■ caution ■ バレンタインの時に書いた『St.V.D.1994』の 続きのようなそうでもないような、妙なものですので、 お暇すぎな方のみ、読んでくださいませ(汗) |
白い日の贈りもの。
「ホワイトデーの思い出……?」
素っ頓狂な声で聞き返すわたしに。
彼はいつもの「クッ…」という小さな笑いではなく、
思い切り吹き出した。
「……おまえ、先月と同じ反応だな。おもしろすぎ」
掌に乗るくらいの、白いリボンが掛かった水色の小さな箱を指先で弄んでいた彼は、
頭を抱えるように無造作に前髪に手を差し込んで。
左右別々の色の瞳に、うっすら涙が浮かぶほど、笑っていた。
「笑いすぎ。ホント、失礼よね」
それほど気にしていたわけじゃないけれど、少しだけ怒った振りを装って、
プイっと横を向くと。
彼は手に持っていた箱をテーブルの上に静かに置いてから、
わたしの腕を軽く引っ張って、そのまま自分の胸の中に抱き込んだ。
背けていたわたしの顔を、軽く頬に手を当てて自分の方に向かせると、
「ごめんな?の反応があんまりかわいかったから、つい笑っちまって」
ジッと目を見つめたまま、彼はわたしの髪に指を差し入れて、
その指の間に絡んだ髪に軽く口付けた。
「なあ、機嫌直せって」
そもそも。
怒ってなんかいなかった。
けれど、どうしてか、わたしは、彼の不思議な色の瞳に本当に弱くて。
いつだって、少しも適わなくて。
どんな時も許してしまって。
そのことの方が、なんだか無性に悔しかった。
「……べつに、怒ってないもん」
そう言いつつ、本当は腹が立って泣きそうだったけど、なんとか踏みとどまって。
頬を膨らませ、唇を尖らせた。
不意に彼がわたしの頭ごと自分の胸にギュっと押し付けて。
「ああああ。そんな顔すんなって。俺が悪かったから。な?機嫌直してくれよ。
おまえに渡したいものもあるし」
そう言えば。さっきからわたしは。
彼が指先で弄んでいた小さな箱のことがずっと、気になっていた。
見るからに、女性へのプレゼントらしき箱だったし。
今この部屋には、彼とわたししかいなくて。
まさか、それがわたし以外の人へのプレゼントだったりしないとは思うけど。
もし、そうだったら、今度こそ本当にキレちゃうかも…。
そんなことを考えながら、彼の胸に埋めていた顔を、ゆっくりと上げた。
「渡したいものって?」
彼は、さっきテーブルの上に置いた箱の方に視線を流す。
「ああ。それ。開けてみろよ」
「…なんで?」
「クッ…なんでって、おまえ。お返しだよ、先月の」
「あっ……。そっか。それで、ホワイトデーの思い出とか言い出したんだ…?」
「ああ。まあ、その話はいいだろ。過去を気にしすぎても意味がないし。
変なこと聞いて、ごめんな?」
この上なく優しく目を細めて、髪を撫でてくれる彼の、
わたしに謝っているポイントが少しズレてるような気もしたけれど。
本気で悔しがって泣きそうになった理由なんて話しても、また笑われるだけだから、
教える必要はない…よね。
白いリボンを解いて、小さな箱をゆっくり開けると、
銀白色のとても小さくて、不思議な形をしたピアスが入っていた。
「わあ……かわいい。この形って……何かの羽、かな?」
首を傾げるわたしに、彼は満足げに笑うと、箱に手を伸ばし、
器用にキャッチを外す。
「ああ。天使の羽らしいぜ?」
少し照れくさそうにそう言うと、わたしの耳にそのピアスをつけてくれた。
そして、ふわりとわたしを抱き寄せて、耳元で囁いた。
「は、俺の最後の……だし、な」
彼とのこれまでの色々なことを思い出して、
また少し泣きそうになった。
─────『って、天使って意味なんだろ?』
いつか彼が言ってた。
名まえの意味がそうだとしても。
自分は天使だなんて思えないけど。
彼にとってだけでいいから。
両耳にひっそりと飾られている、小さな羽が似合う天使でいられたら、
少し、嬉しい、かな?
end
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これは、誰ですか?管理人さん。
アリ●スとか、ア●オスとか、たぶんそんな人のつもりなはず(汗)
脳が煮えすぎで、ちょっとと言うか、だいぶ気持ち悪いです。
ここ最近書いたものの中でいちばん恥ずかしいかも…(笑)
あまりにも恥ずかしいので、いつもより短めに仕上げてみました。
この人書くの、もう止めた方が良さそうです。