剣呑な雰囲気だった。 深雪はどうしても俺の携帯番号を知りたいのか、しきりにその話題を出す。しかも、俺の腕に掴み、自分の胸に押し付けている。 頼むから、健二がいる目の前でやるのは、やめてくれ。 健二も何か言えよ、と思って振り返ったのだが、さやかたちと呑気に喋っていた。 深雪の性格を理解しきっているらしい。こんな風になった深雪を止めるのはその原因を解決するしかない。つまり俺が携帯番号を教えればすむことだ。 さっきからほのかは何も言わずに、深雪とは逆の腕を掴む。 奈津美は不気味なぐらい大人しかった。深雪のことはどうでもいいのか、ほのかのことをずっと睨みつけている。いつ攻撃を仕掛けるかわかったものじゃない。 千夏とさやかは仲間外れになってしまった健二を慰めて、もとい、弄んでいるようだ。 校門を見ると、中学の時の制服を着ている女の子がいた。 「あずさじゃない」 そのさやかが校門の前に立っている生徒に声をかけていた。 「さやかさん。お久しぶりです」 間違いない。結城ほのかの妹、結城あずさだった。昨日の今日で現れやがった。 「こんなところで何してるの?」 「待っている人がいるんですよ」 「もしかして彼氏?」 「少し違います。ね、お兄さん」 俺は答えられない。 それでも、さやかは合点したようである。 「彰人。いつの間に知り合ったの?」 「遊びに行ったときに偶然……」 黙っているわけのもいかないので、正直に答えた。 「そう」 さやかはため息をつく。 全てが納得したような呟きだった。 ほのかは憂さ晴らしをするつもりなのか、嫌な笑みを浮かべながら、俺から離れていく。 なぜだろう。 ほのかが離れていくだけで、ホッとしてしまう。 「木野崎先輩にあずさをプレゼントしちゃいます」 あずさをさやかに向けて押し出す。 「いらない」 即答だった。本当に嫌そうな顔をしているさやかだった。 「残念だね。あずさ。両刀の見せ所なのに」 もうあずさについて何も言わないことにした。両刀だろうが、好きにしてくれ。 「で、姉の彼氏を待っていたあずさは何の用なの?」 ほのかは少しぴりぴりしていた。原因は……考えるまでもないか。やっぱり深雪だろう。その上、あずさの登場したものだから、余計に機嫌が悪くなっていっている。 「彰人。どういうこと?」 深雪の質問に、奈津美と健二が俺を見る。 千夏はすべてを知っているらしく、さやかの隣にずっといる。 「ほのかの妹で、中学3年だって」 「そうじゃなくて、あの子、サゾでしょ」 なんでわかるんだよ。 「……ああ」 「もしかして」 深雪は声を小さくして、俺だけが聞こえるようにした。 「やられた?」 「……」 沈黙が全てだった。 「だろうね。あの子、彰人に憧れているみたいだから。それに喧嘩なら彰人が勝つかもしれないけど、格闘なら彰人は絶対に勝てないからね。どうせ無理やりやられたんでしょ」 「俺はノーマルだ」 逆レイプされたんでしょ、と言われているみたいで嫌だった。 「アブを付け忘れてない?」 「勘弁してくれ。俺の周りには普通の人はいないのか」 「いるじゃない」 指差した先に奈津美と健二がいた。 「奈津美さんは彰人とすると近親相姦になるけど、それ以外なら普通でしょ。健二は私が言うのもなんだけど、一般的な趣向の持ち主だから」 何も言わなかった。 「あれ? 奈津美さんともしちゃったの?」 「……って、それより、ほのかの妹のことを知ってるのか?」 とにかく話をそらしたかった。 「ちょっとね。いろんな意味で有名人だから」 「そうか」 それ以上、聞かない方が身の為のような気がしてきた。 「にしても、もてるね。彰人は。奈津美さんが可哀想」 「勘弁してくれ」 そんな俺の叫びはさらりと無視された。 「もてもてなんですね」 あずさは俺と深雪の会話に割り込んできた。 俺たちの中に入っても違和感がないぐらいにあずさは成長している。 逆に千夏や深雪の方が幼く見えるぐらいだ。 あずさは周りの人たちを見る。 「ハーレムじゃないですか。私もその中に入れてもらえます?」 冗談にしてはきつい。 あずさの場合、わかっていてやっているに違いないが、もう少し空気を読むことをして欲しい。 あずさは携帯を取り出す。 電話なんてかかってきたか? 鳴らなかったはずだ。 ジリリリリリ。 俺の携帯着信音、黒電話が鳴り響く。 そもそもこの携帯番号を知っている人は限られている。 一体、誰からだ。 『あーちゃん』 誰だよ。 ジリリリリリ。 ずっと鳴り続けているので、出ることにした。 「もしもし。どちら様ですか」 「お兄さん」 「はい?」 どこかで聞いたことがある声だった。考えるまでもない。その声は隣から聞こえているのだから。 「私もその中に入れてもらえるんですね。ありがとうございます」 俺は携帯番号なんて教えてないぞ。 