かすみ荘LOVERS MAP  第6話 オレンジ・ペイン
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かすみ荘LOVERS MAP  第6話 オレンジ・ペイン
テネシィワルツ/文


(……こんなはずじゃなかったのに……)



何度繰り返されたか分からないその言葉が谷かすみの脳裏をよぎる。

カーテンが昼下がりの日差しをさえぎる薄明るい部屋の中で、彼女はベッドの上で黒のタンクトップとショーツだけの姿のまま、体をくの字に曲げて横たわっていた。

二日酔いの頭痛は薬の効果で収まっていたが、全身の細胞に行き渡ったアルコールは完全には抜け切っておらず、鉛のような気だるさで息が詰まりそうになっている。

しかし彼女の気分がすぐれない理由はそれだけではなかった。



昨日、かすみは同じ大学に通う友人の光明寺ひかりに合コンに誘われた。

厳密に言えば、誘ったのはひかりが参加しているサークルの先輩の女子大生だった。

合コンの予定メンバーに欠員が出たのでひかりに当てはないかと打診していたらしい。

嫌なら無理強いはしないとひかりは言ったが、かすみは参加を決めた。

和也とサラの一件で生じた心のささくれは半月経っても癒えておらず、気晴らしになるなら思い切った事をしてみたかった。



だが顔を出したものの、合コンは彼女が思っていたほど面白いものではなかった。

ルックスのいい男たちは先輩連中に取られ、末席のかすみやひかりは見るからに女に縁のなさそうな風情の男たちをあてがわれていた。

彼らの話の内容もアニメがどうの萌えがどうのといった場違いなものばかりだった。

同じオタクなら和也の方がまだマシだと思うものの、その度にかすみの胸には悔しさや苛立ちが湧き上がった。

一体自分は何故こんな所にいるのだろうと思い煩うかすみの横で、ひかりはにこやかな表情を浮かべながら冴えない男たちの話に可能な限り調子を合わせていた。

(やめときゃよかった)

“何もせずに後悔するくらいなら何かをして後悔する方がマシ”という定番の格言にクソ食らえと思いながらかすみはアルコールの摂取量を徐々に上げていった。





くぐもった轟音を耳にしながら暗い部屋の中でかすみは目を覚ました。頭が泥を詰め込まれたように重い。

そこが自分の部屋でない事に気付くのにややしばらく掛かった。閉じたカーテンから僅かに漏れる街路灯の明かりを頼りに視線を巡らす。

前に何度か訪れた事のあるひかりのアパートの寝室だった。かすみは彼女のベッドに寝かされていた。

(……ここまで運んでくれたんだ…酔いつぶれたボクを…………ひかりは?)

かすみは身を起こそうとしたが体もひどく重く感じた。あきらめて再び枕に頭を預ける。外は土砂降りらしい。

その激しい雨音に耳を澄ますうちに人の声が紛れているのに気付いた。ドアの向こう――居間の方に誰かいる。

ひかりと――男の声が聞こえる。それも一人ではない。かすみは更に耳を澄ます。

「……んぁ……あぅ……ああっ……」

「……はぁ……うぁ……いい……最高だよ……」

かすみはゾッとした。切なそうな女の声は――。

「ああっ……だめ……あんっ……」

――紛れもなくひかりの声だ。

と、もう一人の男の声が聞こえた。

「なぁ、早くイッてくれよ……俺もう待ちきれないよ……」

「待ってろ、今イク……んっ、んっんっ……ぅあっ!」

「ああぁっ!」

男が呻くと同時にひかりも小さく悲鳴を上げた。かすみは向こうの部屋で何が行われているかを覚った。

レイプという言葉が頭の中をよぎり、背中を悪寒が走る。

ひかりを助けなければ――そう思ったものの、下手に出て行って自分も男たちの餌食になったらと考えると動くに動けなかった。

かすみはひかりに済まないと思いつつ、もう少し様子をうかがう事にした。

「……フフ……いっぱい出たわね……」

(……ひかり……笑ってる?……)

