床に転がされて、逃げる間もなく、まず首輪に鎖をはめられ、その端を床に繋がれた。
「呪文で動きを止められるのに、いつもどうして縛るの…」
押さえ込まれて、黒革のベルトで腕を縛られながら、フィルシスはぽつんと呟いた。
ハウゼンに体の自由を奪われた時、ふと思った事。
「その方が楽しいからですよ。体の自由が奪われている事が目に見えて分かるでしょう?」
首輪に繋いだ鎖をしゃらしゃらと鳴らす。
軋む黒いベルトが白い肌に映える。
「んあ…ッ」
羞恥を生み出す冷たい音に、屈辱と恥辱が混ざる複雑な快感に呻いた。
「それに、あなたには良く似合うし、こんな事をされて感じているようですしね」
くすくすと笑うシャーレンに、うつ伏せにされる。
「んうぅ…っ!」
腕は後ろ手に縛られているため、肩が床につく。
下肢は膝で立たされ、尻だけが高く突き出た格好をとらされた。
「ほら、やはり体は悦んでいるようですね」
ひくりと、寂しそうに収縮している後孔に、シャーレンは潤滑剤を塗った指を浅く入れた。
「あ…っやだ…!やだ……」
どんどん指を咥え込んでいく後孔の内側をひっかかれて、フィルシスの美しい体が跳ねる。
「良い、の間違いでしょう?」
しばらくかきまわして解すと、指を抜いた。
「や…っ」
切ない声を上げるフィルシスの尻を優しくなでる。
「あなたの大好きなもの、入れてあげましょうね」
黒いローブの裾をまくって、下着を脱ぐ。
取り出した性器を、寂しそうに震えるフィルシスの尻たぶに当てる。
「あ…あ…ッ!」
待ち望んでいたシャーレンに、久々に入れられて、フィルシスは身悶えした。
体の奥に溜まっていた熱が、疼きが、一気に目覚め出す。
無意識のうちに、尻を揺らしてしまう。
「ん…っん……もう……」
すぐに、中に出されるのを感じた。
しかし長く直腸の奥まで注がれるそれが、精液ではない事に気付く。
「あ…それ…やぁ…ッ!」
腹にたっぷりと溜まっていく液体の感触に、フィルシスは下肢を震わせた。
「おしっこ、そんなに上の口で飲みたかった?」
「やぁ……っ」
全て出し終えると、すぐにシャーレンは引き抜いた。
「こっちに入れても、嬉しそうにしていますけどね。相変わらず淫乱な子だ」
中に注いだ尿が零れないように、震える尻に張形をしっかりとはめられる。
「私が良いと言うまで、咥えておくんですよ」
冷たい声でそう言われた後、膝立ちにさせられる。
自分の体なのに、何一つ自分の自由にならない。
「んあ…ッ!」
これで、後孔に力を入れて、張り型を落とさないように、咥えていなければならない。
「あ…っこんな…やだ…!」
注がれた尿のせいで、腹がごろごろとし始めたのも分かる。
「はあ…はぁ…ッ」
快感と苦痛に、呼吸が荒くなる。体中から汗が噴き出した。
甘く喘ぐ唇の端から垂れる涎が筋を作る。
「さて、言い付け通り、ちゃんといい子にできるかな」
白い肌を興奮に赤く染めて、苦しそうに身悶えするフィルシスの潤む瞳に、黒い鞭をちらつかせた。
「あ…っいや……!」
鞭で胸の先端をびしりと打たれると同時に、すぐさま快感となる痛みの刺激に、後孔が締まった。
きゅっと締め付けてしまう度に快感が伝わるのに、その快感のせいで力が抜けてしまいそうになる。
「は…あぁ…!」
今度は鞭の先が、ひくひくと震えている白い脇腹に、薄紅色の印をつけた。
予想外の場所を嬲られて、 びくんと激しく体が仰け反り、張り型を落としそうになる。
「ん…んう…ッ」
体中をいたぶる痛みと快感に、辛くて、気持ちよくて、涙があふれ出した。
「可愛いね…こんなに辛くて、痛くても、それが気持ちよくてたまらないのですね」
拘束具でせきとめられながらも、先走りをたらたらと流す勃起したままの股間をじっと見られる。
優しく微笑むシャーレンに、そこを鞭の先でぴしっと打たれた。
「あぁ…ん…っ」
「ねえ、捕まっている間、何かされました?」
嗜虐的な笑みを見せたシャーレンに、フィルシスはびくりとした。
「途中で戦った見張りが、あなたを可愛がってあげたって、教えてくれたのですよ。一体どんな事、してもらったんですか?」
