ホテル最上階のスイートルームに複数の拳銃が連射される乾いた音が響いた。女は屈み込んだ姿勢のまま  
手にした自動拳銃の残弾数を心の中で数えて周囲の状況を確認した。楯にした横倒しの書斎机の縁が敵の弾丸で裂けてしまっている。  
どこまで持ち堪えられるだろうか・・・狙撃手の制服を纏った侵入者達は部屋に入ってすぐの所、ドアを爆破した時に転がったソファの位置で  
それをバリケード代わりに使って執拗にこちらへの銃撃を繰り返している。こちらの全員を排除するだけのつもりならもっと簡単な方法が  
有る筈だった。女には彼らが命じられた任務の内容が解るような気がした。重要人物の確保・・・それを最優先で指示されているのだろう。  
だがそんな事はさせない。  
 
女は書斎机から半身を乗り出すと拳銃を構えた腕を伸ばしその侵入者達に残り全弾を叩き込んだ。  
1発・・・2発・・・3発・・・だが彼らの中の、一人だけ異彩を放つ扮装をした人物の前でその全てがはじき返される。ロングコート姿の  
相手は素手で手に名刺大の小さな紙切れを持っているようにしか見えなかった。そして見ようによっては淫靡にも見えるその手の動きで  
紙の小片を操ると眼前に打ち込まれた弾丸をいともたやすく払いのけてしまう。  
その紙も他の紙使い達が使うあらかじめ用意された特殊な物には思えなかった。どこかその辺りで調達してきた在り合わせの物に  
違いない。眼前に打ち込んだ筈の銃弾が紙を打ち抜けず変形して下に落ち、その紙の影から無傷の相手の顔が現れる様子を  
女は信じられない気持ちで見守っていた。  
 
「そんな・・・馬鹿な・・・」  
 
情報として知ってはいたが改めて眼前にそれを目にしてしまうと率直なその思いが口から出てしまう。  
有り得ない。そんな行為だった。だが相手はこの部屋に侵入して以来ずっとその調子でまるでそれが当然の行為であるかのように  
打ち込まれた全ての弾丸をそうして無効化し続けてきた。自分に向けられた物のみでなく従えた武装集団への攻撃を含めて。  
部屋の中に立ち込める硝煙の匂いと同じく、それが現実だった。  
 
女は唇を噛んで空になった拳銃の弾倉を交換しながら思い知っていた。  
彼女が今相手にしているのは彼女の知る限り最強の紙使い、いや最強と言う言葉では足りない。  
他の紙使いとは比較の出来ない世界で唯一の存在  
この世で最も紙を愛し紙に愛されている女、かっての大英帝国図書館が誇る最強のエージェント  
その名も読子・リードマン、ザ・ペーパーの2つ名で呼ばれる最強の紙使いその人なのだと・・・・・・  
 
「もう一度いいます。銃を捨てて投降して下さい。」  
 
少しだけ舌足らずなその忘れもしない懐かしい声の響きを耳にして女は思わず黒いサングラスの奥の目頭を熱くした。  
ほんのつかの間だが彼女がかつて大英図書館の職員であった頃、事務の仕事で袖が汚れないよう腕抜きを付けた  
一般女子職員の制服を身につけ無邪気に読子たちと笑い合いながら仕事や雑談をしていた頃の記憶が蘇ってくる。  
女は即座に唇を噛み直しそんな自分を叱咤した。  
味方と敵の銃撃が止んだ瞬間を狙って銃を構え直し再び机から身を乗り出して叫び返す。  
 
「邪魔をしないで!  
 読子・リードマン、あなたの出る幕なんかもうどこにも無いのよ!」  
 
そう叫びながら無駄を承知で銃身から硝煙を上げて渾身の銃弾を相手に撃ち込む。  
その全てが再び相手の手の舞いの前に払い落とされる。ただの紙切れの前に銃弾が、だ。  
状況は劣勢だった。こちら側の無傷の味方は3名ほどしかいない。相手の半分にも満たないだろう。  
でも・・・この人だけは・・・何としてでもこの場を脱出させねばならない・・・  
読仙社には連絡が付いている。後はただこの場を持ち堪えることさえ出来れば・・・  
女は同じ机の影で左肩を打ち抜かれその場にうずくまる一人の男を見おろしながら狂おしい目でそう考えていた。  
それにしても・・・  
 
机の向こうからは紙使いの声が続いている。  
 
「お願いです。投降してください。  
 貴女を傷つけたくないんです。お願いっ・・・ウェンディさんっ!」  
 
懐かしい声に自分の名前を呼ばれてつかの間、心が動揺してしまう。  
 
・・・それにしても、どうしてこうなってしまったのだろう  
だがそれは解りきった事だった。それにもう一つだけはっきりしている。  
いまさらもう引き返せない。  
銃撃を再開しながら女は心でひとつの決意だけを繰り返していた。  
 
この人は・・・この人だけは・・・絶対に脱出させなければ・・・  
 
 
 
そのほんの3時間前までウェンディはとある豪華な建物の一室でカーテンの掛かる窓際に置かれた書斎机の前に立っていた。  
ホテルの部屋と同じ様な机だが比較にならないほど価値が高いことが一目で分かるその大きめの執務用の机の前に立ちウェンディは倒れ込むようにうつ伏せの上半身をその机の上に載せ、そこに両肘を突いて握りしめた両方の手でその滑る机の表面を捉え机にしがみつくようにしてそれで上下に揺り動かされる身体を支えて後ろ向きに高く掲げられたタイトスカートの腰を持ち上げ続けたまま、その姿勢で自分の身体を後ろから突き上げる男の動きに耐えていた。はだけたブラウスの前、2つとも剥き出しになって下を向き机の表面に  
擦れるように揺れている白い乳房に後ろから男の両手が伸びてきてそれを鷲掴みにする。乳房に指が食い込む痛みに声を上げるとそれを耳にして背後からこちらの身体を押しつぶすようにのしかかりながら腰を使っている男の性器の動きが一段と激しくなる。  
肘を突いて緊張する両腕の白いブラウスの肩の上、揺れる金髪が覆っているウェンディの耳元に背後からのしかかり寄せられた男の顔の荒い息使いが聞こえるのと一緒に初老のその男のスーツから漂うそれらしい香水の香りか何かが漂ってくるのが解る。  
 
男は再びそのウェンディの背後から両手を前に滑らせて彼女の乳房をまさぐると手の平をその乳房の下にあてがうように当てそれから両手の中のその柔らかい感触のものを力を入れて握りしめそのまま乳房の先端に向けて絞り上げるように擦り上げる。  
乳房を絞り上げる両手が乳首まで達し、節くれだった男の指がその隆起して尖ってしまっている彼女の乳首を指で押し潰す様に弄り始めるとその感触に嗚咽を抑えるように喘ぎ続けているウエンディの口から長い溜息の様な切ない悲鳴が漏れる。持ち上げた金髪の頭を前後に揺らし、タイトスカートから裾が引き出されウエストからやや上、背中の背骨の窪みが露わにされる辺りまで捲り上げられまとわりつくシルクの白いブラウスを濡れた背中に張り付かせ、その背中を跳ねるように仰け反らせながら。  
 
