短期間だがこれから2人が滞在するヴェトナムの高級リゾート地、
ダラットにあるこのホテルのスイートには、結婚祝いのプレゼントがいくつも届けられていた。
その中には気心の知れた友人たちからのものもあった。
「あ、これ野梨子からだ。こっちは可憐からだなー」
「こっちには魅録からのと、清四郎からのがあるぞ。お、これは美童からだな」
それぞれのプレゼントは、どれもその友人らしさを滲み出していて、2人はとても楽しくなった。
美童からのプレゼントを開ける前に、龍之介が中座した。
「ちょっとトイレ。先に開けてていいぞ」
「んー、わかった」
悠理は美童からだという白い箱を開けた。
そして、開けた途端、その中身に顔を紅潮させた。
・・・び、美童のやつぅ〜!!!
龍之介が戻ってくる気配を感じ、悠理は思わず、“それ”を隠してしまった。
「悠理、美童からのプレゼント、何だった?」
「んっ!?あっ、香水だったっ!ほらっ、これ!」
悠理は箱の中に一緒に入っていたピンク色の液体の入った香水の壜を龍之介に見せた。
「それだけ?もうちょっと箱、大きくなかったか?」
「こ、これだけだったっ!」
「・・・ふぅん」
悠理のかなり動揺気味の態度に、少し訝しげな表情を見せたものの、
龍之介はそれ以上聞くことはなかった。
その夜。
風呂上りのパウダールームでバスローブ姿の悠理は、美童が贈ってよこした“それ”を前に考え込んでいた。
・・・これ、どうしよう?
悠理の手にある“それ”とは、上品で繊細な雰囲気はあるが、
いかにも・・・なベビードールとタンガ。
香水も、イブサンローランの同じ名前のそれだ。
美童なりの洒落のつもりらしい。
これ・・どっちもスケスケじゃないかぁ!
しかも、このパンツ、どうやったって絶対お尻が丸見えだろ!?
つぅか・・・これ、マタんとこ、穴開いてんじゃん・・・何でだ?トイレで脱がないでもできるとか?
こういうの贈られるってことは、やっぱり新婚ってこういうのを着なきゃいけないってことなのか?
美童ってそういう余計なとこにはマメだからなー。
・・・だけど、
・・・龍之介、喜ぶかな、こういうの。
悠理は自分がこれを着て龍之介に抱かれる姿を想像してみた。
なんだかわからないが、そんな姿を想像するだけで頬が紅潮し、身体のどこかが熱くなっていくような気がする。
な、なんでだろ。こんなの、すんごく恥ずかしいはずなのに。
なのに・・・ちょっと着てみたいよーな・・・。
「・・・悠理?どうかしたか?」
風呂から上がったというのに、パウダールームからなかなか戻ってこない悠理に、
龍之介が寝室の方から声をかけてきた。
「う、うぅん、何でも無いっ!」
そして悠理は再び、隣の部屋にいる自分の夫に向かって、今度は少しもじもじした声を返した。
「部屋・・暗くして待ってて・・・」
悠理は意を決して、バスローブを脱ぎ捨て裸になると、香水を両手首と首筋に振り掛け、
タンガに脚を通し、薄紅色のレースに彩られたヴェールのようなベビードールに袖を通した。
胸の前を細いリボンで結ぶと、大きな姿見に映し出されたその姿は、
うっすらと、悠理の形や色を透かせて、裸よりも裸であるかのように見せていた。
悠理がそぉっと、バスルームのドアを開け、顔を出すと、
寝室は悠理が頼んだとおり、点いている明かりはベッドサイドだけで、
ぼんやりとした薄明かりの中、その大きなベッドの上で龍之介が悠理が来るのを待っていた。
「どうした?」
ドアから顔だけ覗かせている悠理に、
龍之介は大事な宝物を見守るような優しい眼差しで尋ねた。
そんな顔の前にいきなりこんな姿で現れるのは、やはりなんだか恥ずかしい。
悠理は顔の前で両手を合わせ、龍之介にお願いした。
「・・・ごめん、ちょっと、そっち見ててくんない?」
「ん・・?いーよ?わかった」
龍之介は、なんで?とも聞かずに、悠理がいる向きとは逆の方に顔の向きを変えた。
「これでいいか?」
「うん、それでいい・・・」
悠理がおそるおそる、ベッドの龍之介に近づくと、
不意に龍之介がこっちを向いた。
「うわっ、龍之介のバカぁっ!そっち見ててって言ったじゃないか〜!」
「まだダメだったのか?だけど、オレに見られないままで、一緒に寝るなんてできねぇぞ?」