黒い鞭の先が、へそから鎖骨にかけて、そっと撫で上げる。
鞭についていた体液が、その跡を残す。
「ひあぁ…ッ!」
「悶えていないで質問に答えなさい。いつまでもこのままですよ」
拘束された美しい体を震わせて、快感に翻弄される姿をシャーレンは食い入るように眺めた。
色付いてぷっくりと尖った乳首を、鞭でくにくにと嬲る度に、深紅の瞳の焦点が失われる。
犬のような耳が、ぴくぴくっと震えている。
喘ぎの止まらない愛らしい唇から、涎がとめどなくあふれ出していた。
尻をふるふるとさせて、中の淫具をしっかり咥えて耐える姿が可愛らしくて、つい鞭が動いてしまう。
「あぁんッ!」
フィルシスは嘘を言おうかと考えたが、どちらにしろ、恥ずかしい事を言わなければならないのに変わりないと気付いた。
「魔物に…された…っ」
思い出すだけで恥ずかしく、口にするのもはばかれたが、この状況にもう長くは耐えられそうにない。
「それは気持ち良かったんですか?」
微笑んで、今度は鞭の先を震える内股に当ててさする。
「ん…っ!ん…」
震える膝と尻を抑えながら、否定する事さえできない程頷く事だけで精一杯だった。
「どうして?」
意地悪な質問と股間を打つ鞭が、同時に跳んできた。
「ぁう…っ」
刺激に震えた唇から、涎があふれる。
恍惚とした表情で、あの時の快感を思い出しながら、今味わっている快感に体を震わせる。
「…人間より…太いから……!はぁ…あ…っ」
熱っぽい息を吐き出しながら、答えざるを得ない。
異物を注がれた腹も、玩具を咥えさせられている後孔も、限界だった。
体中に愛撫の跡をつけていく鞭の快感に、先走りがだらだらと垂れ流れる。
その度に張り型を締め付けてしまう後孔は、ひくひくと淫らに蠢いて、これ以上とても咥えていられない。
白い尾は揺れずに、堪えるようにぴんと伸びていた。
「他には?それだけですか?そんな事ないですよね」
ぱしんと、勃起している陰茎を鞭ではたかれる。
「…ッゃあ…もう…我慢できない…」
膝がかくかくと震えだす。
「あなたが早く答えれば良いだけでしょう?」
じれったそうに、鞭が肌の上を跳ねる。
「…ッ二人に…一緒に入れられた…」
口から涎をだらだらと垂らしながら、息も絶え絶えの様子でフィルシスが呟く。
「それも、あなたは感じたんですか?」
「ん…う…っ」
頷くフィルシスに、よく言えたねと、褒めるように耳をなでた。
「そうですか…今度ラークと試してみるのも、楽しいかもしれませんね」
そう言うと、なでていた頭が嫌嫌をするように、首を振る。
「やだあ…も…う…ッ!」
頬を真っ赤にして、哀願するようじっと見上げる瞳が淫らに潤う。
可愛らしくて仕方ない顔。
「そんなに出したいの?」
震える唇にシャーレンの指を入れられる。
「ん…ん……っ」
それをくちゅくちゅとしゃぶって、決壊しそうな体を堪えた。
張り型も今にも落としそうになる。腹も痛くてたまらない。
「あう…っ」
幼児のようなフィルシスの仕草に満足すると、シャーレンは愛らしい唇から指を抜いた。
膝立ちにさせていたフィルシスを、今度は床に座らせて足を開かせた。
排出される汚物と、その姿を自分が眺めている事がしっかり分かるように。
「はい、もう出していいですよ」
身悶えるフィルシスの目の前に立って、鞭で震えている内股をなぞって促した。
「ん…や……」
こんな恥ずかしい姿で、じっと見られている中で排泄するなど、考えるだけで顔が熱くなる。
「ん…うぅ…」
しかし、自分の体は限界だった。本能のままに、気づけば後孔に力を入れていた。
張り型は抜いてもらえなかったから、これも自分で出せという事だ。
腕を縛られた体を不自由に揺らして、力を入れる。
ぶしゅっと音がして、差し込まれた玩具が半分程出て行く。
「ちゃんと見なさい」
羞恥のあまりに目をぎゅっと閉じてしまっていると、また鞭が、乳首をいたぶる。
「あぁ…ッはあ……ぁ…!」
再び息むと、張り型が便のように抜けていく。
収縮する後孔の肉壁が顕わになると、そこからすぐに、びしゃっと小便が溢れ出した。
「や…いや…ッ」
シャーレンが楽しそうに微笑んでずっと眺めている、
