「俺をどうするつもりだ……」
「わかってんでしょうに。だいじょーぶ、オレが上になって勝手にやるから。女とヤってると思って黙って寝てろよ」
困惑するロフティに、スティルは笑って返す。
(……本気なのか。だが、クルセイダーの鎧は厚いし構造が複雑だ。ローグに外し方など解るまい)
そう考えるロフティの心にはまだ余裕があった。
しかし彼は忘れていた。スティルがローグであるからこそ、彼の鎧を剥がすことができるのだと。
「ストリップアーマー」
スティルの一言で、堅牢にロフティの身体を覆っていた鎧は辺りに弾かれ、転がった。
「ローグをなめたらいかんぜよ」
呆気にとられるロフティに、スティルは悪戯っぽく笑いかけた。
ズボンが下ろされはじめてやっと、あまりのことに呆然としていたロフティは正気に返った。
「……正気か、お前。俺とこんなことをしてどうなる」
「理由なんていいんだよ。今オレ、無性にアンタとヤりたくてしょうがないんだ。そういう『病気』だから」
そう言ってスティルは、ロフティの下着に手を掛けた。
ロフティの抵抗は無い。ひょっとして自分に呆れているのかもしれない、とスティルは思った。
だがもう止まらない。ここで止めたところで、元の関係に戻れるわけでもないだろう。
それならば、いっそ最後までやってしまおう。ロフティの身体の熱さを感じられれば、それで十分だ。
「結構デカいね、アンタの」
下着の下から現れたロフティ自身を見てスティルが嬉しそうに笑う。
「……馬鹿者」
ストレートなスティルの言葉に、ロフティは顔を赤らめた。
確かに普通より自分のサイズは多少大きいかもしれないとは思ったが、そのようなことは言ったこともないし言われたこともない。
「オレ結構上手いから、満足してもらえると思うぜ」
そう言ってスティルはロフティ自身を口に含んだ。
(なっ……)
ロフティは慌てた。今までやはり男、それもスティルと関係を持つということをどこか現実的に思っていなかったのかもしれない。
だが今となっては、これは明らかに性行為だと解る。本当に今から自分はこの少年と……
「やめろスティル、くぅ……」
激しい快感に、思わず声が出る。
(初々しい反応だなぁ。やっぱお堅いコイツのことだから、女にこんなことさせたこと無いんだろうなぁ)
自分の動作一つ一つに反応を返すロフティを見て、スティルは思った。
清廉潔白なロフティとて成人した男であり、同年代の男と比べては少ないほうではあるが全く女を知らないわけではない。
だが貞操観念の塊のような男が、自身を相手に咥えさせるようなことがあるだろうか。答えは否である。
「くぅっ……はぁっ」
恥ずかしい。ロフティはそう思うものの、次々と襲ってくる快感に抵抗することは出来なかった。
元々スティルは手馴れているのだ。経験の浅いロフティを翻弄することなど造作もない。
(そろそろ…かな)
ロフティ自身が口内で限界まで張り詰めていくのを感じ、スティルは彼自身から口を離した。
「…っ、はぁっ……スティル?」
激しい快感の波からようやく解放され、ロフティは大きく息をついた。
だが限界寸前で止められた自身が苦しくてたまらない。
もう何でもいいから、解放してほしい。ロフティは恥を忘れ、そう思った。
「ちょっと、待っててな……」
スティルはそう言い、受け入れる準備をするべく自らの奥へと手を伸ばした。
いつもは相手にやってもらっているんので、自分で準備をするのに慣れてはいないが、この際仕方ない。
元々自分が勝手に始めたことだ。ロフティにやらせるわけにもいかないだろう。
慣れない動作に眉根を寄せながら、スティルは思った。
「は…ぁっ、んんっ」
稚拙な指の動きでも快感を見出すことができるのは、慣れすぎた体の宿命だろうか。
内部が少しずつ押し広げられていくと共に、スティル自身も熱を持ち始める。
「お…またせっ」
スティルは再びロフティの上に覆い被さった。どこか熱に浮かされたような表情を浮かべながら。
張り詰めたロフティ自身に手を沿え、自らの入口へと導いていく。
「……いくぜ」
ぐっ、と内部へとロフティ自身を押し込んでいく。痛みと満たされることへの期待感が、スティルを支配する。
「んぅぅっ……あぁっ」
思ったとおりロフティの身体は熱くて、自分を満たしてくれる。
全てを収めきったスティルは満足感と共に、大きく喘いだ。
「く、うぅっ」
スティルの中は想像以上だった。絶えず締め付ける彼の内部に、ロフティは思わず声を出した。
自分が抱いてきた女の誰よりも心地よい。ロフティは正直にそう思った。
「へ、へへっ……さいこぉっ」
笑みを浮かべながら、スティルはロフティの上で動き出した。
さらなる快感へと、自分を導いていく動作。
それは自慰にも近かったが、それとは明らかに違うのが中を満たす心地よい熱の存在だった。
「っく……んんっ、あぁっ」
自らの上で喘ぐスティルを、ロフティはぼんやりと眺めていた。
(なるほど、これなら抱きたくなるのも解るかもしれない)
自分から淫らに腰を振る彼は、普段の明るい姿からは想像できない色気を放っていた。
熱に浮かされたように空ろで、それでいて潤んだ瞳は、男を誘惑するのに十分足りるように思えた。
だが、その瞳の奥に深い悲しみが見えるような気がして、ロフティはスティルを見つめ続けた。
(俺と交わりたいだけだと、こいつは言った。だがきっと違う。こいつが俺に求めているのは快感だけじゃない。
 快感だけなら、こんな悲しい瞳をするものか。……きっと、こいつは)
「ふ、うぅっ……アンタ、そろそろイきたい、だろ」
ロフティの思考を遮るように、スティルは喘ぎ混じりに言った。
「……限界だ」
「そ、か……オレも限界。アンタの咥えてた時から、ずっと興奮してて……んんっ」
スティルは呼吸を乱しながら、動きを早めた。自分とロフティに、さらなる快感を与えるために。
「イこうぜっ……一緒にっ」
「……っ」
スティルに締め付けられ、ロフティは熱を彼の中に吐き出した。
「うぅっ、あぁぁぁっ……」
それと同時に、スティルもロフティ自身を奥へと導き、激しい快感の中で達した。





