かすみ荘LOVERS MAP  第3話 白い旋律
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かすみ荘LOVERS MAP  第3話 白い旋律
テネシィワルツ/文


「はい、早乙女です」

『和也君? こんばんは、千草です……メイちゃんはもう下の部屋に下がった?』





メイが一日の仕事を終え、階下のケイの居室に戻った午後10時過ぎ、和也の部屋の電話が鳴った。

相手はかすみ荘の大家、そしてかすみの母である谷千草だった。

彼女に呼び出された和也は雷雨の中、アパートの裏にある母屋に向かった。

「ごめんなさいね、こんな時間に……雨、結構すごいのね」

玄関で迎えるなり、そう言いながら千草は和也にタオルを手渡して招き入れた。

傘こそ差していたものの、吹き付ける豪雨は和也の服や靴を容赦なく濡らしていた。

「今、温かいものを持ってくるから待ってて」

居間に通された和也は頭や服の湿りを拭き取りながらソファーに座って千草が来るのを待った。

(大家さん何なんだろう……やっぱりあの事かな……)

和也とかすみが仲たがいしてからもう半月になろうとしている。

彼が不安に思うのも無理はなかった。何も言われない方が不自然だった。

問題は千草が“あの日の出来事”をどこまで知っているかだ。

程なくして千草がティーカップを載せたトレイを持って戻ってきた。

「紅茶だけど飲める? 温めた牛乳の方がよかった?」

「いえ、頂きます……」

千草は和也の前のテーブルに二つのティーカップを並べて置いた。「?」と和也はいぶかしんだ。

「ね、隣に座っていい?」

「えっ……?」

うろたえる和也の返事を待つ事もなく、テーブルを回った千草は彼の隣に腰を下ろした。二人の肩が触れ合う距離だった。

「まずはお上がりなさいな。飲まないと体が冷えるわよ」

そう言って千草は自分のカップを手に取った。和也もつられる様にカップを持ち口をつけた。

「おいしい?」

「はい……あの……それでどういう……」

カップを置いた和也はおずおずと切り出した。

「……かすみは何も話してないけど大体の事は分かっているわ……あの日、サラさんがカーテンを閉めるのがうちの窓から見えたから」

見られていた――和也はほぞを噛んだ。

「入居の規約には色々書いてあるけど、ご近所の迷惑にならない範囲なら大家としてつべこべ言う気はないわ。実際、苦情も来てないし」

そう穏やかに言って千草は再びカップに口をつけた。取り合えず退室を言い渡される訳ではないと知って和也は安堵した。

「すみません……そういえば、かすみちゃんは……?」

「今夜は光明寺さんに誘われて合コンに行ってるの」

「ご、合コン!?」

和也は参加した事はないが、合同コンパがどんなものかは学友の大門や田所から聞いていた。

よその学部やサークルとの飲み会――そして時にはそこで意気投合した男女が夜の街へ消えていく事も。

もっとも大門や田所はそんな美味しい思いをした事は一度も無いらしいが。

「それでね、さっき光明寺さんから電話があって、あの子だいぶ酔っ払ったらしくて……それにこんな荒れ模様だから今夜は光明寺さんの所にお泊りさせてもらうみたいよ」

かすみの友人の光明寺ひかりとは和也も何度か顔を合わせて知っていた。彼女の部屋に泊まるなら余計な心配は無用だろう。

知らない男にかすみが“お持ち帰り”されていないと知って和也は内心、胸を撫で下ろした。

「今までお誘いがあっても一度も行かなかったのにね……どういう風の吹き回しかしらね……」

思わせぶりに言いながら千草は和也の顔をチラと見た。和也は自分の表情がこわばるのを感じた。

「……まだ……怒っているんでしょうね……僕に対して……」

僕に対する当て付けだ――口にこそ出さなかったが和也はそう思った。

「……和也君とあの子はもう特別な関係なの?」

「とんでもない!!……いや、悪い意味じゃなくて……恐れ多いですよ……そんな事……」

「あの子に気を使っている?」

「使っているというか……かすみちゃんの気持ちは分からなくもないけど……大家さんに顔向け出来ないような――」

「せっかく二人きりなんだから、千草でいいわよ」

「え?……はぁ……千草…さんに顔向けできない事……出来ませんよ……」

喉の渇きを覚えた和也はカップに手を伸ばし中身をすすった。千草の胸の内が読めず、緊張で手がかすかに震えていた。

千草は膝の上で手を組み、しばらく視線を落としていたが、不意に何かを吹っ切ったかのように振り仰いだ。

「あの子……多分あなたの中に父親を求めていると思うの……」

「父親?……」

「父親みたいなもの、よ……信じられて甘えられて、安心できるものを……」