開かされた足の間のそこから、すぐに茶色く太いものが顔をのぞかせる。
敏感になっていた後孔は、硬いそれがすれて出て行く感触にもびくんと震えた。
フィルシスは美しく整った顔を羞恥に歪ませて、白い尻を震わせて、汚物を垂れ流していく。
「やだ…シャーレン…や……」
排泄しながら、感じてしまっている体を、その瞬間の蕩けた表情を、じっと眺められて観察される。
「嫌なら何故、そんな声を出すんですか?」
自分の排泄物にさえ、ひくひくと美しい肢体を悶えさせて、
甘い喘ぎを洩らし続ける淫らなフィルシスが愛しくてたまらない。
「あ…っあ……」
その言葉と視線にも興奮してしまう、どうしようもなく浅ましい体を、フィルシスはひくひくと身悶えさせた。
「はぁ…あ…ッ!」
太い便が肛門から押し出され、ぶつりと切れて、後孔からはもう何も吐き出さなくなった。
それを見届けるとシャーレンは、部屋の隅の排水溝に汚物を流した。
「良い子にできましたね。今度は洗おうね」
優しく耳をなでた。
後孔の内襞に残っているものも洗うため、ひくひく震える後孔に、次はぬるま湯を注ぐ。
「あ…ぁん…ッ!」
汚い水音を立てながら、何度も収縮して、中の湯を吐き出していく様子を、じっと見られる。
やがて、吐き出される湯が薄い茶から透明になると、シャーレンは床を水で清め始めた。
「あなたがこんなにも汚したんですよ」
そう言うと、フィルシスが目に涙を滲ませて、頬を赤く染める。悲しみと羞恥の愛くるしい表情。
床がきれいになると、シャーレンは、ぐったりとしたフィルシスの頭を膝の上に乗せて、寝かせ、耳をなでた。
「次はどうしましょうか。別の張り型を挿れてみますか?
もっと太いものや、いぼが無数についていたりするものをね」
「もうやだ…シャーレンがいい…」
まだ腕を縛られたままの体を、シャーレンの膝の上でもぞもぞと揺らして抵抗した。
「あんな玩具でも十分感じていたのに?」
「でもシャーレンがいい…」
駄々をこねるように言い返す。
もう張り型でも、他の男でも満足できない…。
「さっき、入れてあげたでしょう?」
「あれだけじゃ……」
とてつもなく恥ずかしい事を言っている自分に気づいたフィルシスは、そこで何も言えなくなった。
思わず体の動きを止めて、目を伏せた。
「あれだけじゃ、何ですか?」
とても嬉しそうに、シャーレンに耳をなでられる。
「……たりない…」
そう答えると、上体を起こされた。
「可愛い…」
そのままぎゅうっと抱きしめられる。
「もっと焦らしてあげようかと思っていましたが、久しぶりですし、気が変わりましたよ」
そう言うとシャーレンが鞭を放って、拘束具をはずしはじめる。
そのまま抱き上げられて、寝室に向かう。
「ん…っ!」
ベッドの上に仰向けに寝かされる。
シャーレンが黒いローブの裾をまくって下着を脱いだ。
しかし、後孔に入れるのではなくて、その下肢をフィルシスの顔に向けて、仰向けの体の上に乗っかった。
「舐め合いっこしましょう」
「え……っ?」
一瞬、言葉の意味がわからず戸惑ったフィルシスのきれいな肌の白い太股を、シャーレンは構わずに押し開いた。
顕わになった局部に顔を埋めて、勃ち上がったままのそれを口に含む。
「はぁうッ!」
途端に、細い腰がくねった。
どれ程、尻の孔や乳首で快感を得られる体にされても、やはり男である以上、フィルシスも最も感じる部分はそこだった。
睾丸を舐めると柔らかくはなく、弾力があり、とてもイきたそうにしているそこを、ねとりと舐めた。
「ひあ…っやあっ!いや…ッ……やだ…ッ!」
舌で包むように裏の筋を舐められて、腰がびくんと跳ねた。
拘束具ははずされていないまま、イく事ができないのに、体中を駆け巡るような快感だけが与えられる。
睾丸を隅々まで舐めて転がされ、舌がねっとりと亀頭のくびれをつつく。
根元からきつく吸い上げられると、喘ぎ声すら出せない快感だった。
くちゅくちゅと響く水音が、自分が舐めているわけではないのに、何故か恥ずかしくてたまらない。
「んん…っ!んうぅー…ッ!」
その快感に、口の中にシャーレンの硬くなっている性器を突っ込まれても、自分の舌はとても動かせない。
