「10代目!明日の夜、俺と一緒に祭りに行きませんか」 「祭り?」 「はい!隣町でやるらしいんですが、花火もあって結構大きいみたいっスよ」 「へぇ〜・・・じゃあ行ってみようか!あ、山本も誘って・・・」 山本の名前が出た途端、獄寺の眉間に皺がよる。 「あー…、んと、山本は部活で忙しいか。・・・二人だけで行く?」 上目遣いで獄寺の様子を伺いながら聞いてくる。 「はい!それじゃあ明日の夕方お迎えに上がりますね」 「うん、わかった」 (よっしゃ!初めてのデートだ!) 紆余曲折を経て、晴れて付き合うことになった獄寺とツナ。 さて、そんなわけで獄寺と祭りに行く約束をしたツナだが、約束の日は朝から大忙しとなっていた。 『全く、手の掛かる子ね』 と言いながら、心なしか楽しそうに着飾りだしたのだ、オレを。 「ねぇ、ビアンキ。オレ別に浴衣じゃなくて普通の格好がいい・・・」 「駄目よ。私が選ぶ格好で行きなさい」 まるでこちらの意見を聞いちゃくれない。 「10代目!お迎えに上がりましたよ〜」 「あら、良く来たわね、隼人」 「!げっ、あ、姉貴?!」 愛しい恋人を迎え来たのに、予想外な危険人物が出迎えてくれて危うく逃げだしたい衝動に駆られる。 「待ちなさい、隼人。まさかこの子を置いて行く気かしら?」 「!んなわけねーだろ!」 「そう、それは良かった」 「?どういう意味だ??」 「ふふふ、それは見てからのお楽しみよ」 獄寺には全く理解の出来ない話を一人楽しげにするビアンキ。 「ほら、いつまでそうしてるつもりなの??早く出てらっしゃい」 ビアンキがそういうと、廊下の奥から10代目がオズオズと歩いてくる ・・・か、可愛すぎる!! ツナは浴衣を着ていた。紺色の生地にに所々、白い蝶が描かれている。 「ビ、ビアンキ〜。やっぱり女物の浴衣なんて着てるから、獄寺君がビックリして固まっちゃったよ」 10代目の言葉にハッとなり、我に返る。 「っ、10代目!とても可愛らしいです!!」 「可愛いなんて言われても嬉しくないよ・・・」 照るているのか、本当に恥ずかしいのかツナは顔を赤くして抗議する。 「でも、どうして女物の浴衣を?あ、いえ、似合っているのでオレは構いませんけどね!」 「ビアンキがボンゴレのボスともあろう者が、そんな人込みの多い所に行くなんて危ないから ビアンキ一人でも手に余るというのに、リボーンまで関わってきたとはあってはツナに残された道は大人しく諦める以外はない。 「それで、私がたまたま夏だからと取り寄せていた浴衣があったから着せてみたのよ」 ツナはもう完全に諦めたのか、困った顔で笑っている。 「そんな事よりあなた達、時間は大丈夫なの?」 「あ!・・・花火まで余裕はありますが、少し急ぎましょうか10代目」 「うん、行こうか。じゃあ、ビアンキ行って来るね」 ツナはカランコロンと鳴る下駄を履いて先に出る 「頑張ってあの子をデートに誘えたようだから、あの格好は私からのプレゼントよ」 ・・・ナイス、姉貴! 先に出ていたツナだが、浴衣のせいで歩幅が狭いのかすぐに追いついた。 「っと、大丈夫ですか?10代目」 「う、うん、ごめんね、ありがとう」 「いえ、10代目にお怪我がなくてなによりです。ですが、危ないのでゆっくり歩いてくださいね」 それと・・・と付け加えて、ソッとツナの手を握ってくる。 「?!」 「手を繋いでいたほうが、もっと安全ですからね」 ニコリと惚けそうになるほど綺麗に笑いかけてくる。 獄寺の今日の格好は、ツナと同じく浴衣姿だ。 甘く幸せな時間は早く過ぎてしまうようで、気が付けば祭りの喧騒が聞こえてくる。 「オレもこんなに混んでるとは思ってませんでしたよ。人にぶつかって転ばないように腕に掴まってください」 「え?う、うん・・・」 照れながらもキュウっと腕に抱きつくよう掴まってくるツナは犯罪的に可愛い。 「あ、獄寺君!射的あるよ!ほら、金魚すくいもあるよ!これ懐かしいなぁ・・・小さい頃良く祭りで食べたんだよなぁ」 「ふふ、10代目随分と楽しそうですね」 「わ、ごめん、一人ではしゃいじゃって・・・」 「謝ることじゃありませんよ。誘った甲斐がありましたそれにオレも貴方が楽しそうにしているのを見てると楽しいですよ」 ツナは照れたのか射的屋の方に走ってく。 「せっかくお祭りに来たんだから、目一杯遊んでいこうよ!」 「それもそうですね!10代目何か欲しいものはありませんか?オレの射撃の腕前をお見せしますよ!」 何だかんだと言って、獄寺も年相応にはしゃいで、屋台の食べ物を食べつつ色々と遊んだ。 「そろそろ花火の時間になりますね。ちょっとした穴場見つけたのでそっちに移動しましょうか」 「うん!あ、ちょっと待って最後にカキ氷買っていって良い?」 「オレが買ってきますから、10代目はそこで待っていてください」 そういうと獄寺はカキ氷屋まで走っていく。 「ねぇねぇ、どうしたの?待ち合わせ?それとも一人で来てるの?」 「暇なら俺達と遊ばねぇ?いい所に連れて行ってやるからよ」 ニヤニヤと下卑た表情で話しかけてくる。 「い、いえ、人を待っているんで結構です」 ツナがビクビクしながら答えると、途端に 「良いから来いよ。おい、お前らも手伝え!」 「おいおい、いくら自分好みだからって強引すぎんだろ」 「うるせーよ。こんなところで一人で立ってたら危ねぇから親切心で言ってやってるんだよ」 「お前が一番危ないっつーの」 ゲラゲラと笑う男達を前にして、ツナはただただ震えるばかり。 「・・・てめぇら、何してやがる」 押し殺したような声で眉間に皺を寄せた獄寺が、男に蹴りをいれたのだ。 「ご、獄寺君!もう良いから!オレ、何もされてないからもう止めてあげて!!」 「ですが、こいつら10代目に…」 「駄目!それより花火始まっちゃうよ?早く行かないと、ね?」 目が据わって本気で人を殺しかねない雰囲気の獄寺を、何とか宥めて話をそらせようとする。 「・・・わかりました。おい、お前ら。今回は多めに見てやるが、次に目の前に現れてみろ。・・・殺すぞ」 視線だけで人を殺せそうな目で男達を追い払う。 「10代目、本当に大丈夫ですか?どこか怪我でも・・・。何もされませんでしたか?」 さきほどの男達に対する態度とは一転して心配そうな表情でツナに話しかける。 「大丈夫だよ、腕掴まれただけだから。」 「少し痣になってますね・・・。あ、そうだ10代目これどうぞ」 「あ、カキ氷・・・あれ?獄寺君これどこに持ってたの?今喧嘩してたのに」 「あぁ、手は塞がってましたから、足しか使ってませんよ。それよりちょっと失礼します」 言うや否や、ツナの痣になっている方の腕を持ち上げて、痣になっている部分をペロリと舐める。 「消毒はこれくらいで良いですね。じゃあ、10代目。そろそろ移動しますか」 何事も無かったかのように言ってくる。ツナは一人赤面し、頷くことしかできない。 反省 |