「僕がですか?……でもそんな事……僕はそんな格好いい男じゃ……」

「父親をなくしてからあの子、何かそういう存在を必要としていたと思うの……裏切らない包容力のあるものをね……それは私も同じよ」

そう言って千草は頭を和也の肩にもたせ掛けた。

「!!……千草……さん?……」

「……女ざかりで貞淑に振舞うのって結構辛いものがあるのよね………今夜だけでもいいから私の望みを叶えてくれない……」

冗談だろ?――驚く和也は千草の方を見た。まさかそんな――。

しかし肩に頭を預けている千草は真顔のようだった。和也は面食らった。

だがもし、そういう目的がないなら娘がいない時を見計らって和也を呼び出したりはしない。しかもこんな時間に――。

「レナちゃんはかすみの部屋で寝ているわ……私たち、二人きりよ……」

ここまで言って本当にその気がないとしたら――確かめる方法は一つしかない。

「千草さん……」

和也はゆっくりと振り向き、千草の顔を覗き込んだ。千草も彼の目を見つめ、ゆっくりと目を閉じた。

一呼吸置いて千草の肩に手を回すと和也は彼女に唇を重ねた。千草は拒まなかった。

(やっぱり……)

だがここまでしても和也の中には迷いがあった。本当にこの人はそこまで行くのを望んでいるのか?

今は気持ちを伝えたいだけで、まだ一線を越える事までは――。

しかし和也は自分の考えが甘かった事を思い知らされた。

唇を離そうと和也が頭を引いた時、突然千草は彼に抱きつきソファーの上に押し倒した。

「うわ! 千草さ‥」

和也の上にのしかかり腰の上に跨った千草は彼の知っている千草ではなかった。

彼女は和也の頭を両手で押さえつけ、歯と歯がぶつかるのも構わず激しく彼の唇をむさぼった。

その姿はさながら肉食に目覚めた牝鹿の様だった。

ここまでされれば和也も遠慮する気はなかった。彼は両手で千草の尻を掴み、激しく揉みしだいた。

その行為に反応したのか千草も腰を擦りつけ、固くなりかけた和也のものを自分の下腹部に食い込ませようとした。

千草がその気になっているのは分かったが、次のステップにどう移行すべきか和也は悩んだ。

既に何度かケイの性講座を受けていた和也だが、この様なシチュエーションは想定外だった。

もたついている和也に業を煮やしたのか、千草は自分から体を離すとソファーを滑り降り、和也のズボンを脱がせに掛かった。

「あっ…ま、待ってくだ‥」

うろたえる和也に構わず千草は力任せにトランクスごとズボンを剥ぎ取った。

そして立ち上がると今度は自分のスカートの中に手を突っ込みパンティを一気に引き下ろした。

再び和也の上に跨った千草はスカートをたくし上げると和也のペニスを握り自分の秘裂に押し付け捻じ込もうとした。

だが鬼気迫る千草の振る舞いにおののいたのか、和也のペニスは固くなりきっていなかった。

千草もまた久しくなかった行為に緊張していたのか、秘裂の緩みも潤いも充分ではなかった。

「駄目、入んない……」

挿入を諦めた千草は和也のペニスを彼の下腹部に上向きに貼り付け、その上にのしかかった。

和也のペニスは二人の下腹でサンドイッチになり、その状態で千草は体を前後に揺すり始めた。

「あっ……あ……千草…さんっ……」

千草の温かく柔らかい下腹の肌に擦り上げられ、和也のペニスは徐々に固くなり始めた。

和也にしがみ付いたまま千草は更に腰の動きのピッチを上げる。

「んっ……あっ……はぁ……ふぅ……ふぅ……」

のしかかった千草の熱い吐息を聞く内に、和也の下腹部の奥から何かが込み上げてきた。

「千草さん待って……このままじゃ出ちゃいます……」

「いいわよ……出して……」

「えっ?……でも……」

戸惑う和也をよそに先走り汁が溢れてきた彼の亀頭を千草は更に擦り上げる。射精は時間の問題だった。

「んんっ……はっ……はぁ…はぁ…はぁ…ふぅ…はぁ……」

「……う……あぁぁ……もう駄目だ、本当に射精[だ]します!……うんっっ!!」

和也と千草の下腹の間で彼の砲身は勢いよく射精した。

「うんっ……んんっ……っはぁ……はぁ……」

射精が収まっても千草の腰は動き続けた。精液が塗り広げられ、二人の下腹はベトベトの粘液まみれになった。

「ふっっ……ふぅ……ふぅ…………いっぱい出たわねぇ……」

愉快そうに微笑んだ千草はそう言って、ようやく動きを止めた。

「……すみません……ソファー汚してしまって……」

腰の辺りに精液が垂れていくのを感じながら和也は謝罪した。

「和也君は悪くないわ……ね、服を脱いでくれる?」

「はい?」

立ち上がった千草は腰のホックを外し、精液が染み付いたスカートを脱ぎ捨てた。白いサマーセーターの裾が乱れ、生まれたままの下半身に半透明の粘液が流れ落ちていく様はある種、異様な卑猥さが漂っていた。

