「 こんなのはどうかな? 」
「 光さんには少し大胆すぎるのでわ? 」
光・海・風 の三人はそろって買い物に来ていた。
今日の主役は光で、二人は付き添い兼アドバイザー。
しかし商品選びに熱中しすぎたのか、いつのまにか主役がいなくなっていた。
「 光さん、どちらにいかれてしまったんでしょうか? 」
「 うぅ〜ん 光はちいさいから、団体客に轢かれたのかしら… 」
「 ハッ! もしや、光さんがあまりにも可愛いので、ナンパされているのでわ!! 」
「 ゆるさ〜ん!! 光と交際したければ私達二人に勝ったあと交換日記から始めてもらう!! 」
二人が光に近付くハイエナ達に敵意を燃やしていると、
“にぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜”
「 !? この猫が驚いたときにだすような可愛い声は、 」
「 光さん! 」
「 いくわよ! 風!! 」
「 はい!! 」
二人は店の中を爆走し、光の元へと駆けつける。
そして、光のピンチを確認。
抱きついている男を見て、海のアドレナリンが瞬時に沸騰した。
「 こ、この変質者〜 光から、はなれなさい!! 」
シュバッ
電光石火! 男の腕の中から光を救出し、猫を想わせる瞳で睨みつけた。
「 変質者!? ……俺?…… 」
「 いきなり女の子に抱きついたら、変・質・者 て言うのよ!! 」
男のとぼけた(海にはそう見えた)態度に、海の視線はますます鋭くなる。
その後ろでは、風が光を守るように、後に庇い抱きしめている。
「 光さん、だいじょうぶでしたか。もう怖いことはありませんわ。 」
安心させるように、微笑む。『ヒーリン・スマイル』
しかし、男にむける微笑は、あきらかに質が違った。目が笑ってない、いや、据わっている。
視線が突き刺さる。
男は助けを求めるように光を見るが、風の胸に顔をつけ、モガモガしている。
「 ‥‥これ以上事を荒だてたくありません‥お店を出ていただけませんか‥ 」
「 ま、まってくれ 俺は変質者じゃない! 俺は… 」
「 こんなところで、抱きついたりしたら、説得力がありませんわ 」
「 こんなところ? 」
言われて男は、初めて辺りを見回す。
フリルやレースがやたらに多い。色は、白・ピンク・ブルー・イエローなどが多いようだ。 ここは、もしや……
「 ‥下着売り場‥か? 」
「 そ〜よ!! 」
海の右手が、フルスイングでうなりをあげる。
ブン!
スカッ
不意をつかれたが、男はワンステップで、アッサリとかわした。
「 えっ!? 」
こんどは海が不意をつかれた。バランスを崩し、たたらを踏む。
その先には、ピクリッとも動かずポーズをとる、かたい肌の美人が立っていた。
ブラとショーツ、ガードルのみの大胆な姿で海の抱擁を待ちうける。
値段は上から、3800円・2500円・3500円
「 あっ、あっ、あっ!? 」
どさっ!
「 きゃっ!? 」
海はそのままマネキンとラブシーンを演じるはずだったが
………あれっ!?…痛くない?……最近のマネキンは柔らかいのかな?……
海がゆっくりと目を開けるとそこには?