……これで、終わったのだ。
二人の間に流れる、気まずい沈黙。それは、もう元の関係には戻れないということを示しているようだった。
汚してしまった。真面目で、誠実で、自分を認め、信じてくれたロフティを。
激しい後悔と罪悪感に、スティルは涙を流した。
「ゴメン……ゴメンな。軽蔑したよな、オレのこと。そうだよ、オレは淫乱なんだ。
 身体が疼くたびに相手を探して、あんな風に乱れるような、そんな奴なんだ。
 無理矢理抱かせるようなことして……本当にわりぃ……。もうアンタの前には現れないから……だから……」
「……勝手なことを、言うな」
涙まじりのスティルの言葉をロフティが遮る。
「……そうだよな、オレなんかの話、もう聞きたくないよな。ごめん……じゃあ」
「そういうことを言ってるんじゃない」
その瞬間、スティルの視界が回転した。それはすぐに、ロフティの姿で埋まる。
自分がロフティに押し倒されているのにスティルが気づいたのは、しばらくしてからだった。
「お前は勝手だ。人の話を聞こうともしない」
「えっ……?」
呆然とするスティルに、ロフティは柔らかく微笑んだ。
そして彼の脚を大きく開かせ、先ほどの情事の跡を残すその場所に、自身を突き入れた。
「うぁっ……! あ、あぁっ」
「……熱いな、お前の中は」
あまりにも急なことに、スティルは完全に混乱していた。
「あ、アンタ、どうしてっ……うぅっ」
「名前を、呼んでくれないか……スティル」
耳元で囁かれ、スティルの身体がぞくりと震えた。
(さ、さっきと全然違うじゃんか……なんでこんな攻め攻めしいんだよ、コイツっ)
さっきまでリードしていたはずの相手に内部を突かれて喘がされる自分を、スティルは信じられないと思った。
「ロ、ロフティ……んっ、あぁぁっ」
「そうだ……スティル」
(本当にさっきと違って……なんつーか、カッコいいかも)
自分を見つめるロフティの、さっきとはまるで違う精悍な瞳に、スティルの胸の鼓動が高まった。
「スティル……俺は思うんだ。本当に俺がお前と交わるのを嫌悪していたならば、下着を下ろされたりする前に抵抗していたと。
 お前と俺の体格差ならば、お前を跳ね除けることだってできたはずだからな」
「えっ……」
「きっと、俺は嫌ではなかったんだ。どこかでお前と一つになりたいと、そう思っていたんだ」
「……ロフティ」
「だから、今こうしてお前の中に入って、そして」
そっとロフティの手がスティル自身に触れた。
その手で、ゆっくりと硬くなりはじめたそれを擦り上げる。
「ひ…っ、や、やめっ、ロフティっ……」
「お前を心地よくさせたいと、思っている」
浅いところを突いていた自身を、ロフティはスティルの奥へと押し込んだ。
「うあぁぁっ……!」
「スティル……お前の欲しいものは何だ。身体を売って得る金か? 男に突かれる快感か? それとも」
ぐっ、とロフティはスティルの身体を抱きしめた。
「誰かに抱きしめられるぬくもりか」
「…………!」
ロフティの言葉に、スティルの目が見開かれた。


あぁ、そうか。オレ、暖かい腕に抱かれたかっただけなんだ。
あいつを失って、仲間の傍を離れて、孤独になって。誰の体温を感じることもなかったから。
……オレはただ、寂しかっただけなんだ。