「こっちの始末は私がやっておくわ……服も洗濯するから、あなたはシャワーでも浴びていて」





(……大家さん、どういうつもりなんだろう……)

浴室で椅子に腰掛け、精液のこびりついた下腹部をボディソープで洗っていた和也はずっとそんな事を考えていた。

いつも穏やかな笑顔を見せる千草にあれほど熱い一面があるとは思いもよらなかったが、今は別の事がより気になっていた。

かすみの事を心配しながらも、その娘が想いを寄せている男に何故あんな真似が出来るのか。

そもそも千草はいつから自分に関心を持っていたのか。

かすみという大学生の娘がいる以上、いくら若く見えようとも千草はそれ相応の年齢のはずである。和也とは親子ほど離れているだろう。

(……大体かすみちゃんにバレたらどうするんだ? ただじゃ済まないのは分かっているだろうに……)

浴室の隣の脱衣所で洗濯機の回る音が聞こえてきた。

中に放り込まれているのは千草と――和也の着ていたものだろう。服が乾くまでこの家からは出られそうもない。

その間に何をするかといえば――。

「和也君、入っていい?」

「えっ!?」

声の後に浴室のドアが開く音が聞こえた。背中を向けていた和也は思わず振り向こうとした。

「見ないでね」

「は、はいっ」

千草にたしなめられて和也は元に向き直った。しかし彼の脳裏には目の端に捕らえた千草の裸身が焼き付いていた。

「石鹸取ってくれる?」

「石鹸て……これですか?」

和也はボディソープのボトルのポンプを押して液状石鹸を手に取った。

「ありがと」

後ろに差し出した手から液体がすくい取られると、和也の背後で泡立つ音が聞こえてきた。

「……お風呂はもう入ったけど、和也君をお迎えする為にもう少し綺麗にしておこうと思ったから……」

千草の言葉と共に毛髪の擦れる音が聞こえてくる。和也は彼女が自分の陰部に手を伸ばし洗っている姿を想像した。

「ね、シャワー取って」

和也は壁のホルダーからシャワーを外すと蛇口を捻り、適温の湯を出して千草に渡した。

「ありがとう……気が利くわね」

「いえ……」

背中越しに千草の肌を洗い流す水音が聞こえる。その間、和也の中で見たい、しかし千草に嫌われたくないという葛藤が続いた。

ボディソープやシャワーを渡す時にチャンスはあった。だが千草が見るなといった以上、見るべきではないと和也は判断した。

ケイもレクチャーの時にその事に触れていた。女にとってセックスの時に見せる裸と、着替えや入浴の時の裸は別物だと。

男に裸を見られていい時と見られたくない時があると――。

「はい、戻しておいて……それじゃ二階で待ってるわ。奥の部屋よ」

和也にシャワーを手渡した後、千草は浴室を出た。和也は恐る恐る振り向いた。

ドアのガラス越しに千草がバスタオルで体を拭いているのが見えた。

横向きの姿で胸を拭き、そして黒い陰りのある股間を――と、和也が見ているのに向こうも気付いたのか、千草は背中を向けた。

しかし擦りガラス越しでも千草の尻の線はおぼろげながら分かった。

和也は股間に手を伸ばしたい衝動を辛うじて抑えた。





数分後、浴室を後にした和也は脱衣室に用意されていたバスタオルを腰に巻いただけの姿で階段を上がっていった。

(へえ……こんな風になっているんだ……)