「 ………………え!? 」
男の顔が目の前にある。海はしっかりと、男に抱きしめられていた。
……ち、近くでみると…き、きれいな顔してるじゃない……でも、誰かに似てるなぁ?……
海がそんな事を考えてると、どこか打ったのかと心配になった男が海の顔をのぞきこんでくる。
「 平気? 」
「 え!? あ、ちょ、ちょっと、いつまでくついてんのよ! 」
「 ああ わ、わるい!! 」
男は海をあわてて抱き起こし体を離すが、海はさっきより顔を赤くして睨みつけてくる。
こうも一方的だと、カッチンとくるのか男も言い返す。もともと男も気が長いほうでわなさそうだ。
「 あのね〜 少しは俺の話も聞け! 」
「 なによ〜! 」(怒)
二人がふたたび睨みあうが、幸いリターンマッチはなかった。
「 海ちゃん、翔兄様 だいじょうぶ、怪我はない? 」
光と風が、心配して、二人に近寄る。
「 え、ええ だいじょうぶよ。 て、兄様? 」
「 そうだよ 翔兄様! 」
光がにこにこ顔で兄の紹介をする。にこにこ顔の光とは対照的に、風は困惑顔で尋ねた。
「 あの、失礼ですが、お名前を、伺ってもよろしいでしょうか? 」
風の目からは、射すような視線は消えていた。
「 ……獅堂 翔(かける)です……。」
「 光さんの…お兄様‥? 」
「 どうも… 光の兄です。」
翔が軽くあたまを下げる。
「 うそでしょう… 」
海のうめくような声が聞こえる。そのとなりでは風が渇いた笑顔を浮かべていた。( ほほほ…ほほ…ほ…)
「 翔兄様 紹介するよ。わたしの大切な友達、海ちゃんと風ちゃん!」
「 ど、どうも… りゅ、龍咲 海 です… 」
「 はじめまして。鳳凰寺 風 と申します 」
海は納得がいかない顔で、風は申し訳なさそうにあたまを下げた。
「 はじめまして。」
翔もあらためて、あたまを下げる。
「 申し訳ありません、光さんのお兄様とは知らずに‥失礼しました 」
風もあらためて、あたまを下げた。
「 い〜て、そんなにあやまんなくても! 」
チラッ と海の顔を見て、
「 いきなり殴りかかってきたわけじゃないんだし… 」
それを聞いて、海の瞳が捨て猫のように揺れる。
「 い!? 」
また何か言い返してくると思った翔は海の予想外の反応に戸惑う。
先ほどまでが、きつめの印象だっただけに、その変化に翔は、あわててフォローした。
「 そ、それに光のためにしたことなんだから、ありがとね。」
肩を落としていた海が顔をあげるが、まだ瞳は潤んでる。
「 これからも、光と仲良くしてやって。」
「 もちろんですわ。光さんは私達の大切なお友達です。」
海もなにか言いたそうにしているがいいだせないのか、ただ黙って翔を見ている。
「 りゅ、龍咲さんも仲良くしてやってね。」
「 うん…… 」
なんだか小さな女の子を泣かしてしまった様な気がした翔は、よせばいいのにさらに続けた。
「 さっきのは… 」
「 え? 」
「 あ、あんまり気にしなくていいからね。俺も抱きついたんだし、これでおあいこにしよう。な!!」
海は翔の言葉に驚いた。自分の勘違いで迷惑を掛けたのに、気にしてないと言ってくれる。
その言葉に感謝し胸が熱くなった。…………………が、まてよ?
「 抱きついた?」
「 あ!?」
翔も自分の失言には気づいたが、もうおそかった。
「 やっぱり抱きついたんじゃない! 変態!! 」
せっかく上げた好感度が、一瞬で怒りゲージに切り替わる。
「 光さん しばらく目を閉じて耳をふさいでいてください。」
「 え? え? 」
光は風がいきなりなにを言い出すのかわからなかったが、
「 お願いします。」(にこっ)
風に笑顔でお願いされれば断れない。
「 う、うん… 」
理由がわからなかったが、目を閉じ耳をふさぐ、その上から風が優しく光を抱きしめた。
…あたたかい…それに‥風ちゃんの胸、柔らかくて母様みたいだ……
バッチ〜ン!