同時にそうして身体を跳ね上げさせられる乳首への感覚が、背中、机に押しつけられ括れたウエストから高く持ち上げられた腰、すっかり露出して剥き出しのなだらかな臀部の白い双丘へと伝わり、最後には性器に達して背後から深く彼女に差し入れられている男の男性器を締め上げさせる。  
男は彼女の乳房を両手に鷲掴みにしたままそれが引き起こすウェンディの反応、彼女の長い鳴き声と自分の身体の下で白い裸身をくねらせ身体を跳ね上げるその様子、頭を揺らし眉を顰めたまま男の性器を締めつけ始めるそのウェンディの様子に満足したような溜息を漏らしその感触を確かめるように彼女の体の中の男性器を引きづった後、背後から覆い被さったまま腰の前後の動きを一層激しくさせる。  
男はその繰り返しでいつ果てるとも知れない長い時間、ウェンディの身体を堪能し続けていた。  
 
これでもう1時間近くの長い間、男はこうして机の上に両肘を突いたウェンディを責め続けている筈だった。  
この男は・・・どうしてここまで夢中になって女の、自分の身体をこんなにも激しく貪っているのか解らないに違いない・・・  
ウェンディは性器から伝わる刺激に耐え前後に身体を揺すられる動きにヒールを履いた足で高く上げた腰を何とか維持しようとしながらそうおぼろげに考えていた。  
 
特別に用意された薬、この日の為に貴重な稀覯本と引き替えに読仙社から入手した中国製の特別な媚薬が使われていることを男は知らない。  
この日最初に男が執務机に座る自分と机の間に彼女の身体を引き寄せ、柔らかな生地の後ろの小さな突起ですぐに下着を付けていないと解るシルクの白いブラウスの胸のボタンをゆっくりと外し始め、剥き出しになった白い胸にそのまま顔を埋めその尖った乳首を舌で愛撫し始めた時も・・・  
その後でウェンディの顎を片手で押さえつけ濡れたように光る彼女の唇を貪るように吸って彼女の反応を楽しんでいた時も・・・  
そして・・・腰を机の縁に押しつけるようにしてウェンディのタイトスカートを上にずらしあげ、ガーターベルトの上に穿いた黒い下着をそのまま引き下ろすように命じてその下のウェンディの性器が目の前で露出するのを見守っていた時も・・・  
 
その濡れたように艶を出して光る乳首、しっとりと湿っているかのような乳房、既に潤っているかの様なウェンディの性器を前にしてそれが塗られた媚薬の所為であるとは男は気付いていないようだった。役割に応じて上司に常に同行し地味で慎ましいスーツのなりでそれでも有能な秘書らしく見せかけた自分が、その清楚らしく見せた物腰には似つかわしくない慣れた様子で命じられたままに従順に身体を開く様子に権力を持った男達はいつも夢中になった。  
この男も他の男達と同じく剥き出しにされたウェンディの様子を見て、ただ単にその物腰に似合わず濡れやすく好ましい芳香を放つ敏感な女として自分を見ていたに違いない。だが勿論それは誤りで入念な下準備が自分の身体には施されていたのである。  
 
その扱いの難しい媚薬をウェンディはここに来る直前に彼女の上司と準備した。  
ここに来るまでのリムジンの後部座席で彼女は上司に促されるまま下着を付けていない白いブラウスの前を開けて胸を露出させた。  
お仕着せの制服を着て制服の一部である帽子をかぶった運転手がバックミラー越しに一瞬視線をこちらに向けてそして元に戻す。  
・・・車中でこうした準備をするのはこれが初めてではなかった。テストを兼ねてこの媚薬を幾度か試す機会があったからだった。  
この薬は空気に触れると分解し始める速度が速いため、どうしてもこうして使う本当の直前に身体に塗布する必要があった。そうしなければ持続時間が持たないのである。薬は血管内には浸透せず皮下にのみ蓄積する。単体では効用を発揮せず発汗と共に分泌されるある種のホルモンと化合し揮発し始めて相手の体内に入る。その限られた持続時間はさらにあらかじめ皮下に蓄積された量に従うため最大の効果を上げるためには皮膚に入念にその膏薬を塗りつけ染み込ませるしか他に手段が無かった。  
 
彼女の上司は男性だったから、その上司の手で丹念に裸の胸に膏薬を塗られるのには抵抗があった。  
だが彼女の上司はいつも極めて冷静に事務的にその作業を行った。リムジンの後部座席で露出させるよう命じた彼女の白い胸、彼女の乳房の乳首の上あたりからその独特の芳香を放ち光る薄い油性の媚薬を瓶から少量ずつ垂らしそれをゆっくりと指で伸ばして丹念に彼女の肌に染み込ませていく。隆起して尖った乳首は油性の媚薬で光沢を帯びる。それがあまり露骨であれば薬の存在を相手に露呈してしまうかもしれず彼女の上司はその光った乳首の先端を親指と人差し指でゆっくりと擦り上げ浸透させてその光沢を消した。  
クッションの効いた後部座席に背中を押しつけられるようにしてただひたすらそうして上司に露出した胸を弄られる様子は運転席から見れば異様な光景に見えるに違いなかった。だが彼女の上司は運転手に後部座席との間の仕切を上げるようには命じず、幾分顔を紅潮させ身も硬直させてじっとその行為に耐えるウェンディを相手に上司は事務的にその準備をし続けるのである。  
胸が終わると唇やうなじ、そして最後には仕上げとして脚を広げるように命じられての性器への準備が待っていた。  
 
どの道到着した後の任務があるのだから・・・彼女はそうして上司に入念に身体を準備されて隠しようも出来ない性的な興奮を自分の吐息に滲ませながら相手に自分の感情が伝わってしまわないよう祈っていた。この人は・・・いったい自分の事をどう感じながらこうして自分の身体に触れているのだろう・・・・彼女は自分と同じ金髪を短く刈り揃えた上司の顔を見つめる。その様子はいつも感情を見せず自分には掴み所がない。  
だが祖国を離れた今、彼女にとって唯一彼だけが以前の彼女の祖国、英国の、いや彼女のかつての職場、大英図書館での彼女が愛したかつての仲間達との生活を思い出させる唯一のかけがえのない存在だった。  
 
ウェンディが初めて彼の配下に配属されたとき、彼女は只のスタッフ見習いで資料運びやお茶汲みをするのがやっとの少女でしかなかった。  
この人の瞳には今でも・・・私があの頃のまだほんの少女に過ぎなかった頃の大英図書館の制服を身に付けた姿に見えているのかも知れない。  
ウェンディは胸や性器を丹念に準備され続けながら、その冷たい瞳とも優しい瞳とも見えて自分にはとうてい判断の付かない上司の瞳を見つめた。  
でも今では私が以前のままの私で無い事を・・・私もこの人も知っている。  
そして今からこの車が向かう先では・・・。彼女の上司の瞳に今でも映っているかも知れない自分、少女であった頃の自分、今でも自分の中に僅かに残っているかも知れないその部分を押し殺しながら男達に身体を開かなければならない任務が待っている。  
その直前の今、自分の中で今だけは最も触れたくない部分、押し殺さなければいけない部分を相手の瞳に意識させられるこの時が・・・  
彼女は一番嫌いだった。  
 