和也にとって谷家の二階に上がるのは初めての事だった。無論、アパートの店子[たなこ]がおいそれと覗きに来ていい場所ではない。

かすみの部屋はすぐに分かった。ドアに彼女とレナの名前を書いた小さなプレートがぶら下がっている。

千草の寝室は廊下の奥にあった。レナに気取られないよう、足を忍ばせて前を通り過ぎる。

「入っていいですか?……」

和也はドアをノックし小声で訊ねた。中から呼びかける声が聞こえ、彼はゆっくりドアを開けた。

部屋の中で千草は鏡台の前にたたずんでいた。バスローブの胸の合わせ目に右手を差込み、左手で股間を押さえている。

一瞬、自慰にふけっているように見えたがそうでもないらしい。彼女は鏡を見つめながら身じろぎもせず立っている。

どこか――自分を落ち着かせているように和也には見えた。

「……ドアを閉めてくれる?」

「は、はいっ」

千草に言われて和也は部屋に飛び込んだ後、かすみの部屋の方をチラッとうかがいドアを閉めた。

「レナちゃん、気になる?」

「ええ……そりゃ、まあ……」

「大丈夫よ。この雨音だもの、少しぐらいなら気付かれないわ」

千草の言うとおり、相変わらず豪雨が屋根を叩く音が続いていた。この中でならレナには気付かれないかも知れない。

そして近隣の家々にも。

「もしレナちゃんに見られたら……その時はあの子も仲間に入れましょ」

「駄目ですよ! だってレナちゃんはまだ……」

「人間の女の子だったら私だって許さないわよ。でもレナちゃんはロボットの人でしょ? 和也君くらいのなら平気だと思うわ」

「でも……そうは言われても……」

恐ろしい事を言う女[ひと]だと和也は思った。しかし。

「一緒にお風呂に入ったりしてレナちゃんを見ていると何となく思うのよ……未来にもあの子くらいの女の子に、そういう事をしたがる男の人たちがいるんだろうなって……」

確かにレナもサイバドールの一員である。サイズの違いはあれどサラやケイと同等の作りになっていても不思議ではない。

それに未来に人の道を外れた嗜好を持っている者がいないというのも不自然だ。

そういう者たちの欲求を昇華する為にレナのようなサイバドールが作られているとしたら――。

身に憶えのある――レナに妄想を抱いた事のある和也は二の句が告げなかった。

「こっちに来て……」

千草が和也の方を見て言った。暗い思いを振り払い深呼吸を一つすると和也は彼女の方へ歩み寄った。

「抱きしめてちょうだい……」

鏡の中に恥ずかしい所に手を置いた千草とその後ろに立つ和也が映っている。

和也は後ろから腕を回し千草をかき抱いた。

「……千草さん……」

彼女の下ろした髪に顔をうずめながら和也は耳元でささやいた。

「うふ…ん……当たってる……和也君の……」

腰のバスタオルの下で固くなっている和也のモノが千草の臀部に押し付けられている。

彼女は小さくゆっくり腰を振りながら和也の方へ押し返してきた。タオル越しの和也のペニスが更に尻の谷間に食い込んでゆく。

「う……うふ……はぅ……」

甘い吐息を漏らしながら千草が腰を揺する。和也もただ彼女を抱いているだけではいられなくなった。

「……触らせて下さい……」

「……フフッ……して……」

許しを得た和也は千草の胸の上にある右腕の下に左手を潜り込ませ、バスローブの上から右の乳房を掴んだ。

そして右手をゆるゆると腹の上を滑らせ、秘部を押さえている千草の左手に重ねた。

千草はその下から自分の手を抜き取り、和也の右手を握るとローブの合わせ目から秘部へ導いた。彼の手の中に恥毛の感触が伝わる。

和也はそのままゆっくりと指先で恥毛の生い茂るあたりを撫で始めた。

「ふぅ……はぅ……は……うんっ……」

秘部を撫ぜながら和也は同時に下腹部を後ろから押し付ける。臀部の感触に応えるように千草も腰を振る。

鏡の中の二人はさながらチークダンスを踊るようにお互いの気持ちを高め合っている。

千草はやがて右手を合わせ目から抜き取り、肩越しに和也の頭を押さえ愛おしそうに撫ぜた。

和也はそれまでローブの上から乳房を揉んでいた左手を合わせ目に差込み、今度は直に千草の柔らかな胸を揉みしだいた。

(……これが千草さんの…オッパイの感触……)

そこまで考えて和也は気付いた。自分は今“人間の女性”に手を触れている。ロボットではなく、生身の女性に。

居間での出来事があまりにも激しく慌ただしかったので、あの時はそこまで気が回らなかった。

サラは人間の女性も乳房を強く揉んで大丈夫と言ったが、本当にそうだろうか――?

そう思った和也は千草の秘部を撫でるのをやめ、バスローブの胸の合わせ目を両手で掴み左右に引き開けた。

「あっ……駄目……」

鏡の中で千草の豊かな乳房があらわになった。恥じらいながらも千草の目は映っている自分の胸に釘付けになっている。

和也は両手で二つの膨らみを強く揉みしだき始めた。

「はぁ……んんっ……っふぅ……うんっっ……」

「……痛いですか?……」

「ううん……オッパイ喜んでる……」

そう言う千草も鏡の中で嬉しそうな表情を見せた。

揉まれているのも含めて、長らく男の目に晒さなかった乳房が和也を夢中にさせている事に千草は愉悦を感じているようだった。

(……胸だけじゃ駄目だ……もっと……)

