紫煙の中で


 枯れた葉がひらりと落ちた。
「少尉ー!ハボック少尉ー!」
 ケイン・フュリーは東方司令部の敷地内を探し回っていた。
「もう…どこ行っちゃったんだろ…」
 今も咥えているはずのタバコの煙を目印にと思っていたのだが、 随分と寒くなった外は息も微かに白い。
 これだけ呼んでもいないという事は敷地内に居ないのかもしれない…。
 そう思いながら中に戻った。
「…ハボック少尉の事だからどっかで女性と…」
「俺がどうかしたか?」
「うわっ!」
 ぶつぶつとぼやいていたフュリーの背後に何時の間にかハボックが立っていた。
「ん?どうしたって?フュリー曹長?」
「あ、いえ、その…」
 聞かれていたことは確実で…フュリーは言い訳を考えていたが思いつかなかった。
「冗談だ。別に怒ってねーよ。んで?俺を探してたんだろ?」
 ハボックは真剣に考えているフュリーを笑い飛ばした。
「あ、は、はい。大佐が呼んでらっしゃいました」
「うぇ…大佐が…?はぁ…しょうがねぇな。ならフュリー曹長、 悪ぃけど、これ、資料庫に戻しといてくれるか?」
 ハボックが差し出したのは3冊の分厚い冊子だった。
「いいですよ」
「悪ぃな。じゃ、頼んだぜ」
 ハボックは資料をフュリーに渡して去っていく。
 フュリーはその姿を見送って資料庫へと向かったのだった。


 ハボックは新しいタバコに火をつけながらドアをノックした。
「入りたまえ」
「失礼します」
 大佐であるロイ・マスタングの机の上は書類が山積みになっていた。
「仕事してるんスか?」
「む…失礼だな。見て分からんかね?」
「その山積みの書類を見れば誰だって聞くと思いますがね」
 ロイはちらりと書類の山に目をやると盛大に溜息をついた。
「書類が多すぎるんだ…。まったく、毎日毎日…」
「それも大佐の仕事ですよ」
「分かっている」
 ロイは止めていた手を動かし始めた。
「それで、なんで俺は呼ばれたんスか?まさか、これ手伝えってんじゃないんでしょ?」
「そう言いたいところだが私が書かなくてはならないものだからな。頼みたかったのはこれだ」
「は?」
 ロイの指差した先にはさっきまでハボックが持っていた資料の三倍ほどの資料が積まれていた。
「すまんが、それを資料庫に戻しておいてくれ」
 結局行き先は一緒らしいが…。
「へいへい。どうせそんなことだろうと思ってました」
「期待に添えたようで良かったよ。頼むぞ」
「了解です。んじゃ、失礼します」
 ハボックは資料を抱え上げて部屋を出た。


2005/12/11 UP

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