整理整頓犬耳注意
「ホントにも〜。よくここまで汚くできるもんだね〜」
「そ、そんなトコ、届くハズないだろう?」
ぼやきながら天井の電灯の笠を拭く彼女。脚立など使わずに、背中から生えている翼を羽ばたかせ、宙
に浮いている。
そんな彼女を見上げながら、僕は答えた。あ、そうそう。見てのとおり、彼女は人間じゃない。実は悪
魔なんだ。
名前はアイリス。何日か前に、10円で購入した古本に書いてあった方法で召喚したんだけれど、
今では僕の下僕となって、ここに住み着いているんだ。………その辺りはあまり詳しくは語りたくない
けれど。
「何言っているんだよ。天井はともかく、この床は何なんだ?」
「あ、あはは…」
…っと、文句を言い返す僕に、アイリスは笠を拭き終えたのか、翼をバタバタさせたまま、僕の目の前にくる。
確かに掃除なんて、ここんとこ行なってはいやしない。思わず僕は目を逸らして、乾いた笑い声をあげ
るしかなかった。
「あはは、じゃないよ。よく不潔で死んだ者はいない、何て言うが、それは間違いだ。不潔がもとで死
んだヤツもいるんだぞ」
「へえ、そうなんだ。でも大昔ならともかく、科学が発展した現在なら、そんなことあるはずないだろ?」
バケツで雑巾を洗いながら、諭すように言うアイリスに、僕は笑い半分、呆れ半分で返していたが、
「いやいや、昔の話じゃない。まあ、間接的に、というのが正確なのかもしれないがな」
「は? 間接的?」
雑巾を絞りながらさらに話し続けるアイリス。思わず僕は、反射的に返事をするしかなかった。
「ふう。さてと、具合も悪いし、さっさと寝るか」
家に帰り、カップ麺の空を放り投げ、ゴロリと寝床に横になる。
すでに寝床以外の場所は、足の踏み場もないくらいに散らかっている。
「掃除…か。ま、いいや。部屋汚して死んだヤツなんて聞いたことねえや。明日だ、明日」
さっきまで来ていた友人に言われた、「少しは片付けないと今にえらい目に遭うぞ」
の言葉を思い出しながらも、
最近風邪気味の俺は、悪態を吐きながらいつしか寝入っていた。
「ん〜。ションベンションベン…」
夜中、尿意を催して起きだす。…痛っ! 足を見れば2週間前から行方が知れてなかったシャープペン
が刺さっている。
畜生…こんな場所にあったか。俺はシャープペンを放り投げ、トイレに向かった。
「ふう、スッとした」
用を足して、寝床に戻ろうとする。…どうでもいいが、何で用を足すと「スッとした」なんて独り言を
つぶやくのか?
これは俺が小学校で夏休みの自由研究にしようとして、見事達成できなかったという過去を持つ、ほろ
苦い思い出だ。
「あん? 何者だ!?」
寝床に戻ろうとした俺の目に飛び込んできたのは、床をゴソゴソ探っている怪しい人影だった。
「きゃっ、た、助けて!」
逃げようとする人影にタックルする。捕まえた相手から発せられる悲鳴。この声は…若い娘?