和也は乳房から手を離し、ローブの腰紐に手を伸ばした。

「……もっと見せて下さい……」

嫌がるだろうか?――千草を気遣いながらも和也は腰紐の結び目を解く。その間、千草は抵抗の素振りを見せなかった。

はらりと腰紐が落ちた後、和也はローブの襟をおずおずと千草の肩口まで下げた。合わせ目が全開になり、鏡の中に千草の裸身が晒された。

「ああ……」

恥じらいとも興奮とも付かない吐息を漏らす千草。柔らかなピンクのローブに包まれた彼女の半裸の姿は何とも言えぬほど悩ましげだった。

「素敵です、千草さんの体……」

何より和也の目を引いたのは、サラやケイのとはいささか異なる千草の秘部だった。

サイバドールたちの際どい水着や下着を身に着けるのを前提としているのであろう、形を整えて植毛された恥毛と違い、千草のそれは何も手入れをされていない三角形だった。

彼女の黒々とした自然なままの豊かな茂みに和也は何故か感動を覚えていた。

和也は再び下の方へ右手を伸ばすと生い茂った草むらに手を入れ、その中に隠された秘裂を指でなぞった。

「あっ……ふぅん……あ……はぁぁ……」

軟らかくなった秘裂に和也は指を埋めた。コリコリとした熱い肉襞を指先で刺激するうちに愛液が滲み出してきた。

「んっ…ん……上のもイジって……」

和也は秘裂に沿ってぬめる指を滑らせ、控え目に顔を出しているクリトリスに触れた。千草の体がピクッと震える。

「あっ!……あぁ……うぅ…んっ……」

和也の指が肉芽をなぶる度に千草はもじもじと内腿を擦り合せる。

それと共に腰も和也の肉棒を更に尻の谷間に食い込ませようと押し出されてくる。和也もそれに応えて押し付け返す。

「はあっ……はっ……ああ…んんっ……ね、これ取って……」

そう言いながらも千草は和也の返事を待たず、後ろに手を回して彼の腰に巻かれているバスタオルを剥ぎ取った。

剥き出しになった和也のペニスは千草のバスローブに直に食い込んだ。

「あぁ……千草さんのお尻……とっても熱いです……」

和也は我知らぬうちに腰を前後に動かしていた。千草も両手で彼の尻を押さえて密着させ、その動きに合わせる。

「あっ……あ……はぁ……はぁ……駄目……欲しくてたまらないわ……このまま入れて……」

大胆にも千草はローブの裾を捲り上げて和也のものと生で触れ合った。

(うわ!……千草さんの……お尻っ……)

ローブ越しでも伝わってきた千草の尻の熱さを和也は直に感じた。柔らかな尻の谷間に挟まったペニスの鈴口から先走り汁が溢れてくる。

「……そうしたいのは山々なんですけど……もっと味わいたいんです、千草さんの体……」

「そう?……和也君がそう言うのなら……」

名残惜しそうに体を離すと千草は和也に寄り添いベッドに向かった。

快感の余韻に浸った表情を見せながらも和也に向けた目にはどこか恨めしげな光がちらついていた。

白けさせてしまっただろうか?――和也は気まずい思いを抱いたが、彼にとってはやむを得ない事だった。

実際、和也も早く千草と繋がりたかったが、どうしても“ある懸念”が拭い去れず、誘いにはおいそれと乗れなかった。

幸いにして千草はそんな事でへそを曲げるほど幼稚ではなかった。





雨が轟々と屋根や外壁やガラス窓を叩く、くぐもった音が明かりを消した部屋の中にこだましている。

その音に紛れるように甘いうめき声が切れ切れに聞こえる。

カーテン越しに雷光が閃き、その明かりにベッドに横たわる千草と彼女の股間に顔を埋める和也の姿が浮かび上がる。

「あっ……あぁ……はんっ!……はぁ……あふぅ……」

和也はサラにしたように舌を丸めて千草の秘裂の間を上下させていた。微妙な位置の刺激に千草はシーツを掴み、時折頭を激しく振った。

瑞々[みずみず]しくなった剛毛の奥を舐めるうちに、和也はサイバドールと人間の決定的な違いに気付いた――匂いだ。

サラやケイは甘い体臭を漂わせていたが、それはおそらく香水によるものだろう。実際、メイやレナから何らかの匂いがした記憶がない。

また彼女たちの唾液や愛液は塩っぽい匂いや味があった。しかし千草のそれはもっと複雑なものだった。

これまでの生活と成熟する過程で醸成されてきたであろう、人工的に合成する事が困難な生物的な臭い――いや、匂い。

居間のソファーで千草と初めて触れ合った時、和也は彼女の体臭や口臭に違和感を覚えた。

その匂いは今まで和也の身近にいた女性――彼の姉や妹、そして記憶の中にいる母親のものとは異質なものだった。

しかし違和感はあっても不快な匂いではなかった。第一、彼を全力で求めてくる女性の匂いを嫌いになれるはずがなかった。

真横に開いた千草の内腿を愛撫しながら、和也は秘裂から湧き出てくる愛液を舐め取りクリトリスを刺激し続けている。

「あっ……ぁあんっ……はぁ……はぁ……いいのよ、和也君……欲しいの……入って来て……」

切なそうに哀願する千草。和也は彼女の茂みから顔を上げた。それを見計らったかのようにカーテンの外で稲妻が走った。

下腹部の向こうに見える二つの膨らみと、その間の奥のトロンとした千草の顔。和也はためらいがちに身を乗り出し彼女と体を重ねた。

和也の背中に腕を回し、千草は彼の唇を求めた。二人は互いの唇をむさぼり、舌を絡め合い、唾をすすり合った。

そうする内にも千草は股間に手を伸ばし、和也のペニスを握ると自分の陰部にあてがい早く挿入するよう促した。

(……本当にこのまま入れていいのか?……)

