風邪ひき桜さん看病大作戦 ユウヒツ作



 ※このお話は私的セイバーエンドです。まあ、簡単にいうとセイバーが何故か帰ってきて、さらに凛にはランサーが。桜にはライダーがついてます。そして、士郎の屋敷にはセイバー、凛、桜、イリヤ、藤ねえ、ライダー、ランサーが一緒に住んでます。なお、セイバーはM町にあるТ家の屋敷でメイドのバイトをしてます。



 桜が風邪を引いた。自分の不調はギリギリまで隠し表に出さない。それが悪化を招いた。
「では、桜。大人しくしてるんだぞ」
 士郎はベットに横たわる桜にそう話し掛ける。制服姿に身を包んでいる。既に藤ねえと凛は先に学校に向かっている。ギリギリまで士郎は桜を見ていた。
「はい。ごめんなさい先輩」
 少し儚げに力ない口調で桜は言った。
「いいんだ。今日は早く帰るから。バイトも休むしな。じゃあ、ライダー。桜の事は頼んだぞ」
 後ろに控えているライダーに士郎は話し掛ける。
「はい。任せてください。私の全身全霊込めて看病します」
 とてつもなく力強い返事が返ってきた。ちなみにイリヤは学校。士郎達と同じ学園に一年生として通っている。セイバーはバイトのため朝から出かけている。「帰りは遅くなります」とのこと。ランサーは「今日こそジジイと決着つけてやる」と藤村の家に出かけた。将棋でこてんぱんにやられたのが相当堪えたのだろう。彼は普段はパチンコなど自堕落な生活している。
 そういう訳で平日の士郎の屋敷には桜とライダーしかいない事になる。
 そして、それがあのような悲劇(喜劇)を生み出したのだった。

 横たわっていれば多少は楽である。しかし、辛い事は変わりない。頭の中に濡れた重い綿が詰まっているかと思うほどぐらぐらする。四肢の関節に痛みと熱が走り、鼻やのどがやすりがけされたかのようにひりひりする。辛いし気持ち悪い。久しぶりに感じる自然の体の不調。しかし、嫌ではない。むしろ、喜びを感じる。
 間桐にいた頃は風邪ひとつ引いた事は無かった。理由は言うまでも無い。蟲に全身を蝕まれていたために起きたささやかな恩恵。歪んだ自分の体。しかし、開放された。結果が風邪を引けるようになった体。戻れた。普通になれた。──それでも汚れた傷痕は拭えず残っている。
 ああ、そんな考えがグルグル走る。眠くはない。医者に行くわけは行かない。間桐の人体改造による後遺症のひとつで普通の薬が悪影響を及ぼす事があるという。そのため、風邪を治すためにはただ、こうやってゆっくり休むほか無いのだ。

