温泉2人旅2



今までにない強引な龍之介のキスに、悠理は戸惑った。
悠理の身体は離れの座敷に押し倒され、
さらに龍之介の手が、上着をたくし上げ、ブラジャーを上にずらし、
ジーンズの中に手を差し込み、荒々しく悠理の身体をまさぐった。

「ちょっ・・・りゅーのすけ・・・ちょと・・・待って・・・」

悠理の困惑したか細い声に、龍之介は我に返り、悠理からそっと身体を離した。
2人の見つめ合う視線には、今までにない沈黙が浸みていた。

「・・・ごめん」
「いや・・・あの・・・」

再び沈黙。気まずい空気。
2人とも、すぐには言葉が見つからない。

「オレちょっと、風呂入ってくる・・・」

先に視線を外し、立ち上がった龍之介は離れの内風呂へと消えた。





この旅館の離れには、檜作りの内風呂が作られていた。
これは、龍之介が昔からこの部屋を好む最大の理由である。
それほど大きいわけではないが、一人で入る分には十分な大きさだ。
檜が温泉を吸いその香りが風呂場いっぱいに拡がっていた。
明かり取りから差し込む日差しがゆらゆらと水面を反射させる。
外気を取り入れるために、大きな通気口があるため、湯気がこもることもなく、
長風呂をしてものぼせることはない。屋内の内風呂とはいえ、空気は露天風呂そのものだ。

龍之介は風呂に浸かりながらその檜の香を吸い込んで息を吐いた。
・・・とはいえ、今の龍之介は風呂を楽しむ気分ではない。
風呂の縁にあごを乗せ、あーでもない、こーでもないと、後悔の念を募らせていた。

・・・馬鹿野郎。一体、何やってんだよ・・・オレは。

全ては、悠理のキスだった。
あの、控えめな、可愛らしい小鳥のようなキスが、必要以上に龍之介に火をつけてしまった。
それで思わず、あんなに激しく悠理を求めてしまったのだ。

・・・だからって、乱暴にしていいって訳じゃねぇだろ?
あんなにしたら、まるで獣と一緒じゃねぇか・・・。
悠理・・・オレのこと恐いと思ったかな。思う・・よな・・・普通、あんなにされたら。

龍之介はため息をついた。

・・・後でもう一度、ちゃんと、悠理に謝ろう。

龍之介は風呂の中に潜った。





・・・あんなりゅーのすけ、初めてかも・・・。

悠理は、しどけなく乱れた衣服をそのままにつぶやいた。

まだ、心臓がドキドキしてる。
龍之介って、あんなに激しいキスもするんだ・・・。
あたいのヘタなキスの後だったから、ちょっとびっくりしたぞ・・・。
だから・・・つい待ってって言っちゃったけど、
あんな感じで激しく求められるのって・・・何かすごく・・・・・・イイかも。

悠理はポッと顔を赤らめた。

・・・でも龍之介、あたいが嫌がってるって思ったんだよな。
・・・どうしよう・・・?





龍之介が湯船から頭を出すのと、風呂の引き戸がカラカラと開くのは同時だった。
濡れた髪の毛で少し幼い表情になった龍之介と、
身体にバスタオルを一枚巻いただけの悠理が顔を合わせた。

「!!!」

龍之介が言葉を発する前に、悠理の言葉が響いた。

「龍之介・・・何してんの?」
「いや、ちょっと潜ってた。ってお前は?」
「あたいは・・・龍之介と一緒にお風呂入りにきたんだ・・・いい?」

しかし、いい?と聞いている割に、悠理は既に勝手に風呂場に入り込み、掛け湯を始めた。
ダメともいいとも言うタイミングを逸した龍之介は、
何となく、後ろを向かなくてはならない気がして悠理に背を向けた。
悠理は、龍之介が後ろを向いてるのを見て、バスタオルを外すと、ゆっくりと湯船に身体を沈めた。
一人では大きな風呂でも二人では少し手狭だ。
少し身体を動かしただけでも、身体が触れ合ってしまう。
しかし悠理は、ためらわずに龍之介の背中に身体を寄せた。
龍之介は当然戸惑いを隠せない。