後部座席でこうして彼に身体の準備をされている時にはいつも・・・ウェンディは自分がいつもの自分の殻が維持できなくなって素の自分、以前そうだった自分に戻ってしまっている事に気付いていた。  
今さらそんな事をしてみても意味がないのに・・・後部座席に背中を押しつけられてはだけられたブラウスから露出している白い自分の胸、捲り上げられたスカートから覗く性器を丹念に弄られ続けながら、そうする彼女の上司の瞳に以前そうで有った筈の自分の姿を見て取りながら、身を守る仮面を剥ぎ取られ完全に素に戻ってしまった表情の自分、額にかかる金髪の下の碧眼を少女の表情で大きく見開き涙を滲ませながら上司の瞳を見つめる自分を強く意識させられて知らず知らずの内に準備に抗ってしまっている自分がいる。  
 
上司はそんなウェンディを、片手を口に当てて眉を寄せ瞳に涙を滲ませ彼を見つめて素の少女の表情に戻りもう一方の手で抗う動きを見せる彼女を片手で安々と押さえ込み、もう一方の手で強引に胸や性器への準備を続ける。上司は彼女の抵抗については何も言わなかった。  
ただ車が目的地に到着する時には彼女は上司に付き従う有能な秘書の姿に戻っていなくてはならない。それだけが唯一の約束事だった。  
車から降りて訪問先の男達に面会する時には彼女もまた平静さを取り戻している。だが準備が完了している身体から既に男を誘う何かが立ち上っているのか、それとも僅かに紅潮した表情で上司に付き従って立つ彼女の姿に何か感じさせられる物があるとでもいうのかどのみち訪問目的の密談は早々に打ち切られ彼女が身体を開かされるまでそう時間が掛かることはなかった。  
 
執務机の上で男に身体の上にのしかかられるようにしているウェンディ、その彼女の背後、背中の上から聞こえる男の息遣いが激しくなり始め腰を突き上げる男性器の動きも一段と激しくなり始めた。なんとか持ち上げ続けている腰が激しく突かれうつ伏せに机に伏せている身体全体が前後に揺らされ続ける。男は射精が近い様子だった。  
 
もう駄目・・・どのみちもう持ちこたえられそうにない・・・上半身を支える肘を崩してしまい両腕を机に投げ出すようにして乳房を押しつぶされ机に擦り付けられたまま前後に揺すられて乳首から伝わる刺激と突き上げられる性器からの感覚にウェンディも既に狂乱状態だった。  
背後から細いウエストを両手で挟むように掴まれ、そのまま男の下腹部に柔らかい尻を擦り付けるその感触を楽しまれるように腰ごと引き寄せられていて、その性器に深く男の男性器を咥えたままの掴まれた腰を男の望むままに好きなように揺り動かされる。  
 
背中の白いブラウスは男性器を咥え込まされたまま、机に押しつけられた姿勢のままゆっくりと引き下ろされ中途半端に引き剥がされていて今はほとんど身体にまとわりつくだけで震える白い肩、白い背中のウェンディの後ろ姿が男の目の前に露わになってしまっている。  
その彼女の前後にせわしなく振られる頭の瞳が虚ろなまま見開いていて、絶え間なく嬌声が漏れる半開きのままになった唇から犬のように舌が突き出されて唾液が顎を伝っている。後ろから男に好きなように扱われながら与えられる快感に身体がついていけていないといった様子に見えた。  
彼女は彼女自身、自分の為の媚薬を服用していてその影響下にあり、実際にとうてい正常な身体状態にあるとは言えなかったのである。  
 
自分ではそんな姿に気付かないが肌の下の血管が紅潮して全身が淡い紅色に染まって見えてしまっている。異常なほどの発汗が彼女の全身をずっぽりと濡らしてしまっていてその白い背中から肩、うなじにかけて行為を続けながら背後から男が舌を這わせてそれを拭い取っていたが間に合わず雫となって乳房の脇を流れている。異常な程に高い体温に当てられて彼女の全身からまるで湯気の様に何か淫靡な匂いの芳香がウェンディの性器を中心にむせ返るように立ち上っていておそらく男の為の媚薬の方もその効果が最高潮に達している様子だった。  
 
ああ・・・でもっ・・・  
自分自身の絶頂も近いことを悟りつつ無様な恰好で執務机の上で押し潰され背後から性器ごと身体を前後に揺り動かされながら、それでもなんとかウェンディは白い背中を反らせながら机の上で金髪の頭をもたげる。  
虚ろで性器からの感覚から逃げ場を探すようにあちこちを彷徨うその瞳に部屋の様子が飛び込んでくる。  
自分の無様な今の恰好を強く意識させられながらウェンディはおぼろげに思う。  
 
この部屋の感じ・・・この部屋の匂い・・・部屋の雰囲気・・・大英図書館に似てる・・・・・・  
 
部屋の調度の豪華さや秩序だった印象のその部屋の様子がそう思わせるのかも知れなかった。スタッフ見習いの頃、彼女はこれと同じ様な大英図書館の上層部のメンバーの部屋へお茶を届けるのが仕事だった。ドジな事が有名でそれでめげる事も多かった彼女にとって、唯一取り柄とも言えた上手に淹れた紅茶のポットを部屋にいる彼らを訪問し届ける事、それが当時の彼女自身にとってはとても大切な仕事だった。いつもは気難しいお偉いさん達もこの時だけは必ず彼女の仕事ぶりをほめてくれた。  
たぶん・・・自ずとその権威を放っているこの部屋で白い裸身を晒し嬌声を上げ厭らしい芳香を上げながらこうして性器を使った事のある人間はこれまで自分ひとりだけだろう。彼女は男に押し潰されるようにしながらその身体の下で正面の壁に装飾された白頭鷲の紋章を見上げた。  
 
でも・・・・・・  
今・・・こうしている・・・この仕事だって・・・以前の仕事と同じじゃないかしら・・・  
 
絶頂近くの快感に途切れ途切れになりながら彼女はそう思った。背後の男は前に投げ出された机の上の彼女の両手の手首を掴み背後から覆い被さりながら自分も机に手を突く恰好で押さえ込んでいる。彼女の肩のすぐ上にある男の顔の息遣いは愉悦に歪んで乱れていて男がウェンディの性器の感触や眼前に広がる彼女の身体の様子に満足していることは確かめるまでもない。  
彼女の昔の職場と同じ様な雰囲気の部屋を巡りその場所でそこに居る男達を満足させる事。それは似たようなものと言えない事もなかった。  
 
喘ぎ声の下でウェンディは思い返す。白いブラウスに赤いネクタイ、その上にベストを着て腕に事務用の腕抜きを付けた大英図書館職員の制服を身につけた自分。その自分が部屋の机の前でお茶を運んで来たトレイをしっかりと両手で胸に抱きかかえた様子で相手がポットからカップに紅茶を注ぎそれを口元に運んでいるのを目を瞠って心配そうな様子でじっと見守っている姿。  
 
相手はカップから口を離すと  
「結構です。良い仕事ですね。」  
と彼女をほめる。そして今、彼女の背中の上では絶頂近くのウェンディの性器を強引に押し開きひときわ大きく男性器を突き入れ彼女のその時の鳴き声と性器の感触、仰け反る白く濡れた背中をさらけ出すウェンディのその姿に満足げな男の愉悦の声が響く。  
そこには自分のすべてが今、部屋のこの男に楽しまれているという実感があった。  
 
「あっあっあっ・・・」  
 
間断ない鳴き声を上げ、否応ない快感に追い詰められた彼女が部屋を見回す虚ろな瞳に今度は部屋の片隅の風景が飛び込んでくる。  
それは椅子に座った彼女の上司の姿だった。彼女の上司のその感情のない瞳には、両手の手首をしっかりと机の上で押さえ込まれ、背後の男に覆い被されて押し潰されながら性器を激しく突かれ頭を上げて鳴き声を上げ続ける今のウェンディの乱れきった姿、自分の背後の肩の上に感じる男の顔の下にある彼女の顔、彼女のその時の表情がはっきりと瞳に映っている筈だった。  
 