シャーレンの腰をつかんだまま、与えられる快楽を受け入れる事しかできなかった。
「ん、んー……っ!」
一際大きく腰が跳ねた。開かされた内股がひくひくと痙攣する。
せき止め切れない先走りを、シャーレンの口内に流した。
拘束具をはめられていなければ、射精していた。
しかし、絶頂の余韻に浸っていられるのも一瞬だった。
シャーレンが自分の上から退けたと思いきや、すぐに両足を開かされて、膝が胸につく程、足を折り曲げられるのを感じた。
「あぁ…ッ!ちょっと…待って…やあぁ…!」
敏感になっている後孔に、いきなり深く挿入されて、すぐに前立腺をすりあげられる。
「あうぅ…ッ!ああ…」
思わずシャーレンの背に手をまわして、ローブをつかんだ。
そうしないと、激しい動きのためにシーツに背中がすれて痛い。
また、強い揺さぶりと、激しい突き上げが絶え間なく与える快感に、ベッドから振り落とされそうな程だった。
「あ…ッ!」
半分開いていた唇を割ってシャーレンの舌が入ってくる。
「ん…ふ…ッ!」
そのまますぐに、自分が出した、とろりとした先走りを喉の奥に流し込まれる。
教え込まれた通りに、口付けを返そうとしたものの、激しい舌の動きに、自分の舌は動きを許されない。
絡ませようと舌を伸ばしても、子供をあしらうように、包み込んで大人しくさせられる。
「んんぅ……!」
口腔内を深く舐めてまさぐって、隅々まで蹂躙していくシャーレンのその動きに翻弄されるしかなかった。
舌がゆっくり這うように歯茎や喉の奥を舐め上げるたびに、後孔がひくりとしてしまう。
それと同時に、敏感な内部の中で熱く脈打つ感触を感じて、体が変になってしまいそうだ。
がっつくような突き上げ、貪欲なキス。
混ざり合った互いの唾液の糸を引きながら、シャーレンが舌を引き抜く。
自分をじっと観察するようないつもの涼しげな微笑ではなくて、
唇に残った体液を舐めとりながら見せる妖艶な笑みに、何故かどきりとした。
本気だ…
そんな言葉がふと思い浮かぶぐらい、キスも突き上げも速くて深い。
自分を縛って鞭打って、痴態をじっと眺めて弄ぶ時とは違う。
間近にある顔から聞こえるその息遣いが、荒く乱れてる。
その興奮で、後孔までつい締め付けてしまったのがシャーレンにも分かったのか、再びがっしりと腰をつかまれる。
そのままさらに深く突き入れられる硬い楔が、間を置くことなく突き上げを始めた。
「やだ、やだ…何で…もっと…ゆっくり…ん…っあぁんッ!」
弱点をぐりぐりとするように突かれ、細い腰が踊るように跳ねる。
「できません。私だってずっと抱いてないのですからね、もう焦らす気になんてなれません」
フィルシスの尻を浮かせるように腰をつかんだまま、奥まで差し込む。
「や…ぁ…はあぁ…ッ!」
決して優しくはない、むしろ乱暴と言っていい程の激しい突き上げ。
自分から腰を振る隙も、必要もない程、止まることのない快感。
そんな余裕のない貪りなのに、それでも浅ましい体が感じてしまう。
そうしてしがみついて喘いでいると、シャーレンがくすっと微笑んだ。
「そう言う割りに、ここも勃っていますよ」
すっと細めた青い目が今度は、汗ばんだ胸の先端で、尖って震えている乳首を狙う。
「ひ…あぁ…っあ……ッ!」
すでに硬くなっている薄紅色の乳首をちゅっと吸われる。
舌で押し潰すようにして、色付いた胸の先端をこねあげられる。
歯を立てて、甘咬みされる。
「あぁん…ッ」
刺激を加えられるたびにまた後孔を窄めて、シャーレンのものをきゅうっと咥え込んでしまう。
「あ…っあ…ッ!」
後孔の内部で熱く脈打って、中にシャーレンが放つのを感じた。
拘束されたままで、射精できないけれど、後孔を突かれるだけでイってしまう体が、びくんびくんと跳ねた。
「はぅん…ッ!」
抜かないままシャーレンがベッドに座り、膝の上に抱かれる。
敏感になった後孔は、それだけで大きな刺激だった。
「やっぱりあなたが一番良い…」
丁度シャーレンと向き合うような体勢になる。
その腹部に、勃起したままの股間がすれる。
「んん…っ」
後孔の中に注ぎ込まれた精液が、くちゅっと淫らな音を立てた。