まどろんでいた光の耳になにか音が聞こえた。
「 なに… 」
顔を上げようとした光の髪を風は優しく撫でる。
「 なんでもありませんわ…もうすこしこのままで…… 」
「 うん… 」
光は風の腕の中で目を閉じた。風が子供にするように背中を軽く叩く。
…ふふ…光さん、本当にかわいいですわ…お母さんてこんな気持ちなんでしょうか…
母性本能全開で光をあやしながら、肩越しにチラリッと後ろを見る。
バッチ〜ン
「 に、二発も… 」
「 ごまかそうとするからよ! もう一発いく!! 青い龍巻!! 」
……かわいい子には、とてもみせられませんわ…
風はさらにつよく、光を抱きしめた。
「 光さん もう目をあけてもいいですよ。」
風の胸をマクラに子供に戻っていた光は、その声を目覚ましにして、目を開けた。
風の顔が目の前にある。目をつぶる前と同じ優しい顔。
聖母の顔で微笑む風だが、光の無邪気な一言で固まった。
「 風ちゃんの胸…おっきくて…やわらかい… 」
「 …………………………………………………………………… 」
クルッ 無言で振り返り、翔を見る。聞こえただろうか?
風の瞳が翔を捕らえる。
“ 聞こえました? ”
アイコンタクトで聞いてみる。
質問には答えず、翔はわざとらしく目線を逸らすが、逸らした先には風の胸があった。
大きいとはいっても、発育途上の中学生である。成人女性には及ばない。
だがこの年頃の少女では、かなり大きいほうだろう。制服の上からでもその大きさがわかる。
よく見れば、ブラウスの上からうっすらとブラの線が浮かんでいるのがわかる。
じぃ〜〜〜〜
さらによく見る。継続はちからなり と言うことわざがあるが、意志の力で願いはかなう。
ボタンが一つはずれている。
チラリと白いブラと肌が見えた。さらにその奥を見ようと目を細める。
スゥッ その視線を遮るように風の指がゆくりと、ボタンを留めた。
「 なにか、見えました… 」
風の視線はさきほどを上回る鋭さを放ち、声は凍えるほど冷たかった。
胸の大きさといい、この威圧感といい中学生とは思えない。
「 なにか、見えました… 」
もう一度、聞いてくる。
「 み、みてないです 」
「 そうですか 」(にっこり)
『見てない』と言ういいかたが、『見てました』と言っているようなものだが、
光の前ということもあり、風は見逃してくれたようだ。
「 ほんとかな?〜 」
海があきらかに疑わしそうな目で見るが、それは無視した。
いらないことを言って墓穴を掘りたくない。叩かれた頬はまだ熱を持っている。
話題をむりやり変えるように光に話しかける。
「 で? 光、ここでなにしてんだ 」
「 えっ、あっ、あの… 」
「 ん? なんだ? 」
「 う、うん 」
いつも、はっきりきっぱり元気に答える光にしては、めずらしくモジモジしている。
「 セクハラよ! セ・ク・ハ・ラ 」
海が顔を赤くして詰め寄るが、翔はなにを言われたのかわからなかった。
「 ? 」
「 あの、ここ下着売り場ですから 」
うつむいて顔を赤くする光を見かねたのか、風が助け舟をだす。
「 あ!? 」
言われて初めて気ずく。
「 ほんっとにデリカシーのない男ね!! 」
「 ぐぅ 」
海に言いたい放題言われているが、なにも言い返せない。
「 そっかそれじゃあ、兄様は売り場の外で待ってるからな 」
「 うん… 」
「 がんばれよ! 」
「 なにをがんばんのよ? 」
またも、海を無視して、決意した顔で売り場の外にでた。
…光はどんな下着を買うんだ……
翔は気になってしょうがなかった。ついこの前までは、プリントの入っているような、
かわいい子供のような下着を履いていたのだ。
だが光ももう中学生、次のステップに進んでいいだろう。
そのために、海と風の二人にアドバイスを受けるんだろうが…
…あの二人、どんなのをすすめるつもりだ?…最近の中学生はすごいて言うからなぁ…
いまも海が黒いブラを指差し、光になにか話しかけている。
‥な!?‥く、黒だと!‥だめだ光、おまえは清純派なんだ!‥白、白……
翔の妹を思う熱意が伝わったのか、海は今度は白いブラを取るために身をかがめた。
「 な!? 」
おもわず声が出てしまった。
オシリを突き出すようにストッキング越しのショーツが見える。
…パ、パンツが見えてる…黒いパンツ? …なんつぅ〜いやらしいパンツを履いてるんだ!
中学生のくせに!!