「あぁぁ・・・」  
 
仰け反るように顔を上げたまま上司のその目から大きく瞠った瞳を離せず、男の男性器を咥えた無様な恰好の自分の今の姿を強く意識させられたまま一声、たとえようもなく切ない鳴き声がウェンディの口から漏れる。彼女にはどうしようもなかった。  
そのまま上司の瞳に見守られたまま、男の突き上げる性器の動きに合わせ大きく白い背中を反らせて身体を硬直させ、その姿で男の男性器を咥えたままの膣を痙攣させて絶頂に達する。  
 
上司の瞳を見つめながら、誉め言葉を掛けて貰い、トレイを胸に強く抱き締めて嬉しそうににっこりと微笑むかつての自分の笑顔、4年前のその自分の笑顔を快感に我を忘れた自分の目の中に蘇らせながら。  
そして最後に自分の口から漏れ自分の耳に届いた部屋の中に響く長い長い絶頂の切ない鳴き声は、それはもはやこうした仕事を常としている女の物ではなかった。それは彼女にとって唯一の大切にしている思い出ごと犯され、否応なく絶頂に導かれてしまいその事実を悟らされ諦めの鳴き声を上げるまるで犯された少女の鳴き声のように自分の耳に響いていた・・・・・・  
 
その高い膣温と締め付けたまま何度も不自然な様子で痙攣するウェンディのその性器が伝えてくる感覚に驚愕と愉悦の表情を見せながら、同時に普段の彼女からは到底想像できない今の乱れきった姿を目の当たりにして男は狂ったように男性器の前後動を繰り返していて、やがてウェンディの背中を反り返らせたまましっかりとその奥深くまで男性器を差し込んだままで男は射精を開始し始めた。  
その感触があるのだろうウェンディもまた長い嗚咽のような鳴き声を上げてその男の年齢でその日2度目にしては大量に思える量の自分の身体に送り込まれた精液を受け止め続ける。  
 
ぐったりと机の上に倒れ込んでいる彼女の髪をかき分けてやる仕草を見せながら男がさらに2度3度と性器を脈動させて精液を送り込み続ける間、ウェンディはいつもそうであるように男の精液を受け止めたまま、直前までのその行為の激しさに茫然自失の様子だった。  
 
「彼女は・・・私の大事な秘書なのですから、もっと大事に扱って貰わないと困るのですがね。」  
 
上司は事が終わると男に近づきこう話しかけた。男は立ったまま両手でネクタイの乱れを直していて、ある種の悠然とした態度を崩さないまま正面の足元にひざまずき相手の股間に両手をあてがい金髪を揺らしながらその顔を相手の股間に埋めているウェンディの舌での行為の後始末を受け入れていた。そうした人を従わせる事に慣れた人間、人に奉仕される事を当たり前とする種類の人間をウェンディは彼女の祖国で見慣れて  
いた。もっとも・・・確かにこの国に貴族という物が存在するとしたらこの男を差し置いてはならない筈だったが。  
 
「まあ、解ると思うが、私のような地位に居ると  
 こういう・・・後腐れのない女性と接する機会が皆無でね。言葉は悪いが。」  
 
男はそう返事を返しながら足元のウェンディを見つめ、自分の陰茎に舌を伸ばしているウェンディの碧眼に僅かに翳りが差すのを観察しそれを楽しんでいる様子だった。無論只の高級娼婦であるならこの男は何一つ不自由しないだろう事をこの場の誰もが知っている。  
この男が必要としているのは娼婦の技術を持ち、金の力ではなく自らの権力で支配することのできる女だった。  
 
「それで、大統領閣下。  
 大英帝国図書館の残党に対処する為、お願いしていた貴国の武装エージェントをお借りする件、変更は御座いませんね?」  
 
ウェンディに行為の後始末を終わらせた後、念を押す上司の声に男は面倒そうに答えた。  
 
「構わんよ。関係部署からの連絡を待ちたまえ。特に問題はない。  
 我が国の権益に関する稀覯本の情報を優先的にこちらに提供するというそちらの条件が守られる限り。  
 前回君が提供してくれた読仙社の内部情報は非常に有益だったと報告を受けている。  
 それと・・・・・・」  
 
男は言葉を切ってウェンディを目で指し示して見せる。  
 
「そちらとの・・・良好な関係が保たれている限り、だな(笑)  
 次回の訪問を楽しみにしているよ。」  
 
そして男は五月蠅そうに頭の横で片手を振った。それが男の部屋からの退出を命ずるいつもの合図だった。  
上司の斜め後ろに並んで控え、一緒に男に一礼した後にウェンディと上司はその部屋を退出し建物の裏玄関へと回った。  
そこには帰りのリムジンが待ち受けていて上司は自らドアを開けてその後部座席に乗り込む。  
 
続いて乗り込もうとしたウェンディの鼻先でそのドアが閉まった。立ち尽くす彼女の前で後部座席のウインドウが下がりその隙間越しに掛けられた言葉は確かこんな内容だった。  
 
「ウェンディさん、あなた身体から男の・・・精液の匂いがプンプンしますね。  
 これで処置を。そのあとで別の車で帰ってきて下さい。」  
 
差し出されたハンカチを受け取る間もなくリムジンが動き出してウェンディはそれを先ほどと同じように一礼して見送る。  
車が立ち去った後の地面に落ちたハンカチを拾うために屈む。そうすると確かに性器の間から男の精液が滲むのが解る。  
身繕いをする時間も与えらず退出させられたから・・・立ち上がると太股を伝わって流れる精液の感触が伝わってくる。  
その感触に耐えながら彼女は夜の官邸の小道を裏門に向けて歩き始めた。そこで門衛にタクシーを呼んで貰うつもりだった。  
夜道とはいえ照明が明るく道を照らしていて不安はない・・・けれど・・・  
 
つい先刻までの行為で汗に濡らしてしまったブラウスの肩を上着越しに両手で抱き締めながら道を急ごうとする。  
だが行為の激しさに疲れた腰と脚が言う事を聞かなかった。  
 
一体何度こうした扱いを受けてきただろう・・・夜道を歩きながらとりとめもなくそう考えてみて  
ウェンディは嗤った。数え切れなかったから。  
 
最初は・・・そもそもの事の始まりは・・・上司に大英図書館離職の誘いの連絡を受けたのが最初だった。  
彼女はその頃、自分には到底計りようも無さそうな理由で何かが上手く行っておらず日に日に凋落していく様子の彼女の職場、大英図書館特殊工作部の様子に居たたまれない思いで毎日を過ごしていた。  
毎月の様にサポートセクションの閉鎖が発表され、仕事をする上で見知った仲間達が次々と去っていった。  
 
そしてそれは彼女の所属する本部も同じ事だった。元々がエージェントであり連絡や報告の際に立ち寄るだけで常駐することの無かったとはいえ親しかった読子の失踪も大きかったが、彼女の直接の上司達もまた同じように行方不明だった。  
それの後を追うように各オフィスが閉鎖されそれ付きの同僚たちが本部を去り、かつて偉人軍団殲滅作戦の際に見せたような以前の様子は自分の職場から永遠に失われたのだと思い知らされ、それを嘆く相手も誰も居なくなった事を思い知らされていた時、行方不明としか知らされていなかったかつての直属の上司から彼の仕事を手伝うよう依頼の連絡を受けたのだった。  
 
