かすみ荘LOVERS MAP  第5話 アイボリーの白昼夢
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かすみ荘LOVERS MAP  第5話 アイボリーの白昼夢
テネシィワルツ/文


サイバドール・マミ。

未来においてサイバドールたちを製造するサイバーダイン社開発部の中心人物であり和也の子孫でもある男、早乙女卓也に仕える家政婦型CBDである。

2年前、メイたちに続き和也の世話をするという名目でこの時代にやってきたが、その真の目的はコンピュータ・レトロ・ウィルスを抱え込んでいたサイバドールたちの監視をする事だった。

果たしてウィルスは発症し、マミを含むCBDたちは高熱を出して機能不全に陥ったが、感染を免れていたメイと和也、卓也たちの尽力でウィルスは撃退された。

ウィルス騒動が収まるとマミは再び卓也の元へ戻ったが、何かにつけて和也たちの元へたびたび訪ねて来るようになっていた。





「お…脅かさないで下さいよ……どうやって入ったんですか?……鍵は掛けたはずなのに……」

「あらあら〜、旧式のシリンダー錠なんてチョロいものよ〜」

訊ねる和也にマミはほっかむりを留めるヘアピンを1本抜いて得意げに目の前へ差し出した。和也は呆れた。

「どこで覚えたんですか、そんな事……それよりどうしてここへ?」

「ちょっと野暮用で千草さんの所にね〜……入れ違いで出たレナちゃんの帰りが遅いって言うから様子を見に来たんだけど……」

ヘアピンを戻しながらマミは嫌味がかった感じで目を細め、ベッドの上の二人を見た。

その視線に和也は下半身が丸出しなのを思い出し、慌ててトレーナーの裾を引き下げた。

レナも恨めしげにマミを見返しながら脇にあったショーツをのろのろと穿[は]いている。

「……和也ちゃんたら、フォビドゥン・フルーツを口にしちゃったのね〜」

「何ワケの分かんない事言ってんのよ! 様子が分かったのなら早く帰ってよ!」

「レ、レナちゃん……」

「はいはい、ごめんなさいネ〜。その前にレナちゃ〜ん、お風呂場に行ってシャワー浴びてらっしゃ〜い」

「何でよ」

「おまたからイカくさい臭いをさせてたら、あなたもかすみちゃんに睨まれるわよ〜。洗浄機能を立ち上げて中も綺麗にしないとね〜」

「……知らないよ、そんなの……使った事ないもん……」

「あらあら、仕方ないわね〜……じゃあ手順を教えるから右手を出してプリーズ」

サイバドール同士には互いの手の平を合わせてデータ通信を行う機能がある。レナは近づいてきたマミと渋々手を合わせた。

「…………ハイ、これで分かったでしょ? 行ってらっしゃ〜い」

「マミはどうすんのよ?」

「私は和也ちゃんとお話があるからもう少し居させてもらうわ。ゆ〜っくり入っててね〜」

フンと鼻を鳴らしてレナは台所の横にある風呂場に向かった。和也はその間にトランクスとズボンをあたふたと穿いた。

「さ〜て、お茶の一杯でも飲みたい所だけど、わざわざ入れている時間が勿体無いわね〜……という訳でぇ……和也ちゃん、ここに座って」

「は、はい」

ベッドに腰を下ろしたマミに示され、和也はその隣に座った。

マミとこんな形で接するのは初めてのような気がする――そんな事を考えながら。

「……で、どんな感じだったのかしら? レナちゃんの使い心地は」

「使い心地って、そんな……まぁ……良かったですけど……でも何か……終わってみると後ろめたいですね……」

「そう思えるなら上出来よ。味をしめて今度は人間の女の子を、なんて考えているのならタイホしてもらわなきゃならないものね〜」

「しませんよ、そんな事!…………あの……マミさん……」

「なぁに?」

「さっきレナちゃん“も”かすみちゃんに睨まれるって……マミさんもあの事知っているんですか?」

「ええ。こないだ近況を聞こうと思ってサラちゃんに超時空間[ちょうきょり]電話をかけたのよ。そしたら彼女、ヴェリー凹んでてね……」

和也はその言葉に胸が痛んだ。マミにまであの一件が伝わっているのは正直言って面白くなかったが、サラが未だに気に病んでいるというのが気掛かりだった。

「何でも何日か前にかすみちゃんに謝りに行ったそうなんだけど、相手にされなかったって……和也ちゃん知ってる?」

「いえ、初耳です……それでマミさんがこっちへ?……仲裁に?」

「そんな大それたものじゃないんだけど……あらあら? この手紙は?」

何の気なしに頭をめぐらしたマミは和也の背後にあった封筒に気付き手に取った。全体にしわが入っている。おそらくさっきまでレナの下になっていたのだろう。

「それ、レナちゃんが持ってきた千草さんの手紙です……マ、マミさん? 何してるんです!?」

「な〜に書いてあるのかしら〜と思って」

マミは封筒を上にかざし、透かす様に覗きこんでいた。

「やめて下さいよ! まさか透視能力を使えるんじゃないでしょうね!?」

「出来なくはないけどね〜。はい、ソーリー……内容は自分で確かめてみて」

「勘弁して下さいよ、もう……」

マミが差し出した封筒を和也は彼らしくもなく、ひったくるように奪った。彼女に背を向け封を切る。

中に入っていたのは一枚のメモ用紙でこう書かれてあった。



『もみじののブティックH 

 来週の日曜の午後は?