「・・・ゆっ悠理!?」

悠理は龍之介を背中から抱き締めた。

「・・・龍之介・・・さっきはごめんね。あたい、ちょっとびっくりしただけ。
龍之介があたいのこといっぱい求めてくれて、ホントはすごく嬉しかったんだ・・・」

龍之介には、悠理の手が温泉の温度よりも熱く感じられた。

「悠理・・・でもオレはさっき、かなり自分勝手だったな、ごめん」
「・・・それでもいいんだ。あたいは龍之介の好きなようにされたい。
愛されてるってわかってるし、
・・・それに・・・あたいは龍之介のモノだから・・・」

龍之介はゆっくりと悠理の方を向いた。
透明度の高い温泉の湯が、悠理の裸体を透かしていた。
水中で揺らめく曲線、上気した頬、龍之介を見つめる甘い眸が、
再び龍之介に火を点けようとしていた。

「・・・ね、もう一度さっきみたいにキスして・・・」

悠理の言葉を聞くまでもなく、龍之介は悠理のくちびるを激しく貪った。
そして、悠理の裸の腰を強く抱くと、風呂の縁に座らせた。
悠理の両脚が龍之介の腰に巻き付けられる。
悠理の内股に、龍之介のそれが触れた。

・・・りゅーのすけ、もぉこんなに硬い・・・。

しかしそれが直接動きだす前に、龍之介の指が悠理の中を探った。
悠理はすんなりと龍之介の指を迎えた。
ちゅくちゅくと、恥ずかしい音がする。

・・・あぁ・・・あたいももうこんなになってたんだ・・・。

悠理が僅かに息を乱しながら龍之介の顔を見上げると、
いつもは中性的な美少年然とした龍之介の顔に、男としての色が乗っていた。
それに見惚れると同時に、悠理は、自分もおそらく、女の表情をしているに違いないと思った。

・・・龍之介・・・早くあたいを抱いて・・・

龍之介は悠理の身体が自らを迎えようとしているのを察し、
そこへそれをあてがった。

「は・・


言葉にならない悠理の吐息が漏れた。
龍之介が悠理の中に深く沈むと、
悠理は龍之介の首に両腕を回し、しっかりと掴まった。
自分の中で脈打つ龍之介のこと以外、もう何も考えられなくなっていた。
龍之介がひたすら打ち込む大胆なリズムが、悠理の身体を、血を、肉を、沸き立てさせ、
いくつもの波を呼んでいた。

「悠理・・・!ゆうりっ!」
「はぅ・・・あっ・・・あぁ・・・


悠理の顔がせつなげにゆがみ、龍之介の背中にその爪が立った。
それがさらに龍之介を燃えさせ、新たな波を呼ぶ。
龍之介の力強さと優しさと悠理への愛が悠理を大きく包み込んだ。
濡れた龍之介の髪から雫が悠理の頬から胸に零れ落ちた。
それはすでに熱を失っていたが、悠理の身体の熱を奪うことはできなかった。

「りゅ・・・りゅーのす・・け・・・あたい・・・も・・もぉ・・・あたまんなか・・・まっしろ・・・」
「オレもだ・・・」

悠理が強くしがみつき、龍之介も悠理を強く抱き締めた。悠理は、龍之介の腕の中で震えた。
龍之介も悠理の中へ魂を爆ぜた。

しばらく、二人は息を乱したままそのまま抱き合っていたが、
悠理が、龍之介に強く身体を預けてきた。

「う、うわっ!」

バランスを崩した龍之介は悠理と共に湯船に沈んだ。
龍之介が悠理を抱えたまま、湯船から顔を出すと、
悠理にくちびるを捕らえられた。

「龍之介・・・わかってるか?
あたいが龍之介のモノってことは、龍之介はあたいのモノってことなんだからな・・・」

ちょっとした脅迫である。
しかし、龍之介は少し笑って、悠理の耳に囁いた。

「わかってる・・・オレの身体も魂も、全部まるごとお前にやる・・・」

悠理は破顔した。
そして龍之介の胸に顔を寄せ、ゆっくりと目を閉じた。

・・・龍之介、あたいのことずっと離すなよ。

悠理の心の声が聞こえたように、龍之介はしっかりと悠理を抱き締めた。


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