「サクラ、よろしいですか」
 士郎達が出かけてからどれくらい経ったのだろうか。ライダーがノックして入ってきた。手にはお盆。その上に大き目のコーヒーカップが乗っている。
「サクラ。あなたは昨日、今日とろくな栄養物を摂取してません。それではいけません。私が民間療法に基づき飲み物を作ってまいりました。これを飲んで栄養をつけて下さい」
 風邪を引いて確かに食欲は減退している。昨日の夜は煮込みうどんを半分程度。朝はおかゆ(オカカに梅干。それと卵を半分溶かして)を一膳ぐらいしか食べてない。正直、何も食べたくはなかった。ただ、咽喉は少し渇いている。ライダーの心遣いに嬉しく思いながら、
「ありがとう。ライダー」
 といってお盆を受け取る。──そして、固まる。
「なに……これ」
 コーヒーカップの中身及び匂いをかいで目が見開く。黒い液体。何か赤い欠片が所々浮いてる。熱い液体。湯気とともに不快な匂いが立ち込める。どういえばいいか。分からない。
「ホットコーラです。海外ではこれを飲んで風邪を治すそうです」
 事実である。香港や東南アジアでは熱く煮込んだコーラにしょうが汁やレモンなどを入れて飲むという。それは桜も聞いた事はある。ただ、こんな不快というか奇妙な匂いはしなかったと思う。
「…………何を入れたの。しょうがやレモンだけでないでしょう」
 桜の質問にライダーは、
「はい。それだけでは栄養が足りないと思い、納豆、卵、ニンニク、山芋、赤ワインにウォッカ。それに蜂蜜と梅干なども加えました」
 言葉はない。なんといえばいいか分からない。
「ねえ、ライダー。味見してみた」
 引きつったような強ばったような口調で桜は聞いて見る。
「はい。凄い味でした。しかし、『良薬口苦し』といいます。我慢して飲んでください。さあ」
 じっとコーヒーカップを見る。冷めればさらに不味くなる。これもわたしの為よね。ライダーが私を想って作ってくれたのよね。
 意を決して口に含む。想像を絶する味と触感が桜の咽喉を襲った。不味い。甘いとか辛いとかではない。そんなのは当に超越している。口では説明できない味だ。「凄い」という言葉は確かに適用されよう。だが、さらに恐るべきは触感だ。納豆、とろろのねちゃねちゃに梅干風味が加わる。それが熱い咽喉越しでぬるりと来る。吹き出さなかった事を全力で誉めてあげたい。
「さあ、どうぞ」
 ライダーはさらに進めてくる。たった一口でこの世のものとは思えない世界が垣間見えた。これを全部飲めば悟れるのではないか。そう思いながら一口、一口と飲んでいく。耐えるという事が日常だった桜だからこそ飲み干せたのだろう。ほぼ、空になったカップを見ながら桜はマキリの修行法に始めて感謝した。それが無ければ自分は壊れていたかもしれない。
 蛇足だが、セイバーがライダーの作った飲み物を一口だけ味見して「まだ、人間の飲み物ですね」と評した。現在セイバーは、とある屋敷に家政婦としてバイトに出かけている。そこにジンガイと呼ぶに相応しい料理の作り手がいるという。詳しくは語らない。ただ、セイバーはその事を語るとき「本国の料理は雑なだけまだマシですね」と遠い目になる。