 可否 今日の夕方までに 電話で』



「あらあら〜。千草さんらしい、ぶっきらぼうな書き方ねぇ〜」

「覗かないで下さいよ! 透視したんじゃなかったんですか!?」

「面倒くさいからしなかったわ。それにしてもこんなお誘いをいただくなんて……和也ちゃん、千草さんも撃墜しちゃったのね〜」

「人聞きの悪い事言わないで下さいよ……でも何だろう……ブティックHって……」

「多分ブティック・ホテルね。この時代のラブホテルの別称よ。千草さん、よく知っているわね〜」

妙な事に感心しなくてもいいのに、と思いながら和也は考えた。“もみじの”というのはもみじ山市内にあるもみじの遊楽街――和也とケイが性講座に利用するラブホテルのある一角である。

(今度は外で落ち合おうという事か……でも大胆すぎるよ……知り合いに見られたらどうするんだ?)

「バット、気になるわね〜。サラちゃんの後にいきなり千草さんなんて不自然だわ。テクニックもないビギナーが人妻に気に入ってもらえるはずないもの……間に誰か挟まってない? ケイちゃん? メイちゃんて事はないわよね〜」

「はい……その……ケイさんです……色々教えてもらいました……」

「ア〜ハァ〜、それで納得〜。和也ちゃんも女殺しになったのね〜」

和也はどう答えてよいか分からず赤面してうつむいた。

「……そんな積極的な男じゃありませんよ、僕は……ところでマミさん……」

「なぁに? パート2」

「……答えづらい話かも知れませんけど……何故サイバドールにセックスできる機能が付いているんですか? 僕はそこまで考えていないのに……」

「あらあら〜、いきなり内角高めの球を投げてきたわね〜」

マミのその声はにこやかだが、どこか戸惑いが滲んでいるように和也は感じた。理由は分かっている。

「教えてあげたいのは山々なんだけど、社長や卓也さんから未来の事は極力和也ちゃんたちに話さないように言われているしね〜……」

「……やっぱりそうですよね……」

「う〜ん……でもこれくらいなら……いいかしら? いいわよね? ウン、いいわよ」

なかば強引に自分に言い聞かせるとマミは居住まいを正した。

「まず何故サイバドールが必要とされるようになったか、という根本的な問題があるんだけど……これは今回はオミットさせてもらうわよ。和也ちゃんに対する最重要機密になっているから」

「最重要って……それを知ったら僕がMAIDシステム開発をやめてタイム・パラドックスが起きる……かも知れないからですか?」

「それもノーコメント。で、何故サイバドールにセックスの相手を出来るようにしたのかというと……人間の女性の負担を減らす為なの」

「負担?」

「セックスは種の保存の為に必要だけど、それ以外は快感を得る娯楽行為でしょう? 射精だけが目的なら相手が人間の女性でなくてもいいわけだし。でもオナホールやゴム人形じゃ味気ないから、どうせなら精密な人間の女性のレプリカを作ろうと……そういう訳よ」

「……」

「どんな体位も出来るし、人間の女性が嫌がる精液を顔にかけたり飲ませたりもし放題、早漏でもバカにしないし、何より望まない妊娠の心配もない……人間の男性にとってはパーフェクトなセックス・パートナーじゃないかしら」

マミの言う通りかも知れないと和也は思った。相手に気を使わず、思うままに出来るのなら男にとってそれに越した事はない。しかし――。

「でも……そんな事していたら男はそれが当たり前だと思うようになって、ますます乱暴に扱うようになるんじゃないですか?」

「一応、表向きには性行為での使用は推奨していないし、それで不具合が生じてもメーカー補償は付かないとしているの。覚悟を決めてそのハードルを越えたユーザーだけがCBDの“御奉仕”を受けられるのよ」

「メーカー製パソコンの不正改造みたいなものなんですかね……」

「ちょっと違うわね〜……強いて言えば自動車の『制限速度は守ってもらうけど、200キロまでスピード出せますよ』みたいな感じね」

「……だけど、そうなると社会問題になったりしてません? CBDばかり相手にして人間の女性と付き合えなくなるとか……」

「別にィ〜。付き合える人は付き合えるし、付き合えない人は付き合えない。恋愛や結婚に積極的な男性は生身でなきゃダメだし、女性だってこの時代の2ディメンション・オタ〜クちゃんみたいな男は対象外よ。未来でもそういう住み分けは出来ているって事」