それにさっきの『はい?』は疑問系だ。 「彰人!! 私に教えないくせに、どうしてそんな人に」 深雪が叫んだ。 次から次へとやっかいなことが増えていく。 「俺は知らないぞ」 「露出狂にそんな人、呼ばわりされたくないです」 あずさは言い放った。 しかし、あずさですら、深雪の露出癖を知っているみたいだった。 そんなに有名なんだろうか。 「なんですって」 こんなところで喧嘩は勘弁してくれよ。 下校する生徒たちが面白そうに俺たちを見ている。また余計な噂が広まってしまう。 でも、俺から深雪に移ったことにほっとした。 「街中で紅潮させて、目を潤ませ、ふらふらと歩きながら、いったい何してるんですか」 あずさは待ったなしで、どんどん言う。 「ばかじゃないですか。そんなにしたいんだったら、裸で歩いて、『私、セックスしたいんですぅ』て言いまわれば、誰だってしてくれますよ」 逆に誰もしないと思う俺だった。……だって、変態だし。 深雪は殴りかかりそうな感じだった。 まずい。 「有坂。やめろよ」 冷静になってくれれば、どうやっても勝てないことを思い出すはずだから、声をかけた。 「こんなサゾに言われたまま黙っている私じゃない」 効き目ゼロだ。 仕方ない。あずさをとめるか。 「ほら。年上に喧嘩を売らない」 「昨日から思っていたんですけど、一度も私の名前を呼んでくれませんね」 奇襲攻撃だった。 「そうか」 「ええ。お姉ちゃんの名前は何度も呼んだのに、私だけなかったですから」 あの時のことを言っているようだ。 困った。 どう答えていいのか、わからない。 「無視、ですか。昨日はあんなに可愛い声で泣いてくれたのに」 ……やめてくれ。 もう何も言わないでくれ、お願いだから。 奈津美はずっと黙り込んでいた。一番騒ぎ出しそうな人が一番大人しくしていたので安心しきっていた。 ちなみに深雪はさっきからずっとあずさを睨み付けている。 「結城あずさ」 千夏は今まで見せたことのないぐらい怖い声であずさを呼ぶ。 「何ですか、桜井さん」 わかっているはずなのに全く気にした様子がないあずさは平然と言い放つ。 というより、知り合いだったのか……。知らなかった。 「彰人君にもう一度手を出したら、私が許さないから」 「わかっていますよ。桜井さん。でも手を出さないとは限らないですけどね」 「千夏!」 さやかが珍しく千夏を止めにかかる。 千夏は掴もうとしたさやかの腕をすり抜け、あずさに襲い掛かる。 いつの間にか手には『スタンガン』を持っていた。俺たちは千夏がスタンガンを所持していることは知っていた。これには説明しきれないほど事情がある。その事情は……いや、ここで言うべきでないだろう。 それには流石に驚いたのか、あずさは一瞬反応が遅れたように見えた。 かわそうとするあずさに、それ以上のスピードでスタンガンを突きつけようとする千夏。 まるでコマ送りみたいにゆっくりと見えていた。 間に合え! 予測していたのか、俺の体はすぐに動いた。 スタンガンがあずさに当たる直前、俺は千夏の手首を握り締め、引っ張りあげた。 「何するの!!」 凄く攻撃的だけど、俺は無視した。 「だめ。こんなことで使わないで欲しい」 千夏は俺を見て、あずさを見て、そしてもう一度俺を見る。 納得はしてないが、どうやら諦めてくれたようだ。 千夏は力を抜き、俺に素直にスタンガンを渡した。 「あ、ありがとう。お兄さん」 「ああ」 「私がありがとうって言ってるんだから、もっと嬉しそうにしてくれてもいいのに」 「あのな」 「じゃあ」 俺の言葉なんて聞いてくれない。 あずさは何を思ったのか、抱き付いてきた。 俺は逃げようと下がるが、無駄だった。 「この怪力が……」 「そういうことを言う人はオシオキ」 あずさは俺にキスをしてきた。 必死に振り払おうとしているのだが、どうも身動きが上手く取れない。 しまいには舌を入れようとしてきたのだが、あずさはすぅっと離れていった。 あずさがいた場所をほのかの足が通る。しかも、遠慮なしに力いっぱい蹴り上げた足が、だ。 「わぁっ」 あずさを蹴ろうとした張本人はバランスを崩し、倒れるところを俺が支えた。 「ありがとう。埼君」 体制を崩すほどの勢いで蹴ったほのかに感服する。もし当たっていれば、痛いじゃすまないだろう。もちろん蹴った本人も。 「あずさ、後で覚えておきなさい」 結局、ほのかはその一言だけで終わらせた。 その後ろで、ふふふ、と笑うさやかと千夏の二人だったが、あずさは余裕の笑みを浮かべている。逃げる自信はあるらしい。 「千夏。スタンガンは使わない約束じゃなかったの?」 奈津美は咎めるが、奈津美の言葉に一番堪えないのが千夏だった。 「いいでしょう、別に。まさかあずさが彰人君に手を出すとは思わなかったけど」 強気モードの千夏になってしまっている。