心の中で、海を叱り付けたが、目は海のショーツから離れることはない。
中学生が黒のパンツを見せている。それだけでも興奮するのに海は、雑誌のモデルのような美少女。
ボリュームでは大人の女に負けるが、海のオシリは健康的な色気を匂わせていた。
妹の友達ということもあり、その背徳感がますます、海のオシリをいやらしくみせる。
…もう少し、オシリ突き出してくんないかなぁ…
そんな勝手な注文をつける翔だが、見られているとは知らない海は、他のブラ取るために立ち上がって
しまった。
知っていれば右手が飛んでる。
…あ‥くそぅ‥もっと、光のために参考にしたかったのに…もう一度かがまないかなぁ…
妹のためのわりには、妙に未練がましい。
かがめ、かがめ!!
必死に念を送ったが、今度は海はかがんではくれなかった。
‥うぅん〜…ん?…そういえば、もう一人の眼鏡の子はどこいった?…
海を諦めて、風を探すが見あたらない。
眼鏡の子は、胸でかいからなぁ、ブラの参考にしよう。
光の胸と風の胸では、参考になるわけがないのだが、理由(いいわけ)をつけ、風を探す。
…ん〜‥どこいったかなぁ?…
風は売り場の中に見やたらなかった。
…おっかしなぁ〜‥いないぞ?…試着かな…
トンットンッ
…あれ‥ブラとかパンツて試着すんのか?…
トンットンッ
…男はパンツの試着とかしないけど、女はすんのかな?…
トンットンッ
…まあ〜、身長が同じでも胸のでかさが同じとは、かぎんないからな〜‥
「 あの‥そろそろ… 」
「 …お約束だね… 」
「 わたしも、そう思います。」
振り向くと、笑顔を浮かべて風が立っていた。さきほどのように突き刺すというほどではないが、
その視線はやはり冷たかった。
振り向くと、笑顔を浮かべて風が立っていた。さきほどのように突き刺すというほどではないが、
その視線はやはり冷たかった。
「 なにを、なさっているんですか?」
また似たような状況だ。にっこり可愛く微笑んだ顔がやはり怖い。
犯人と刑事てこんな感じなのかな〜 ぼんやりとそんなことを考えた。
翔も笑顔を返すが、その笑顔はひきっていた。
「 なにを、なさっているんですか?」
「 は、ははははははははは… 」
……なんなんだ…この子の妙な迫力は……
「 喉が渇きませんか? 」
「 はぁ… 」
「 楽しそうにしている貴方を拝見していて、わたしも楽しませていただきました。 」
「 うっ! 」
「 でも急に喉が渇いてしまって、ご一緒にどうですか? 」
これは、事情徴収をするので来いと言うことだろうか?
まだ任意同行だが行かなければ海刑事に通報、そのまま逮捕ということになりかねない。
海刑事の取調べは容赦がない、ここは風刑事について行くことにした。
「 屋上にいってみませんか? 」
人目のない所で取り調べをしようということだろうか…
…ん!?…
いつのまにか、二人のまわりは人が多くなっていた。ちらちらとこちらを見ているような?。
チラッ
サッ
こちらが見ると顔を逸らす。
…まちがいない!?…こっちを見てる…
痴話喧嘩でもしてると思ったのかまわりの客は買い物をするふりをしているが、しっかりと聞き耳をたてていた。
…ま、まずい、このままじゃ本当に犯人にされてしまう…
「 なんだか注目されてますね…」
風も気ずいていたようだ。あたりを見回す。
「 早く行きましょう 」
風が手を握ってくる。
…なんか連行みたいだな〜…
どうしても警察ネタがあたまからはなれなかった。
「 あの、そろそろ 」
風が連れてきたのは、八階にある屋上。
「 そうですね 」
ベンチに向かって風は歩くが、翔は着いてこない。
訝しく思った風は翔の顔を見るが、翔の目は繋がれた二人の手を見ていた。
それを見て風は、自分の大胆な行動に気ずき驚いた。あわてて手を離す。