「……それでいいのかな……例えば既婚男性がCBDを一人、家政婦として家に置くとして……普段のセックスをCBDで済ませてたらその人の奥さんは欲求不満になるんじゃないですか?」

「それが悩みどころなのよね〜。欲求不満というより嫉妬の問題よ。家事を含めて面倒くさい事はCBDに押し付けてマイ・ライフを追求できるはずなのに、子作り以外自分が必要とされない事に気付いて、妻としてのアイデンティティに疑問を抱く事になるわ」

「それじゃ負担を減らすどころか、かえって問題になるじゃないですか……それで奥さんに八つ当たりされたらCBDが可哀想ですよ!…」

語気を強めてマミの方へ顔を向けた和也はハッとなった。マミの表情には今まで彼が見た事のない陰りが浮かんでいた。

「……卓也さんもその事で胸を痛めているわ……開発コンセプトが裏目に出てしまっているんですもの……実際、そういう絡みで会社に抗議してくる人たちもいるし……」

「やっぱり……」

「何より和也ちゃんの言うとおり、可哀想なのはCBDの女の子たちよ。男性の性欲処理は仕事の内だとしても、その事で人間の女性に役割を横取りされたと睨まれるんだから……」

「……」

「でも当の女性たちは『女は奴隷じゃない』と言ってお茶汲みなり家事や育児なりを敬遠するようになった訳だし、じゃあ誰がその穴を埋めるのかといえば……あらあら、ここから先はキープ・アウトね」

それがマミが言いよどんだ、未来でサイバドールが必要とされるようになった理由――少なくともその一つなのかと和也は思った。どうやら未来社会でも男女間の平等な関係は築かれていないらしい。

あるいはその逆で平等な関係を築けるようになったからこそ、男が女に押し付けていた苦労を今度はサイバドールが引き受けさせられるようになったのか――。

確かにこれは和也の望んでいた人間とロボットの関係ではない。マミが彼のモチベーションの低下を懸念するのも無理はない。

人間には人間の果たすべき役割があり、MAIDシステムを搭載したロボットはそのサポートをする為のもの――それが彼の思い描いていた人間とロボットの関係だった。

そんな風に自分の意思にそむく形で使われるのならいっその事――。

「……和也ちゃ〜ん? 何か思うところがありそうね〜」

和也の思いつめた表情を覗き込みながらマミが据[す]わった目で言った。

「そんな未来なんか嫌だと考えているのならMAIDシステムの研究をやめてもいいわよ」

「えっ……」

「メイちゃんは嫌がるでしょうけど、私は構わないわよ。もう充分サイバドールとして生きてきたし」

「……マミさんがそんな事言うなんて……自分さえ良ければいいんですか!?」

「それはお互い様でしょ?」

和也は言葉に詰まった。自分がMAIDシステムの研究をやめれば歴史は変わるかも知れない。そうなればサイバドールは存在しなくなる。

充分生きたから後の事はどうなろうと構わないと言ったマミと、一時の感情で歴史の修正を考える自分は違うといえるのか。

「……そうね、歴史が変わるのなら、むしろその方がいいわ。卓也さんもサイバドールの事で悩む事のない、違う人生を生きられるから」

真顔でそう言うマミに和也はいつもと違うものを感じていた。自分の存在が消える事以上にマスターの身を案じている。

「マミさんがそこまで言うほど卓也さん、辛い思いをしているんですか……僕にはそんな所見せないのに……」

「そこは大人だもの……あの人、二つの苦しみを胸に秘めているの……和也ちゃんの理想を裏切っている事と、CBDの女の子たちが世間で奴隷や風俗嬢のように見られている事……もちろん未来の人全てじゃないけどね」