こうなっては止められそうもない。 「奈津美だって、嫌でしょう」 奈津美は困った顔をしたけど、何も言わなかった。 さやかも何も言わない。 千夏がスタンガンなんかを持つようになった理由を知っているからだった。だから言わないし、さやかが言わないからこそ奈津美は注意するが、その程度しか言わない。 だからと言ってこんな使われ方をするのなら、考えないといけない。 「千夏ちゃん。こんなことには使わないで欲しいな」 俺が言うしかない。 「はい。彰人君」 素敵な笑顔だった。 「この猫被りが」 ぼそりと呟いたさやかの声がばっちりと俺に聞こえた。偶然にも千夏には聞こえなかったようだ。 空気がよくない。 さっきから他愛のない話が続いているが、笑えるような状況でもなかった。 ほのかもあずさも、そしてさやか、千夏も普段どおりに見える。 それでも奈津美は黙ったままずっと一緒についてきている。 どこでどうなったのか、ほのかの家に遊びに行くことになってしまった。 深雪は行きたくなかったのか、その話題が出てきた時に別れた。 別れ際、『今日は痴漢プレイですか?』とあずさが挑発するものだから、また一悶着あった。 最後は『今日は何もしない!!』なんて言い放って、健二を引っ張っていった。 健二の落胆振りを見る限り、よっぽどの事をしようとしているようだが、その内容まで想像つかない。なにせ、街中をバイブやらローターやらをつけて歩くのが普通の深雪だ。 想像するのも怖かった。 結城邸にようやく着いた。 俺は何回も来ているから、その外見や内面で驚くことはないし、気持ちが落ち着かなくなるなんて事もなくなった。 だが、ここに初めてきた人は違う。 「初めて入ったけど……これは……」 さっきからあずさは見ている方が痛々しいほど怖がっている。 がっちりとあずさの右手を握り締めている千夏は興味津々で、きょろきょろしていた。 がっちりとあずさの左腕を抱えるように歩くさやかは何度か来たことがあるらしく、どこにも興味を示さなかった。 「ちょっとあずさを借りるね」 さやかはそのままずるずるとあずさを引っ張っていく。 「ご勝手に」 「ちょ、お姉ちゃん。助け……」 さやかに口を塞がれたあずさは抵抗する術もなく、どこかに連れ去られていった。そのまま千夏がついていったのが、気になるところだが、さやかがいることだし、悪いことにはならないだろう。 それにしても、ほのかは興味がない、又はなくなると淡白になることが最近わかってきた。 にしても、自分の妹なんだからもう少しぐらい心配してやったらいいのに、と思うのは俺だけだろうか。 「何か飲みますか?」 ほのかは俺ではなく、俺のすぐ隣にいる奈津美に言った。 「別にいい」 「埼君は?」 「貰おうかな」 「じゃあ、適当に持ってくから、部屋で待ってて。すぐに行くから」 「ああ」 「ちょっと待って。さやかたちがどこに行ったのか、わかる?」 「あずさの部屋でしょ」 「どこか教えてくれないかな?」 「いいですけど、一緒にいないんですか」 「嫌な予感がするから、いたくない」 「どっちにいても、変わらないと思うんだけど」 そんなことを言いつつも、俺と二人っきりになりたかったらしく、さっさとあずさの部屋を教えた。 「じゃあ、埼君。部屋で待っていてください」 奈津美は俺に一言も話しかけない。何があったのかは知らないけど、ここまで話しかけてこないのは不自然だった。 ほのかの部屋に入る。 落ち着かない。 落ち着かない理由はわかっている。 ほのかが俺と二人っきりになりたがっていたからだ。 別に俺だって、ほのかと二人っきりになるのは嬉しくないわけじゃないが、このあとの展開がわかってしまっているから、素直に嬉しいと感じられない。 「何、突っ立ってるの?」 ほのかはジュース2つとお菓子を持ってきた。 俺はそのジュースをじっと見る。 見たところで何かを入れられていたとしても、何もできないし、もしかしたら前みたいに自分自身に入れている可能性だって否定できない。 テーブルに持ってきたものを置くと、ほのかはドアを閉め、『ガチャ』と鍵をかけた。 ずっと疑問に思っていたんだが、なんで内側から鍵をかけることができるのか疑問だった。もちろん捻るだけじゃない。しっかりと鍵穴があって、ドアを閉めるのだ。このままでは俺はドアの向こう側に行くことなんてできない。できるとしたら、ほのかが持っている鍵を奪って、その鍵を使って開けるか、強引にドアを蹴破るしかない。しかし蹴破れないことに気づいた。このドアはこちらからだと引きドアだった。 手が震えてきた。 これが恐怖なのか、俺にはわからなかった。 「やっと二人っきりになれたね」 どうしてそんなに不機嫌なんだ、と言いたいのをぐっと堪える。わかってるからこそ、そんな質問に意味はない。 