景陽前提・使令小話 ガクブル((( ;゚Д゚)))芥瑚編
作者134さん
こんな筈ではなかった。
断じて、こんな筈ではなかったのだ。
「あ、景麒、止めろ‥‥‥ッ」
‥‥‥‥‥‥‥‥自分の養育に、何かまずいところがあったのだろうか?
有能で優しく思慮深く、主によく仕え主からも大切にされる、そんな麒麟にお育てしたい。
そうだ。自分は、確かずっとそう考えてきた筈ではなかったか。
「ふふ‥‥‥美しく見せるのに、衣や飾りは要らないのです。何一つ纏わぬお姿こそが主上の美‥‥」
「な、何言ってるんだ、ぁああッ触るな撫でるな舐めるなあああああ!!!」
陶酔している麒麟に、陽子の言葉は届かなかった。
こんな‥‥‥こんな筈では‥‥‥‥
煩悩全開で、うら若い主を押し倒して剥くような絶倫麒麟になんて、そんな、そんな。
(け、景麒ーーーーーーーーッ!!!)
芥瑚は、主の影の中でへなへなとへたりこみそうになっていた。
景果が孵り、尊く清らかな、その幼い獣を初めて腕に抱いた時の感動は忘れられない。
人型を取れるようになった景麒が、立って歩いた時は涙ぐんでしまった。
まだ上手く回らぬ舌で、芥瑚、と名を呼ばれた時の、あの愛おしさ。
何とか初めての折伏に成功した時には、さも自慢げに珍しい笑顔を見せたものだった‥‥‥‥
今は遠い美しい思い出が、悄然とした彼女の脳裏を駆け抜けてゆく。きらきらと生まれたての若星の
ように輝き零れ出すその光景の、何と幸せそうなことか。
(ああ‥‥‥あの頃は幸せだったわ‥‥‥‥)
そして、酷くもその残像に重なる麒麟という名のケダモノ‥‥‥‥
衣を引きちぎるように女王を剥く景麒の、その表情が程良く鬼畜だったりして芥瑚は更に鬱々とする。
そんな女怪の心情も知らず、景麒は解いた色とりどりの帯で陽子の裸身をきつめに縛り上げた。
「あぁ、そんな、お願い止めてぇ‥‥‥ッ」
帯がところどころ食い込んで、むちりと若く柔らかな肉を盛り上げる。そこまで終えると、身動きが
取れず悶える陽子を鑑賞するべく彼はぞんざいに胡坐をかいて座った。
その顔は確かに幸せそうではあったが、やはり、間違いなく変態めいていた‥‥‥
(‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥)
もう既に忠告を諦めている芥瑚は、ふと自分を気遣うような、慰めるような控えめな気配を感じて
神経を研ぎ澄ます。
「彼」は終始無言だったが、確かに芥瑚に近づいてきているようだった。
(ああ、冗祐‥‥ありがとう‥‥‥)
お互い苦労するわね‥‥‥という一言は呑み込んで、麒麟の影の中、芥瑚はひっそりと涙を流した。
→驃騎編