「……」

「だからあの人、せめて私だけは肉便器と誹[そし]られても胸を張って違うと言えるよう、何もしてないの……」

「えっ……それじゃあマミさん……まだ……」

「フフ……いい歳して未だにヴァージンのままよ……ア〜ハァ〜? 和也ちゃん、私と卓也さんがディープな仲だと思ってた?」

「い、いえ……いや、確かにそれは……お二人とも大人ですし……」

からかう様なマミの問いにうろたえながら和也は答えた。確かに下世話な想像をしなかったといえば嘘になる。

サラの口からサイバドールに性交機能があると明言されて以来、マミと卓也もそういう関係かも知れないと和也は密かに勘ぐっていた。

ただ、子孫とはいえ卓也は30代半ばの男性、和也から見れば叔父か従兄のようなものである。

身内の者が女性と睦[むつ]みあうところを想像するのは気まずいものがあった。相手が機械人形であれば尚更である。

「あらあら……フフッ、そうよね〜……実際、向こうのご近所でもそう思っている人はいるらしいわよ……」

「それだったら無意味じゃないですか……それでなくたって世間は真実よりも自分の思い込みの方が正しいと思いがちだし……」

「気遣ってくれてセンキュー……でもいいのよ。卓也さんもそれは覚悟の上だもの。だから私はあの人に従うだけ」

「……」

「……それでもね……卓也さんの部屋を掃除していて……ゴミ箱の中にそういう痕跡を見つけた時に思うの……思い切って私を使ってくれればいいのにって……」

そう言いながらマミは寂しそうに微笑んだ。和也は何とも言えない気持ちになった。

セックスのみならず、見知っている者がマスターベーションにいそしんでいる場面は思い描きたくないが、身に憶えがある以上、卓也の生理は和也にも理解出来なくはない。しかし。

「……差し出がましい事かも知れませんけど……僕はその事、卓也さんにキチンと話した方がいいと思いますよ」

「え?」

「世間を気にする事も時には必要だけど、それ以上にマミさんとの付き合いの方が大事じゃないですか。長年連れ添った相手を悲しませるくらいなら、むしろ開き直った方が……」