「ねえ、知ってた? この部屋は鍵をかけたら外側から開けられないから」 ゴクッ、と唾を飲み込む。 「ああ。来た時から疑問に思ってた。外側に鍵を開けるようなものがないのに、内側にだけ鍵穴がある。ずっと疑問だった。ドアを開けられないようにするなら、わざわざ鍵なんて必要ないだろ」 そんなものがあるのに、ほのかは俺としている時、鍵をかけなかった。だからあの時、あずさが乱入してきた。そう考えると、あの時のあずさの乱入はほのかの予定通りだったのかもしれない。 「それだと私の意志以外で内側から開けられちゃうじゃない」 「まさか。閉じ込める為か」 「どうして? 私だっているじゃない」 だからいいでしょ、という顔つきだった。 「これは閉じ込める為じゃないから。相手とずっと一緒の部屋で過ごす為のものだから」 どこかにおかしいところがあったような気がするが、気にしても仕方がないだろう。 それに俺だって、二人で過ごす時間もあった方がいい、と思っている。 ほのかはベッドに腰掛ける。そしてその隣をぽんぽんと叩く。そこに座れ、ということらしい。 逃げる動作をしようものなら、何をしてくるかわからない。 俺は警戒しつつ、隣に座る。 「何する気だ?」 結局、声に出せたのはこんな言葉でしかなかった。 何をしようとしているのか、なんてそれこそ無意味な質問だった。 「えっちなこと」 今日は乱入などされたら困るだろう。奈津美もいるし、さやかも、千夏もいる。だから鍵をかけたわけか。 だからといって、このままするわけにはいかない。 俺は逃げようと立ち上がる。 「いいの? ここで私、大きな声をあげるよ」 それは無意味だろう。たとえ聞こえても、鍵は開けられない。 そこには突っ込みはいれなかった。 「ほのか。今日はもうしたじゃないか」 さらに不機嫌になっていくのがわかる。 「埼君からしてもらってません」 いきなり俺の口を塞ぐ。 やる気がないことなんて、すでにわかっているのだろう。それでもほのかは強引に俺の口の中に舌を入れようとする。 俺は必死に離れようとしたのだが、すでに頭を抱えられている。 3分ぐらいだろうか。そのぐらいの攻め続けたほのかについに俺は折れた。 「んっぁ……ぃちゃぁっ」 ほのかは受け入れてくれたことが嬉しいのか、そのまま押し倒す。 こうなるから、嫌だったんだ。 すでに俺の股間を押し付けるように、そして微妙ながら動かしている。 なんか、毎回こんなパターンじゃないか。 「っぁん……ぃぁっ…」 俺が受け入れるだけでよかったのか、舌を絡ませていたのは1分もなかった。 口周りが唾液でべとべとになっていた。 それを吹き終わったほのかは俺を真っ直ぐ見る。 「埼君。みゆちゃんのって……私より気持ちよかった?」 見る、というより、思いっきり睨まれている。 「えっと、どっちかと言うと、ほ……」 「嘘をついたら、薬一緒に飲もうか」 意識が吹っ飛ばせるかも、なんて怖いことを平気で言う始末で、さらににこりと微笑んだ。 「正直に言えばいいんだろ」 俺は少し間を置く。 動悸が激しい。大きく深呼吸はできないので、小さく息を吸って吐いた。 「有坂……かな」 俺の正直な感想だった。 しかしなんでこんなことまで言わないといけないんだろう。少しだけ泣けてきた。 「埼君。別に埼君が他の女の人としてしまったとしても、私は埼君を責めないから。でも、その時何があったのか、私が知りたくなったら、教えてね」 嫌な汗が流れた。 下手するとそういうことを告白させるという変なプレイに走るかもしれない。 「あの時、責められた気がするんだが」 ぼそっと言ってしまった。 「あんなぐらい責めたなんて言わないでしょう。責めた、ということがどういうことなのか、知りたいなら今から体験しておく?」 「やめておく」 何されるか、わかったものじゃない。 「みゆちゃんはそういうことが上手だとはわかっていたんだけど、埼君の口から聞くとショック」 「有坂は男の誘い方が上手なんだよ。気分を乗せやすくするしね」 「気分って」 「やる前から気分が盛り上がっている状態というか、何ていうか……」 遠回りに言おうとしているのだが、なかなかうまくいかない。 「ムードを大切にしろってことなの」 ぎろりと睨まれた。 「はい。その通りです」 深雪もムードとは程遠かったが、男の誘い方がわかっている感じだった。まあ、意味合いは少しばかり違うけど、それを説明することができない。 ほのかなんていきなり挿入とか本当にありえないから。 いや、待て。 前のはそれが原因じゃない。 「なら、どうやってムードを作るの?」 ほのかは率直な意見を俺に求めた。 あの時、深雪にはあって、ほのかにはなかったもの。 ……わからなかった。 「さあ?」 そもそも雰囲気なんて無縁だからかもしれない。 「ふうん。