悪魔が来たりて尻を突く  
 
 
「我は求め、訴えたり。今こそこの場において、汝の力、示さんことを」  
何とも怪しげな呪文を唱える僕。…いったい、何をやってるんだろ?  
 
きっかけは数日前、近所のスーパーで古本市が開かれていて、そこで10円で購入した本だった。  
 
【悪魔を下僕にしてしまおう!】  
 
……何を考えてこんな本を購入したのかよく分からないけれど、とにかく安かったし、ヒマつぶしには 
なるかな、と思って買ってきたんだけど…。  
 
”牡蠣10個、ホウレン草半分、小麦粉、オリーブオイル、にんにく、レモン、粉チーズ、パセリ、  
バター、牛乳、ローリエ、生クリーム、塩、コショウ、などなど…をご用意下さい。”  
って、これって何かの料理レシピじゃないか。ってか、こっちのほうがお金掛かるんだけど。  
材料をテーブルの上に置き、床に魔法陣をチョークで書く…大家さんに怒られないかな? ま、いっか。  
”夜の2時に魔法陣の角にロウソクを置いて火を灯し、呪文を唱えると、あなたに忠実な下僕が現れます! 
また、悪魔があなたに契約を迫ろうとしますが、気にすることはありません!  
何故なら悪魔はあなたが認めない限り、魔法陣から出ることはできませんから!”  
…か。何だかなあ。で、唱え終わったけど…何も起こらないですが。  
 
やっぱ出鱈目か、そりゃそうだよな。10円の古本だし…と、そう思った直後。  
 
シュオオオ……  
 
「な、何だ!?」  
思わず口走る僕。何やら黒い霧が周囲を包み、魔法陣に集まっていく! まさか、本物!?  
 
ポンッ!  
 
何だか場違いな音がしたと思った途端、魔法陣に人影が現れていた!  
肩まで伸びた長い髪は緑色で、大きな翼と尻尾が生えている。まさしく…まさしく悪魔…かも。  
太ももまで覆うレザーブーツに、それと同色のレオタードは真ん中の部分が無く、へそが丸見えだ。  
さらにレオタードから、今にもはみ出さんとばかりの豊かな胸。……今まで見たどのAV女優よりもイイ、 
かも…。  
 
 
「我、盟約により、ここに現れし。そなたが我を求めし者か?」  
女性が、いや、悪魔が目を見開き僕に語りかける。その瞳は、まるで深遠の闇を思わせるような黒だった。  
「え…えっと…その……まあ、一応」  
自信無さ気に答える僕。だって、まさか本当に、しかもこんな美人の悪魔が現れるなんて、想像すらし 
ていなかったもん。  
「クックックッ…。まさか、本当にいるとはな。で? オマエの望みはなんだ? 数学が弱いから強く 
してくれ、か?」  
足元を見、笑いながら僕に話しかける彼女。…何のことだ、いったい? 確かに数学は強くはないけどね…。  
「何だ違うのか。ま、いいや。それでは”契約”を果たさせてもらうとするか」  
!? 何で!? 彼女は魔法陣から出てこっちに向かってきている! 本では出れないって書いている 
じゃない!  
 
「うーん。確かにそのとおりなんだがな。これは五芒星、悪魔の動きを封じるのは六芒星、だぞ」  
僕を捕まえ、耳元で囁きかける彼女。僕は彼女の魔力のせいか、体を動かすことも出来ずにいた。  
彼女はそんな僕のシャツをゆっくりとめくりあげ、指先でつつっと胸元をなぞり、語りかける。  
「いいかな? こんな風に一筆書きができるのが五芒星、六芒星ってのはな、こんな風に三角形を逆さ 
に二つ合わせたような図形のこと、だ」  
僕は胸元をなぞられる微妙な感触に身悶えし、それを見て嬉しそうに彼女は微笑む。  
「ふふふっ、感じやすいんだな。どれ、こちらはどうか確かめてみるとするか」 
「! や、やめっ!!」  
彼女は言うが早いか、僕のズボンに手を掛ける。  
僕は抵抗の声をあげるが、いともあっさりと無視され、ズボンが下ろされて、ブリーフが露わになる。  
そこには彼女の姿を見てなのか、指で胸元をなぞられた刺激に耐えられなかったせいなのか、  
モノがパンパンに膨れ上がり、股間に白いピラミッドを作っていた。  
 