余計な事を言っているかも知れないと思いつつ、和也は恐る恐るマミの方を見た。彼女は和也にやや顔を向けつつも伏し目がちに視線を落としていた。

「……すみません……生意気な事言って……」

今度は和也が視線を落としながら恐縮した。数秒の沈黙の後、マミはフッと微笑みを浮かべた。

「いいのよ……ありがとう和也ちゃん……そうね、これで踏ん切りがついたわ。帰ったら卓也さんに話してみる。お暇を出されるかも知れないけど」

「えっ!?……いや、僕はそんなつもりで……」

「ノープロブレム、万が一の話よ。どの道あの人は戸惑うでしょうけどね……」

「……」

「ハァ……それにしても現代[こっち]はこっちで暑いわね〜。浴衣で来ればよかったかしら〜?」

おもむろに立ち上がったマミはそう言いながらエプロンを外し、着物の帯を解き始めた。

「マ、マミさん?……何を……」

「ドント・ムーブ。私がいいと言うまでそのままでいて」

「は……はい……」

大人しく座ったままの和也の目の前でマミは着物を脱いでいった。和装の流儀にのっとってか、下着は着けていなかった。

生まれたままの姿に足袋型のソックスを穿いただけの裸身が和也の前に晒された。

形のいい豊満な胸。滑らかな曲線を描く腰。年齢相応に、しかし控え目に出た下腹。そしてその下にあるブロンドの茂み。

「ど……どういうつもりなんですか?……」

「私の背中を押してくれた和也ちゃんにお礼しようと思って。千草さんをクリアしたのなら私も許容範囲でしょ?」

「……嫌じゃないですけど……でも……やっぱり駄目ですよ……マミさんは卓也さんのものだし……」

「和也ちゃ〜ん……耳を澄まして自分の内なる声を聞きなさ〜い……私のこの姿を見て期待するものはある〜?」

「……は……はい……」

「オーケー、素直な和也ちゃん、好きよ〜。中年女は口は悪いけど、若い男の人の期待にはちゃんと応えるわよ〜」

そう言うとマミは和也の前にひざまずき、彼のズボンの前に手をかけた。

和也もこの期に及んでうろたえはしなかった。マミとこれから行われる事は確定事項である。

唯一心に引っ掛かりがあるのは、マミのマスターである早乙女卓也に対する遠慮だった。それを見透かしたかのようにマミは言った。

「もちろん私のヴァージンは卓也さんのものよ。それだけは許してね」

「分かってます……それじゃあ……?」

「女には男性を受け入れる場所が三つあるわ……ひとつはヴァギナ。ふたつ目はここ……」

そう言ってマミは和也のトランクスから取り出した硬くなりかけのモノを口に含んだ。

「んむっ……ん……んっ……んふっ、うんんっ……」

「あっ……マミ…さんっ……」

マミの唇が柔らかく自分を包み、口腔[なか]で舌がペニスの裏側を舐めさすっているのを感じて和也は声を上ずらせた。

フェラチオならケイに何度もされているし、昨夜も千草が後背位で射精した後のペニスを毛づくろいする猫のように執拗に舐め上げ、粘液をきれいにぬぐってくれた。

しかし今行われている行為は和也にそれらとは違う感慨を与えていた。

あのマミが自分の逸物を咥え、頭を前後に振り動かしている。

卓也のCBD[おんな]が、そして何より金髪の白人女性が自分の股間に顔を埋めて口で“奉仕”している――。

その事実が和也の中に背徳的な征服欲を呼び起こし、ペニスを更に硬く熱くさせていった。

「う……はぁ……あぁ……マミさん……いいです……舌が……」

「んん……んっ……むぁ……舌がいいの? こんな風に?」

粘液の糸を引きながらペニスを開放したマミは嬉しそうに微笑みながら再び口を寄せ、突き出した舌先を亀頭に這わせた。

「あっ……ぅあ……はぁ……」

張り詰めた亀頭やカリ首を円を描くように舐めまわし、先走り汁が滲み出す鈴口をくすぐる様に舌を動かすマミ。

ペニスに刺激を与えられるたびに和也はガクガクと腰を揺すった。

「ノーノー、下がっちゃ駄目、もっと前に座って……」

「そんな事言われても……気持ち良過ぎて……あっ……」

「和也ちゃん、こっちを見て……」

和也が視線を落とすとマミは上目遣いで彼を見つめ、再びペニスを頬張った。

「んん……んふ……ん……んむっ……」

主人の無体な言いつけに従わされる奴隷のようにマミは和也を下から見上げたまま、すぼめた唇の中で舌を巧みに使い彼の先走りと自身の唾液をいきり立つ砲身に塗りたくっていった。

大人の女性をかしずかせ逸物をしゃぶらせているという嗜虐心と股間で繰り返される肉体的刺激によって和也のモノは射精モードに入った。

マミの口の奥に精液をほとばしらせたい――和也が夢遊病にかかったように手を挙げ彼女の頭を掴もうとした時、マミは不意に動きを止めペニスから口を離した。

「えっ……やめちゃうんですか?」

「フフ…出したかった? でもここまで。今発射したらリロードに時間かかるでしょ? ぐずぐずしてたらメイちゃん帰ってきちゃうわよ」

マミの言うとおりだった。突拍子もない出来事の連続で和也はメイの事をすっかり忘れていた。まだ大丈夫とは思うものの、かすみに見られたあの日のように何が起こるかは分からない。

「……じゃあ、この後は?……まさか、三つ目の場所って……」

「ディンド〜ン、ご明察〜。今なら直腸部分エンプティだからノープロブレムよォ。ケイちゃんはそこのやり方教えてくれた?」

「いえ……僕の経験値じゃまだ難易度が高いからって……」

「あらあら変ねぇ〜。ケイ・タイプは全機種アナル・セックス完全対応のはずだけど〜?

「え……それってどういう……」

「マスターの技量に合わせてお尻の穴の緩さを変えられるって事よ……ア〜ハァ〜、さてはケイちゃん、アヌスの感度良すぎるのかしら〜? きっと和也ちゃんに“ケツの穴でイキまくるメス豚”と思われたくなくてさせなかったのね〜」

「マミさん……その言い方はちょっと……」

「あらあら、ノット・ラーフ? アメリカン・ポルノみたいな言い回しのつもりだったんだけど……あらあらいけない、あなたも服脱いで」

「えっ?」

「ジュニアがしぼみかかっているわ。裸になってお肌が触れ合う面積をより多く取りましょ。さ、スタンダップ」

言われるまま立ち上がった和也はトレーナーと先ほど穿いたばかりのズボン、そしてトランクスを再び脱ぎ、マミと同じ格好になった。

「……靴下も脱いだ方がいいかな……」

「そのままでいいわ。照れなくていいわよ。見ているのは私だけだし」

生まれたままの姿にソックスだけを穿いた二人は向かい合って立った。

「……私を抱きしめて、和也ちゃん……」

和也はマミの顔と胸の膨らみに交互に目をやり少しためらった後、前に歩み出て彼女を抱きしめた。マミも彼の背中に腕を回した。

密着した肌の感触に和也は再び自分の局部がうずくのを感じた。

「あぁ……素敵ですマミさん……温かくて……柔らかくて……」

「センキュー、和也ちゃんも素敵よ。エレクトしたジュニア、たくましくて……」

マミは和也より頭半分ほど背が高い。そして腰の位置も高く、そのため和也のいきり立ったモノの先端はマミの陰毛の下に食い込んでいた。いわゆる素股の状態である。

「……このまま腰を落としたら入っちゃいそうね〜」

「ゆ、誘惑しないで下さいよ……」

「そうね、私もその気になっちゃいそうだからそろそろ始めましょ」

そう言ってマミは体を離した。しかしペニスが彼女の股間から抜ける瞬間、和也はその先端にぬめりを感じた。自分の先走りだけではない。

(……マミさん、もしかして……)

