二人のくちびるがゆっくりと離れると、悠理は言った。
「・・・ね、あたいってやっぱり男の子みたいに見えるのかな」
「???なんで?」
「さっき、お風呂で男の子と間違えられた・・・」
「・・・そりゃまぁ、どちらかと言え・・・あ、いや」
悠理の瞳が“やっぱりそーなのか・・・?”
と子犬のように悲しげに潤んでいるのを見て龍之介は、言いかけた言葉を飲み込んだ。
自分も昔から女の子と間違えられて嫌な思いをしたことが多々あったからだ。
「まったく・・・男の子だなんて、失礼なヤツもいるもんだな。
悠理は普通の女の子なのにさ」
龍之介の言葉は意外だった。
「え?あたい・・・普通の女の子なのか?」
「違うのか?違わないだろ。
確かに悠理は女にしちゃ桁外れに強いし、そりゃちょっとは男の子みたいな所もある。飯だって人一倍食うしな。
でも、オレのことを好きだと言ってくれて、この身体の傷を優しく撫でてくれるお前は、ただの女だ。
うーん・・・ただの女っつーか、オレの大事な可愛い女だな。
悠理は普通の女で、オレも悠理を愛する普通の男。
だからオレたちは今、こうして二人でいることが幸せだと思えるんだろ?」
・・・普通の男と、普通の女、か。
そんなこと言われたの、初めてだ。
財閥の娘として生まれ、ずっと“普通”なんて言葉とは無縁だと思っていた。
しかし、それを言うなら龍之介だってそうだろう。
ヤクザの家に生まれて、沢山事件に巻き込まれて、
それこそ、普通の家に生まれていれば感じることのない辛い思いや、悲しい思いをいっぱいしてきたはずなのに。
・・・なのに、優しい顔でさらりと自分は普通の男であると言う。
・・・そーか。あたいは龍之介のこういうところに惚れたんだ。
自分の足でしっかりと地面に立って、強い風も弱い風も全て受け止めてるようなところに。
「りゅうのすけー・・・」
「なに?」
「早く・・・いっぱい抱いて」
急に艶をたたえた悠理の表情と声に龍之介はドキリとした。
「・・・言われなくてもそのつもり」
「その割に、浴衣脱いでないじゃんかぁ。あたいだけ裸にして・・・」
「あ、ホントだな。すっかり忘れてた」
龍之介は、悠理に脱がされかけた際に、少し雑な着方になっていた浴衣を脱ぎ捨てた。
「これでいいか?」
「・・・だめ。全部脱いで」
「はいはい」
龍之介にパンツを脱がさせる女は、この世で悠理ただ一人。
傷だらけのダビデ像のような龍之介の裸を、悠理は愛おしく見つめた。
・・・龍之介、きれい。
悠理は、思ったことを素直に口にした。
「・・・龍之介って、きれいだね」
しかし、言われた龍之介は、照れと困惑の中間のような顔で答えた。
「・・・あのなぁ、きれいと言われて喜ぶ男がいると思うかー?」
「だって、すごくきれいだなって思ったんだもん・・・龍之介の身体」
「傷だらけなのにか?」
「・・・うん」
悠理は、再び自分に身を寄せる龍之介の胸から肩に指を滑らせた。
「・・・きれいってのはな、お前みたいな女のことを言うんだ」
龍之介は再び悠理の身体に指と舌を走らせた。
悠理が声にならない声でささやいた。
「・・・れ・・て・・・」
「ん?」
「入れ・・て・・・」
「・・・何を?オレの指ならもう入ってるけど、これじゃ物足りない?」
龍之介は、悠理の中に入れた指をくちゅくちゅを音を立てながらいじわるく動かした。
「あぁ・・・ん・・・っ」
それに反応して反り返った悠理の背に左手をまわし背筋をなぞると共に、そっとその乳房にくちびるを這わした。
悠理には全く逃げ場がない。身も心も全てを翻弄されて、悠理はやっとのことで声を出した。
「・・・や・・ん・・・そ・・んな・・・いじわる・・だぞ・・・」
「ほら・・・言ってみて」
悠理は、龍之介の耳元で、さらに小さなささやきで答えた。
「りゅーのすけの××を・・・」
「どこに?」
「あたいの○○に・・・」
「それでどんなふうにするんだ?」
「どんなふうにって・・・」
「@@とか、**みたいな」
「・・・龍之介のばかっ!すけべっ!」
「この状態ですけべと言われてもなぁ」
龍之介はゆっくりと悠理の中から指を抜くと、
代わりに、悠理の欲したそれが悠理の肉を貫いて入ってきた。
・・・来た。龍之介があたいの中に。
悠理は龍之介の肩に両腕をまわすと目をつぶった。
悠理の身体の深い場所に甘い衝撃が走る。
何度も、何度も。
その度に、悠理のくちびるから、淫らな声が零れた。
「悠理・・・もっと深く入るからな」
「え・・・?」
悠理がその言葉の意味を理解する前に、龍之介は、悠理の膝裏を高く持ち上げた。
「あっ・・・あっ・・・あぁぁっ!」
龍之介のそれは、悠理の中のさらに深いところへと沈み、
浮かんではさらに深く沈んだ。
悠理は龍之介に強くしがみついた。
「・・・りゅう・・・っ!」
「く・・・」
龍之介の顔が、瞬間歪んだ。
やばい・・・悠理、締め付けすぎだ!