なら、しょうがない」 ほのかの中で『何か』が決まったようだ。それが怖い。それに、しょうがない、の一言で諦めたほのかの潔さに唖然としてしまう。 「か、帰っていいかな」 余計なことを言ったと思った時には遅かった。 「そんなこと言うんだ。私はただ練習させて、と言おうとしただけなのに」 それだって、大問題だ。 ほのかは俺をベッドに座るように指示を出す。 これ以上抵抗する意味がないので、素直に従った。 「やけに素直じゃない」 「抵抗したほうがよかったのか」 「ううん。ただそれはそれでつまらないかな、と思っただけだけど、こうして素直に従ってくれる埼君もいいかな」 ほのかは気合が入ったようだ。 俺のベルトを外し、ジッパーを下ろす。 こうして冷静に自分のものを見るのは、あまり気分がいいものじゃない。 もちろん自分のアレは冷静な状態ではなかったのだが。 ほのかは俺の股間に顔を埋める。 そして躊躇なく、思いっきり口に含んだ。 ・・・ ・・ ・ それから10分後。 「……埼君。ごめん」 ほのかは痛々しいほど落胆していた。 これほど気落ちしているほのかは見たことなかった。 「ど、どうした?」 流石に俺は慌てた。 「舐め続けるのって疲れるんだね。次までに上手になるから、今回はこれでやめていい?」 「そうしてくれると、かなり嬉しい」 つい本音が出てしまった。 「気持ちよくなかったってこと?」 「あ……え、えー。あー、そのー」 「やっぱり、言わないで。いくらわかっていても、直接言われると、落ち込むから」 そんなことを言いつつ、自分でショーツを脱ぎ捨てている。 ポイっと放り投げたショーツはテーブルの真ん中に綺麗に落ちる。 「ほら。ね」 俺を寝転がらせ、膝立ちで俺を跨ぐほのかはすでにノリノリだった。 さっきの落胆はどこにいったんだ。 「ここに注いで。全部飲み込んであげるから」 すでにうっすらと濡れている秘部を見せつける。 俺はやる気がないのに、一人で勝手に盛り上がっているのがいけないのだと思うんだが、俺はもう何も言わなかった。これがほのかの『楽しみ方』なんだろう、と思うしかなかった。 「ほら、早く入れて」 もう言っていることがわけわからなかった。 だから前にも思ったけど、前座とかないのはどうかと思う。 ていうか、寝転がっている俺がどうやって立っているほのかにすればいいのか。そもそも寝転がっている俺の真上に立っている。 「どう入れるんだよ」 「起き上がって、押し倒すとか……。期待してないけど」 酷い言われようだった。 「ほら、早く」 そんなことを言いつつ、ほのかは自分で入れようとしている。 いや、もう何も言わない。 「ほら」 ほのかは自分の胸を手で揉み、腰を動かし始める。だが、いつもとより腰を振る勢いはない。 「埼君、いいよぉ。もっと、もっとぉ」 やけに声だけは大きかった。 「ほのか。わざとらしい」 「だめ? AVだとこんな感じなんだけど」 「そうなのか?」 「私が見たのは、そうだったけど、もしかして見たことがないの?」 答えろ、というのか。 「……ないけど、なんでまた」 少しばかり悩んだが、素直に答えることにした。嘘を言っても、仕方がない。 「ほら、雰囲気が大事、とか言っていたじゃない。だから、参考になるだろうと思って」 だからってAVを雰囲気の参考にするとは誰も考えつかない。 ……ん? 待てよ。もしかして。 「今までもそうだった?」 「どれが?」 たくさんあるのか。 「ん……じゃあ、俺の目の前でこうやって広げたりする、とか」 「うん。私が見たのは、もう少し控えめだったけど、どうせならガバっとやった方がいいと思って」 どうせならその見たとおりにやってほしかった。 恥じらいも減ったくれもないものに、過度の期待はしないで欲しい。 「私は同じことを二度するつもりはないし、見たことでも同じことはしないつもり」 「してるじゃないか」 現状を見てみろ、と言ってやりたい。 俺が下、ほのかが上。これが常だった。 「なら、聞くけど。埼君。自分からしないでしょう」 ここまできたら、するしないの問題じゃないだろう。 「こうなったら、上だろうが下だろうが、俺はする」 これは本音で、嘘なんてついていない。 「でも、だめ」 「なんで」 「私が下になったら、ここにしてくれないじゃない」 ほのかは自分の股間を指差す。 繋がってるんだから、もう少し羞恥心ぐらい出してほしい。 「前から言ってるけど……」 「絶対ではないけど、ほぼ大丈夫だから」 99%大丈夫だと聞いても、残り1%が、実はそれ以上の高確率で来る可能性を信じる性質だ。 「今日だけはだめなの。シーツとか汚れるといろいろとやばいから」 汚れる以前にシーツはすでに皺くちゃで、さらに汗とかで湿っている。 「外なんかに出したら、私、とんでもないことするから」 言ってることが無茶苦茶だ。 