「ほおう、すでにキツキツに膨らんでいるな。このままでは苦しいだろう。早く外に出してやらないとな」  
と、彼女の両手が僕のブリーフに掛かる。  
僕は依然として体を動かせず、ただ羞恥心を覚え、首を振ることくらいしか出来なかった。  
するり。彼女が僕のブリーフをずりおろし、天を向いているモノが露わになる。それを見てひとこと。  
「ふふん、結構立派なモノを持っているな。どれ、ゆっくり見させてもらうとするか」  
言いながら右手の親指と人差し指で、僕のモノを摘まみあげる。 
いつも自分でオナニーしている時とは違う、  
女性に優しく握られている感触… 
それだけで、すでに膨らんでいる僕のモノの先端からは先走り液が溢れはじめていた。  
「なるほど、感度は良好なようだ。…長持ちするか、ちと不安だが、まあいい。楽しませてもらうぞ」  
言うや否や、彼女は僕のモノを口に含んだ。モノを優しく包み込むこの刺激…!  
「あう…っ…」  
思わず喘ぎ声が漏れる。そんな僕を怪しく見つめ、顔を上下にゆっくりと動かす彼女。  
彼女が顔を動かすたびに僕のモノから痺れるような快感がほとばしり、 
目の前にチカチカと光が見える錯覚を覚える。  
「ううむ…これじゃあ長持ちしそうにはないな。 
 ……そうか、本契約の前に一回出してしまえば多少は持つ、か。そうしよう」  
モノから口を離しながらつぶやく彼女。…ほ、本契約って? 僕は声を振り絞って彼女に尋ねた。  
「ん、まあひとことで言えば、主従関係を結ぶ、ってヤツだ。あまり深いコト考えるな」  
ふ、深いコト考えるなって…! 今の状況を見て考えないほうが無理だよ!  
「あのな、暴れたって仕方ないぞ。どうせ結果は同じことだ。ゆっくり楽しもうじゃないか」  
 
再び僕のモノを咥えだす彼女。それも、ただ単純にしゃぶっているだけではない。  
舌先は執拗に、尿道口から伸びている筋をなぞり、カリ部分まで這わせる。  
一方で肉棒をしごきあげる右手の力の入れ方も絶妙で、 
ゆっくり優しく上下させたかと思うと突然動きを早める。  
かと思ったらいきなり動きをピタリと止め、僕の顔をちらりと見つめる。  
下腹部から伝わる快感と、脳で感じる危険な予感とがぶつかり合い、それがさらに新しい刺激を呼ぶ。  
イクのを抑えようとすればするほどこみあげる快感。 
僕が必死に葛藤している合間にも、モノをしゃぶり続ける彼女。  
もう…もう…限界……だ…。  
「イ…イッちゃう…イッちゃうよ…」 
「そう…。思う存分イッちゃいなさいな、まだまだこれからなんだから…」  
顔を仰け反らしながらどうにかつぶやく僕に顔をあげながら微笑む彼女。  
その微笑みに奇妙な心地良さと安心感を覚えた僕は、全身をビクリと震わせた直後、  
脳髄が痺れそうな快感の中、モノは今までに出したことがないくらいの大量の精を放出していた。  
 