龍之介は慌てて悠理のくちびるを吸った。
「ん・・・ん・・・んん・・・」
悠理の身体から僅かに力が抜けた。
・・・どーにか耐えられたな。
龍之介は、ふぅ、と小さくため息を付いた。
悠理は乱れた息で、その胸を上下させたままその身を横たえていた。
「りゅうのすけ・・・激しすぎ・・・」
「・・・自分だってだろ」
「・・・え?」
「なーんでもない。続けても平気か?」
「・・・うん」
龍之介は悠理の身体から己を抜くと、
悠理の右脚に跨り、左脚を自分の右肩に乗せた。
初めてさせられるこの少し恥ずかしい格好に、悠理は戸惑った。
「ちょ・・ちょっと・・・こんな格好で・・・どーするんだよぉ?」
龍之介、それには答えず、
「悠理、随分身体柔らかいな・・・」
などと、呑気に言いながら、答えの代わりに担いだ悠理の左脚に、ちゅっと口付けた。
そしておもむろに再び自身を悠理の中へと差し入れた。
「あぁ・・・っ!」
愛しい龍之介の分身が、悠理の内壁のいつもと違うところを突いてきた。
龍之介に少し上の方から見下ろされる感じや、今の自分の格好の恥ずかしさが、
悠理の身体にどんどん火を点ける。
・・・どおしよっ・・・とんでもない声でちゃいそうだ・・・!
悠理は思わず自分の右手の小指を噛んだ。
「・・・こら、噛むなよ」
「・・・だ・・ぁってぇ」
「大丈夫、誰にも聞こえてないから」
「・・・ほん・・と?」
「ホントだよ。ここの周りの庭に、木がいっぱい植えてあるだろ?
あれが音を吸収するから、悠理がどんな声出しても平気なはずだ」
「・・・平気な・・はずって?」
「おーい・・・当たり前だろ?オレは今までこの部屋でこんなことしたことないんだぞ?」
「・・・あぁ、そっか・・・でも、りゅうのすけ、あたいと・・・同じ数しかエッチ・・・してないはずだろ?
こんな・・・コトとか、何で・・・いろいろ・・・知ってるんだ・・・?」
悠理は乱れる吐息の中、龍之介に尋ねた。
「・・・ま、それは男の秘密、ってヤツかな。ちょっと横向いて・・・そう、そんな感じ。
あっ・・・浮気してる訳じゃないからなっ!」
不意に、龍之介に脚を動かされた瞬間、その波は来た。
「わ・・・わかって・・・る・・・あっ・・あっ・・ああぁぁぁっっ・・・っっ・・・!!!」
「ん?ゆーり?悠理っ!?」
悠理は絶頂を迎えて、気を失っていた。
しまった・・・ちょっとやりすぎたかな。
龍之介はそっと悠理の身体から己を抜くと、その傍らに添い、様子を見守った。
悠理は、そのまま、安らかな寝息を立て始めていた。
こいつ・・・そのまま眠ってるぞ。
しかし、それを見て、龍之介は安堵の息をもらした。
濡れて張り付いた髪の毛を顔からどけてやると、その頬を愛しげにゆっくりと撫でた。
そして、伏せられた瞼にくちびるで優しく触れた。
すると、龍之介にも睡魔が襲ってきた。
・・・オレも寝ちゃおう。
「ゆーり・・・おやすみ」
小さなあくびをして、そうつぶやきながら、
龍之介は、悠理を胸に抱きながら、そのまま眠りに入った。
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