最初は断るつもりだった。だが市内のパブで人目を忍ぶようにして再会したかつてのその上司は片足を負傷していて杖を突いた姿で現れた。そして・・・昔の彼の姿を間近に知るウェンディから見ればその表情が一段と険しくなりかつて彼が身に纏っていた態度の余裕を失ってしまっている様に見えた。ウェンディはその場では誘いへの返答ができずそれからしばらく逡巡した後、結局彼の誘いに乗ってそれ以降彼女の以前の上司と行動を共にする事になったのである。  
 
仕事の内容は以前通り上司の秘書としての仕事、その他に護身術や銃器の取り扱いの修得など女性エージェントとして一通りの任務はこなせるようにして欲しいと言われていた。  
 
「ただのエージェントではありません。女性エージェント、としてです。  
 言っている意味は解りますね?」  
 
そう告げられたとき彼女は頬を赤らめながらもそれを承諾した。そしてその修得訓練の為の相手の話題になりどうしましょうかね・・・と上司が考え込んだ様子を見せたとき、同じように紅潮した顔をしながらもそれでもはっきりとかつての上司にその相手をしてくれるよう自分の意志を告げた。上司はいつもの冷静な態度を崩さなかったが明らかに虚を突かれた様子で、羞恥に耐えてそれでもなんとか相手の目から自分の瞳を反らさず真っ直ぐに見つめ返し続けていた彼女をしばらく何かを考えているように眺めると不意に目を逸らして  
 
「そうですね。他に専門の教官なんてものも居ない事ですし  
 そのうち・・・」  
 
とだけ答えた。ウェンディは自分が拒絶されずに承諾されたことで胸の内を撫で下ろし、事態のなりゆきに困惑しながらその時を待ち続けた。だがやがて開始されたその訓練は彼女の考えていた物とは大きく違っていた。  
上司の組織はかつての大英図書館での物とは比べ物にならない程小さく、組織と呼べる程ではない位だった。  
転々と各国を移動して回るその拠点の一室で上司は以前とは異なった苛立ちを隠せない刺々しい様子で電話連絡や来客との密談、雇われエージェント達への指示等を続けていて、ウェンディはその彼の秘書の仕事の傍らで射撃訓練や護身術の修得訓練をしながら以前通り上司へお茶出しをする気遣いも忘れなかった。昔と変わってしまった上司が気掛かりでもあった。  
 
以前と違い制服が無かったし他に適当な服装も思い当たらなかったから・・・  
最初のうち訓練が無い日には英国メイド風のエプロンドレス姿で以前のように上司にお茶出しをしていたウェンディがその日ノックして上司の部屋に入ると彼は机の上に両肘をついて指でその秀でた額を抑えてうつむき鬱ぎ込んでいた。  
昔通りの自信家の彼で有れば他人には絶対に見せないであろうそんな様子を心配しながら彼女がポットとカップを机の上に置き、両腕で胸の前にトレイを抱えて立ったままいつもどおりにそれを飲む上司の言葉を待っていると、上司はカップに注いだ紅茶に口を付ける様子がなく、不審がりながらそれでも目をぱちくりさせて微笑む彼女のメイド服姿を例の感情の無い瞳でしばらくじっと眺めている様子だった。  
 
「訓練を開始しましょう。  
 後ろを向いてそこに両手を突いて下さい。」  
 
そう掛けられた言葉のその後に開始された訓練の内容は彼女が今、官邸の一室で先刻までしていた行為と内容は変わらなかった。  
だが前戯らしきものもなく後ろ向きにされエプロンドレスのスカートの後ろを捲り上げられ上司の性器を後ろからあてがわれそれからゆっくりとその男性器を挿入されながらも・・・彼女の上司に対する気持ちはそれまでと変わりなかった。  
 
唐突で心の準備も出来ていなかったから当惑もしたし羞恥もした・・・上司の机に手を突かされ性器を挿入されるまでの間、何が開始されるかを悟った後、自分の性器が露出されていく感触を感じながら目を白黒させているその時の後ろ向きの自分の表情はずいぶん滑稽だったのではと思う。顔を紅潮させて寄り目がちの目であちこち触られる身体の感触を確かめながら困惑していて、そしてそれでも最期には・・・  
心を決めて顔を紅潮させたまま目を閉じ上司が自分の身体に侵入するのをじっと待っていた筈。  
 
彼女の乏しい恋愛経験からすれば・・・こうして自分に行為して自分の身体に射精をする事で相手の男性は慰めを得る事が出来る筈だった。  
彼女の唯一の性経験は学校の3年上の上級生でその彼は行為の後、枕に顔を埋めまだ涙目のウェンディの頭を撫でてとても気持ち良かったと言ってくれていた。その後数えるほどしかそうした機会を持たないうちにその上級生は卒業してしまい、上司に今こうして行為されるまで経験がなかった彼女自身は性器を擦り上げるその時の上司の動きに苦痛を感じていたのだが・・・  
 
それでもその最中に彼女が感じていたのは自分の身体から上司が慰めを得られるかどうかの心配だけだった。  
今彼女の身体を包んでいるエプロンドレスは彼女自身が洗濯をしたばかりで卸したての物だった。  
上司が今こうして行為している相手のその自分は・・・小さくて柔らかく洗濯物の匂いがして清潔な・・・・  
はじめてだった頃とそう変わりない女の子のままの筈。  
腰を引き寄せられ性器を上向かされそこに規則的に上司の男性器を出し入れされながら彼女はその時そう考えていた。  
私の身体は・・・気持ち良い・・・筈よね。そしてそれに少しでも慰められて気持ちが落ち着くようになれば、彼女の上司も以前と同じ自信家の姿を取り戻すかも知れない。そう信じながら。  
 
何かがおかしいと気付いたのはその行為が数十分も続いた後の事だった。彼女の性器を突き上げ続ける上司の男性器の動きはあまりにも規則的で、突かれる場所を探るように変えられてウェンディがひときわ高い声で鳴き声を上げるとき、その場所を執拗に責める動きを見せる以外にはまるきり変化がなかった。そして時折ウェンディの腰を後ろから抱いたまま、その身体を後ろに引いて椅子に座りそのまま行為を継続する様子を見せる以外に、背中に感じる背後の上司の様子も冷静そのもので興奮している様子が全くなかった。  
 
そうウェンディが気付かされそれがどういう事か理解した後も、上司は気持ちと身体の限界に達しすすり泣くようになった彼女をその変わらない態度で冷酷に責め続け、最後には机の上にうつ伏せに上半身を投げ出して後ろから性器を突かれている彼女の肩と頭を、突き上げる性器の動きに身体を引いて逃げ出さないように押さえつけた後、一段と激しく彼女の性器への前後動を開始してそれでようやく射精を完了した。乱れた髪の横顔を机に押しつけ肩の上まで上げた自分の手を涙の滲んだ虚ろな目で見つめながらそのまま身体の奥に精液を放たれ続けるウェンディにも充分に理解できる位、それはその気もないのに無理矢理出したと解るやり方の射精だった。  
 