もうほのかの好きにさせるしかない。 なんで、いつもこうなんだろう、と思いつつ、俺はほのかを抱き寄せる。 ほのかの重みが俺に伝わる。 「埼君」 そんな俺にほのかはキスをした。 ほのかの部屋を出たら、偶然にもこちらも向かってくるさやかに出会った。 「お楽しみだった?」 からかい口調だった。 顔が赤くなっていくのがわかる。 「本当だったんだ」 騙された、と思った時には遅かった。 にやにやと笑っているさやかを見ていられなくて、視線をそらす。 今、部屋にいるほのかは着替え中である。 まだこっちに来ることはないだろう。 「彰人」 珍しくさやかに抱きしめられた。 ふんわりとした感触、くすぐるような感覚。そして少し心が温まるようだった。 だが、それも一瞬だった。 くんくんと匂いを嗅ぐさやかに嫌な予感がした。 「……お楽しみって、エッチだったの?」 あまりの声音に硬直してしまった。それは肯定していると同じことだった。 「ふ〜ん。そっか。私が気づくって事は、奈津美にばれるよ。ついでに千夏にもね」 怖いことを平気で言ってくれる。 「とりあえず顔を洗いなさい。その『顔』はやめた方がいいと思う」 その忠告のおかげか、奈津美にも千夏にも何かを言われることはなかった。 「結城」 すでにリビングで勝手にくつろいでいたさやかは、階段を下りてきたほのかに声をかける。 「何ですか」 流石に上級生相手ということもあってか、ある程度言葉遣いが丁重である。 いや、ほのかの場合、敵対心かもしれない。 「私は帰るよ。あずさは寝ちゃったしね」 寝た? 気になるところだが、ここは流しておくべきだろう。 「そう」 ほのかは気にした様子もなく、返事をする。 「なら、私も帰ろうかな」 この機を逃したら、帰れなくなりそうなのを悟ったのか、奈津美は立ち上がった。 そして俺もこのまま逃げ出すつもりだった。 「じゃあ、俺も」 「うん」 したあとのおかげか、ほのかの機嫌はよかった。 「夜、電話するね」 「ああ」 いつもは言わない科白だった。 そんな様子をさやかが睨むように見ていたし、奈津美はと言うと俯いてしまっていた。 「彰人君。私が先に電話するから」 千夏がそんなことを言って、一悶着あった。けれど、真っ先に止めにかかる奈津美が心ここにあらずな状態だったから、千夏を宥めるのに時間がかかってしまった。 ほのかと千夏に見送られる。 あんなに文句を言い合っていたのに、根本的なところは息が合っているようだった。 お互い、深く物事を考えないようであるから、気が合うのかもしれない。言いたいことを言って、それで喧嘩するようなことになれば、それはそれ。それが終われば、手を取り合うっていう仲……というほどではないにしろ、それに近いものがあるのかもしれない。 それにしても、一緒に歩く奈津美はさっきから全然喋らない。 その隣を歩くさやかも何も言わない。 だからといって、居心地が悪いわけじゃない……じゃないのだが、俺も声を出すことができなかった。 結局、何も喋らず、家についてしまった。 さやかは自分の家に帰ろうともせず、俺たちと一緒についてきていた。 「木野崎さん?」 「寄っていってもいいでしょう。それとも二人っきりがいいのかな」 流石に最後の科白には棘があった。 「だめなんて、言いませんよ」 「そうそう。彰人って断らないからね」 凄い棘ばかり俺に刺してくる。 ちくちくちくちくと痛かった。 俺は着替える為に、一旦部屋に戻った。 さやかが家に来る時は大抵、何かがある。 俺は心配になって、急いで1階へ降りた。 リビングから声が聞こえる。 「奈津美」 「なによ」 「そんなに構えないでよ」 「構えるに決まってるじゃない。彰人が結城の家で何をしていたのか教えてくれたの、さやかでしょう」 つまり気づく、気づかない以前にさやかが奈津美に教えていたということだった。 だけど、奈津美は俺に対して何も言ってこなかった。 「さやかって私の味方より彰人の味方しかしないじゃない。そんな人が今日に限って私の味方をするんだから」 「彰人ってかわいいから。思わずいじめたくなる」 「いつも千夏にいじめられているさやかが?」 「それは言わないで」 少しだけ嫌そうな顔をしたさやかだった。奈津美もそのことには深く追求するつもりなんてないようだ。 「いいけど、どうやって確認したのよ」 「久々に抱きつきたくなって……」 「それで抱きしめた、と。そうしたら『匂い』でわかったって?」 奈津美はさやかの言葉を遮るように言った。 「そんなところ」 「嘘でしょ」 一瞬の間だった。 「ばれた?」 それこそが嘘だと奈津美は見破るだろう。俺はさやかの性格がなんとなくわかるから、こんなことを思えた。 「本当だったのね。でも、よく抱きしめただけでわかったね」 「…彰人とは違う匂いがしたから。