甘噛みしながら、淫らに囁きかける。
羞恥に顔だけでなく、耳まで赤く染めたシーラが、屈辱と羞恥に口をキッと結ぶ。
「この耳に、良からぬ知識を囁いた輩がおるのですかな…?
それとも…誰に聞くともなく、ご自身で編み出されたのですか?」
「もう…もう許してください…」
切なそうに訴えるシーラの首筋に顔を埋めていた大臣は、白い首筋に舌を這わせ、舐め上げる。
「許す?我々への慰めをやめるのですか?つまり、民はどうなっても構わないと…?
国権の代行者である姫様自ら、親愛なる民草の混乱を容認すると…?」
「そ…それは…!そんなことはありません…!」
シーラの王族としての責任感を逆手に取り、がんじがらめに罠に落していく。
「そうでしょう、そうでしょう…それでこそ、我らの姫様です…では、続けさせて頂きますぞ!
この白く透き通る首筋…どんな香水よりも、芳しい香りが漂って…思わずむしゃぶりついてしまいますわい!」
下卑た笑みを浮かべながら、まるで吸血鬼のように首筋にしゃぶりついて、醜いキスマークをつける。
「ん…っ!あっ…やめて…ください…そんな…いや…跡が…っ…」
ピクンピクンと体を震わせながら、シーラが首筋を嬲られる感触に切ない吐息を漏らす。
強く吸ったかと思うと、今度は小鳥が啄ばむように優しくキスし、更には赤く残った跡を消すように舐め上げる。
「姫様の真っ白な首筋…赤く小さな花が咲いたようですな…
しかし、この美しい花…人に見られる訳にはいきませんなぁ…」
シーラの耳元でククッと小さく笑うと、チュルッと音を立て、更に屈辱の花を増やす大臣。
シーラは首筋を舐められ、吸われるうちに、まるで本当に血でも吸われているように体から力が抜けるのを感じていた。
膝枕をされていた大臣は、抵抗が弱まったのを察知するとスカートの中に手を入れ、太ももを撫でまわす。
「んっ!やめ…やっ…いやですっ!あうっ…!」
D・Sに散々擦られ、その感覚が記憶から消えない太ももを撫でまわされ、シーラの声が高くなる。
じっとりと汗ばんだ柔らかい太ももをザラザラした掌で擦るたびに、シーラの体がピクンと跳ね、
同時に力が少しずつ抜けていく様子が、大臣の手に伝わる。
シーラの抵抗が弱くなるのに合わせ、大臣は徐々に大胆になり、太ももの外側から内側へと手を滑らせていった。
「…こっちの花はどうなっていらっしゃるのでしょうかねぇ…?どれどれ…シーラ様の花の御芳香は…?」
スカートの上から卑劣に乱れきった顔を、シーラの股間に押し付けていた。
「ぶ、無礼な!何をするのですか!?直ちにおやめなさ…っはぁう!?」
あまりに直接的な行動に、シーラの心が怒りで我に返る。
しかし、その次の瞬間には、内腿に差し込まれた大臣の手がざわめき、シーラの内腿を指先でなぞり上げると、
シーラははしたなくも嬌声を上げて、内腿で大臣の手を挟み込んでしまった。
大臣の手はこれ幸いと、敏感な内腿を攻め立てる。シーラは自ら魔手を捕えてしまい、自分の首を締めることになった。
「これでは良く判りませんな…姫様、もう少し脚を広げてくださいませんか?」
大臣はそう言いながら、シーラの内腿をくすぐり、少しずつシーラの力を奪っていく。
敏感な部分を攻められることで、シーラの体はピクンピクンと反応し、その度に屈服して脚を閉じる力を緩めてしまう。
意志の力で、弱まった抵抗を持ち直そうとするが、徐々にその力は削られていく。
苦悶と羞恥で表情を艶っぽく歪めたシーラの顔が、大臣達の情欲を更に掻き立てていることに、シーラは気づく余裕もなかった。
胸に顔を押し付け、更に手で撫でまわすように弄んでいた大臣がより大胆な行動に移る。
「姫様…そんなに暴れられては、姫様の乳房がいかに柔らかくとも、私の顔が潰れてしまいますぞ…
それに、姫様の大切な乳房に何かがあれば、一大事…私が手で押さえて差し上げましょう…」
大臣はそう言うと、有無を言わさずシーラの服の両脇から手を差し込み、服の下の生身の乳房に手を這わせた。
「ひっ!…い…いやぁぁぁ!」
シーラが大臣の魔手に、誰にも晒したことがなく、またD・Sにも許したことがない乳房を触られたことで悲鳴を上げる。
「も…もう…やめてください…ひぁ……人を…んっ…人を呼びますよ!?」
大臣の手が無防備な乳房を弄る快感と嫌悪感に寒気を感じながら、シーラは弱々しく懇願した。
もう強気に叱責するだけの気概は残っていなかった。
体の芯には何かムズムズした期待がはっきりと胎動し、心は執拗な責めへの抵抗と挫折ですっかり弱っている。
そして、シーラ自身が気づかない何か艶っぽい心の変化を見抜いたように、大臣は静かに用意していた台詞を口にした。
「このようなお姿を、人目に晒すおつもりでございますか?