 嵐のような地獄がさった後、桜は大きめの枕に身を預けた。全身が汗だくで気持ち悪い。確かに発刊作用は抜群だろう。もう、二度と飲みたくないが。
 少し休んでいるとライダーが再びノックしてきた。
「サクラ。お風呂の用意が出来ました」
 サクラにはそれが地獄からの使者のように聞こえた。そして、間違ってなかった。
 日本では風邪を引いているときにお風呂を控える傾向にある。しかし、海外では熱い風呂やサウナで一気に汗を流して直す方法がある。
 ……そう、確かにあるのだが。
「──ねえ、ライダー。ひとつ聞いていいかな。わたしにはお風呂なんか沸いてない──むしろ、氷がたくさんはいっていて、とっても、冷たそうに見えるんだけど」
 バスタオル一枚を身にまとって、桜は浴室に入り呆然とした。お風呂にお湯は張ってない。それどころかたくさんの氷がはいっている。体の芯の底まで冷えてしまいそうなお風呂だ。
「サクラ。世界の民間療法に水風呂で身体を冷やすというやり方があります。そうやって体の熱を下げるのです。大丈夫です。こうやって熱いシャワーも用意してます。身体を冷やしてあっためる。とても合理的です」
 ライダーはТシャツに短パンととてもラフな格好でいる。手には熱い湯を出しているシャワーを持ってる。確かに水風呂で風邪を治す方法はある。だが、それはとても危険で素人には勧められない。むしろ、現代では非科学的とされている。
「入りません。いくらなんでも入りません」
 さすがに桜は拒否する。憤然と身を翻し、浴室から出て行こうとする。
「いけません、サクラ。私は士郎からサクラの看病を任されています。彼が帰るまで少しでも病状を治さなければなりません」
 ライダーは桜の首根っこを掴むとポイと放り投げる。ついでに桜のバスタオルも剥ぎ取る。そのまま、どっぽーんと湯船に放り込む。「冷たーいー」桜は悲鳴をあげて出ようとする。バシャバシャと手足で水を掻く。そのまま、揚がろうとするが……
「いけません。お風呂は肩まで浸かって百数えてからです。いーち。にーい、さーん」
 無理矢理ライダーは桜の肩を掴んで水に押し付ける力の差はなんともしがたく、そのまま肩どころか顔まで水に浸かってしまう。
「あっぷ、ライダー、あなた、わたしを殺す気でしょう。げふっ、そうでしょう。そうといいなさい」
 じたばたしながら桜は言った。
「何を言うのです。私はサクラの身を心配し、心を鬼としているのです」
 水を引っかぶり、Тシャツが濡れて肌に張り付く。長い髪濡れて張り付く。眼鏡にも水滴がつく。
「ああ、いくつ数えたか忘れました。また、始めからです。ひとーつ。ふたーつ。みーつ……」
 その表情からライダーの真意は伺えない。本当に桜を亡き者にする気なのか、心配のあまりの暴走なのか。──結局、桜は百までの長時間、氷風呂に浸かっていた。いちおう熱いシャワーは浴びせてくれたが……。