上司が自分の身体にすっかり精液を放ち終わり、泣き出ししゃくり上げだしてしまわないよう努力しながら自分の身体がなんとか行為の痛手から回復できたと確かめ終わると、ウェンディは涙に光る頬を隠す余裕もなく目線を上司に合わせないようにして乱れてしまったエプロンドレス姿で失礼します、と一礼するとその部屋を逃げ出すように去った。  
長時間酷使された性器が痛んだが心の痛みの方が大きかった。他に来客を受け付ける為のスタッフなど居なく、いつもそうであるように不意の来客を予告されたなら彼女自身がその応対をしなければならずここでは泣きじゃくる事は出来ない。  
そう思いながらも彼女は割り当てられた自分の仕事部屋の机の前の椅子の上で涙を流し続けていた。  
何もかもが・・・もう以前とは違ってしまった。その想いに打ちのめされながら。  
 
その後も当然のようにウェンディの為のそうした訓練は続けられた。そうすると決められた時刻や予定などというものは無かったから彼女はそれを避けようと思えば避けられた筈だった。だが彼女は外出の無い日には必ず決まった時刻に上司にお茶を運ぶことを止めようとはしなかった。唯一ただそれだけが昔の自分達と今の自分達とを繋ぐ行為だと思っていたから。  
そして彼女の上司はその自分の所にお茶を運んでくるウェンディの姿を彼女の訓練開始の為の暗黙の合図として受け取ることにしたようだった。  
 
上司はウェンディが紅茶のポットとカップを机に置き終わると、彼女の身体を後ろ向きにさせ、机に両手を突かせて腰を高く掲げさせ彼女の性器を上向きにさせて、ズボンから自分の男性器を出して彼女の捲り上げられたスカートの下の性器を指で軽く開き、男性器をあてがいその膨らんだ先端を膣口に咥えさせ、しばらくその状態を確認した後でゆっくりと彼女の膣壁を擦り上げるようにしながら男性器を侵入させ、そして規則的にその前後動を開始し、机の上の彼女の身体を規則的に揺らし続けた。  
 
上司のその行為は例外なく長かった。彼は柔らかいウェンディの性器の感触を男性器で確認しているかのように、男性器で彼女の膣壁を探るようにしながら彼女の鳴き声の変化を見極めようとしているかのように、規則的にその彼女の腰を突き上げる男性器の動きを繰り返していて、そしてその長い行為の間にごく当然の事のように報告書類をチェックし、必要なサインを行い、電話を受けて必要な打ち合わせを行い、そして訪れた雇われエージェントやさほど重要ではない来客の入室を許してウェンディの身体に性器を出し入れしながら口頭で彼らに指示を与える事すらあった。  
 
 
机の上の顔を上げれば上半身をその机の上に載せたまま腰を大きく掲げて背後から性器を突かれている最中の自分の姿を面白い見せ物だと言わんばかりに眺めているエージェントの下卑たニヤニヤ顔と目を合わせなければならない。  
ウェンディはそんな時、必死に顔を伏せたままなんとか机の上の両手に力を入れて身体を揺らされすぎないようにしながら、性器を突き上げられる感触に鳴き声を上げてしまわないよう唇を噛んで耐え続けた。  
そのウェンディの懸命の努力にも関わらず上司はそんな時に結合を保ったまま自分の男性器を深くウェンディの体内に差し入れたままで彼女の後ろ向きの肩を掴んで机の上から引きはがしそのまま自分の椅子に腰掛けてしまう事があった。  
 
上司に比べれば遙かに小柄なウェンディの身体はそうして性器を貫かれたまま腰を引き寄せられるといとも簡単に引き起こされてしまう。  
そうやって身体を起こされてしまうともはやウェンディには同室の来客の視線から逃れるすべが無かった。上司と結合させられている自分の性器を中心に膝を大きく開いて座る上司のその膝に押さえられるようにして自分の両脚を限界まで開かされて上司の上に座らされ、片手を後ろ手に上司の首に回すようにしてしがみつき、もう一方の手で椅子の肘当てを掴んで自分を貫く上司の性器から逃れようとしているように必死に腰を浮かせながら否応なく来客の前に自分のその姿を晒すしかない。  
そして彼女の上司はまるでこうした状況へのウェンディの忍耐力を冷静に試しているかのような態度だった。  
 
「こんなのっ、こんなのっ、嫌ですっ・・・・・・」  
 
そう叫びながら額の眉を八の字に寄せ涙を頬に伝わらせ何も見えないように目をしっかりと閉じ、後ろに持たせかけた頭を上司の胸に擦り付けて嫌々をするようなそのウェンディの様子を頭上から冷静に見つめながら、上司は既にブラウス一枚切りになっているウェンディの身体の前に手を伸ばしブラウスのボタンを上から順にゆっくりと外すと、さらにゆっくりとそのブラウスの前を左右に開いてウェンディの白い裸身を露出させる。  
最初に左、そして次に右へと。そして最期に襟を掴んで下に引き下ろし、それでウェンディの震える肩、白い胸元、反らされた背中、乳首を勃ててそれを各々外向きに天井に向けて上向かせた状態の2つの乳房、反り返ったウエストのラインとなだらかにその下の上司と結合中の性器へと続く下腹部、それら全てがすっかり露出して正面の来客から丸見えとなる。  
 
そして自分がいったい今どんな恰好をしていて、上司のそのブラウスを開く手の動きで自分がさらにどんな恰好になるのかにようやく気付いたウェンディがそれで慌ててそれまでしっかりと視界を拒絶していた目を開けてしまうと・・・  
 
ウェンディは袖を通した腕を残してほんの申し訳程度も身体を覆っていない白いブラウスの柔らかい生地の残りを身体にまとわりつかせそのほとんど生まれたままの姿で上司の膝の上で両脚を極限まで開いてその上司の男性器を自分の性器で咥え込んでいる、その姿をすっかり晒けだした上で・・・その奇妙に人の心を捉える瞳、自分がいったい今どんな恰好をしていてそれで何をしている所を見られているのかそれを最期まで悟らされた理解を示す瞳の色、淡くくすんだブルーのその瞳を細かく震わせて見る間に溜まる涙を静かに頬に伝わらせ始めるそのウェンディの表情を今晒けだしている剥き出しの恰好に追加して、正面から好奇の目で見守る来客に提供してしまう結果になってしまうのだった。  
 
静かに頬に伝わらせ始め、その開かれたブルーの瞳と同じように細かく震えている唇をウェンディはそのままの表情で一度きゅっと引き結ぶ。  
だが震える唇はそれでは止める事ができず震え続ける。既に開始されていた上司の、太股を掴んでウェンディの身体を持ち上げゆっくりと揺すり上げ性器に刺さったままの男性器を前後に擦り上げるその上司の行為と性器への刺激とに促されるようにしてその小さな口からただ一言、長く切ない嗚咽、押さえ切れない感情の慟哭を引き延ばしたような鳴き声が漏れる。  
 
「嫌あぁぁぁぁぁ・・・・・・」  
 
だがその鳴き声のような慟哭とその後に続いて引き起こされた激しい身悶えを持ってしてもウェンディは彼女の上司を射精させる事が出来なかった。彼女の状態とは関係なく、生まれたままの姿で来客の前で脚を開き性器を貫かれ身体を揺り動かされ続けるその行為は続いた。  
そのうちに机の縁にしがみつくようにして身体を支え始めたウェンディを上司は後ろから男性器で前後に突き動かし始め、その突き上げられる腰の動きに彼女は少しずつ机の上に押し上げられて、そうして最後には普段通りの姿勢での行為に戻り、そしてまたいつものように上司が強引にその相手に自分が無理やり射精しているのだと隠さないやり方で精液の放出を終えるまで。  
 