あと何か『いいことした後』って感じだったし、それに彰人なら表情見ればいつもと違うことなんてわかったから」 声しか聞いていないので、奈津美がどんな表情をしているのかわからない。 「よく見てるね」 「当たり前じゃない。私の唯一の楽しみだし。私は彰人の味方だけど、奈津美の味方でもあるから。どっちか優先しろ、って言われたら、迷わず彰人を選ぶけど」 「とても友人思いね」 「ええ」 はぁ、と奈津美のため息が聞こえた。 ここまで聞いておいて何なんだが、俺はこのまま聞いていては悪いと思い、立ち去ろうとする。 「それで奈津美。ひとつ言っておきたいことがあるんだけど、聞いてくれる?」 「嫌だと言っても、言うんでしょう」 「ええ。友人思いですから。『姉弟で恋をしたって、悲しみしか生まない』」 俺の足が止まる。 「なにそれ」 「そんなことないでしょう。現に悩んでいる」 奈津美は何も言わない。 本当のことを言われて、何も言えないのか、ただ何も言う気が起こらないだけなのか。 「彰人も聞いているよね」 「え?」 奈津美は驚いたような声を上げた。 「ああ」 どうやら、さやかにはばれていたらしい。 「私は姉と弟と恋をしたって、報われないことを知っているから」 否定したかったのは奈津美だろう。 だが、何も言えなかった。 それはさやかのことを知っているから。 もし、これがさやか以外の人が言ったのなら、奈津美は即座に否定しただろう。 奈津美は俯くだけだった。 「帰るね。彰人、送ってくれるんでしょう」 「わかりました」 奈津美を一人にしておくのは心配だったけど、『話したいことがある』という意味合いを読み取ってしまったので、断れなかった。 何かを言わなければ、と思ったのに、言葉が出てこない。そんな状況が数分続いたが、流石に俺が何も言ってこないところを見て、さやかから話しかけてきた。 「奈津美を見ていればわかるけど……」 さやかは言葉を選んでいるようだ。 だが、そのことに気づいたらしく、首を軽く振った。 「遠慮するような仲じゃないよね」 「はい」 「この際、はっきり言わせて貰うけど、彰人。どうして拒絶しなかったの」 「どうしてって……」 俺は言葉がそれ以上出せなかった。 そして、何と答えていいのか、わからなかった。 「奈津美は絶対に最後のところは一線を引くと思ってた。だから、逆に私は心配してなかった。いくら彰人が求められたら断れない、と知っていても」 さやかはふうっと息を吐く。 「ねえ、もしかしたら誤解してるかもしれないから聞くけど、やったの? もちろん答える必要はないから。言いたければ言って」 俺は答えられなかった。 それはつまり肯定しているようなものであった。 「彰人。私は考えてなかった。奈津美が彰人を求めるようなことはないって。でも、もしそのようなことがあったら、絶対に彰人は断りきれないこともわかっていた」 さやかはゆっくりと言葉を紡ぐ。 「奈津美は知っているけど、彰人にも教えてあげる。姉が弟に恋をして、結果、どうなったのか」 さやかの弟の話だった。 さやかは病弱だった弟の世話をずっとしていたらしい。 それがいつしか想い人となり、弟と一緒にいるのが辛くなった。なにせその弟は姉に恋愛感情なんて抱いていないのだから。 それでも構わない、とさやかは想いのすべてをぶつけながら、弟の世話をした。 弟は拒絶できない状態であるのに、弟には姉が全てだったのに、想いを抑えきれず、さやかは伝えてしまった。 身の回りの世話をしてくれるのは姉だけで、病弱で入退院を繰り返すのに、それでも一生懸命、世話をしてくれていたから。 だから、弟は受け入れた。 さやかもどこか弟は自分に恋愛感情を向けていないことを知っていた。 それでも気づいたら毎日のように、さやかは弟を求めてしまっていた。 1ヶ月ぐらいの間だけだった。 元々体が弱かったさやかの弟は病気にかかり、そのまま……。 俺は何も言えなかった。 さやかもそれを理解しているらしく、俺に何か返事を求めることもしなかった。 会ったことは二、三度だけだったが、姉弟の仲がよかったのを覚えている。 でも、そこまでの仲だったなんて、俺は知らなかった。 「言いたいことは言ったから。それでも彰人が奈津美を求めるというのなら、私は止められない。だけど、奈津美が求めるだけなら、彰人はそれを受け入れないで。もし、奈津美をただの同情か、姉ということだけで奈津美の想いに応えるのなら、私は何としてでもその関係を終わらせてみせるから。私と同じ想いだけはさせたくないから」 それに、とさやかは言う。 「姉弟で恋をするなら、両方が想っていないと、それこそ救われないから」 多分、さやかが一番言いたかったのはそれなのかもしれない。 ただでさえ傷つくことが多いのに、互いが想い焦がれていないなんて、悲劇以外何ものでもない。 