「 …………… 」
「 …………… 」
狼狽した自分を悟られぬよう先手を打った。
「 なにを、なさっていたんですか 」
手に集中していた翔は、不意をつかれた。あたまの中は真っ白。
女の子の手など光ぐらいとしか繋いだことがなかった。それなのに今日会ったばかりの子と手を繋ぐとは、
男子校の翔には一大事件だった。
もっとも、海には抱きついているし、風の胸を覗いたという前科はあるが。
風の表情からは、翔には怒っているかどうかは読み取れない。
「 ……………… 」
「 ……………… 」
沈黙が二人の間を支配する。
「 座りましょうか 」
風はとりあえずきっかけをつかむために翔に話しかけてみる。
きっかけを探していたのは翔も同じだったようで、ベンチに腰を降ろす。
敏腕刑事の追及から逃れられそうもない。まだ母親の事も、故郷の話も、カツ丼すらでてないが……
「 ごめん… 」
あさり犯人は罪を認めた。
「 見てたんですね… 」
「 はい… 」
観念した翔を見て、風がため息をつく。
「 どうして、そんなことをなさるんです 」
「 どうしてて… 」
風にはどうしてそんなことをするのか、理解できないだろう。
翔ぐらいの年頃では、目の前でパンツが見えれば見るし、ブラが覗けばやはり見る。
翔はそういうことには淡白だったが、興味がないと言えば嘘になる。
と、言うより今日一日で大いに興味を持った。
「 男のかたが、そういったことに興味があるのはわかりますが… 」
「 え!? わかるの? 」
風は潔癖症ぎみだと思っていた翔には意外な答えだった。
「 頭の中ではということです!! 」
少し“ムッ”とした顔で風は答えた。
「 この事を海さんが知ったら怒ります。……でも光さんが知ったら悲しみます 」
「 …ごめん 」
「 それでは、これは二人だけの秘密という事にしましょう 」
にっこり笑顔で『ヒーリングスマイル』
翔は初めてヒーリングスマイルを向けられた。そして素直に言葉がでた。
「 可愛い……… 」
「 え!? 」
「 さっきまでは、ちょっといじわるそうだったけど、今のはすごくかわいい…… 」
「 あ…… 」
これだけストレートに男の子から言われたのは、風にとって初体験。
頬が熱い。自分でも顔が赤くなってるのがわかる。
「 胸とかも大きいし… 」
「 ……………………… 」
風の手がゆっくりと、翔の顔にふれてくる。
海に叩かれた所は赤くなっている。そこを優しく撫でられ…
ギュッ …つねられた。
「 一言多いです 」
「 はひ 」
「 …そんなに興味ありますか? 」
身体を、乗り出すように寄せてくる。
多少その声は芝居がかってる気がしたが、それどころではない。
「 へ? 」
「 私の…胸‥です… 」
甘い吐息がかかる。少し顔を傾ければ唇が触れる距離だ。
スカートから伸びる太股がピタリッとくっつき、その柔らかさをいやでも意識してしまう。…いやではないが
「 さわってみます? 」
太股よりも、もっと柔らかいものに目がいく。
……さ、触ってミるって?…オ、オッパイ?……
翔の頭はパニック状態になっていたが、それは風も同じだった。
ちょっと困らせてやろうと、いたずら心を出しただけで、ここまで大胆なことを言う気もなかった。
いまならまだ冗談ということにできる。
しかし、顔を赤くし期待している翔をみていると、言い出しずらい。
「 い、いくよ 」
待ちきれなくなったのか、おやつをつまみ食いする子供のように、右手を風の胸に伸ばす。
まだ間に合う『冗談です』一言云えば翔はあきらめてくれるだろう。
だが翔の期待に満ちた、子供のような目を見ると、それはかわいそうな気がする。
風がどうしようかと迷ってるうちに、翔の右手がゆっくり胸元に伸びてくる。
“ ふにゅん ”
翔の胸の奥を、緑の疾風が駆け抜けた。