和也の懸念――それは千草が生身の女性である事だった。おそらく年齢的にも生理はまだ上がってはいまい。

生で挿入し、中で射精する。その後に何が来るか千草にも分かっているはずである。

膣外射精という手もあるが、タイミングを間違えると相手を欲求不満にさせてしまうとケイから注意を受けていた。

しかし千草が期待を込めて見つめている今、もう悩んでいる暇はない。

和也は自分でペニスを握りなおすと、千草が自らの指で開いている入り口に先端を突きつけ、中に押し込んだ。

「あっ……あぁああ……入ってくる……」

「うっ……うう……んんっ……」

ぬめる膣内を突き進み、ペニスが根元まで挿入された。和也と千草は完全に一つになった。

「は……あぁ…………嬉しいわ……和也君……私おいしい?……」

「……おいしいです……でも……僕を食べているのは千草さんですよ?」

「……そうね……和也くんの、おいしいわ……」

「じゃあ……もっと味わって下さい……」

和也はゆっくりと腰を動かし始めた。彼の逸物が膣内を行きつ戻りつする度に千草が甘い声でうめく。

「あぁ……あっ……はぁ……はぅんっ!……はぁ……あぁ!……」

街路灯の光がカーテンの隙間から差し込む青い暗がりの中で和也の腰が千草の脚の間で波打つ。

繰り返し送り込まれる若い男の熱情に千草は体の隅々まで歓喜に打ち震えていた。

「あっ! あっ! ああんっ! 和也君、いい!……ああっ! もっと…して!」

高まる千草の嬌声に愉悦を感じながらも、和也は別の事を気にし始めた。向こうの部屋のレナに聞こえるのではないのか?