 うーん、うーん。

 桜はうなされていた。なんだか病状が悪化したような気がする。悪気があるのかないのか分からない。ただ、ライダーの看病にはこりごりだ。
 だから、
 コンコン。
「サクラ、ちょっといいですか」
 ライダーの訪問にびくっ、と身を震わせたのも仕方の無い事かもしれない。
「なに。もういいわ。このまま休ませて。このまま寝かせてよ」
 ふとんに頭から被って精一杯の拒絶の姿勢を示す。
「そういうわけには参りません。私は士郎からあなたの看病を任されました。少しでも楽になる方向へ導かねばなりません」
 ……それはヤル気まんまんなのですよね。そうですよね。
 桜の昏い考えをよそにライダーは部屋に入り、桜の布団を引き剥がす。
「さあ、このねぎの出番です」
 ライダーの片手に白ネギが握られている。茎は綺麗に洗われ白く輝いている。
 ……まさか。
 よくある風邪のどたばた話の王道が脳裏に浮ぶ。
「いやっ。ライダー。冗談よね。そうよね。そうと言ってよね」
 じたばたとベットから逃れようとする。
「うん、何を言うのです。私はただ、民間療法でサクラの風邪を癒そうとしているだけです。それだけです」
 じりじりと迫ってくる。
「さあ、このネギを尻の穴に挿れて休んでください。そうすれば風邪なんてたちまち治ります。──そうですね、一日ほど挿れておきましょう。すっきり爽快間違い無しです」
 絶対にイヤー。
 士郎が学校が終わり帰ってくれば必ず桜を見舞いに来る。その時に尻の穴にネギをブッ刺しているのを見られたら……とてもでないが生きていく気力が無い。
「ええい。暴れないで下さいサクラ。これもあなたのためです」
 違う。それ、絶対違う。
 しかし、悲しいかな。人と英霊との差は圧倒的。桜は押さえつけられ着替えたばかりのパジャマのズボンを剥ぎ取られる。白桃のようなまぶしいお尻。そこに白いネギが迫る。

 ズボッ。

 ああ、先輩。私、汚れてしまいました。もう、二度と先輩の前に立てません。
 ぐりぐりと感じるネギの感触。少しずつ奥に差し込まれていく感触。否定する。あまりのショックに現実を否定してしまう。薄れゆく意識。桜は一人涙を流した。