そんな音が聞こえるわけはないのだが、翔の耳には聞こえたような気がした。
想像していた通り、いや想像を超えるさわりごこち、揉みごこちだった。
柔らかい感触と、指を弾き返すようなたっぷりと身のつまった弾力。
使い古された表現だが、ゴムマリ? いやいやこれは……
翔はその正体を探るべく、さらに揉む。
ふにゅん…ふにゅん‥
ふれるまえは『円を描くように』とか、『下からすくい上げるように』とか、いろいろ少ない知識で考
えていたが、そんなものはふっとんでいた。
もっとも、指先はアルコール中毒者のように震えているのでそんな器用なことはできない。
酒を飲んでいるわけでもないのに、体温が上がり呼吸が荒くなる。
「 すごく、やわらかい… 」
今の翔は心で思った事が素直に言葉としてでてくる。
手のひらに余るほどの柔らかなふくらみは、その言葉に答えるように好きに形を変えた。
「 ……ッ…… 」
風は身体の奥から駆け上がてくる声を喉で殺す。
「 きもちいい? 」
その言葉が引き金となり、鼻に掛かったうめきをもらした。
「 んンッ…… 」
「 声…だしてもいいよ? 」
恥ずかしそうにしている風を見て、翔に少し余裕のようなものがでてきた。
左手を風の肩に回し、少し強引に引き寄せる。風の身体は一瞬こわばるが抵抗はしなかった。
翔の胸に静かに顔をうずめる。
髪からは甘い少女のにおいがする。その甘い髪の匂いをかいでいると、さっきから薄くなっている理性
がますますなくなっていく。
「 鳳凰寺さん 」
「 ……あ‥ 」
呼ばれて顔を上げる風の唇をやさしく奪った。初めてのキスに驚いて、大きく見開かれた風の眼が、や
がてうっとりと閉じられた。
重ねた唇のやわらかさに、愛おしさとともにさらなる性的衝動も湧き上がる。
口中に舌を差し入れ風の舌を捕らえようとする。びっくりした風の舌は逃げようとするが、逃がさない。
追いかけっこは、結局、翔を楽しませただけだった。
「 ン……む……んー…… 」
唇を離そうにも、すでに後頭部を翔の手でがっちり押さえられている。
左手がいい仕事をしているとき、右手もポジションを移動していた。胸をまさぐっていた手は風の意識
が上にいっている間に、膝の上にポジションチェンジをしている。
その手は太股のなめらかさを味わいつつ、『女の子』の大事な部分に迫っていく。
舌の追いかけっこに翻弄されていた風もこれには強く抵抗した。
「 はあっ…んぅ‥あの‥そこは……こんなところじゃ…おねがい…します…… 」
スカートの中に侵入する不埒な手をつかんで懇願する。
こんな所じゃなかったらいいんだろうか? 少しいじわるな考えが浮かんだが、たしかにいくら人気が
ないとはいえ、こんなところ(屋上)でこれ以上するわけにはいかないだろう。
無理強いすれば、嫌われるかもしれない。
風にとって翔はまだ、“ きらいになれな〜い、でも十分じゃな〜い ” といったところだろう。
だから、かわりに……
「 じゃあ‥さわって… 」
「 え? 」
スカートに侵入するのを阻止していた手を逆につかみ、パンッパンッに張った股間に持っていく。
さすがに本番までする度胸はないが、出すものを出さないと動けない、否 動く気がない。
実際、風の乱れる姿をもっと見ていたかったが、翔も“イッパイ イッパイ”だった。
翔の股間にふれた風は、手を引っ込めようとするが今度は許さない。重ねた手を上下に動かす。
その固さと、ピクッピクッ脈打つものに泣きそうな目で、翔と自分の手によってこすられる股間を交互に見る。
普段、お姉さん然としている風が自分に哀願している。見方によっては姉弟に見えるのが、今は間違い
なく兄妹にみえるはずだ。妹にこんな事をしたら捕まるだろうが……
やり過ぎたかと思ったが、しばらく動かしてると慣れてきたのか、男性自身に触れだんだん興奮してき