和也は唇で激しくあえぐ千草の口を塞いだ。

「んっ……んんっ!……んむ……んむぅっっ!」

くぐもった千草の甘いうめき声を聞く内に和也は、下腹部の中の精嚢が口を開きかけているのを感じた。

「……千草さん……僕、もう……」

射精が間近に迫っている事を和也が訴えようとした時、先読みしたのか千草は太腿で彼の腰を挟み両足を絡み付けた。

「!?……千草さん、離して下さい!……このままじゃ……」

「いいのよ……中に出して……」

「でも……それじゃ……」

「大丈夫……心配しなくていいから……中にちょうだい……お願い……」

千草は何もかも承知で望んでいる。何をもって心配するなと言っているのかは分からないが、ここは彼女を信じるしかない――。

「……分かりました……逃げませんから足をほどいて下さい……」

千草も半信半疑なのか、無言のまま絡めていた足をゆっくりとほどいた。和也は覚悟を決めた。

彼は繋がったまま身を起こすと自分を捕まえていた太腿の下に腕を入れて千草の両脚を上へ持ち上げ、彼女にのしかかり直した。

屈曲位を取らされた事で千草の陰部は更に上に上がり、和也との結合はより深くなった。

「ああ…っ……」

「……苦しいですか?……」

千草は激しく首を横に振った。

「いいの……動いて……もっと奥まで入れて……」

和也は再び抽送を始めた。彼の腰を受け止めてわななく千草の尻に感動しながら――。

「はっ! あっ! あんっ! いい! いいっ! ああんっ!」

「うっ……うんっ……うんっ……千草……さんっ……」

「はっ!……はっ!……いいの!……和也君、もっと! 駄目! もっとぉ!……ああっっ!」

ズン、ズンと突き入れられる度に千草は甘い嬌声を上げる。湧き出し続ける愛液はアナルまでも濡らし、その感触が更に彼女を刺激する。

快感に身をよじる千草の膣内はくわえ込んだ和也のペニスを熱く包み射精を促す。もはや和也もレナの事を気にする余裕などなくなった。

「はぁ…はぁ……千草さんっ……いいんですね?……本当に欲しいんですね!?」

「欲しい! 欲しいの! 早く、ああっ駄目ええっ! ああぁっ……あっあああっ……!!」

絶頂に達した千草の声が止まった。構わず突き続けるペニスの尿道を精液が駆け登ってきた。

「うんっっ!!」

理性をかなぐり捨てると和也はペニスを一番奥まで押し込み、千草を妊娠させるつもりで射精した。

長い間迎えるものがなかった子宮の中に、牡の本能に満ちた白濁液がどくっ、どくっと注ぎ込まれていく。

射精の脈動と共に和也は腰を小刻みに震わせた。脚の間のその振動が千草の体を小さく揺さぶる。

「……あ……ああ……」

精液が入ってくる――そんな言葉が続かないほど千草は放心した様にうつろな表情で口を半開きにしていた。

「はぁ……はぁ……」

脚を下ろして大の字になった千草の上で、和也も彼女に覆い被さったまま息を切らしながら動けずにいた。

(……千草さんが……僕の……初めての人……初めての……人間の女性[ひと]……)

もやがかかった様な頭の中で、和也はそうぼんやり思った。





いつしか雨足が弱まり、屋根裏で響く雨音が小さくなっていた。

和也はベッドの上で仰向けになり、思考をさまよわせながら天井を見つめている。

千草はその横で彼の胸に頭を預けて寄り添っている。

もっとも行為が終わってからずっとこのままでいた訳ではなかった。

身も心も落ち着くと千草はティッシュで体液に濡れた股間を拭き取り、洗濯物を乾燥機に移す為にそそくさと階下へ降りて行った。

余韻も何もあったものじゃないと縮んだ自分の分身を拭いながら和也は呆気に取られた。

そして用を済ませ戻ってきた千草は身に着けていたローブとパンティを脱ぎ捨てると、少女のように微笑みながらベッドに潜り込み、何事もなかったかの様に和也に寄り添った

中年主婦の変わり身の早さにその時の和也は舌を巻く思いだった。

今、千草の肩を抱きながら和也は彼女を愛おしく想うと共に戸惑いも感じていた。

この人が初めての人――。

サラは確かに和也に初めて女の感触を教えてくれたが、それでも千草は紛れもなく和也と交わった最初の人間の女性だった。

そして彼女は和也が住むアパートの大家であり、かすみの母親――。

(……よかったんだろうか……こんな関係になって……)

「……何を考えているの……」

「い、いえ、何も……」

出し抜けの千草のつぶやきに和也はどぎまぎした。この状態になってから二人は一言も言葉を交わしていなかった。

「かすみの事なら気にしないで……あなたはまだ誰のものでもないんでしょ?……あの子がとやかく言う筋合いじゃないわ……」

「はぁ……いや、それもあるんですけど……今は千草さんの体の方が……」

「フフ……心配しないでって言ったでしょ……何の考えもなしに行動するほど子供じゃないわよ……」

千草が何らかの予防措置をしている事を知って和也は少し安心した。しかし彼女は具体的な事は何も言っていない。

何をどうしたか聞いてみたくなった和也だが、根掘り葉掘り追及するのも野暮な事だと思いとどめた。

ケイも言っていた。しつこい男は女に嫌われると――。

「……それにしても千草さん、すごいですね……旦那さんともあんな風に――」

そこまで言って和也はしまったと思った。このベッドの上で振るにはうかつな話題だった。千草は無言のままでいる。

「す…すみません……余計な事言って……」

「……いいのよ…………主人は意気地のない人だったわ……私が誘わなければ夜の生活もままならないくらいだった……」

「そ……そうなんですか?……」

「……でも一旦その気になればいくらでも熱くなれる人だった……私に目隠しして自分のものを咥えさせたり、後ろ手に縛った私を後ろから攻めたり……お尻の穴にも何度か入れられたわ」

「えっ!?」

和也は言葉を失った。穏やかそうに見える千草がそんなハードな行為を夫としていたとは。しかもアナルまで――。

「最初の時、怖かったし、嫌だった……でも私しか頼める相手がいないとあの人にせがまれて許したの……案の定、切れて血が出たわ……」

「…………」

「……でも終わった後、あの人は詫びながら嫌な顔一つせずお尻の穴に傷薬を塗ってくれたわ……その時思ったの……こんな風に出来るのが本当の夫婦なんだなって……」

「いい人だったんですね、旦那さん……僕もそんな風になれるかな……」

「なれるわよ、和也君なら……ね、和也君もお尻の穴でしてみる?」

「え?…ええ!?」

千草は妖しく微笑みながら半身を起こした。左手を和也の下腹部へ滑らせ、彼のだらしない逸物を握る。

「服が乾くまでまだ時間掛かるわよ……」

千草のしなやかだが年季の入った指に包まれたペニスは、それだけで力を取り戻した。正直過ぎる体の反応に和也は観念した。

「……でも僕はまだ未熟だから上手くできるかどうか……自信ないです……」

「じゃあ、せめて雰囲気だけでも味わってみない?」

千草はバックをせがんでいる――ここまで言わせて期待に応えなければそれこそ不興を買いかねない。和也は枕から頭を上げた。

「……それじゃ、ご馳走になります……」

起き上がった和也は四つん這いになった千草の後ろに回りこみ、彼女の開いたふくらはぎの間に入った。

ペニスを握り千草の秘所にあてがおうと顔を上げた和也は一瞬たじろいだ。

千草は早くも上半身を伏せ、尻を高く突き出している。最初にホテルへ行った時のケイの言葉が和也の脳裏をよぎった。

“後背位の時に女性が上半身を伏せたら、それはもっと奥まで入れてというサインよ……”