「そうだけど・・・こっちにだって、心の準備ってものがぁ・・・」
龍之介は、悠理の姿を前に、ふっと嬉しそうに笑みを浮かべた。
「やっぱり、ベビードールだったんだな。美童のプレゼント」
「・・・気づいてたのか!?」
「香水の名前でうすうすとな。似合ってんじゃん」
「ホントか?変じゃないか?」
「ホント。その証拠に、それ、脱がせるか着せたままでするかどうか迷ってるところだ。
な・・・ちょっと回ってみて」
「回るぅ?」
「いーから、いーから♪」
悠理は言われるがままに、その場でくるっと回って見せた。
「・・・よし、着せたままだな。」
「え?」
「悠理、おいで」
「う・・ん」
悠理は、ベッドの上にパジャマ姿で胡座をかいていた龍之介の膝にちょこんと座った。
ベビードールからすらりと長く美しい脚が覗く。
その滑らかな肌が晒された部分をそっと龍之介の手がなぞる。
悠理は、両腕を龍之介の肩にまわし、その顎にくちびるで触れた。
2人のくちびるはまるで盲目の恋人たちのように、互いを捜しあう。
そして、やっと互いを見つけると、安心したように触れ合い、舌を絡み合わせた。
悠理の首筋からは、微妙な体温の上昇によって甘く包み込むような香水の方のベビードールが香り、
それに吸い付くように、龍之介はそこにくちびるを寄せた。
そして、龍之介の手は、ベビードールの隙間から忍び込み、そっと悠理の乳房を揉んだ。
「あ・・ぁ・・んっ・・・」
悠理がたまらず身を捩っても、龍之介のもう片方の手に腰を掴まれて、
悠理は逆に、龍之介の胸にしっかりと抱かれる形となった。
腰に当てられた手がだんだんとその位置を下げ始め、
ベビードールの後ろに入ったスリットから指を入れ、タンガの輪郭をなぞる。
悠理の身体の線にそって、その指は更に下がっていき、遮るものは何も無い悠理のそこに触れた。
・・・ぁ・・穴が開いてるのって・・そぉいうコトだったのかっ・・・?
あっ・・もしかして・・アレ・・もそこから・・・いれちゃうのかー・・・!?
ゃあぁぁぁぁんーーーっっっ!!!
悠理がようやくタンガの穴の意味を理解したのと同じくして、
指は躊躇無くそこに沈み、隠された部分を擦り上げた。
そこから悠理が感じているという証拠がどんどんと溢れ出していく。
所在無い悠理の手が龍之介のパジャマをぎゅっと握った。
勢い、ボタンがいくつか弾け飛び、龍之介の胸が顕わになった。
「おいおい、乱暴な脱がせ方をするヤツだなー」
「だってぇ・・・」
「やっぱ、脱がしちまうかな」
龍之介は悠理のベビードールの胸元で結ばれた薄紅色の細いリボンの先を口に咥えた。
そっと引かれたリボンはするすると解け、悠理の両の乳房が薄いヴェールの中から現れた。
その、つんと上を向いた先端に、ちゅっ、と口付けると、龍之介はベッドに悠理を横たえさせた。
ベッドに横たえされたものの、龍之介は悠理に何もしてこない。
すっかり身体に火を点けられてしまった悠理は内股を擦りつけながら、
嬉しそうに悠理を見下ろすだけの龍之介に訴えた。
「・・・ねぇ、次は?」
「んー?まだ。もうちょっとじっくり見たいし」
「・・・じっくりって、バカぁ・・何見てんだよー」
「何見てるって、そりゃ・・・」
「あっ、いいっ!言わなくていいっ!」
「なーんで?」
「・・・だって、すっごくエッチなこと言うに決まってるもんっ」
「・・・オレ、自分の奥さんがむちゃくちゃ可愛いなって、見てただけなのになー・・・」
「・・・そーなの?」
「だってさ、いくらプレゼントだって言ったって、別に着たくなかったら着なくてもいいのに、
それでも、着てくれたのって、オレのためだろ?オレが喜ぶと思って」
「・・・うん。」
「悠理のそーいうとこ、可愛い♪」
・・・ホントはあたいも、ちょっと着たいって思ったから着たんだけど、
やっぱり、龍之介が喜んでくれてよかった。
龍之介の無邪気な笑顔に、悠理はポッと頬を染めた。
「・・・そんなに可愛いって思うんなら、ちゃんと可愛がれよぉ・・・あたい・・もぅ・・・」
・・・早くりゅうのすけが来てくれないと、どうにかなっちゃいそうなんだから・・・
悠理の心を読んだように、龍之介はふっと優しい笑みを浮かべた。