和也はいぶかしみながらマミの尻を目で追った。ベッドに上がると彼女は四つん這いの体勢をとった。つられる様に彼もその後ろについた。

アナル・セックスに抵抗がないといえば嘘になる。現に昨夜、千草の誘いにも躊躇したばかりだ。

まさかこんなに早く実戦経験を積む機会が来るとは思わなかった。だが千草の期待に応える為なら引き下がるわけにはいかない。

「和也ちゃ〜ん、私のホット・リップからラヴ・ジュースをぬぐい取ってくれる〜?」

「ホット?……あ……ここですか……?」

和也はマミの開いた脚の間の茂みにためらいがちに手を伸ばした。指先が触れた陰毛は愛液で湿りを帯びていた。

(やっぱり、さっきのは……)

マミも感じていたのか――そう思いながら和也は彼女の秘部に指を滑らせた。指先から伝わる感触に違和感を覚える。

和也はその理由にすぐ気付いた。他のサイバドールと違い、マミの大陰唇の間には小陰唇が控え目に顔を覗かせていた。

個体差を際立たせる為なのか、それとも――今はまだ処女だが――経験豊富な大人の女というコンセプトによる仕様なのか。

いずれにせよ、そこまでしなくてもと思える程の作り込みの細かさに和也は密かに感心した。

「……そのラヴ・ジュースをアヌスに塗りつけて……」

自分の愛液を挿入の潤滑剤に使うという事か――和也はマミの意図を悟ると秘裂に中指を潜り込ませた。

「あん……はぁ……これが男の人の指の感触なのねぇ……はぁんっ……」

指が秘裂からはみ出た小陰唇をなぞる度にマミは腰をもじもじさせ、愛液を溢れさす。

「男のモノの感触はまだまだこんなものじゃありませんよ……」

「そうね……あっ……卓也さんのはどれくらいのサイズかしら?……和也ちゃんの血を正確に受け継いでいるなら期待できそうだけど……」

その言葉に和也の嫉妬心がピクッとうずいた。卓也がこの秘部を最初に征服する――ここまでしながら自分はおあずけを食らう犬のようだ。

マミとの約束があるとはいえ、このまま終わっていいものか。今後マミとこうなる機会があるかどうか分からないのに――。

ぬめる薄桃色の花弁に指を擦り続ける和也の胸の内にある秘策が浮かんだ。

「……マミさん……お願いします!……絶対に入れませんから、僕のを濡らして下さい……!」

和也の懇願にマミは一瞬息を止めた。そして何も言わぬまま千草のように上半身を伏せ、尻を更に突き出した。女陰がより上向きになる。

「いいわ……和也ちゃんを信じる……」

「ありがとうございます……」

和也は逸物を握り締めると亀頭をマミの秘貝に押し付けた。マミの温かさと柔らかさが先端から伝わってくる。

「あ……和也ちゃんの……とっても熱い……あっ……あぁ……」

和也が亀頭を擦り付け始めるとマミは甘い溜息を漏らした。

「すごい……おつゆもどんどん溢れてきますよ……」

そう言いながら和也は少しずつ腰を前に送り出していった。亀頭はもはや秘裂に分け入り、先端は半分ほど食い込んでいた。

(もう気付くかな……)