かすみはいぶかしんだ。レイプなら笑っていられる訳がない。どうやら自分が想像しているような悲惨な状況ではないらしい。

この目で確かめなければ――かすみは意を決して体を起こし、ふらつく足を忍ばせてドアへ向かった。

「……根元まで付けた? あなたはどうしたいの? 好きなの言って」

「じ、じゃあ……バックでしていいかな……ずっと憧れてたんだ……」

「いいわよ……はい、ご賞味下さいませ」

「おっ……お願いしますっ!……うんっ……」

「ん……もうちょっと上ね……こうよ……」

「あっ、掴まないで……うんっ?……んんんんっ!」

「あ……はあぁ……」

「は……入ったぁ……すげぇー、オレ本物に入ってるんだぁ……」

ドアににじり寄るまでかすみの耳にはひかりたちの淫靡なやり取りが聞こえていた。

内容から察するに今ひかりに挑んでいる男は童貞だったらしい。おそらくもう一人もそうだろう。声に聞き憶えがあった。

二人は合コンの会場でかすみたちが相手をしていたアニメオタクたちだ。

「そうよ……これが本物よ……動いてみて……」

「うん……ふんっ、ふんっ!」

「あっ! あっ! あっ!」

ひかりが後ろから貫かれている――かすみは恐る恐るドアノブを捻った。

「あんっ! あっ! ああっ!」

ひかりの嬌声を聞きながら僅かに開けたドアの隙間から覗いたかすみは絶句した。

四つん這いになった全裸のひかりの後ろでやはり裸の固太りの男が腰を振っていた。男の動きに合わせて彼女の体も前後している。

「う……はぁ……駄目だ、もう射精[で]そうだ……」

固太りが情けない声を漏らすとソファーに身を預けている細身の男がやれやれといった表情を浮かべた。

「早いなぁ……今入れたばっかじゃん」

「仕方ないだろ、初めてなんだから……気持ち良過ぎるんだよ」

「はっ……あぅ……ケンカしないで……いいわよ出して……スッキリしてもう一回楽しみましょ」

「い、いいの? それじゃ……んっ、ふんふんふんっ……!」

「あっ! あっ! あっあっあああっ!」

「で、射精[で]るっ!」

固太りはピッチの早いピストン運動をした後、一際強く腰をひかりの尻に密着させて体をぶるっ、ぶるっと震わせた。

「ああっ!……あ……はぁぁ……」

男に腰を掴まれたまま、ひかりも上半身をのけぞらせて絶頂に達した――少なくともかすみにはそう見えた。

「ハァ……ハァ……」

固太りの男は尻に腰を押し付けたまま、ひかりの後ろでしばらく肩で息をし、やがてゆっくりと体を離した。

彼は自分の股間に手をやると、だらしなくなったペニスからコンドームを引き抜いた。中に大量の白い液体が溜まっている。

ひかりは彼の方に向き直るとそれを受け取り、口を軽く縛ってテーブルの足元の床の上に広げたティッシュにのせた。

そこには先ほど細身の男が使ってたであろう、もう一つの中身の入ったコンドームがのせられていた。

(何なのよアレ……さっさと捨てればいいのに……)

かすみが不快そうに胸の内で一人ごちると細身の男がひかりに対して同じような疑問を口にした。

「さっきから気になっていたんだけど……何でそこに置いているの?」

「後で中身を出して洗って捨てるの。燃えないゴミだもの」

かすみは腰が抜けそうになるほど脱力した。ひかりがバカが付くほど几帳面な性格である事を今更のように思い出した。

「それよりあなたは? もう回復した?」

ひかりは細身の男に訊ねた。男は裸のままソファーに座り、浅黒い松茸のような自分のモノをしごいていた。

かすみはそれを見て胸が悪くなった。あんなモノをひかりの膣[なか]に入れていたとは――。

「ん?……まだまだ……いや、もうちょっとかな……」

「いいわ、私が口で元気にしてあげる」

そう言ってひかりはソファーの方へにじり寄り、男の開いた脚の間に陣取った。

(口でって……ひかり、まさか!?)

ドアの隙間から覗き見るかすみの動悸が激しくなった。ひかりの頭が男の股間に向かってゆっくり降りていくと、何も入っていないにも係わらず、かすみの口の中に異物感が広がった。

(ああっ……何て事……)

「ん……んっ……んむ……んふぅ……」

かすみの位置からはひかりの体に遮られ、その光景を直接見る事は出来ない。だが甘い溜息を漏らしながら頭を上下させているひかりが何をしているかは容易に想像できた。

「んん……んふ……うんっ……んんっ……」

「うう……ああ……いいよ……すごいよ……舌を使うなんて……」

(ひかり……やめて……こんなの……)