「少し、急いでしまいましたね。辛かったですか?」
満足して余裕が戻ったシャーレンに抱き寄せられて、耳をなでられる。
「まあ、あなたも気持ち良かったようですけどね」
ひくひくと震えたままの性器をなでられる。
「あ…っシャーレン…イきたい…もう……」
そう言っても、意地悪な微笑みを返されるだけだった。
「では、今度はお望みどおり、ゆっくりしてあげましょうね」
ちゃんと言ったのに、性器の拘束ははずしてもらえない。
「ん…あ……ッ!」
しかも、ゆっくりどころか動いてすらくれない。
もどかしくて、シャーレンにしがみついて、フィルシスは自分から腰を振ってしまった。
後孔の中で再び硬くなり始めたものが、内部ですれる。
「あ…ぁん…シャーレン…」
イきたい…
あふれる先走りが止まらない。
「そんなにお尻振って、気持ち良いんですか?」
くすっと笑って、シャーレンはベッドサイドのテーブルの引き出しから、ナイフを取った。
指を小さく傷つけて、ぷくりと盛り上がる鮮血を、物欲しそうに頬を赤らめるフィルシスの前にちらつかせる。
血の色と同じ色の瞳に、悦びが浮かんだ。
「んん…っふ……ッく…ん…ッ」
すぐにその指に、フィルシスが子犬のように夢中で吸い付く。
腰を振って後孔に入れられたものを締め付けながら。
白い尾が、またゆらゆらと揺れている。
そんなフィルシスの狼の耳を、シャーレンはもう片方の手で優しくなでた。
この血がないと生きられない体の生き物。
自分でないと満足できない体になった愛玩奴隷。
「あ……っ」
血の止まった指を抜くと、物足りなさそうに赤い目を潤ませる。
この手に堕ちた事が愛しくてたまらなくて、強く抱き締めた。
「んぁ…も…突いて…」
淫らに濡れた声を出しながら、切なげに腰が揺れる。
「そんなに気持ち良いですか?」
ぴくぴくとしている白い耳を、緩く噛みながら吐息を吹きかけるように囁く。
「や…っぁ…」
どこに刺激を与えられても気持ち良くて、耳に与えられる快感にも、背を反らせる。
優しく聞かれるのが恥ずかしくて、答えられない。
硬く尖ってしまっている乳首が、密着したシャーレンの黒衣にすれる。
前立腺を擦って抉られて、達する事のできない陰茎をなでさすられた。
「ふ…ぁあ…ッ…!気持ちいい……っ」
初めて口に出して言う、今まで思っていても、プライドや羞恥が勝っていて言えなかった言葉。
「もっと…して……んあ…ぁん……ッ」
体中を走る快感に、自分を支えられない。
シャーレンの背に腕をまわして、抱きしめ返した。離さないように。
「あなたは本当に可愛いね…これからもずっと、たっぷり可愛がってあげますからね」
その言葉にフィルシスは、びくっと身を震わせた。
「あ……っ」
今まで幾度となく繰り返された、官能の時間が脳裏をよぎる。
そっと顔をあげると、初めて逢った時と変わらない、シャーレンの優しくてきれいな笑顔と目が合う。
今ならその奥に、暗い毒が潜んでいるのが分かる。
自分を傷つけて汚していった甘い棘。
もう決して逃れられないように絡む茨。
抱き締めてくれる腕の中で、その闇に溺れる。
諦めと欲望は紙一重で、心のどこかで、そっと別れを告げていた。
どうか幸せに、ローナ…
故郷の仲間達…
もう二度と会う事はできなくて、この身はもうあの日とは違うから…
ごめんなさい、神様…
この腕の中に、ずっと抱かれていたいと思ってしまうから…
ずっと昔から大好きな人の中に。
「ん…ぁ…っシャーレン……」
不意に寂しくなって、抱きついたまま、甘える声で名前を呼んだ。
二人が繋がっているその場所の快感を味わいながら。
「いつまでも愛しています、私の可愛いフィルシス様」
優しく微笑んで、再び重ねられる唇。
舌が甘く愛撫しながら、口内をゆっくりまさぐっていく。
しっかりと抱きしめてくれる腕の中で、上からも下からも与えられる甘美な快感にフィルシスは身を震わせた。
きっとまだイかせてもらえない。
窓の外の空は、始まったばかりの夜だから。
END.
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