「次はあなたの好きな所だけ、触ってあげましょうか」
「んや…っ!」
そそり立ったままびくびく震える前を、しなやかな指の動きでなであげられた。
「あ…やああ…ッ!」
周辺をなぞるだけで、蜜を流す先端には決して触れられない。
フィルシスは体にたまる熱が苦しくて、与えられる快感が辛くて、ベッドのシーツを握り締めた。
「ひあぁ…っふ…く……ァ…」
前を弄られたまま、胸の飾りを唇で吸われる。
内股に力が入り、悶えて震えた。
「ん…くっ…や…」
胸が、唾液と汗にぬらついた。
苦しくて、声にならない。目を閉じると涙があふれ、シーツを染める。
口からあふれた涎も顎を伝い、すでに汚していた。
「んあァ……ッ」
眉をひそめて、フィルシスは悶えた。
「そんな顔するから、もっとしたくなるんですよ?」
唇を近づけられて、耳元で囁かれる。吐息が首筋をなでていく。
前を弄ってない方の手で三角の耳を根元から握られる。
そのまま、親指でなであげられる。
「…ンん…」
前と、胸と、耳を交互に、時には同時にじわじわと刺激された。
「はぁ…あっ…ふ…あ…っ」
せき止められたままどうすることもできなくて、身をよじらせる。
「も…や…おねがい…ださせ…っ!」
耐えられてなくてフィルシスは、ついに切れ切れに懇願した。
「舐めなさい」
そう言って、シーツを握っていた自分の左手首をつかまれて、指を涎まみれの口元にあてられる。
どうしようもなくて、舌を出して、自分の指を舐めた。
毛繕いをする子犬のように。
「んぅ…」
指をすするように夢中で舐めた。水音だけが響く。
手全体が、涎にぬらりと光る頃、右手も同じように舐めさせられた。
「では、ご褒美ですよ」
拘束をはずして、軽く前をなでる。
それだけで、フィルシスの体がびくっと大きく震えたかと思うと、少しの白濁液を吐き出した。
「あっ…あぁんっ…!」
散々焦らされて、やっと出させてもらえても、ほんの少ししか解放されない。
辛すぎて涙が止まらない。
達する時は、体から手を完全に離された。
そのせいで決定的な快感を与えられず、最後まで出し切りたくて、フィルシスは気づけば自分の手を前に伸ばしていた。
「だめですよ、勝手にいくなんて」
すぐにまた戒められて、細長い指が肌をつぅっとなぞり始める。
「や…だぁ…!くぅ…」
白い尾が布団を叩いた。足をばたつかせる。
「そんなに気持ちいい?」
快感と苦しさと、熱と疼きに、気が狂いそうになる。
そんな悶える自分を、例え一瞬でも逃さないように、あの青い瞳が眺めている。
あと何回これを繰り返されるのだろう。
「や…ッ!もう…やァだ……」
何も考えられなくなって、フィルシスは泣きながらただ呻いた。
「何を言えばいいか、知ってるでしょう?」
ゆっくりとなぞってシャーレンは、フィルシスの先端を指の腹で押さえた。
「や…ぁん!」
あふれる蜜を全体になすりつけるようになであげると、フィルシスの腰がはねあがった。
「まだこうされていたいですか?」
シャーレンは先端の割れ目の中にはめられた拘束具を、爪で軽くひっかいて揺らした。
「あぅっ…」
腹がびくりと震えた。
獣のような荒い息をついて、フィルシスは声さえ喘ぎになって答えた。
「……いれて…」
長くためらった後、震える声で喘いだ。
自分の心の底が暴かれていくような感覚。
「自分で解して、拡げて見せて、おねだりしてみせてくださいね?」
後孔を軽くつつかれる。
羞恥を凌駕する疼きに、もう耐えられない。
「んぅ…っ」
そこに自分の指を当てると、突付いていた指が離される。
先ほどから、快感で閉じられずにいた足を、さらに開いてフィルシスは腰を浮かせた。
尻の肉を手で押し広げ、奥の孔を指の先でさらに拡げて中に入れる。
「ン…あぁ…!」
弱点を突いてしまった。指が止められなくなる。
先ほど自分で舐めて指についた唾液で滑って、くちゅくちゅと水音が鳴る。
「あ…くぅ…」
気持ちのよさにフィルシスは、我を忘れて指を動かしてしまう。
自然と指の本数が増えていた。
「おや、そのまま自分でする方がいいですか?」
霞んだ涙越しに、よがって乱れる自分をじっと眺める微笑みが見えた。
「…っおねがい…いれて…ここに…」
ただ解放されたくて仕方なく、フィルシスはすぐに言われた通りにした。
足を開き自慰をして、涎を垂らして、背を反らせて、そんな姿で懇願する。
急かすように、白い尾がゆるく揺れた。
「何を入れてあげましょうか。玩具がいいですか?
