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調査
エドワード・エルリックはこっそりと隠れていた―ロイ・マスタングの執務机の下に。 久しぶりに逢いに来たのだが部屋には誰も居なかったのだ。エドはロイを驚かそうと隠れた。 「早く帰ってこないかな…」 そう呟いた時、ドアが開く音がした。 部屋に戻ってきたロイは椅子を引いて気付いた。 「鋼の…そこで何をしているんだね?」 「何ってアンタを待ってたに決まってるだろ?」 その返答にロイは溜息を吐いて椅子に腰掛けた。 「決まっているかどうかは知らないが…今日は何をしに来たんだね?」 「久しぶりに逢ったってのにツレないなー」 エドは苦笑してロイの座る椅子を引き寄せた。 「っ…!」 服の上から足の付け根を撫でられて小さく息を飲んだ。 「大佐の浮気調査」 途端にロイは呆れ顔になった。 「暇でうらやましいことだな。私は今忙しくて」 「アンタは仕事してればいいよ。勝手に調べるから」 そう言うとフロント部分を寛げる。 「やめたまえ!私は仕事中だと…!」 「シッ…!誰か来る…中尉じゃねえの?」 エドの言葉が終わるか終わらないかのうちに、ドアがノックされる。 「大佐」 「ほら、な」 ロイはエドを一睨みした。 「入りたまえ」 ドアが開き、ホークアイ中尉が入ってくる。 エドはロイの様子を確認しつつ、その中心に触れた。一瞬だけ体が動いたが後は何の反応もない。 「大佐、こちらの書類にも目を通して下さい」 「まだそんなにあるのか…」 ロイは追加された書類の山に溜息を洩らす。 「大佐が毎日真面目に仕事をしてくださればこんなに溜まりません」 はっきりと告げられた事にロイは再び嘆息し、エドは机の下で笑いを堪えた。 「大佐、この書類に先に目を通していただけますか?」 「ああ」 手渡された書類を読んでいく。 エドは指で表面を軽く撫でていたが、いきなりパクリと咥えた。 「っ…」 「どうかされましたか?」 訝しげに尋ねられたロイは何でもないとばかりに書類にサインした。 「とりあえずはこれだけか?」 「はい。至急必要なのはこれだけです」 エドはやりとりを聞きながら舌を這わせる。 ロイは声を上げそうになるのを必死で堪えていた。 「大佐?大丈夫ですか?具合が悪そうですが…」 「いや、大丈夫だ。…これから、人に会うんだが、久しぶりで…緊張して、いるようだ」 何とか言い繕ったロイに中尉は頷いた。 「それでも書類は今日中にお願いします」 「分かっているとも」 はっきりと言った中尉にロイは苦笑して返した。 「では、失礼します」 そう言って中尉が出ていくまでがロイには酷く長く感じられた。 2008/10/20UP
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