「ん……っ。んんっ…ごく…ごく……っ…」  
彼女はモノを咥え込んだまま、咽喉を鳴らしている。……まさか、飲んでいる、の?  
「んっ……。ぷは…あっ……。なかなかたくさん出てきたな。さすが若いだけあって元気なものだ」  
顔をあげ、僕を見つめながらひとこと。右手は相変わらず僕のモノを優しくしごき続けている。  
一方の僕はといえば、モノから伝わる刺激に耐えられずに全身をビクビク震わせていた。  
「さて…と。それでは本契約といこうか。準備はいいな?」 
「…! ま、待ってよ!」  
言いながら彼女はレオタードを脱ぎ捨て、僕の下腹部に馬乗りになる。思わず僕は叫んでいた。  
「…? 何だ、どうした?」 
「あ…あのさ、本契約って何をして、どうなるの?」  
腰を軽く動かしながら、怪訝そうな顔で僕を見つめる彼女。 
彼女の下腹部とモノが擦れ合い、微妙な刺激が生まれている。  
その刺激に溺れそうになりながら、僕はどうにか彼女に尋ねた。  
「そうだな……男と女がこんな状態になったら、スルことはひとつしかないだろう?  
で、さっきも言ったように私とオマエの間で主従関係を結ぶのだが、先にイッたほうが従になるんだ。  
最初からシテいたんじゃ、あっという間に決まるし、私も満足できなかったろうから、ハンデとして一 
回出しておいたんだ。じゃあ始めるとしようか」  
 
「ね、ねえ、その前にもうひとつだけ教えて。キミが主になったらどうなるの?」  
下腹部を軽く浮かし、僕のモノを右手で握り締めながら答える彼女。 
僕は快感に声を震わせ、最後の質問をした。  
「う〜ん、そうだねえ。とりあえず死ぬまで私の下僕になってもらうのは間違いないとして、何をして 
もらおうか…。ま、その辺りは契約が成立してからゆっくり考えさせてもらうとするよ。…ん…んっ…!」  
答え終わった直後、下腹部をゆっくりと落とす彼女。  
丁度そこには僕のモノが天を向いていて、先端部分が彼女のアソコをノックしていた。  
「はあ……んっ。久々の男の味…たっぷり楽しませて、ね……」  
恍惚とした表情を浮かべ、僕に笑いかける彼女。  
それは、快楽へ導く天使の微笑みなのか、それとも破滅へと導く悪魔の微笑みなのか…  
…って彼女、悪魔なんだからどう考えても後者じゃないか!  
僕は一人ボケ突っ込みをしながら、彼女より先にイクまいと必死に襲いくる快感をこらえようとしていた。  
 
ずぶ…ぬちゃ…  
湿った音を立てながら、僕のモノが彼女の中に吸い込まれてゆく。  
熱くて柔らかく、ヒダが絡みついてくるようなその感触は、さっきまでの口の中とはまた違った快感を 
僕に与えていた。  
「あ…イイ…」  
「そう…。でも、気持ちよくなるのはまだこれから…さ…始めるよ……」  
思わず口をついて出る言葉。その言葉を受けて彼女が答え、それと同時にゆっくりと体を上下させる。  
くちゅ…くちゃ… 「あ…! んんっ!」 ずっ…くちゃっ… 「く…くううっ!」  
彼女が腰を上下に動かすたびに、股間から濡れた音が響き、快感にこらえられずに声を漏らす僕。  
まずい…このままじゃ…このままじゃ…! 僕は必死に目を閉じ、別のことを考えようとこらえる。が、 
しかし。  
「くふふっ…どうしたの? 別のことを考えて気を紛らわそうとでもしているの?」  
まるで僕の考えを見透かしたように、彼女が耳元でささやきかける。もちろん、腰は動かしたままで。  
「ふふふ……こんな風にこらえるんだもん。可愛いわ…もっともっと、こらえてみせてね…」  
耳たぶをぺろぺろと舐めまわし、10本の指は僕の両わきを攻め立てる。  
それに、なんだか彼女、口調が変わってきたみたい…。これも言葉攻めの一種、かなあ?  
「はあ…んっ…」  
甘い声をあげたかと思うと、突然僕のくちびるを奪い、全身をもたれかかせてくる。…って、胸の感触 
があああ…。  
「んっ……。まだまだ我慢しているの? なんて可愛いの、キミは? ホント、イジメがいがあるわあ」  
両手で僕の頬を抱えながら、再びキスの嵐を浴びせながらつぶやく彼女。  
一瞬、このまま溺れてしまいそうになるが、必死にこらえる。…そうだ、彼女は悪魔なんだ。先にイッ 
てたまるか…!  
 