目が夜の闇に慣れ切ってない中、必死に組み伏せている相手の顔を確かめようとする。
「た…助けてください……」
怯えきった目で俺を見上げている。確かに若い娘だ。結構、俺好みの顔なんだが……
何だ? 犬の耳なんか生やして。
「助けてください、じゃねえよ。何だって、人の部屋に忍び込んだりしているんだ?」
俺は彼女の上に圧し掛かり手首を縛り上げ、娘に詰問した。
「わ…私は……その…」
娘は何か喋ろうとするが、ぶるぶる震えて言葉になっていない。
と、よく見れば暴れた拍子にシャツのボタンが外れ、隙間から胸がチラチラ見え隠れしている。
下着は着けて――ない。それを見たとき、俺の理性は完全に消え失せていた。
「む…むぶうっ!」
強引に唇を奪う。突然のコトに目を見開き、固まる娘。
だが俺が顔をあげ、シャツの隙間に手を伸ばしたとき、まるでスイッチでも入ったかのように暴れ出した。
パシィッ ビ、ビリィィィッ
「いやっ! やめてぇっ!」
「うるせえ。静かにしろや、夜中だぞ」
頬をひっぱたき、強引にシャツを切り裂く。叫び声をあげる娘の腹を拳で殴りつけ、一喝する。
娘は涙をボロボロこぼし、泣き声を必死にこらえているように見えた。俺はそのまま、スカートをずり
下ろす。
犬のキャラクターのプリントされたパンティが目に飛び込んできたとき、思わず俺は吹きだしていた。
「何だよオマエ、犬マニアかよ。耳だけじゃなく、ご丁寧に下着まで犬なんて、な」
「い…いやっ…」
嘲笑の言葉を浴びせると、抵抗の声をあげようとするが、さっきの恫喝が効いているのか、大声をあげない。
俺は娘のパンティに手を掛け、ゆっくりと下に引き下ろそうとする。さすがに両手を下腹部に当て、抵
抗してきた。
もちろん、そんなことで容赦する気はさらさらない。拳を振り上げると娘はビクッと体をすくめた。
その隙に一気にパンティを足から抜いた。…まあ、破り捨ててもよかったんだが、な。そこは俺の趣味だ。
強引に両足を広がせ、下腹部をじっと見つめる。
割れ目と菊門が露わになるが、それよりも俺が釘づけになったのは、その下に生えている尻尾だった。
「何だ…? 最近は体に直接つける尻尾が流行っているのか?」
「……い、痛っ!」
半ば呆れた俺は、尻尾を引っ張るが、娘が驚くべき反応を示した。痛い、だって?
「痛っ! …痛あい!!」
「うるせえな。じっとしてろ」
念のため、頭に生えている耳も強引に引っ張る。…取れない。悲鳴をあげる娘を再びひっぱたきながら考えた。
……何なんだ、コイツは? 犬の耳と尻尾を生やした娘?
「何者なんだ、オマエ?」
「……………」
顔を背けたまま、答えようともしない。ムッとした俺は再び興味を娘の下腹部に移した。
…犬の耳と尻尾はあるが、それ以外は人間と変わらないしな……。
そう思った俺は、下半身を露わにしてすでにそそり立っているモノを娘の割れ目にあてがう。
「あっ」
一瞬、娘が体をピクンと震わせ声をあげるが、委細構わずに一気にモノを娘の中に突き立てた。
「ひぎ…い…痛…痛っ!!」
腰を動かすたびに悲鳴をあげる娘。中はまだ濡れていないせいか、腰を動かしてもスムーズに奥までモ
ノが入り込めない。
業を煮やした俺はモノを引き抜き、娘の口元にあてた。
「…ひゃ…あ?」
「しゃぶれ」
怪訝そうな顔をしてる娘の口中に強引にモノを捻じ込む。
娘は顔を歪め、必死に逃れようとするが、両手でがっしりと押さえつけられているため、それもできない。
「歯を立てるんじゃねえぞ。んなコトしたらどんな目に遭うか保障できないからな」
「ひゃ…ひゃぐっ…」
俺の命令に涙を流しながら、くぐもった声で必死に頷く娘。
俺はサディスティックな興奮に体を震わせながら、娘の口中を堪能していた。
「ふん、これぐらいでいいだろう」
ある程度、モノに娘の唾液が塗りたくられたのを確認した俺は、
腰を引いて娘の口からモノを抜き、再び娘の割れ目にモノをあてがい、一気に奥まで突き立てる。
娘は恐怖のせいか、はたまた痛みのせいか、さっきから一言も発しようとせずに鼻をすするだけだった。
ゆっくりと腰を動かすが、唾液が潤滑油の役目を果たしているようで、さっきよりもスムーズに抽送が
可能になった。
それに満足した俺は、ただひたすら腰を動かし、快感を貪っていた。
「くう…イ…イク…ぞっ…」
どれだけ腰を動かし続けていたか、そろそろ絶頂が近づいていた。娘はじっと歯をくいしばり、目をぎ
ゅっと閉じている。
何だかその態度が無性に腹が立っていた俺は、娘の中ではなく、顔面に向かって精をほとばしらせていた。
「くっくっくっ…。これで終わりだと思うなよ…所詮オマエは犬なんだからな。俺のペットにしといてやるよ…」
俺は娘のアゴを掴んで、俺の精液にまみれた顔を上げさせて言った。…そう、これからも、な…。
ゴホッゴホッ!