かすみは胃がムカムカする感覚を覚えた――いや、実際に何かが胃の中からこみ上げてきた。

(ヤバイ!……)

かすみは慌てて頭を巡らし今いる部屋の中に吐き出せる物がないか探した。しかし暗くてよく見えない事を割り引いてもそれらしい物は見当たらない。窓を開ければ雨が吹き込んで部屋の中がびしょ濡れになる。

よほどゴミ箱の中に出そうかとも思ったが、それだと後でひかりに面倒をかける事になってしまう。残された道はトイレに駆け込むだけ。

だがその為にはひかり達がいる居間を突っ切らなければならない。ひかりが男のモノを銜[くわ]えている傍らを。

(止まれ!……収まれっ!)

かすみのその願いも空しく胃の収縮は収まらなかった。もはや一刻の猶予もならなかった。かすみは思い切ってドアを開けた。

「お、お取り込み中のところすみませぇ〜ん!!」

口を押さえながらかすみはソファーでの行為を見ないようにしてトイレに向かい飛んで行った。

開けたドアを閉じるとともにすばやく鍵を掛け、洋式便器の蓋を上げる。

間一髪だった。



「かすみー、大丈夫ー?」

吐いた物を流した後、ついでに小用を済ませる為にかすみは便器に腰掛けた。と同時にドアの外でひかりの心配そうな声がした。

「う〜ん……大丈夫じゃないけど大丈夫〜……戻ってていいよ〜……」

バツが悪いのでかすみはわざと酔った風に答えた。用を足している音を聞かれたくなくて早くひかりを追い払いたかった。

「そう? それならいいんだけど……」

ドアのそばからひかりが離れる気配がした。ふぅと溜息をつくとかすみは尿意に身を任せた。

問題はこれからだった。このままずっとトイレに篭城するわけにはいかない。しかし寝室に戻るにはまた居間を通らねばならない。

やはりさっきの様にすっ飛んでやり過ごすべきか。わざとらしいがそれ以外の方法が思い浮かばない。

水を流し身なりを整えたかすみは鍵を外してドアをそっと開けた。体を出した後ゆっくりと閉める。

「あっ……あん……やぁ……あんんっ」

(ひかり……もう、ボクが戻ってから始めてよ……)