 ガンッ。

 桜の治療(?)を続けるライダーに後ろから誰かが襲った。長い棒で強打。ライダーはそのまま桜に覆い被さるように気絶した。
「なーに、やってるんだか」
 ランサーだ。手にはゲイホルク。もう一方の手には携帯を握り締めていた。
「おい、俺だ。あんたの言ったとおりだったぜ」
 そのまま、誰かと連絡をとっていた。
 ベットの上で眠る二人。桜と重なり守るように眠るライダー。そのまま見れば美しい光景だ。──桜の尻に突っ込まれて、直立しているネギがなければだが。



 夢を見ていた。遠坂の記憶はほとんど無い。うたかたの泡のようにはじけて消える。母の記憶はほとんど無い。父の記憶も曖昧だ。ただ──姉さんとの記憶だけは鮮明になることがある。
 そういえば。
 ライダーの暴走看病。昔、あったような気がする。幼い頃の凛が風邪を引いた桜のために頑張り失敗しつづけた。そんな気がする。
 りんごを摩り下ろそうとして自分の指もすったのでしたよね、姉さん。
 今となっては他愛のない笑い話。
 そんな思い出。淡い泡がはじけて見える思い出。

「気が付いた」
 うっすらと目を開くと凛がベットの脇にいた。優しく微笑み、手を桜のひたいにあてる。
「うん。少し熱が引いたみたいね。ライダーのめちゃくちゃな治療法。少しは効いたのかな」
 うふふふと微笑む。実はあの後の後始末をしたのは凛だった。ランサーの連絡を受けると学校を早退し駆けつけたのだった。
「ライダー怒らないで上げてね。彼女、徹夜して調べていたの。悔やんでいたわ。『マスターの不調を察しできずに何のためのサーヴァントか』パソコンで色々検索してたみたい。まあ、それにしても少しやりすぎとは思うけどね」
 帰ってきてから、この部屋の光景を見て呆れた。浴室や台所も見て、さらにあきれ返った。
「……分かってます。ライダーはわたしを第一に考えてくれてます──たぶん。もしかしたら……」
 少し弱い笑みを浮かべる桜。何だかんだいっても朝よりは体の調子はずっいいい。──尻にネギを突っ込まれたからとは絶対に認めたくない。
「とりあえず、おかゆ作ったわ。朝から何も食べていないんでしょ」
 そう言って、凛は脇に置いてあった小さな土鍋からお玉でおかゆをお椀に入れる。さらに凛は小皿に分けてあった牛肉のそぼろ。香草もぱらりとかける。
「──中華風ですか」
 朝、士郎に作ってもらったのは典型的に和風だった。しかし、凛が用意したのは中華粥。立ち込める湯気からも胃を刺激する匂いが漂う。
「そうよ。鳥のスープを藤村の家に頼んでおいたの。それに米を入れて煮込んで作ったのよ。貝柱も入れておいたから美味しいわよ」
 本来、お粥は米から煮込んで作るものだ。普段、われわれが食べる炊いたご飯もお粥の一種である。ちなみに分類のひとつとして雑炊は炊いたご飯を煮込んで作るものという。まあ、蛇足代わりにどうぞ。
「美味しいです、姉さん」
 レンゲで一口。ふうふう息を吹きかけて口に入れる。熱い。始めの感覚はそれ。はふはふといいながらじっくり味わう。鳥のスープがにじみでる。味わうたびに感じる。柔らかく煮込まれた貝柱。アクセント代わりの牛肉のそぼろと香草。牛肉のそぼろの固い触感が舌を休めてくれて、香草のさわやかな匂いがさらに食欲を刺激してくれる。本当に新鮮な味わい。
 先輩のお粥も美味しかったけど……姉さんのお粥も美味しいです。
 一口食べるたびに温まる。ポカポカとしてくる。とても美味しい。姉さんの優しい気遣い。とても嬉しい。一口食べるたびに笑みがこぼれる。ああ、わたしは幸せなんだなと。間桐にいた頃はとても味わえない感覚。冷たく湿った穴倉。それに比べればここは太陽の輝きに満ちている。ああ、わたしは幸せなんですね。
 凛の作ったお粥をじっくりと味わって食べていく。食べるたびに体の調子が元に戻るような気がした。
「ご馳走様です。姉さん。美味しかったですよ」
 本当に美味しかったです。暖かいです。心の中で染み入るように呟いた。
「ふふ、いいのよ。今まで、姉さんらしい事はしてなかったしね。さっ、桜。今度は身体を拭いてあげる。汗でびっしょりよ」
 凛は用意してあった洗面器に電気ポットからお湯を注ぐ。設定はぬるま湯にしてある。
「さっ、脱いで」
 お湯にタオルを浸して絞りこむ。
「はい」
 桜もするりとパジャマの上着を脱ぐ。白く透き通った背中が露わになる。こみ上げる感情。我慢できない。
「姉さん?」
 すこし、桜は驚いた声を出す。凛が後ろから抱きついてくる。強く優しく。肩を抱きしめていく。
「ごめんなさい。今まで何も出来なくて。ごめんなさいね……」
 凛の声に湿り気が混じる。知ってる。凛は知ってしまった。桜を開放するため間桐の全てを滅ぼした。妄執の使徒とかした臓硯は滅んだ。桜に巣食っていた蟲も一匹残らず駆逐した。けど、……過去を消す事は出来ない。桜の受けてきた仕打ち。凛は残っていた文献、日記で知るたびに身が焼きつくほど、凍えるほどの思いが駆け巡る。魔術師としてではない。モノとしての扱い。たった一人の妹が受けてきたもの。駆け巡る思いは何か。説明できない。ただ、涙がこぼれる。ただ、涙だけがこぼれてしまう。
「……姉さん。わたしは幸せですよ」
 桜はポツリと言った。
「過去は辛かったです。けど、言葉に出来る。過去として語れる。それだけで幸せです。それに間桐の家にいたから先輩に出会えた。間桐の家にいたから平穏な今を幸せと感じられる。無駄ではないですよ、姉さん」
 ああ、優しく桜も重ねていく。そっと手を抱きしめていく凛の手に重ねる。