突然咳が出てきた。何だか、頭痛も激しくなってきたかもしれない。……俺は娘を放り投げ、寝床に潜
り込んだ……。
「………何てヤツだ。で? その男は一体どうなったの?」
僕は、掃除機を掛けながら今の話をしていたアイリスに尋ねる。何だか、男の身勝手な行動に腹が立ってきた。
「そう…だな。目が覚めても、その彼女はそこにいたんだ。で、再び男は彼女を抱いたのさ」
掃除機を掛け終え、収納棚に片付けながら答えるアイリス。
……それって彼女、男にいいようにされてるだけな気がするんだけれど。
「まあね。でも、話はこれで終わりじゃないんだよ」
今度はベッドのシーツを剥ぎ、その周りを片付けながら話し出す。…何だか、続きが凄く気になるんだ
けれども。
「男は毎日、彼女を抱き続けた。でも、その度に彼の体調が少しずつ悪化してきて、欠勤が目立ってき
て…。とうとう無断欠勤が続いて会社もクビになってしまったのさ。ま、当たり前だがな。
それで、心配した元同僚が彼の家を訪ねると、そこには変わり果てた彼の姿があったってわけ。
もちろん、彼女を見た人はいない、けれどな」
う〜ん。何だか、よくある怪談話と言えばいえるんだけれども…。
「じゃあさ、結局彼女の正体って何者なワケ? 幽霊にしては犬の耳と尻尾付きってのが気になるんだけれど」
ベッドに乗っかり、向こう側のゴミを調べるアイリスに再び聞いた。…その姿勢、パンツが丸見えだよ。
「彼女の正体はね、毛羽毛現(けうけげん)という妖怪で、軒下のじめじめしてたり、不潔な場所に住
み着くのさ。
それだけならいいんだけれど、一種の貧乏神みたいなモンで、そこの住人を病気にさせてしまうことが
あるんだってさ」
よいしょ、と声を出しながらベッドの奥に転がっていた、雑誌やゴミを取り出しながら言う。
ふうん。住人を病気に、ねえ。…って、アレ?
「す、するとさ、男が風邪気味だったのって…」
「ああ、その頃からすでに住み着いていたんだろ。でもって何も知らずに彼女と交わり続けたから病気
が悪化した、と。
まったく、バカな話だよ。でも分かったかい? 不潔が間接的にでも人を死なすって話」
「ま、まあね。よく分かったよ」
これがただの怪談話なら、『男以外が彼女を見ていないハズなのに、どうやってその話が広まっていく
んだ?』とかツッコミも入れられるけれども、アイリスはあれでも悪魔だからね。妙に説得力があるよ。
「…しっかし…。オマエもいつから掃除してないんだ? このティッシュ、完全にガビガビだぞ」
僕が一人で納得していると、呆れ顔で丸まったティッシュを掲げて僕に見せるアイリス。…う、それって……。
「少なくとも、私が来てからはオナニーしてないよな。どれ、いつからシテないか確かめてみるとするか」
「ちょ、ちょっと待て! 部屋の掃除はどうした!?」
パタパタと僕に向かって飛んでくるアイリス。僕は後ずさりしながら必死に抗議した。
「大丈夫だ。終わったらちゃんと続きはするから」
「う、うわぁ!?」
アイリスに両足を抱えられ、長椅子に倒れこんでしまい、思わず悲鳴をあげる。
その隙にアイリスは僕のズボンをパンツを一気にずりさげ、モノを露わにさせる。
「う〜ん。さすがに勃ちあがってはいないか。ま、いいや。ゆっくり楽しませてね。
…ん、んんっ…」
急に口調が丁寧になったかと思うと、モノを口に含み出すアイリス。
その優しい刺激には抗うことができるはずもなく、モノは少しずつ膨らみ始める。
「…ぷはあ…っ。やっぱり元気だね、すぐにこんなになっちゃうもの」
一旦モノから口を離し、人差し指でピンと先端を弾きながら微笑むアイリス。…も、ダメ、かも…。
「お…お願い。もっと、もっとシテ…」
「はいっ。分かりました、御主人サマ♪ …んっ、んっ…」
僕が懇願するのを待っていたかのように、にっこり微笑みながら再び僕のモノを口に含むアイリス。
彼女の舌が軽く筋を舐め上げたとき、思わず大きく仰け反ってしまう。
そのとき、部屋の向こう側にある窓ガラス越しに、犬の耳が生えた人の頭が通り過ぎるのが見えた。
驚いた僕が思わずまばたきをした次の瞬間、そこにはすでに何も無かった――
おわり。
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