ぬめりをまとわり付かせたペニスを上下に動かしながら和也はマミの様子をうかがった。

「うぅん……はぁ……Oh……Ah……」

危険な状態に入っているのは分かっているはずだが、しかしマミはよがるだけで抵抗も抗議もしなかった。

構うものか、そのまま突っ込め――和也の胸の内の暗い部分がそうささやき掛ける。ロボットなら人間には逆らえないはずだと。

しかしマミは普通のサイバドールではない。以前聞いた卓也の話ではマミは最初、自分から和也の元に赴きたいと言い出したらしい。

卓也の部屋にあった機密ファイルを盗み見て、そこにあった和也の写真に一目惚れをしたからだという。

当然のように卓也は渋ったそうだが、マミは上手く彼を丸め込んでこの時代に渡航する事を決めてしまった。

マスターを手玉に取るサイバドールが普通であるはずがない。約束を破ればその後どんな事になるか――。

和也はペニスを動かすのを止めた。亀頭はマミの膣口に突きつけられている。

数秒その状態が続いた後、マミはゆっくりと上半身を起こし振り向いた。

「……和也ちゃん……やっぱりそこに入りたい?……」

「…………もちろんです……でも今は約束した場所へね」

気を取り直した和也はペニスをマミの陰部から抜き取った。雫が糸を引いて滴り落ちる。

彼はすぐさまマミのそこへ手を伸ばし、ぬぐった愛液を彼女のアナルに塗りたくった。

「Ah……よかったわ……あのままじゃ私、卓也さんを裏切っちゃうところだったから……」

「駄目ですよ。マミさんの処女は卓也さんのものですからね……それじゃ、お願いします」

「あらあら、おイタしようとしたのは誰……あ……ぁあああっっ!!」

和也はマミのアヌスにペニスの先端をあてがい、グイッと押し込んだ。皮肉を言おうとしたマミが嬌声を上げる。

「ん……やっぱりキツイな……」

和也の予想通りペニスは菊門の抵抗にあった。さすがに女陰に進入するようにはいかない。

それでもマミの愛液のぬめりを潤滑剤にして和也のペニスは少しずつ奥へ進んでいった。

「……マミさん……お尻の穴、緩めてます?」

「いいえ……デフォルトのままよ……もう少し緩くする?」

「いえ、このままで……実際の締め付けを実感しなかったら勉強になりませんから……」

和也が更にペニスを押し込んでいくと不意に亀頭部にかかる圧迫感が消えた。どうやら括約筋の部分を抜けたらしい。

カリ首さえ突破すれば後は割りと楽に進んだ。和也はマミの腰を両手で掴んで引き寄せ、自分の下腹部と密着させた。

「Ohh……全部入ってる……和也ちゃんと私、繋がっているのね……」

「そうです……マミさんのお尻の穴で繋がってるんです……」

和也はマミの背中に目を向けた。象牙色の肌が汗ばんでいる。欧米人らしい骨の太さを感じさせる体はメルビルの『白鯨』を連想させた。

自分はこれからこの“白人女”の菊門を陵辱する――。

「じゃあ……行きます」

和也はそう言うとピストン運動を開始した。彼の腰とボリュ−ムのあるヒップが剥離と密着を繰り返す。その度に愛液がじゅるっ、じゅるっと粘り気のある音を立てる。

「どうです? 僕の味は?」

「あぅ……はぁ……すごい……異物感タップリよォ……入ってちゃいけないものが入ってる……ホット過ぎて味わい切れないわァ……」

「僕も……締め付けがすごくて……レナちゃんとしたばかりなのに……何かもう……出そうな感じです……」

「あらあら、そんなにいい?……んんっ……ちょっと待って……んあっ……カミングする前に私に汚い言葉を言って……」

「えっ?……」

「私、大切な人がいるのに内緒で他の男とセックスしているのよ……はしたないCBD(おんな)に罰を与えてぇ……」

「もう……何から何まで洋物AVみたいな人だなぁ……叩くのもアリですか?」

「え……ええ、して! ムチのようなキツイ一発をヒットしてぇ!!」

そこまでやると思っていなかったのか、彼女が一瞬うろたえるのを見て和也は呆れつつ可笑しさをかみ殺した。

彼は抽送しながら望みどおりマミの尻の上部に力を抑えながらもペシッ! と鋭く平手打ちを放った。

「Aoh!」

「ホントにはしたない人ですよ……卓也さんがいるのに僕を誘うなんて……お礼なんて言ってたけど本当は溜まっていたんでしょ?」

「ええ、そうよ……誰でもいいから私を女として扱ってくれる人が欲しかったの……」

「何ですかソレ、誰でもいいなんて……そんなマミさんは女じゃない、メス犬だ!」

和也はそう言いながら白人女の尻をもう一度叩いた。

「はうッ!……和也ちゃんだって……かすみちゃんやメイちゃんより先に……サラちゃんとファックしたじゃない……」

「は、話をそらさないで下さいよ! 大体、罰を受けているのに口答えするなんて……そんな人にはこうだ!」

和也はマミの背中に覆い被さると両手を前に回し彼女の乳房を握った。

「ああっ! そこはダメェ!! No!!」

「ノーじゃありませんよ……抱き合った時から触りたいと思ってたのに、マミさんさっさと事を進めるから……」

「アッ! アッ!」

和也は指に力を込めてマミの乳房を揉みしだく。その度にマミの口から嬌声が漏れる。

ひとしきり揉んだ後、和也は両方の乳首をつまむとキリキリと締め上げ始めた。

「Ahhh!! そんなにされたら……あう! ハァッ!……駄目、立ってられない……」

マミはガクガクと四肢を震わせてくずれ落ち、和也を乗せたままうつ伏せで大の字になった。