たのか、じょじょに風も股間をすり始めている。本人は気ずいてないのか、翔の手は今はほとんど添え
てるだけだ。
股間のほうは風に任せて、まわした左手でわきの下から再度、胸を揉みしだく。
「 ふぁ…… 」
行為に没頭して油断してたせいか、抑えていた声がでてしまう。
その可愛い声に気をよくした翔は、さきほどよりも荒々しく胸を揉みまわす。
「 はぁッ……あッ……んふッ…… 」
「 きもち…いい?…うッ… もっとつよくしたほうが‥いい? 」
「 んあッ…そ、そんなこと……んンッ…き、きかないでください…… 」
一度堰をきって出てしまった声を抑えることができず、今までの人生の中で一度も出したことのない艶
のある声を翔に聞かせていた。
「 ほら…手のほうとまってるよ 」
「 あンッ…は、はい…… 」
風は言われた通り手の動きを再開する。もう翔の手は添えられてない、風は自分の手だけで翔の男をこ
すっている。
フリーになった右手はブラウスのボタンを一つはずし、二つはずし胸元に忍び込ませる。
…あっ……やわらかさの感触が違う………
翔は布切れが一枚なくなるだけでさわったときの感触の違う胸の繊細さに感動した。だが真のやわらか
さを邪魔するものが、あと一枚ある。
生の胸のまろみを味わうため、乳肉とブラの間に手を差し入れた。直にさわる乳肉は暖かく、やわらか
さの中に吸い付くような感触がある。そのやわらかさの中で唯一つ固さを主張しているものがあった。
協調性のないわがままな突起を懲らしめるため、少し強く捻り上げる。
「 ひンッ 」
生意気な乳首に反省の色は見えない、オシオキを加えたというのにさらに“プックリ”と固さと大きさをます。
自己主張を繰り返す乳首を指に感じていると、『かまってほしい』と言っている様で可愛くなってくる。
手のかかる子ほど可愛い。ときには優しく指の腹でつぶすように、ときには指の間でしごくように可愛がる。
人差し指の先で乳輪を撫で回すのも忘れない。
「 んあッ……ふぅッ……うッ……はぁッ……… 」
翔はこの短い時間で自分がテクニシャンになったような錯覚をしそうになる。それほど風の身体は、敏
感に反応をよこして返す。
「 あッ……んンッ…だめ……だめ…ふあッ…… 」
「 だめなの? 」
「 ………………あ…… 」
だめだというので大人しく手の動きを止めた。風はなにか言いたいようだが、言葉にすることができず、
ただ潤んだ瞳をむけてくる。
「 だめなの? 」
「 ……………………… 」
数十分前とは、完全に立場が入れ替わっていた。意地が悪いとは思ったが、もう一度聞いてみる。
「 だめ? 」
「 ……あ…………だめじゃ……ない‥です…… 」
「 じゃあ、さわってあげるね! 」
にっこり、笑いかける。その笑顔はやはり光に似ていた。無邪気な笑顔、そして無邪気に自分を求めてくる。
普段からしている、光に対しての過剰な母性本能が、翔にも反応する。
もっといろいろなことをしてあげたい、もっと感じてほしい。女としての本能だけでなく、母親として
の本能も目を覚ます。
「 ………………ッ 」
母は強し。ウブな女の本能だけではできないことが、母性本能という強力な味方を得て、恥ずかしい行
為を実行する。
ジィッ〜〜〜 チャックを下ろす音がやけに高く聞こえる。翔は驚いたが、耳まで赤くしてそんな行動
にでた風が可愛くて、それだけでクラリとくる。
華奢な指がトランクスの中に入り込み、やさしく翔の男を外界に解き放った。窮屈な下着から解放され
た『男』は勢いよくそそり勃つ。
…ゴクッ どちらの喉が鳴ったかはわからない。わからないがお互い期待があるのはまちがいない。
魅入られたように、手をのばし翔の男にふれてくる。熱さに一瞬怯むが、やさしく幹をにぎってくる。