 何も言わない。

 二人に言葉は要らない。
 本当の意味で姉妹となれたから。

 間桐桜は人間になった。風邪をひける体となった。断じてモノではない。
 凛はぎゅっと拳を握り締める。
「さて、湿っぽいのは終わり。さっ、桜、体拭くわよ。ちゃちゃっと終わらせるわよ」
 全てを吹き飛ばし、いつもの凛になった。
「はい、お願いします」
 満面の笑みで応えた。
「……にしても、本当に大きいわねー。本当に血が繋がってるのかしら」
 桜の体を拭きながら凛はため息をはく。後ろから眺める巨乳。けっこうな迫力だ。
「えいっ」
 ひょいと手を伸ばして桜の胸を掴む。むにゅっとなんともいえない感触が手に広がる。
「ねっ、姉さん」
 桜は身を捩じらせて逃げようとする。
「なにするんですかっ!」
 しかし、引き剥がす事は出来ない。凛の手は自由に桜の胸をこねくり回す。
「いや、本当に立派だと思ってね。あっ、羨ましくなんかは無いわよ。ただ、肩がこるだろうな―とか、重そうだな―とか。そう思ってるだけよ。けど、でかいと感度は鈍いというのは嘘ね。もう乳首が固くなってきたもの」
 人差し指が桜の乳首を捉えてひねりまわす。たぷたぷと揉んでいく。いつしか両手で桜の胸を揉み始めてきた。
「ここ。ここかな。ほらほら」
 なんだか、スケベ親父とかしてくる。「男がでかい胸に憧れる理由がなんとなくわかったわー」とは後から述べた感想。
「あっ、ねえ……姉さんやっ、あんっ、だから──やめてください。はふっ」
 ひと揉みごとに桜は反応してしまい。力は出なくて体が熱くなっていく。
「……本当にやめてください」
「はうっ、さっ、桜……」
 桜が反撃に出た。後ろから身を乗り出して胸を揉んでくる凛。桜は手を伸ばして凛の太ももを撫でる。内側をじっくりと指の先端でつつき、撫でていく。つうーと付け根まで指が駆け上り、下がっていく。思わぬ攻撃に凛はたじろぐ。
「わたしだって、姉さんが羨ましいです。こんなに引き締まった手や足。とても欲しいです。知ってます? 姉さんの体操着姿。男子の目は釘付けですよ。姉さんのなま足でハアハア言ってるんですよ」
 ピアノを弾くように繊細に、大胆に。桜は太ももを撫で突いていく。鮮烈な感触は無い。ただ、じれったく、痒く疼く感覚だけが凛を刺激する。
「ふふっ。姉さんの方が感度いいでないですか。ほら、太ももを撫でただけでこんなに敏感に反応するなんて」
 爪を軽く立てて太ももを刺激し、指の腹で押してみる。柔らかくも反対に押し返していくみずみずしい太もも。触ってると小刻みに震えて反応していく。
「……くっ、桜──はあ」
 喘ぎながらも凛は桜の乳首をつまみ、ひねった。
「はふ、ああっ、姉さん……えい、お返しです」
 桜の人差し指が太ももから凛のショーツに突き刺さる。ぬぷっ。と、くぐもった水音がする。
「ああ、……桜、それ卑怯よ」
 桜の肩に頭を預ける凛。指は縦横無尽にショーツの上をかき回す。そのたびに凛の体はびくんと跳ねる。ぴちゃびゃと音がだんだん大きくなる。それでも凛は桜の胸から手を離さず揉み続ける。凛は桜の背中に体重を預けていく。
「あっ、いや。きゃあっ」
 桜の突然の嬌声。不意打ち。凛の指がすばやく桜の股間を襲う。つきたてられた中指がパジャマの上からぬぷぬぷと突き刺さる。ズボンの生地がみるみる染みていく。
「ふふっ、桜。体勢から見ればわたしのほうが有利なのよ」
 凛の言葉に偽りはない。手は胸を絶えず揉み、乳首をひねられて尖らせ、下も既にパジャマの上からではあるが豆粒を捉えこねくり回す。舌は首筋、耳を襲い嬲る。舌の先端が桜の耳の穴を刺激し、ふっ、と息を吹きかけられる。
「あっ、あっ、あぁっ、ああぁー」
 甲高く鳴いていく。ただ、与えられる刺激に全身が強ばっていく。ぴーんと伸ばされていく足。逃げようとする腰。凛を責めるのも忘れ、手持ち無沙汰に振り回される手。意識は快感に支配される。侵食される。強く強く刺激されていく。
「あーーーーーぁ」
 ひときわ大きく鳴くと一気に力が抜けていく。桜は凛の体に体重を預ける。
「イッタみたいね」
 凛の言葉に、
「ええ、少しイキました」
 潤んだ目で凛を見つめる。
「お返しです」
 とおもったら、すばやく体勢を翻し、凛に襲い掛かる。
「ちょっ、桜、ちょっと、待って」
 聞こえない。凛の反論抵抗無視して桜はキスをする。そのまま口内を嬲っていく。だんだんとろんとしていく。
「気持ちいいでしょう姉さん」
 桜の呟きに。
「……そうね、確かに気持ちいいわ」
 一息はいて答えた。
「もう一度、していいですよね」
 桜の問いに何も答えず、自ら凛は唇を押し付けた。
「桜、知っている? 風邪を治す一番の方法は他人に移す事よ」
「それと、汗を思いっきりかく事ですね」
 二人はくすくすと笑い、ひとつに重なっていく。離れていた姉妹の絆を取り戻すためのスキンシップを続けていく。