居間からのあえぎ声を聞きながらトイレの位置からは見えないひかりの痴態を想像してかすみは舌打ちをする。

短い廊下を忍び足で歩いて居間の戸口から駆け出そうとしたかすみはそこで出鼻をくじかれた。

寝室のドアの手前に固太りの男が股間をいじりながら正座しているのだ。これでは一気に突っ切る事ができない。

「あわぁ〜っ! とっとっと……」

かすみは前につんのめる様にして男の前に立ち止まった。ぼんやり自分を見上げる男を余程突き飛ばしてやろうかと思った。

うっかり視線を巡らしたかすみの目に頭が痛くなるような光景が飛び込んできた。

ソファーの上に細身の男が股を開いて座り、その上にひかりが両脚を男の腿に乗せて背面座位で腰掛けていた。

かすみはひかりが男と肉棒で繋がっているところをモロに見てしまった。

水着着用に備えて短めに手入れした陰毛の間にアワビを思わせる小豆色の肉襞があり、そこに浅黒い男根が潜り込んでいた。

男は尻の肉に力を込めながら腰の上のひかりを上下に揺すっていた。突き上げられる度にひかりが切なそうなあえぎ声を漏らす。

「あっ…あっ……だから見られるって言ったのに…あっ……恥ずかしいわ……」

「ご……ごめぇん……」

かすみは呆気に取られながら間抜けな返事をした。

「いいじゃん今更……せっかく起きたんだからそっちの彼女も混ざれば?」

その言葉にかすみは緊張した。気配に振り向くと固太りが逸物を握ったまま立ち上がり、すえた目でかすみを見つめている。

「……あによぉ……」

かすみは固太りを睨み返しながら凄[すご]んだ。彼女にとってはそれが精一杯の威嚇だったが、意外にも固太りはそれだけで怯[ひる]んだ。

「い、いや……オレは別に……」

「駄目よ、彼女まだヘベレケなんだから…あんっ……無理につき合わせたら…あっ……している最中に…吐かれるわよ」

「うわ……それはヤだな……」と固太り。

「かすみは気にしないで…あぅ……この人たちは…私が引き…受けてるから…あっ……向こうで…休んでて……」

酔ってはいたが、そう言ったひかりが素早くウィンクするのをかすみは見逃さなかった。寝室へ行けと促[うなが]しているらしい。

「あなたはこっちに来て……あぅんっ……口で…お世話してあげるわ……」

ズン、ズンと突き上げられながらひかりは固太りの男を招き寄せた。

「……じ、じゃあ……後はヨロシクぅ……」

かすみはひかりに愛想笑いを浮かべながら固太りの傍らを抜け、寝室のドアノブに手をかけた。

「ところでヘベレケって何?」

細身の男がひかりに問う言葉を背にかすみはドアを開け、中に潜り込んだ。ドアを閉める直前、3人の方を見るとひかりが目の前に立った固太りの股間に向かって頭を下げ、半開きにした唇を亀頭に寄せていた。かすみはドアを閉めた。

「……ふぅぅ……」

深い溜息を漏らすとかすみはフラフラとベッドに向かい気が抜けたように倒れ込んだ。

(…………ひかりが……あんな事するなんて……)

ひかりがあんな女だったなんて――酔いとは別の硬く粘り気のあるものがかすみの頭の中に湧き上がってきていた。

快活な面もあるが、普段のひかりはどちらかといえばおっとりとした印象を与える生真面目な女だった。

実際の男関係は知らないが、少なくともかすみは彼女の浮いた話を聞いた事が無い。そういう事には縁遠い女だと思っていた。

まさかあんな事を平気でするなんて――。

いや、“していた”というべきだろう。あのコンドームを豪雨の中、わざわざオタク二人の為に買ってきたとは思えない。

おそらく――あれは以前からここに常備されていた物に違いない。そう思った途端かすみは背中がざわつくのを感じ、思わず身を起こした。

ひかりは誰かとこのベッドを軋[きし]ませていた――。

「……あっ……あああっ! あっ! んあっ! いい! いいの! もっと! ああんっ!」

ドアの向こうからひかりの嬌声が響いてくる。かすみは耳を塞いだ。もはや休むどころではなかった。

もしかしたら、そのうちひかりに飽き足らなくなったあの二人が――あるいはその内のどちらかが自分に矛先を向けてくるかも知れない。

そうなったら男の力に抗えるかどうか。かすみはおののきながらベッドの上で身を硬くした。

それから1時間ほどドアの向こうでひかりと男たちのあえぐ声が続いていたが、やがて静かになりドアの隙間から漏れる灯りが消えた。

ひかりは約束どおり男たちの獣欲を自分に向けさせる事無く引き受けてくれた――そう思ったかすみは安堵し、ようやく横になった。

(ごめんね、ひかり……でも……)



翌朝。

ひかりは男たちに朝食を振舞い、駅までのタクシー代を持たせて早々に“チェックアウト”させた。

二人を見送って戻ってきたひかりにかすみは早速訊ねた。夕べのあれは何だったのかと。

ひかりは合コンの席で酔いつぶれたかすみをここへ運ぶのに彼らの手を借りたらしい。かすみを寝かした後、茶を勧めて話を聞くうちに彼らも合コンの人数合わせで呼ばれたに過ぎない事を知った。

生身の女性に興味がない訳ではないが、実際どう接していいか分からないと嘆く彼らを不憫に思ったひかりは、これも何かの縁だと労をねぎらう意味も含めて自分の体でもてなす事にしたという。

それを聞いたかすみは呆[あき]れた。礼ならそこまでせずともさっきの様にタクシー代を持たせて帰すだけで済んだはずだ。何故会ったばかりの男たちに身をゆだねる事ができるのか。

「お世話になったらお礼をするのは当然でしょ? そもそもあの人たちをこの部屋に招く事になったのは誰のせいかしら?」

珍しく困った表情を浮かべて問い返すひかり。かすみは何も言い返せなかった。

「それにお酒の席とはいえ周りそっちのけで酔っ払うなんて行儀が悪いわ。他の人たちがどんな目で見ていたか憶えてないでしょ」



冷房を効かせているにも拘らずカーテン越しの日差しが妙に熱い。かすみはベッドの上でひかりにたしなめられた時の事を思い返していた。

彼女は金沢にある老舗の和菓子屋の娘である。故に接客に関してはかすみよりも強い責任感を持っている。夕べの“もてなし”も彼女なりの信念に基づくものなのだろう。

またひかりはこうも言った。彼らが人のいい男たちだったから良かった様なものの、もし女に遠慮のない連中だったら泥酔していたかすみにも狼藉を働いていただろうと。

親友が身を挺して男たちを引き受けていてくれた事で自分は最悪の形で処女を喪失する時を向かえずに済んだ。その事には感謝している。

そう思いつつもかすみは納得がいかなかった。世話になったお返しに自分の体を差し出すなどと――。

ほめられた事ではないが援助交際ならまだ理解出来る。カネを得るという目的があるから。

見ず知らずの男たちにいきなり体でもてなすというひかりの行動はかすみの理解を超えていた。

(何であんな事が出来るのよ……あんな……事……)