 
彼女はやがて机の上で身を投げ出してのそうした行為、机に両肘を突きしがみつくようにして腰を相手に突き出し後ろからされるその行為、自分がいつも行為されるその机の匂い、机に剥き出しの自分の肌、行為を受けながら自分の乳首をその表面に擦り付けている時に伝わってくるその感触や冷たさ、そうした物に馴染んできてしまっている自分に気付いていた。  
来客の前で自分のあられもない裸身を晒し、さらにそのまま絶頂に導かれて鳴き叫ぶその姿を見られてしまう事にショックを受けて再び机の上での行為に戻ったウェンディがされるがままにおとなしくなってしまい声や身体の反応を返せなくなってしまっている様子を見てそんな彼女の机の表面に横顔と胸を押しつけ、その横顔で肩まで上げた片手を虚ろな瞳で眺めながら行為を受け続けている表情を確認しながら彼女の上司はウェンディに声を掛けることがあった。  
 
「ウエンディ君、大丈夫ですか?」  
 
と。行為のペースを一時的に緩め彼女の表情を確認するようにして掛けられるその言葉は確かに優しかった。  
けれどそれはたった今、この瞬間も自分の男性器を受け容れ続けている女の子に掛ける種類の言葉の響きではなかった。  
それはかつて仕事で失敗をするたびに彼女に向けて掛けられた言葉、  
 
「ウェンディ君、大丈夫ですか?  
 もっとしっかりして早く一人前になって貰わないと困るのですがね。」  
 
というのとまったくその声の響きが変わらなかった。今、上司に行為され続けながらその彼女が掛けて貰いたいのはそんな言葉じゃない。そう考えて彼女は机につけた横顔を覗き込むようにして男性器の前後動を続ける上司の視線を避けて目を合わせないようにして静かに喘ぎ揺らされ続けた。もし視線が合ってしまったら泣き出し泣きじゃくり続けてしまうかもしれなかったから。  
代わりにその視線は彼女の震える肩、持ち上げられ机に力無く横たわる手を通り越して顔の横に積み上げられている本の山に向けられる事が多かった。  
 
彼女の上司は大英図書館に居た頃から部屋の整理整頓には無頓着だった。その執務室の床の上には所々に資料の山が積まれ机の上にはそれと同様、稀覯本の山が何段にもなって山積みにされていた。ウェンディには稀覯本の価値はまったく解らない。  
整理を禁じられ手を付けることさえ許されなかったその机の上の稀覯本の山から、上司は彼にだけ解るやり方で一冊ずつそれを取り出し如何にも大切そうにページを繰りながらそれを時間が許す限り長い時間を掛けて丹念に読んでいて、彼と一緒に仕事をしていたウェンディは自分には触れることも許されない稀覯本を読むそんな様子の上司の姿を何度も見かける事があった。  
 
ウェンディは机に横顔を付けたままその本の山を見つめ少しだけ瞳の色を柔らかくして口元に少しだけ微笑みを浮かべる。  
彼女は今、その稀覯本たちと一緒に机の上に積み上げられ同じ上司に後ろから性器を入れられ丹念にその身体を確かめられている。  
彼女は心の中でその稀覯本の山に話しかける。  
 
「これで・・・私だってあなたたちのお仲間って事よね・・・  
 だって・・・だって・・・私だって・・・こんなに丹念に1ページ1ページ頁をめくるようにして身体を確かめられてるんだもの・・・」  
 
仲良くしてね。そう最後に心の中で微笑むと彼女はいつも少しだけ心の中が軽くなるような気持ちになった。  
少しだけ柔らかくなった声で喘ぎを抑えた鳴き声を出すことができて、そして上司の男性器の動きに答えて少しだけ幸せな気持ちで逝けるような気がいつもしていた。見守る上司に言葉ではなく私まだ大丈夫ですっ、と昔のように微笑み返した口元と明るいブルーの瞳で相手に気持ちを伝えようとしながら。  
 
いつかは彼女の上司も変わり昔の姿に戻ってくれる。性器をそんな風に責められ続けながらもウェンディの想いはその一つだけだった。  
だが上司は彼女にそうした訓練を継続し続け変わる様子は見せず、そのうちに彼女が自分の姿を見る来客の視線を気にしなくなりさらに別室のソファの上で脚を開き性器を露出させ、より重要な来客者の男性器への饗応をし始めたその頃には・・・  
彼女自身がもはやそれまでの少女では無くなってしまっていた。  
 
そしてそれ以降、世界各国を転々とする上司に付き従って同行し各国政府の高官たちや有力企業の経営者たち、時に読仙社の上層メンバたちへの交渉のそのあくまで単なる交渉相手への余録として自分の身体を与えられ続けてきたのである・・・・・・  
 
 
→途中分岐  
 
「ウェンディさんっ!ウェンディさんっ!お願いですっ!」  
 
読子の声にウェンディは長い回想から完全に引き戻される。銃撃戦はその間も続いていて彼女自身2つの弾倉を空にしていた。  
味方のエージェントは2人やられ後は一人しか残っていない。官邸からこの部屋に戻るまでに予定外の時間が掛かりシャワーを浴びて髪を乾かし、再びこの部屋に戻った時には彼女の上司はエージェントと打ち合わせを既に開始していた。  
その直後に読子たちの襲撃を受けたのである。  
 
予定外の襲撃ではあったが読仙社への連絡と救援の約束は取り付けてあった。ヘリのローター音がもう既に微かに聞こえてくるような気がする・・・。頃合いだった。部屋の右手、ドアが開け放たれた続き部屋の、通りに面した窓からなら救援のヘリで脱出できるだろう。  
問題は脱出のタイミングと・・・読子だけだった。ヘリからのロープに乗り移ってすぐに窓から離れてしまえば銃撃はまず当たらない。  
敵の銃撃手たちはなすすべが無いだろうが、紙使いの読子はそれを何とかして脱出を阻止してしまう可能性があった。  
読子だけはここで足止めしておかなければならない。  
 
ウェンディは銃撃戦に参加している彼女の上司に目配せするとタイミングを計って机から身を乗り出し敵に向けて銃撃を開始した。彼は打ち抜かれた左腕を押さえながらも不自由な片足を押してダッシュして続き部屋へと転がり込む。  
その様子を確認した後、再度タイミングを計って打ち返した後に今度は自分が隣の部屋へと移動し、到着と同時に再び相手に向けた銃撃を再開する。相手はこちらの意図にまだ気付いていないようだった。  
これが最後になる・・・その実感があった。そう思いながらもサングラスを投げ捨て銃撃音に負けないよう上司に向かって叫ぶ。  
 
「窓からヘリで脱出して下さい!  
 ここは私が死守していますからっ!」  
 
命に替えても・・・とは告げなかった。だが彼女の上司はそのいつもの冷静な目で彼女の瞳をじっと見つめ返すと黙ったままおもむろにその両腕を広げると彼女を抱き締めた。  
 
「ジョーカー・・・・・・さんっ!(泣)」  
 
今はMr.カーペンター・・・だがウェンディにとって彼は変わらずジョーカーのままだった。それも単なるコードネームに過ぎないのだろうけれど・・・  
普段の態度からは思いがけないジョーカーの行動にウェンディは身をすくめ瞳を瞠ったまま抱きすくめられる。  
だがすぐにその瞳に滲んできた涙を振り払うようにして目を閉じ彼の胸に顔を伏せる。これが最後の別れになる事をジョーカーも理解しているのに違いなかった。  
 