「桜、大好きよ」
「わたしもです。姉さん」



「まったく、二人には呆れます。裸のままで寝るなんて、何をしてたというのです」
 息も荒く、セイバーは二人に言う。手にした二つの体温計をぶんぶん振っている。
「……ごめんなさい」
「ああ、叫ばないでよセイバー。反省はしてるんだから。うう、頭痛い」
 あの後、スキンシップに疲れた二人はそのまま寝てしまった。毛布も蹴っ飛ばし裸で二人で。当然のことながら桜の風邪は治らず、凛も風邪を引いてしまった。
 二人は自室ではなく客間に布団をひいてセイバーに同時に看病してもらっている。そのほうが手っ取り早いからだ。
 ライダーの看病の申し出は桜が強硬に反対しセイバーが担当する事になった。
「まあ、いいでしょう。とりあえず、二人とも手を出してください。注射します」
 ──セイバーは奇妙な事を言った。
「はい? セイバー、何言ってるの」
「あの、わたし、体質で普通の薬はダメなんですけど……」
 二人の言葉にセイバーは小さく胸を張って、
「大丈夫です。こんな事もあろうかとバイト先から薬を貰ってきました。ただの薬ではなく自ら調合した者だとか。彼女の腕は本物です。安心してください」
 全然安心できない。セイバーの取り出した薬はなんというかドキツイほど鮮やかなオレンジ色とアオ色。闇夜でも自ら発光しそうなほど。
「なんなのよ、それー」
 凛の絶叫に、
「ですから、風邪の薬です。これを一本打てば、たちまちラクになれると言ってました。さあ、手を出してください」
 セイバーはにっこり笑って、二人に迫っていった。

 なお、確かに二人の風邪は全快した。ただ、二度とあの注射はいやだと口をそろえる。
 何が二人の身に起きたのかは謎である。



終わり。









次号予告

体は剣で出来ている。

 ついに激突。
 ついに実現。
 二人の二大ヒロインの壮絶なる死闘。

「真祖の姫よ。ここから一歩たりとも通しはしない」
「ふーん。面白いわね。たかだか英霊の分際でわたしを止めようなんて……いいわ、少し遊んであげる」

 セイバーとアルクェイドの壮絶なる闘い。その理由は?

 強い。バーサーカーのように圧倒的なパワーとスピードで押していくと踏んでいた。違う。アルクェイドはそんな程度ではすまない。一撃の鋭さはランサーに匹敵し、縦横無尽の攻めはライダーを凌ぎ、技の洗練にかけてはアサシンに並ぶ。そして内包する魔力はキャスターを軽く凌駕する。

 ──そんな、今のは一体。

「へえー、やっぱり、わたしの攻撃を読んでるのね。けど、意外だな。普通はこれに引っかかるのに」
 にやりと笑うアルクェイド。同時に振るわれる手。上段からの一撃。脇腹をなぎ払う一撃。眼前に突き刺さる一撃……読めない。否。同時に告げる直感。アルクェイドの次の一手を直感は同時に告げる。

 果たして、勝利の行方はどちらに。



「さあ、セイバーさん。口を開けてください。アルクェイドさんの潮を全部飲んでください」
 琥珀の指がさらに早くなる。クチャクチャと水音がする。アルクェイドの秘裂をかき回す指。大きく荒く息をつき、吐き出してうめくアルクェイド。その股間にはセイバーが舌を出して待ち構えてる。
「ああっ、あぅー」
 大きくアルクェイドが鳴くと秘裂から潮が吹く。それをコクコクとセイバーは飲んでいく。
「だめ、琥珀、だめー」
 さらに鳴くアルクェイド。琥珀の指は止まらない。さらに黄金の水を噴きだしていく。セイバーの顔面を濡らす。それすらも飲み干していく。

 アルクェイドに隠された恐るべき秘密。それは一体……

 特別企画「アルクェイド対セイバー。黄金対決」

 こうご期待。

終わり









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