「……いいんですか? その格好で?」

「ええ……どうして?」

「いや、その……丸見えだから……」

アナルまで丸見え――と言いたい所を気を遣って直接表現を避けた和也だが、千草は彼の口ごもった部分をすぐに理解したようだった。

「気が変わった? どっちでも好きな方に入れていいわよ」

伏せたまま振り向き、嫣然[えんぜん]と微笑む千草。それを受けて和也は催眠術に掛かったように彼女の菊門を凝視した。

千草の体全てに自分の存在を刻み付けたいという欲望が頭をもたげて来る。

しかしケイのレッスンでも和也の経験値ではまだ難易度が高いからとアナルセックスは教わっていなかった。

もっともケイが許したとしても和也の方で尻込みしたであろうが。

「……すみません……後ろの方は……またの機会にさせて下さい……」

「そう……楽しみにしているわ……」

失望するどころかますます目を輝かせて千草は前へ向き直った。

自分に全てをさらけ出している千草の本気ぶりにおののきながらも和也は再び彼女に挑んだ。

「……行きます……」

「あっ……あー…っぁあああぁっ……」

自分の中に突き進んでくるモノにわななく千草。彼女の愛液と逆流していた精液でぬめる膣はすんなりと和也のペニスを受け入れた。





空のどこかで稲妻が走り、明るくなったカーテンの前に上半身を伏せ尻を突き出した千草と和也の繋がったシルエットが浮かんだ。

部屋が再び薄暗くなり、数秒送れて雷鳴が轟く。

「……んっ……んんっ……はぅ……ふぅんっ……はっ……あぁ……あっ……」

雨雲が去りつつあるのか、もはや部屋の中に伝わる雨音はかすかにしか聞こえない。和也に貫かれる千草も歓喜の声を押し殺している。

その奥ゆかしさとぬめる膣内の感触が、彼女の尻に腰を打ち据える和也の快感を高ぶらせていく。

(……僕は今、かすみちゃんのお母さんとしているんだ……かすみちゃんを産んだ人と……)

蒸気機関車のピストンのように千草の淫口を穿ちながら、和也の脳裏にはそんな言葉が繰り返し浮かんでは消えていった。

彼女と初めて会った時はこんな時が来るとは夢にも思っていなかった。

――いや、そうだろうか? 歳の割りに若く美しい彼女を見て、こんな風にしたいと微塵も思わなかったといえるだろうか?

そんな事はない。親子ほど歳が離れていても、自分はこの人に対して強い渇きを覚えたはずだ――。

ずっと年上でアパートの大家で、かすみの母である事実がその情欲を深く押さえ込んでいただけに過ぎない。

心のどこかで千草とこうした背徳のひと時を持つ事に憧れていたはずなのだ。もう自分を偽る必要はない。

この人と一つに溶け合いたい――。

「あふ……うんっ……和也…くぅんっ……あっ……んんっ……うっ、んっ、んんんっっ!!」

「千草さんっ……千草、さんっっ……!!」

同時に絶頂を迎える二人。

和也は母親のような女の尻を抱え、かつてかすみをはぐくんでいた神聖な場所に向かって再び精液を放った。



(続く)


解説

原作アニメを見た事のない方々に念のため説明しておきますと、原作の千草さんはこの小説で描かれたような濃い女性ではありません。

そもそも原作での千草さんは全11話中、トータル2分くらいしか出番がないのです。

そんな脇キャラに何故そこまで? と思われるでしょうが、実はそれなりの根拠があるのです。

『メイ』第7話にある和也と千草さんの会話のシーンで、千草さんは彼に「和也君」と呼びかけます。

「早乙女さん」でも「早乙女君」でもなく、「和也君」。

大家として店子に対するにはあまりにも馴れ馴れしい呼びかけ。怪し過ぎます(笑)。

更に裏設定なのか没設定なのか、あるいはデマなのか分かりませんが、和也の父親がかつてかすみ荘の住人だったという説も聞いています。

それらの事を考え合わせると千草さんは和也に何らかの関心を持っていると思えてならないのです。

真相はどうあれ、そんな断片的な情報から膨らませた妄想を形にしていくのも二次創作小説の醍醐味だと個人的には思っております。


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