「乳首だけでこんなに感じるなんて……ずいぶん淫乱になるようプログラムされていたんですね」

「私も知らなかったのよ! Ahh!」

「じゃあ卓也さんにも見せつけてやりなさいよ、自分のメス豚ぶりを!」

「それよ! もっと言って! もっと言ってぇ!!」

「ケイさんの事とやかく言えないでしょ! マミさんこそ乳首とケツの穴でイキまくるメス豚だ!」

そう言いながら和也はマミの脚の間でアヌスを突き上げ続けた。押し込む度にマミの弾力のある尻が押し返す。

それを繰り返すうちに彼の下腹部の中で射精感がこみ上げてきた。

「ほら、そろそろ豚のエサをくれてやりますよ! もっと脚を開いて! ケツの力を抜いて!」

「Oh,Yes! Yes!! ディスチャージ・プリーズ!!」

「声が大きい!」

「んぐっ、Mmmmuuumm!」

和也はマミの頭を抱えて口を塞いだ。同時に彼の砲身がマミの中で膨張した。そのまま思いっきり二度、三度と突き上げる。

「んっ、んんんんんっ……はぁぁっ!!」

「Wowmmmmmuu……!!」

射精の瞬間、和也はマミの背中で体を震わせた。外人女の直腸に彼の白い汚液がどくっ、どくっという脈動と共に注ぎ込まれる。

「Ohhhh……」

「……はぁ……はぁ……」

二人は荒い息でしばらく体を重ねたまま動かなかった。やがて和也が思い出したように固めた腕を緩め、マミの頭から離す。

いましめを解かれたマミはうつ伏せのまま、ゆっくりと和也の方に振り向いた。

「……ヴェリー、ハードだったわぁ……和也ちゃん、罵倒プレイもイケるのね……」

「……そりゃあ、ケイさんに鍛えられていますから……基本はやさしく、時には荒々しくって……」

「そうね……男と女はワイルド&ハニー、やさしいだけじゃ飽きられるわよ……メイちゃんはともかく、かすみちゃんはね……」

マミはそう言うと頭を戻した。和也は彼女の言葉にどう答えを返すべきか思いつかぬまま顔を伏せ、白いうなじに軽く唇を当てた。

脈絡のないその行為にマミは特に抗議も抵抗もせず、首筋に這い回る柔らかな感触を甘い吐息を漏らしながら楽しんでいるようだった。

「……ちょっとぉ……何やってんのよ二人で……」

「レ、レナちゃん……!?」

突然の声に和也は思わず頭を上げた。さっきはレナやかすみに聞かれまいと嬌声を張り上げるマミの口を塞いだが、射精してから後はその脱力感ゆえに風呂場の方にレナがいるのをすっかり忘れていた。

和也は台所の方を見たがレナの姿はない。どうやら風呂場のドアを開けて中から声を掛けている様だった。

「シャワー……終わったのかい?」

「終わったよとっくの昔に。バスタオルもらうの忘れたから出るに出られなかったのよ」

「あらあら、手拭き用のタオルそっちに掛かっているでしょ〜? 使えばよかったのに〜」とマミ。

「デリカシーのない事言わないでよ!……頼もうと思ったらそのうち二人とも変な事始めるし……何よ、メス豚って」

「い、いや、あれはね……」

「い〜の、私たち大人のセックスをしていたのよ。背伸びしたがりの女の子には分からないかもネ〜…和也ちゃんイジェクトしてくれる?」

「え? は、はい……」

和也はマミの背中から身を離し、柔らかくなった逸物をアヌスからずるっと引き抜いた。

「バスタオルは私が用意しておくわ。レナちゃん、和也ちゃんのペニスを洗ってあげてくれる〜?」

「何でレナちゃんがマミの中に入っていたモノ洗わなきゃならないのよ!?」

「人間のお世話をするのが私たちの本分でしょ? 我がままっ子を売りにするのもいいけど、たまには殿方の気に入る事もしてみせないと気持ち離れてっちゃうわよ〜」

「……分かったわよ……ほら、おいでよ和也!」

ティッシュの箱を持ったままペニスをぬぐっていた和也は慌てて風呂場の方へ向き直った。

「い、今行くよ!……マミさんは? シャワー浴びなくていいんですか?」

ベッドに縁に腰掛けたマミの差し出す手にティッシュの箱を渡しながら和也は訊ねた。

「私は後でもう一汗掻く事になると思うから千草さんの所でいただくわ。戸締りしておくからゆっくり入ってきて」

「え……?」

「和也ちゃ〜ん……これからレディが下[しも]のアフターケアをするんだから、殿方はさっさとゴーアウェイ、プリーズ」

にこやかにそう言いながら股間をティッシュで押さえる仕草を見て、和也はマミの言葉の意味を悟った。

「す、すみません……それじゃ……」

挨拶もそこそこに和也は風呂場へ向かった。一人残されたマミはうっとりとした表情を浮かべつつ、陰毛のぬめりをぬぐい始めた。

「んふぅ……思いがけず今日はダブルヘッダーって事になってしまったわねぇ……相手は違うけど」

そう呟きながらマミは窓の向こうに見えるかすみの部屋に目を向けた。



(続く)




解説

お久しぶりです。大分間が開いてしまったようで申し訳ございません。

まあ、今回の話がアップされた後で第1話から読み始める新顔の方にとってはどうでもいい事かもしれませんが(苦笑)。

マミさんの口から語られたサイバドール秘話のようなものはあくまで私の創作であり、原作アニメとは何の関係もございません。

ただ原作では描かれなかったものの、サイバドールのいる未来の社会状況というものを想像すると、個人的にはどうしてもああいう風に考えざるを得ないんですよね。


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