しかし、その次はどうしたらいいのかわからず、“ どうしたらいいんですか? ” 目で訴えてきた。
「 そんなに難しいことじゃないよ 指を絡めて上下にしごくんだ、ゆっくりね… 」
言うわれたことを、風は忠実に実行する。
「 ……………うッ……ッ…… 」
「 ここがいいですか? 」
風は翔の反応を見ながら、“シュニッ シュニッ”と上下にしごく。風の通っている学校は頭脳明晰と
聞くが、こちらのほうも優等生のようだ。4,5回こすられただけで尿道が圧迫され、先走りのしずく
が鈴口を濡らす。
余裕を見せているが翔も童貞、このまま一方的に責められれば先に果ててしまう。
再び主導権を握るため、風への責めを再開した。
「 俺もさわってあげるよ… 」
狙いはさきほど死守されたスカートの奥。右手が風の『女の子』を目指しているのはわかっているはずだ。
リプレイのように太股を這い上がるが、今度は風に止められることはなかった。
翔の手がさわりやすいように、少し足をひろげてくれる。それは“はやくさわって”と催促しているようだ。
太股を這う手がスカートの中にもぐり込み、まだ誰もふれたことのない、風の秘められた部分にふれる。
自分の股間に風の手を重ねたときのように、風の『女の子』の部分に手の平を置く。
意識したわけではないが、ずいぶん風を待たせてしまったようだ、少し動かしただけで、“じゅんわり”
と透明な粘液がにじみだしてくる。
やさしく恥丘をなでていた手の平から中指をのばし、風の秘裂をなぞり上げた。
「 ハッ……あッ……ンんッ…… 」
「 気もちいい? じゃあ… ここは? 」
“ にゅるり ” ショーツの脇から秘裂に指をすべりこませる。じらされた秘裂は指の侵入を易々
とゆるし、その快楽を唇に伝達する。
「 んあッ……はぁッ……あふぁッ…… 」
恥毛は以外と濃く、風の秘裂からあふれた透明な露にまみれて茂みをぐっしょりと濡らしていた。
ぬらつく秘裂を浅くかき回しながら、包皮を被り外に出るのを怖がっている突起にふれる。
「 はひッ! 」
フラッシュバックが瞬き、つま先から脳天まで、快感が一気に駆け抜ける。秘裂の頂上で固くなって
いた真珠をむかれる強烈な刺激に風の身体がそり返る。
そしてさらなる快感の波はたてつずけにやってきた。顔を出した真珠を愛でる動きがさらに激しさを増す。
風の心に霞がかかる。目の前がチカッチカッしてきた。快感の波は堤防を破ろうとしている。
でも翔をまだ満足させていない。男は精液を出さなくては満足しない。でも翔がそれをさせてくれない。
「 ひッ……と‥とめて…く、くださ…はンッ……こ…このままじゃ…ンあッ…… 」
「 い、いきそ…う?…… 」
腰をガクッガクッと痙攣させながら、初めての感覚に怯えるように翔の胸にしがみつく。その姿は親に
庇護を求める幼子のようにいじらしく、かわいらしい。
「 うあッ…ご‥ごめんなひゃいッ!…あッ‥ああぁッ!……… 」
快感を快感と理解できない拙い体は、幼子が親に庇護を求めるように顔をすりつけて泣きじゃくる。
そんな可愛いしぐさとはうらはらに、指のほうは妖しく男を絶頂へと導く。
翔の方にも限界が訪れる。耐えに耐えたが、快感が翔の一番深い場所からかけ足でやってきた。
「 お、俺のほうこそ…ご、ごめんッ!…… 」
熱い白濁液は一気に筒から飛び出し、風の手を汚し尽くす。熱さを感じた瞬間、風にも限界が訪れた。
「 あッ……はぁッ……んあぁッ……… 」
しがみついていた手から力が抜け、ポトリッと落ちる。翔の胸に顔をつけたまま荒い息を繰り返す。
翔も息をととのえながら、ぼんやりと考える。
…光の友達とエライ事しちゃったなぁ…後悔はしてないけど…でも、先にイッちゃたのはかっこ悪かった…
風編その一 終わり
海編に続く