「・・・そーだな。オレもそろそろ悠理の中に行かないと限界。
んじゃ、続けるぞ・・・?」
「ん・・・」
龍之介は悠理の身体に覆い被さると、そのくちびるにキスをした。
そして、両脚をゆっくりと開かれ、
先ほど思いあたったとおり、タンガを穿いたままの悠理に龍之介は挿入してきた。
自分の中をすべて満たされるような感覚に、悠理はうっとりと吐息を漏らした。
「・・・りゅうのアレって・・あったかいね」
「・・・ゆうりの中もあったかいよ」
「うふふ・・・」
「・・・ふふ。」
もはや、互いのぬくもりなど、とっくに知りつくしているはずのに、
それでも、何となく口にしてしまう。
少し照れくさいような、嬉しいような、いつもの感じ。
身体を一つに繋げながら、2人は微笑みあった。
「・・・気持ちいい?」
「ん・・・すごく・・・す・・ごく・・い・・・」
ゆっくりとした龍之介の抜き差しに煽られるように、悠理は徐々に歓喜の反応を示し、
2人の間で淫靡な水音が響いては増していく。
融けるような甘い表情で嬌声をあげる悠理に、龍之介はいたずらっぽくささやいた。
「ゆうり・・ごめん、一旦抜いていい?」
「えー・・・なん・・で?」
「・・・後ろから入れたい」
「もぅ・・・エッチだなー」
「ダメか?」
「・・・後でいっぱい抱っこしてくれるんなら・・いいよ」
「抱っこって、それならいつもしてるだろー?」
「・・・それでもして欲しいのー!
だって、りゅうに抱っこされんの好きなんだもん。暖かくて・・・ずっと抱っこされてたい」
「甘えんぼだな・・・ゆうりは」
「りゅうは、あたいに甘えられるの、いやか・・・?」
「まさかー!全然そんなことねぇよ。むしろ嬉しいぞ♪」
悠理は自分に優しく笑みを見せる龍之介の身体の下で、少し照れくさそうに言った。
「なー・・・後ろからするんじゃなかったのか?」
「やめた。ゆうりのことずっとこのまま抱っこしてる」
「・・・あたいの言ってるのは、ふつーの抱っこのことなのにぃ・・・」
「いーの。オレはこっちの抱っこも好き♪」
「あたいも・・・スキ♪」
そのまま2人は、高まりを迎えるまで、互いの身体を擦り合わせるようにして、
激しく愛し合った。
その後、2人がベッドでまどろんでいると、ベッドサイドの電話が鳴った。
龍之介がゆっくりと受話器に手を伸ばして電話に出ると、それは美童からの国際電話だった。
『りゅ・・・りゅうのすけくん?あ、あのさぁ、僕の贈り物・・・もしかしてもう見ちゃったかなぁ・・・?』
「ん・・・見たよ」
『えっ!?み、見たの!?実はあれさ、彼女に贈るのと君たちに贈るのを間違えちゃったんだよ〜!
悠理怒ってない!?それにしても、よりにもよって・・・』
「ホントは何を贈ってくれるつもりだったんだ?」
『ロイヤルコペンハーゲンで、タマとフクに似た可愛いウェディングドールを見つけてね、
それを贈ったつもりだったんだけど・・・』
「それが、美童の彼女の方に行っちゃったわけか。ドール違いで」
『そーなんだよぉっ!ごめん、ほんっとごめんっ!』
「謝ることねぇよ。こっちの方が感謝したいぐらいだ。悠理にあぁいうのが似合うなんて思いも寄らなかったから」
『・・・へっ?』
「いや、なんでもない。それじゃ、そろそろいいかなぁ?オレたちまだベッドの中なんだ・・・」
『うわっ、そうだったのー!?あれ?でも、今ってベトナムだよねぇ。時差ってそんなにあったっけ?』
「美童も、彼女にまた同じの贈ってやれよ。夜なんて全然寝てられねぇから」
龍之介が電話を切ると、傍らで眠っていたと思った悠理が、うっすらと目を開いた。
「あ、起こした?」
「・・・電話?」
「ん・・・でももう終わったよ」
「・・・んじゃ、もっと抱っこぉ」
悠理は、龍之介の身体にぴったりとその裸身を寄せると、再び目を閉じて眠りに落ちた。
「・・・この甘えんぼめ」
そうは言いつつも、龍之介は、自分の胸に寄り添って眠る、何よりも大事な宝物を優しく抱き締めると、
そのまま、自身もゆっくりと安寧に満ちた眠りについた。
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