「オレっ、オレはっ……はぁっ、……アンタのぬくもりが欲しいっ」
「そう、か」
ロフティはさらに、スティルの奥へと押し入った。
「はぁっ、前も……まえも触ってくれ、ロフティ」
「……言われなくても」
ロフティの大きい手が、スティル自身を擦り上げる。
先走りのぬめりを借りて手は滑らかに滑り、スティルを昂らせていく。
「くぅ……あぁっ、ぁあぁっ」
前からの刺激と、後ろからの刺激。
次々と襲い来る快感の波に耐えられず、スティルはロフティの身体に縋りついた。
「はぁっ、すげぇ…っ、アンタのが、おくまでっ……」
こんなに気持ちよかったことは今までなかった。
スティルは何人もの男に抱かれてきたが、ロフティの身体は最も心地よく、最も熱かった。
「く、はぁ……もう、もうだめだっ……ロフティっ」
「……ああ」
スティルの言葉に合わせるかのように、ロフティは彼を思い切り突き上げた。
「……う、あぁ、あぁぁっ……!!」
身体を大きく震わせ、スティルは達した。
震えるスティルを再び抱きしめると、ロフティも彼の中に熱を放った。





「ロフティ……アンタの腕の中……あったかいなぁ」
「……そうか」
「気持ちいいだけじゃダメだったんだ……オレ……」
「わかっている」
さらに強く、ロフティはスティルを抱きしめた。スティルの頬に、再び涙が伝う。
「……オレ、アンタの傍にいてもいいのか? オレ……迷惑かけちゃうだろ、アンタに。
 でもオレは……アンタの傍にいたい。アンタのぬくもりを、いつも感じていたい。
 アンタの腕の中が、今まで抱かれた誰よりもずっと心地いいんだ……勝手かもしれないけど」
俯くスティルの頭を、ロフティは軽く撫でて微笑んだ。
「勝手などではないさ。お前に出会えて、俺は変わることができた。
 元々の俺は、毎日を無難に生きてきただけだった。
 クルセイダーになったのだって、家族や周りに流されてその気になっただけだ」
以前聞かれた時にはっきりとは言えなかった、クルセイダーになろうと思った理由。それを正直に、ロフティは話した。
「だがお前に出会ってからは違った。
 周りの意見に逆らってお前を傍に置いたのだってそうだし、お前を求めて走ったりもした。
 俺はむしろ、お前に感謝しているんだ、スティル。傍にいて欲しいのはこちらのほうだ」
「……ありがとう、ロフティ」
今度はスティルが、ロフティを抱きしめた。
本当のぬくもりを手に入れた彼の表情は、今までにないほど晴れやかだった。





次の日の朝。二人は旅館で最後の食事をとっていた。
「……それにしても、さぁ」
「何だ。食事中に喋るな。行儀が悪いぞ」
「アンタって意外とムッツリだよな」
「…………!!」
ぶっ、とロフティが紅茶を吹き出した。
「うわ、キタネ」
「げ、げほっ……馬鹿者、いきなり何を言うかと思えば」
「いや、だってさぁ。最初にオレが乗っかってたときは経験少ないでーすって感じで大人しかったのに。
 オレを押し倒したかと思えば、あんなにガンガン……」
「……それ以上言うな……」
昨夜のことを思い出したのか、ロフティの顔が赤く染まる。
「何赤くなってんだよ。ムッツリのくせに」
「ムッツリではない」
「ムッツリじゃん」
「…………」
(言い返せない……)
確かに最終的に攻めたのは自分だし、抱きしめあってまったりとした雰囲気になるまでには何回かしたわけだし。
それどころか疲れが見え始めぐったりとなったスティルを攻め続けていたような覚えすらある。
それを思い出すとムッツリと言われてもロフティは何も言い返せない。
「ロフティに関する大発見その1。ロフティはムッツリ。
 その2。ロフティは意外とデカい。その3。ロフティは結構タフ。その4……」
「……もう好きにしてくれ……」
城の警備の任務を自ら降りて、旅館を出てスティルと旅をすることに決めたロフティであったが。
早朝から後ろに行くほど卑猥な内容になってくる『大発見』を大きな声で語り始めるような相棒に頭を痛めているのも事実であって。
(貞操観念というものを教育し直す必要があるかもしれんな……)
生真面目なクルセイダーと、奔放なローグ。二人の行く道には、まだ波乱がありそうである。
それでも二人は、出会えてよかったと思うことを止めないだろう。
ロフティは、周りの意見に拘るのをやめた。
自由奔放に生きることの楽しさを見つけることができたからだ。
スティルは、身体を売るのをやめた。
彼が本当に欲していたものを見つけることができたからだ。


互いにこんなにも大切なものを得ることができたのだから。
二人の絆は、途切れることは無いだろう。





『欲しいものはぬくもり』 完

















真面目な人と不真面目な人のカプでは、大体不真面目な人が受ける方に萌えます。
真面目な人が理性とか飛ばして攻めてるのが好きなのかもしれません。ムッツリな攻は大好物です(w
とはいってもスティルのように自分からのっかるような受を書いたのは初めてで、難産でした。
それに加えてえろシーンが上手く書けない(てかワンパターン)な私。本当に苦労しました。
そういうこともあってか、この小説は私の中で結構印象深いです。













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