そう思うかすみの脳裏にひかりの痴態が蘇った。大きく脚を広げた彼女の女陰と、男のぬらぬらと濡れた肉棒が繋がっている――。

それは“結ばれる”とか“一つになる”という言葉の持つ甘い幻想を木っ端微塵に打ち砕く生々しい光景だった。

友人とはいえ、そんな身も蓋もない現実を突きつけたひかりにかすみは腹立たしさを覚えた。

それ以上に面白くないのは自分が“あの”ひかりに性的な面で出し抜かれていた事だ。

――車のハンドルを握ったら警察が呆れるくらい法定速度を守る、生真面目な女だと思っていたのに――。

(あんな……あんないやらしい声をあげて……)

胸の内でひかりをなじりながらも、しかしかすみの右手の指は我知らぬうちに股間に伸びていた。ショーツの上から秘裂をなぞり、膣口のところをじんわりと押さえる。

(ここに……アレが入るんだ……)

不快さと憧れが入り混じった複雑な気持ちを抱きながらかすみは布地の上から中指を膣口に突き入れるように愛撫した。

(……ボクだって……早く知りたいよ……でも……和也クンがあんなだから……)

露出度の高い服装で何度もアピールしていたのに和也はいつまで経っても気付いてくれなかった。

でもいつかはきっと――そう思っているうちにメイが、そして他のサイバドールたちが現れ、一歩先へ踏み出すきっかけを掴めなくなった。

そして自分の焦燥も知らず、和也はサラを相手に女を知った――。

(何でサラさんなのよ……何でボクじゃないの……何でボクまで待てなかったのよっ……)

かすみの指がぐりぐりと自分の女陰を攻め立てる。ショーツにはいつしか熱いぬめりが染み出していた。

「あぅんっ……は……はんっ……んんっ……ふぅんんっ……んは……あぁぁ……」

切ない吐息を漏らしながらかすみは留守になっていた左手を胸に伸ばすとタンクトップの上から硬くなっていた乳首をつまんだ。

指に力を込めると全身にビクッと刺激が走る。

「はぅんっっ!……あぅ……んんっ!……」

これまでにも一緒のベッドで眠るレナに気付かれない様、和也を想いながらこっそり自分を慰める事は度々あった。

それでも今している事はあまりにもみじめだった。頭の中に浮かぶのはひかりがその淫口に男を咥え込んでいる姿。

何度振り払っても中々消えない。それはやがて和也とサラの姿に変化した。サラの中を出入りする和也の分身がクローズアップする。それ自体がハァハァと息を荒げているイメージが脳裏に広がる。

(……嫌だボク……何でこんなもの……何もかも和也クンのせいよ……バカ和也……バカ和也!!……)

胸の内で和也に罵声を浴びせながらもかすみは乳房を揉みしだき、閉じた両脚の付け根をまさぐり続けた。



(続く)


解説

かすみ、ひさびさの登場です。5話ぶり、長かったですねえ。

もっともエッチの面では脇役に甘んじていますが。

今回登場した光明寺ひかり嬢は千草さんに次ぐ出番の少ないサブキャラですが、放映当時はそれなりにファンが付いていたようです。

原作の彼女を知る方々には本作での描写に違和感を持たれた事と存じます。書いておいて言うのも何ですが、私もその一人です(苦笑)。

元々のプロットではひかり嬢の出番は全く無かったのですが、かすみを和也に歩み寄らせる為にはこれから起きる事に加えて、もう一つ彼女に揺さぶりをかける要素が必要だと考えひかり嬢の登板と相成りました。

本作では彼氏がいる、もしくはいたらしいという事になっていますが、実際のところはどうなんでしょう?

少なくとも原作11話では和也に関心があるような素振りを見せてはいましたが……。


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