部屋の前には、衛兵がおります。どうぞお呼び下さいませ。我らは恐らく…処刑されるでしょう…
ですが…このような事態が発覚すれば、噂好きの女中によって誇張され、一昼夜の内に城中…いや、城下にまで広まることでしょう。
そうなれば…陛下は勿論、いつかはD・Sの耳にも届きますでしょうなぁ…その頃には、どんな内容になっているのでしょうね?」
その一言で、シーラの身がビクッと竦む。
「お、脅すつもりですか…?く…ふぅ…んっ…」
シーラは追い詰められながらも、精一杯自らを守り抜こうとする。
「いえいえ、滅相もございません…ただ、俗っぽい醜聞ができる構造を教えて差し上げているのですよ…
…だから、こんなことをしても、大人しくしてくださいませ…シーラ様?」
大臣はシーラの胸元に差し込んだ手で布をグイッと掴むと、思い切り左右に引き割った。
「いやあぁぁぁ…むぐっ!?」
「おっと…騒ぐと困ると教えたばかりではありませんか…」
絶叫を上げた瞬間、大臣の手がシーラの口を塞ぐ。
「全く…あれだけ教えて差し上げたのに、そのような声を出されて…そんなに人に見られたいのですか?
ククク…まあ、それも無理もありませんな…こんなに美しい乳房をされているのですからね…!」
大臣の手が、シーラの透けるような白さの頂点にある、美しい薄桃色の突起をキュッと摘む。
「むぐっ!んむぅぅ!!んっく…!んん…!んふぅ…!」
シーラは一度体をビクンと硬直させると、ピクピクと小さく体を震わせる。
最初の硬直は驚きによるものが強いが、やがて明らかに快感に身をよじらせている動きに変っていった。
「おやおや?どうされました?そんなに切なそうな声を出されて…?ココがどうかされたのですか?」
大臣は素知らぬ顔で、シーラの乳首をコリコリと摘み、また指で転がして弄び、ながら尋ねる。
「はっ…うぅ…んっ!いやっ!あっ…あぁ…っ!」
まるで喘息のように息を切らしながら、弄ばれるたびに伝わる快感に、体を弾ませ、声を上げてしまう。
乳首からの強烈な快感と同時に、全身をねちねちと嬲られる快感がシーラを苛む。
シーラの痴態を満足そうに見ながら、大臣はシーラの乳首をピンと指で弾く。
「ひぅっ!」
「良い音色だろう…?」
まるで北宋時代の壺を弾いた時に生じる美しい音色を評価する策士のように、大臣が他の大臣にアピールした。
そのような扱いをされても、緩急をつけらながら体に浸透する快感にシーラの意識は段々と白く霞み始めていた。
同時に、体の奥深い胎内から、どんどんと異常な熱と、全身が痺れ、疼くような感覚が滲み出ていることに気がつく。
「誠にございますか?どれどれ…姫様の体に何かがあってはいけない…
私が舐めて癒して差し上げましょう…この、はしたなく勃起した乳首をね…」
チュロッという音共に、シーラの乳首が濡れた感覚に包まれ、同時に舌先で嬲られながら強く吸われていた。
「んっ…んんん〜っ!!」
切なそうに眉をギュッと寄せ、きつく目を閉じ、声を出すまいと唇を結んだシーラが、体を強く震わせ、硬直する。