ウェンディは抱きすくめられ相手の広い背中に回した両手をゆっくりと上に上げて相手の存在を確かめるように自分もしっかりとジョーカーを抱き締め、その胸に自分の顔を埋めた。そうしているとジョーカーのいつも身に付けている香水の香りが彼女を包み込む。そしてこの感触は・・・  
 
それは見習いスタッフだった頃、彼の部屋で両手に資料の本の山を抱えたままヨタヨタとうろつき回り、つまづいて転びそうになるたびにジョーカーに抱き留められていた時のその頃の・・・幸せな昔を思い出させてくれる抱擁だった。  
 
ウェンディは目を閉じ顔を上げ背の高い相手の肩に自分の顔を載せしっかりと相手を抱き締め直した。  
そして心の中だけで呟く。  
 
さようなら。ジョーカーさん。  
あなたの野心はきっと実現しない。でもあなたにはまだしなければならない仕事が残ってる。まだ・・・今はまだ駄目。  
だから・・・わたしがあなたを逃がしてあげる・・・わたしの命に替えても。  
わたしは・・・わたしは・・・・・・  
 
多分今の自分の顔は以前の少女だった頃の泣き笑い、でもこの上もなく幸せそうな笑顔に違いないと確信しながら。  
 
そして・・・ジョーカーはそのウェンディの身体を負傷している筈の左腕でしっかりと抱き締めたまま、彼女の身体を引きずるようにして再び読子たちが居る部屋の中に身を晒け出した。  
 
その右手にはいつの間にか自動拳銃が握られていて銃身を読子たちに向けると引き金を引き銃撃を浴びせかける。  
即座にそれに反応した読子側の狙撃手達が一斉に反撃の銃撃を開始して、ジョーカーの肉の楯となった形のウェンディの背中に銃弾が次々と食い込んでいく。1発・・・2発・・・3発。銃弾はウェンディの背中に食い込むときに骨を砕く鈍い音を立てて微かに肉の焦げるような厭な匂いがその場に漂った。  
 
ウェンディはゆっくりとその場に崩れ落ちた。そして仰向けに床に倒れ込むと既に素早く続き部屋のドアの入り口に退避していたジョーカーの姿を下から見上げる。彼女のその瞳は既に乾いていてただ悲しい色をした瞳なだけだった。  
 
「何故・・・・・・」  
 
そう問いかけた彼女の言葉は音になっていなかった。だがその唇の形でそれと悟ったのだろうかジョーカーは彼女に最後の別れの言葉を告げた。  
 
「ごくろうさまでしたね。あなたは最後には私の有能な・・・・・・でしたよ。」  
 
有能な・・・何?・・・奴隷と言われたように聞こえた。その言葉の前に何か単語が付けられていたような気がするが今のウェンディにはそれが何と言われたのだか聞こえなかった。  
その代わりに耳には隣室の窓をうち割るガラスの音と、今では爆音となってはっきりとそれと解るヘリコプターのローター音が聞こえてくる。  
そして仰向けになった視界に映るホテルの部屋の天井に割り込むような形でこちらを見おろす読子の顔が飛び込んできた。  
目を涙で一杯にしてそれを眼鏡から伝わらせウェンディの顔に雫として滴らせながらその泣き顔で何かを懸命に叫んでいる。  
 
そうですよね・・・彼女は心の中でそうジョーカーに向けて笑いかけた。  
こうすれば確実に読子はここに足止めできる。どうして分はそれを考えつかなかったのだろう。それにしても・・・ずるい人(笑)  
最後の最後まで私の身体を・・・私をこんな風に使うなんて・・・  
 
「ウェンディさんっ!ウェンディさんっ!ウェンディさんっ!  
 しっかりして!今、救急車が来ます。救急車が来ますからっ!」  
 
聴力が少しだけ回復してようやく読子の声が聞こえてくるようになった。でも・・・何て事だろう。この人は・・・・  
彼女の目に映る読子の姿は4年前に別れた時と全く変わりない姿に見えた。  
私は・・・私はこんなに変わってしまったというのに・・・  
ウェンディは最期の力を振り絞ってその読子に話しかけた。この人には伝えておかなければならない事がある。  
 
「ジョーカー・・・さんが・・・ジェントルマン復活の為の・・・鍵を握っているんです。  
 彼は利用できるつもりでいるけど・・・あの方がそんなに簡単に・・・操られる筈ない・・・  
 復活すれば必ず・・・大英図書館を元の姿にしてくれる筈・・・  
 
 読子さんお願いです。大英図書館を再建して下さい。  
 大英図書館を・・・昔の私達の居た頃の・・・楽しかったあの頃の大英図書館に・・・」  
 
「もう話さなくて良いですからっ!ウェンディさんっ!」  
 
涙ぐんだまま血相を変える読子の表情から自分が今どんな状態であるかが解った。  
ウェンディは読子に精一杯ほほえんで見せた。昔どおりの自分の笑い顔に見える事を祈りながら。  
 
「読子さん・・・読子さんってば・・・非道いなあ・・・非道すぎます。あんまりですよ・・・  
 4年も・・・4年間も・・・いったい何処に行っていたんです?  
 
 探しても・・・探しても・・・見つからないから・・・  
 だから・・・こうして・・・わたし一人っきりで・・・・・・」  
 
「ウェンディさんっ!ウェンディさんっ!ウェンディさんっ!ウェンディ・・・さんっ・・・・・・!ウェンディ・・・・・・さぁんっ・・・・・・(泣)」  
 
そしてウェンディはそのまま息絶えた。大英帝国図書館特殊工作部元スタッフ見習い、ウェンディ・イアハートのそれが最期の姿だった。その顔はかつての少女の笑顔のように見える。  
 
 
 
部屋にはただ一人、読子・リードマンだけが残された。  
ウェンディの傍らにぺったりと座り込み、目から溢れさせた涙を眼鏡に伝わらせ、滝のようなその雫を床に横たわるウェンディの顔に滴らせて。  
 
隣室のジョーカーが脱出した後の破られた窓から、夜の外気が部屋に吹き込んでくるのが感じられる。  
それが床に横たわるウェンディの額の金髪を揺らしてその笑顔を濡らす読子の涙を乾かしていく。  
ウェンディの笑顔を見つめ続ける読子の耳に、その夜の風に乗って遠くからファンファーレが微かに聞こえてくるような気がした。  
それは式典に使われる大英帝国図書館のテーマだった。  
 
読子・リードマンはウェンディの笑顔に心の中で別れを告げて立ち上がった。ロングコートが夜の風を受けてひるがえる。  
彼女の大切な人達はみんな彼らがこうして奪い去っていく。  
今、ウェンディさんを・・・そして・・・あの人を・・・それに、今になってまたナンシーさんまで・・・・・・  
 
彼女は決意を胸にコートの裾をなびかせて足早に部屋を立ち去り、夜の街へと消えた。  
 
「ウェンディさん・・・ごめんなさい・・・・。わたし・・・わたし・・・  
 あの人達を許せません。  
 大英図書館なんて・・・大英図書館なんて・・・クソ喰らえです・・・・・・」  
 
と涙ながらに呟きながら。  
 
 
 
 
 
 
 
(終わり)  
 
 

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