どれくらいそうしていたか、僕はまだイカずにこらえていた。彼女が言うとおり、一回すでに抜いてい 
るためだろう。  
そうでなければあっという間に果てていたと思う。それぐらい、彼女の中は心地良かった。  
……いや、女性の中が始めてだった、ってこともあるんだけどさ。  
耳元に届く甘い言葉、上半身に感じる二つの柔らかい感触、 
――そして何より、モノから感じる直接的な刺激。  
これらすべてを全身で感じたいと思う反面、ここで先にイッてしまうと後が怖いという理性がぶつかる。  
固く目を閉じ、歯を強く食いしばって文字通り、悪魔の誘惑にこらえる。  
だが、ときどきこらえきれずに声が漏れ出してしまう。  
くちゃっ… 「…くっ…」 ずちゅっ… 「ふう…」 …にちゅっ… 「…あんっ…んんっ…あんっ」  
? 何だ? 最後の声は僕は出していないぞ?  
「はあ…イイ…。イイよ……。気持ち…イイ…」  
薄目を開けると、彼女が上半身を起こし、自らの胸を鷲掴みにしながら腰を上下にしているのがうっす 
らと見える。  
…これは…もしかしたら、彼女が先にイッてくれるかも…。  
「う…うん…すごい…気持ち…イイ…。でも……ん…んんっ…。先に…イクのは…キミ…だよ……」  
本当に僕の心を読んでいるのか、彼女は妖艶な笑みを浮かべ、自らの尻尾をしゃぶりながらつぶやく。  
あ、僕の呼び名、『オマエ』から『キミ』になってる…。って、そこでなくて! いったい…何をする気?  
 
「くふふっ……こっちは…初めてかなあ…?」  
彼女は両足で器用に僕の足を大きく広げさせ、満足そうにつぶやく。と、尻尾の姿が僕の視界から消えた。  
「えいっ」  
! 彼女が声をあげたと同時に、すぼまりから感じる感触。…ま、まさか…?  
「……そ。後ろの穴、いただいちゃった……。は、ああんっ!」  
再び僕に上半身をもたれかかせる彼女。尻尾は容赦なく僕の中に入り込もうとする。  
感じる異物感。僕はなんとかひきはがそうと身悶えするが、依然として体の自由が利かない。  
「んふっ。もしかして、初めてなのかな? んっ…。でも大丈夫、誰だって最初は初めてなんだから…。 
あんっ」  
僕を両わきから抱きかかえるようにしがみつき、耳元でささやく彼女。当然、腰の動きは止まってはいない。  
さらに、中に入り込んでくる感覚。もう、もうダメだよ!  
「大丈夫、優しくしてあげるから。それとまず、力を抜きなさいな。それだけで大分違うわよ。…んっ」  
僕は彼女に言われるがままに力を抜く。と同時にゆっくりと体内で尻尾がうごめく感覚が伝わる。  
「…そ、素直が一番。…んんっ」  
つぶやきながら彼女は僕のくちびるを奪い、さらに舌を潜りこませてくる。  
口の中を優しくなぞられる感触。…それは自分の舌では感じることのない、不思議な感触だった。  
 