体にまとわりついた大臣達も、ここが勝負処とばかりに、各箇所への責めを強める。
手を責めていた大臣は、いつのまにか脇にまで達し、恥ずかしがるシーラの脇を強引に舐めている。
背後からシーラの髪や耳を責めていた大臣は、耳を舐めながら、胸にまで手を伸ばし、柔肉を揉みながら、
その先端の敏感な蕾を指で弄んでシーラを追い詰める。
首筋を責めていた大臣は、その手を脚にまで伸ばし、抵抗が弱まってきた太ももを擦りながら押し広げる。
膝枕から脚責めに移った大臣は、仲間の援護を受け、ついにシーラの脚の付け根にまで魔手を伸ばしていた。
「ひっ!?何をしているのです!?そのような所…汚らわしい!今すぐにおやめなさい!やめて…いやぁ!」
シーラの怯える声を無視し、下着の上から、指を押し付け、その割れ目をなぞり上げる。
シーラが暴れると、他の大臣達は責めの手を強くし、シーラの体に確実に快感を叩き込んでいく。
恐怖と屈辱と怒りにもがくシーラだったが、激しく胸を揉みくちゃにされ、乳首を攻め立てられては、
快感に流され始めた体が反応してしまう。
「もう…っんく…もういや…ぁ…んっ…放して…ぇっ!もうやめて…っ!」
快感に耐えながら、シーラが甘い声で拒絶する。
しかし、その声に反応し、責めの手が一瞬で甘くなる。
その途端、シーラの体は本人の理性とは別に物足りなさを覚えてしまう。
そして、一呼吸起き、再び責めが再開され、何度かそれが繰り返されていた。
やがて、シーラの拒絶の言葉は、明らかな媚態を含み、体も熱く反応するようになっていた。
(いけない…こんなことでは…何とか逃げなくては…でも…)
シーラは自分の体の奥に、淫らな火が灯ってしまったことに気がついた。
必死に閉じ合わせた太ももの奥が熱く潤んできているのが分かる。
ジクジクと蜜を分泌されている感触が、ジュンッと胎内に伝わる。それが見つかったら…
「さてさて、先ほど確かめそびれた姫様の花の香り…今度こそ確かめさせていただきますぞ…?」
そんなシーラの心を見透かしたように、股間を狙っていた大臣が秘華目掛けて、顔を埋めようとした。
「ひっ!だめぇ!」
シーラはそれを防ごうと、脚を閉じる。
「ぶぐぇ!?」
柔らかい太ももに挟み潰され、大臣が至福の表情で不気味な呻き声を上げた。
「おおぉ…姫様のアソコ…甘い蜜の香りが漂ってきますぞ…さては…」
大臣は、太ももの圧迫で歪んだ顔を、更にニヤケさせながら、強引に太ももの間を押し進んだ。
他の大臣達も、シーラへの責めを調整し、少しずつ抵抗力を奪っていく。
やがて、シーラの太ももから徐々に力が失われていく。
「あ…あぁ…だめ…もう…力がぁ…」
汗ばんだ太ももから力が抜け、大臣はここぞとばかりに一気に顔を押し込み、ついに防壁を破った。
「うおぉぉぉ!これが姫様の…姫様のォォ…!」
大臣が感激のあまり泣きそうになりながら、シーラの脚の付け根に顔を埋めていた。
そのまま、堪えきれないようにフガフガと鼻を鳴らしながら、顔をグリグリと押し付けている。
「これは…姫様…下着がグチョグチョでございますよ…?