「ありがとう。ここまででいいから。じっくりと考えて」 さやかはそれだけを言うと、さっさと帰ってしまった。 俺はどうすることもできず、しばらくその場に立ち尽くしていた。 次回予告! 千 夏「『同朋』の仲間は誰と誰?」 さやか「私と奈津美だけど、わからなかった?」 千 夏「だって予告の仕方が『おかしい』からわからないんだって」 さやか「みんなはこう言うよ。おかしいのは『お前だ!』。ぐはっ」 千 夏「このまま終わったら、私って本当にキ○ガイじゃない」 さやか「(よろめきながら)いきなりスタンガン攻撃だからね」 千 夏「あれは私じゃないの。よよよ」 さやか「本性でしょ」 千 夏「さやかが虐める」 さやか「いつも虐められてるのは私なのに……」 千 夏「だけど、『スタンガン』所持してる説明が何にもないじゃない」 さやか「そんなこと、やってられないってことでしょう」 千 夏「……」 さやか「……」 千 夏「説明して、お願い」 さやか「いいんじゃない? 女は謎が多い方が素敵に見えるから」 千 夏「ホント?」 さやか「そうね(違うけど)」 千 夏「何か言った?」 さやか「ううん。何も」 千 夏「にしても、私は本当に出番がなかった」 さやか「エッチシーンが唯一なのは私たち」 千 夏「暴動起こしていい?」 さやか「だめ」 千 夏「だって、あずさにすらあるのに、私たちがないってどういうことなの?」 さやか「どうって言われても」 千 夏「今回はあずさを部屋に連れ込んでからが面白いところだったのに、丸々カットってどういうこと」 さやか「彰人視点だからでしょう。彰人からは私たちの行動は見えないから」 千 夏「それなら私の視点でやってよ」 さやか「なんでよ」 千 夏「だって、あずさの泣き声で体が疼いてくるところなんて、もう」 さやか「最悪ね」 千 夏「さらに!」 さやか「まだあるの?」 千 夏「…………」 さやか「どうしたの?」 千 夏「結城ほのかって怖いね」 さやか「何を今更」 千 夏「そうじゃなくて、本当にギリギリの加減を知ってるっていうか」 さやか「ああ。そういうところ上手みたいだから」 千 夏「でも、あずさだとそれがないみたいで」 さやか「相手が怒るスレスレのところを平気で踏み込んでくるけど、それ以上は絶対に踏み込まない」 千 夏「……」 さやか「それが結城ほのかだから」 千 夏「だって」 さやか「もしかして、あずさの性癖のことを言ってるの?」 千 夏「そう、かな」 さやか「あずさは、どうしようもないぐらいにマゾヒスト。それぐらいはわかってると思ってたけど」 千 夏「え?」 さやか「あずさがああなったのは、理由は教えてくれないけど、多分、結城ほのかが原因だろうし」 千 夏「……」 さやか「そっか。千夏には言ったのか」 千 夏「何も言えないから」 さやか「それでいいよ。あずさは元々人に傷をつけられないから」 千 夏「いろいろ攻撃してくるけど、傷、怪我だけは絶対にさせない」 さやか「そう。だから、相手を傷つけることによって、自分の心も傷つける自慰行為。見ているだけで痛々しい」 千 夏「そうだったんだ。気づかなかった」 さやか「どうせなら、どっちかに徹してほしいんだけど、それだと自分が許さないんでしょうね」 千 夏「……って何でこんなクライハナシになってるの」 さやか「私たちが結城ほのかの話をするとクライハナシにしかならないでしょう」 千 夏「そうだった」 さやか「ということで、いつもの次回予告」 さやか「姉弟で恋をしたって、悲しみしか生まない」 千 夏「さやかは奈津美に向けて、本気で伝えた」 さやか「奈津美はそのことに気づいていたけど、気づかないふりをしていた」 千 夏「もう元には戻らない」 さやか「さらに仲良くなっていく彰人とほのかを見ていて」 千 夏「奈津美は決意する」 さやか「次回、11話『胸に秘める想いは闇の中』」 千 夏「『ねえ、最後に一回だけ……』」 さやか「こうご期待」 千 夏「また私の出番がなさそうな展開」 さやか「……もう諦めましょ」 千 夏「さやかは今回出番があったのに、私だけがないなんて」 さやか「スタンガン」 千 夏「私、怒る……」 さやか「あ、うそうそ。出番がなくて残念だったね(白々)」 千 夏「うきぃぃぃぃ」 さやか「ちんまくて胸なしより、背が高い胸なしの方がいいってことでしょう(にやり)」 千 夏「うきぃぃぃぃぃ!! いつか私だけで1話を埋め尽くしてやる」 さやか「その1話だけで全員スタンガンで感電させる話?」 千 夏「……お、面白そうだね(その時の快楽を想像して体が震えている)」 さやか「じょ、冗談なんだから、本気でやらないで」 千 夏「お後がよろしいようで」 さやか「だから、こんな終わり方って(以下略)」 |