と、そのうち下腹部にも変化が見られてきた。  
ただの異物にしか感じなかった尻尾の動きが段々、くすぐったいような、気持ちがいいような感覚に変 
わっていたのだ。  
「ねえ…。お尻のほう…気持ちイイ?」  
ぱっとくちびるを放し、耳元でささやく彼女。…そうだ、彼女は悪魔なんだ、イッてはダメなんだ!  
でも…でも…!  
「うん…気持ちイイ…気持ちイイ…よ…」  
理性とは裏腹に答える僕。そう、尻尾の動きが段々激しくなってくるのにともない、くすぐったさが薄れ、 
モノから伝わる快感とはまたひとあじ違った快感が、脳に刺激を与えてきたのだ。  
「あん…キミのお尻…どんどん…締め付けてくるよ…。気持ち…イイ…」  
ぬちゅ…くちゃ… 「あうっ…」 ずちゃちゃっ…ぬちゃっ 「も…」  
うわごとのようにつぶやきながら腰と尻尾を大きく動かす彼女。…もう、ダメ! 限界だよ!  
「あうんっ!」  
情けない悲鳴とともに僕は全身を硬直させ、気が遠くなりそうな快感の中、彼女に向けて精を放っていた。  
「あん…あたしも……あたしも…もう、もうイク、イッちゃうっ、イッちゃうのっ!」  
と、彼女の羽根がピンと大きく張り詰め、絶叫とともに彼女が僕に覆いかぶさってくる感触を感じ、  
僕の意識はそこで途切れた――。  
 
 
「う…うん…?」  
再び意識が戻ったとき、僕はベッドで横になっていた。……何か…いい香りがする。  
「起きたか? だったら早く食べてくれよな」  
突然の声に驚いた僕は、声がした方向を見る。と、そこにはテーブルの上で湯気を立てているシチューと、  
食卓の向こう側で、頬杖をつきながらそっぽを向いている彼女の姿があった。…いったい何があったの?  
「…不本意だが、オマエがわたしの御主人だ。だからとりあえず食事を作ったんだ。 
冷めないうちに食べな」  
そっぽを向いたまま、しゃべりつづける彼女。って、呼び方『オマエ』に戻ってるし……って、  
何!? 僕が御主人!? どういうこと!? 僕が先にイッちゃったんでなかったの!?  
「どうもこうもない、オマエと同じ間違いをしただけさ」  
「はあ? 僕と同じ間違い?」  
思わず問いなおす僕。…間違いって何? どういうこと?  
「そうだ。先にイッたら従になるのは六芒星の契約。五芒星の契約はそれとはまったく逆。  
つまり、先にイッたオマエがわたしの御主人になった。…そういうことさ」  
相変わらず顔はそっぽを向いたまま、淡々と語る彼女。…少し怒ってる、かな?  
しかし…知らなかったとはいえ助かった…。ちょっと彼女には気の毒だったかもしれないけれど。  
「ま、まあとりあえず、これ、いただきますね」  
僕は椅子に座り、スプーンを手に取る。……あれ? これって…?  
「ああそうだ、ここに置いてあった物で作った料理だ。片付けもあるんだから早く食べなよ」  
ふうん、そうなんだ。僕はスプーンでシチューをすくいながら口に運ぶ。  
と、顔をあげると目だけはこちらを見ている彼女と目が合った。  
「な、何だよ! は、早く食べろって!」  
多少慌てたように僕を急かす彼女。あ、そういえば。  
 
「ねえ、そうなるとキミって僕の下僕になるわけだよね?」 
「う…。まあ、不本意だがな」  
再びそっぽを向く彼女に対し、僕は言った。  
「あのさ、ところでキミの名前はなんて言うの?」 
「………アイリス」  
「は?」  
ぽそりとつぶやく彼女に思わず聞き返す僕。だって、よく聞こえなかったんだもん。  
「うるさいな! 本名はもっと長いんだが、人間では発音できないから略してアイリスって言ってるんだ! 
何か文句でもあるってのか!」  
顔をこちらに向け、立ち上がって怒り出すアイリス。僕は肩をすくめながらアイリスに言った。  
「文句…ね、この牡蠣のシチュー、すっごくおいしいよ、アイリス。文句のつけようなんかないじゃない」  
うん、本当に美味しいんだよね。思わず返答にならない返答しちゃったけど。…と、思ったら  
「そ、そう!? なんならおかわりもあるから食べていいよ!」  
アイリスは顔をぱっと輝かせながら、椅子に座りなおしながら言った。  
僕は、アイリスが頬杖をついてじっと見つめる中、シチューを食べながら思った。  
 
こんなに美人で料理上手な悪魔が下僕になってくれるなんて、10円の本でも馬鹿には出来ないね――と。  
 
 
おわり。  
 
NEXT

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