これは汗ですか…?いや…こんなにいやらしい香りの汗などあるはずがない…」
「そ…そんな馬鹿な…う、嘘です…」
全身に責めが及び、もう快感は止めようがなかった。それでも、気丈に振舞うシーラに、ついに失墜の瞬間が訪れようとしていた。
「ほう…?では、味を確かめてみましょうか…?」
大臣はそういうと、下着に口を押し付け、下着に染み込んだ愛液を啜りたてた。
あまりの吸引力により、シーラの秘肉にまで衝撃が及び、ついにシーラは限界に達した。
「あ…あぁぁ!いやぁぁ!だめです…!「だめですぅ…!こんな…こんなのぉ!あう!ひあぁぁ!」
胸への責めが凶悪さを増し、更には秘所を責められたことにより、シーラの体がこれ以上ないほどに伸びて硬直した。
直後、硬直した全身から感覚が失われてゆき、頭が白い閃光を伴った稲妻のような電流に痺れて霞む。
白く霞んだ頭は、一瞬で真っ白な閃光に包まれ、フワッと自分の体の感覚を失った。
その直後、真っ白だった周囲が、一瞬で漆黒の闇に包まれる。
『もう我慢する必要はない…』
大臣の声とは異なる、絶対的な支配力を感じさせる声がどこかから響いてくる。
『本当のお前を知っている…お前は、辱められたいのだろう…?』
心の中で拒否の思考を浮かべた瞬間、間髪入れずに声がなだれ込んでくる。
『あの時…D・Sにその体を抱えられ、身動きできなくなって嬲られた時の官能…
それが忘れられず、一人で体を慰めているんだろう…?蹂躙される自分の姿を想像して…』
(違う…)
ようやく振り絞ったその意思も、次の瞬間には掻き消されてしまう。
それも、自分自身が自慰の際に、空想したD・Sに抱かれる自分のイメージの奔流によって。
『これでもか?私は、ずっと見ていたのだ…お前の痴態を…お前の妄想を…お前の願望を!
お前は、D・Sに恋をした…だが、それはお前自身のマゾヒズムが、野蛮で狡猾でサディスティックな男の存在を求めたからだ…
お前は、自分を蹂躙してくれる男なら、誰でも良いのだろう?
高貴な存在である自分が、普段こき使っている無能な大臣共に嬲られて、感じているのだろう?』
(そんな…私は…違う…違います!あの方を…D・Sを好きです…でも…!)
『ほう…直視するんだ…お前自身が妄想した、あの男との営みの姿を…』
目を閉じようとしたシーラの意識の中に、自分が生み出した空想がなだれ込んでくる。
それらは、幸せで満ち足りた営みの光景に見えた。
しかし、そのどれもが、シーラはD・Sに激しく責めたてられ、服従と忠誠を誓わされている。
何度絶頂を迎えても許してもらえず、また時には絶頂に達する寸前で何度も焦らされ、自ら懇願させられている。
激しい交わりと絶頂の連続により、シーラ自身は、熱に浮かされたような呆けた表情で蕩けている。
暴君である主人D・Sにどれだけ激しく、酷く責められても悦びの貌を恍惚と浮かべ、進んで奉仕している姿。
それらの全てが、潜在するマゾヒズムの顕れだった。
『まだ否定できるか…?』
シーラは無言で、不確かな体をフルフルと震わせる。
恐怖と同時に、何か熱いものが込み上げ、震えを強くしていく。
脈打つたびにゾクゾクと、体の中に違和感と安堵感が書き換えられていく。
『分かっただろう…?お前はマゾなんだ…逃げることは出来ない…』
自分が妄想したD・Sとの甘美な営みと、大臣達に嬲られているイメージが重なり合う。
無意識のうちに、首を横に振って拒絶しようとするが、突然闇の中に鏡が現れる。
そして、そこに映っていた自分の顔は怯えながらも、頬を紅く染め、唇をかすかに両側に持ち上げていた。
その瞳は熱っぽく潤んでいる。その瞳に浮かぶのは、恐怖ではなく情欲。
つまり、鏡に映る自分の顔は笑っていた。
それを見たシーラは、自分の顔が笑顔を作っていることにはっきり気がついてしまった。
鏡の中の自分が、美しく淫らに微笑みながら唇を動かす。
「私はマゾなのですね…」
その声は、シーラ自身の喉から発せられていた。
そう宣誓してしまった瞬間、シーラの体は急速に闇の中に引き込まれて、泥の中にいるように重くなっていった。
本番まではまだ遠いです(汗)
こうなるとかつて拝領した『ネチネチ』の称号では足りませんね…
今回のシリーズは、暗くならない程度にハードな陵辱を目指しています。
やっていることがやっていることですので、普通に書いたら暗くならない方が不自然なのですが…
敢えてD・Sやらガラやら、魔物を使わずに、ほとんど背景の大臣を使ったことで何とか制御できています。
…もっとも、今後はもっと馬鹿な展開が待っていたりするのですが…
さて、今回の第一章に隠されたパロディ(笑)はいくつだったでしょう?
正解しても何もありませんが…(多分)