それとも今から魔物でも捕まえてきてあげましょうか。人間なんかのより、ずっと太くて硬いでしょうね」
「はぁっ…違う…シャー…レンが…ほし…ィ……」
胸の突起を弾いて言うシャーレンに、フィルシスはすすり泣いて求められた答えを言う。
その願いが、仕方なくなのか、切望なのか、もう自分でもわからなくなってきた。
「では、準備しないとね?」
下着を脱いでシャーレンは、涎を流すその口に被さるように跨った。
「ふ…んぅ…ッ」
フィルシスはためらわずに舌を出して、差し出された先端をなめ始めて、口に含む。
指を動かして、腰をくねらせたまま。
「淫らな子だ」
耳を弄くる。びくんと体がはねた。
「ん…ン…!」
口の中に出さずに引き抜いて、シャーレンはフィルシスの顔にかけた。
乱れた髪や、ピクつく耳、上気した頬にべとりとこびりつく。
嗜虐心を…そして愛しさを煽る。
「や…ぁ…」
「似合ってますよ?」
ベッドから降りてシャーレンは、まだ自らを弄くる指をひきぬいた。
「あぅッ」
切なそうな喘ぎが漏れる。
「やっぱり自分の指の方がいいんですか?」
意地悪に聞くと涙を流しながら、フィルシスは力なく首をふった。
「では、いれますよ」
シャーレンはフィルシスの足をつかんで、腰を掲げた。
物欲しそうに、ひくひくと収縮を繰り返して蠢いていた。
淫らなそこに、シャーレンは少し硬くなっている自身を挿入して、ゆるく突いた。
すでに解されたそこは、拒まずにもっと奥に引き込むように締め付ける。
「あぁん…ッ!」
誘うようにフィルシスは腰をくねらせた。
「あっ…くぅ…ああ…!」
先ほどまでとは比べ物にならない程、背を反らせて、大きく喘ぐ。
「……あ…やだあぁ…ッ!」
シャーレンは自分だけ中に放ち、拘束したままイかせずに自身を抜くと、まだ残る激しい熱にフィルシスがすすり泣いた。
「いや…いや…もう…」
「いつも誰に抱かれても感じていたじゃないですか」
もっとその口に、言わせたい言葉がある。
意地悪に聞く。もっと思い知ってほしいから。
何度も傷つけた、心も体も、両方とも。
何度も愛した、心で体で、両方で。
傷を見ても、愛を感じても、自分のことしか思いだせないと、もっと思い知ってほしい。
「あの大司教でも暗黒騎士でも、気持ち良ければ誰でもいいんでしょう?」
後孔から流れ出す精液に、シャーレンは指を絡ませながら、意地悪く聞く。
「やだ…シャーレンじゃなきゃ…やだ…」
隅に残る理性で、こんな無理矢理させられて、自分は何を言っているのだろうとフィルシスは思った。
「私もあなたしか抱かない」
シャーレンは自分も服を脱いで、残滓の滴る後孔に挿入した。精液がかきまわされてくちゅくちゅと、濡れた音がする。
はねあがった体の背に手をまわし、優しく抱いた。
知り尽くした体を。
自分を刻み込んだ体を。
「ふ、あ…っ…あぁッ!」
ほっそりとしていて、しなやかなシャーレンの体。
いつものように服越しではなく、直接感じられる熱い体温から、フィルシスは逃げ出したかった。
自分がどこかに行ってしまいそうだから。
それでも、長い間待ち望んでいたように手を回してしがみつく、抱え込んで。
「嫌だ…っ」
フィルシスはそんなことをする自分が嫌になった。
自分を抱きしめる腕の中で、否定するように拒絶するように首を振る。
例え相手が誰であろうと、背徳の行為なのだから。
今までは、犯されても、仕方なく抱かれていた。
体が悔しい程どんなに反応しても、ただ心の底は、必死に拒んでいた。
いつも逃げる理由があった。
大司教にされた時は、自分が抱かれないならば、他の仲間を抱くと脅されて…
初めてシャーレンやラークにされた時は、故郷を滅ぼすと言われて…
今は、血がもらえなくなるから…
仕方なく、だったはずなのに。
「嫌だ……」
「こんなに感じているのに?」
まだ拒むフィルシスにシャーレンは問いかけた。
胸や股間を自分に擦り付けてきて、びくびくと震えているのがわかる。
淫らな音を聞かせるように、後孔の中の自身をかきまわして、中に出した精液をぐちゅぐちゅと鳴らした。
耳をなでると、後孔もきゅっと引き締まる。
「嫌…」
フィルシスの瞳から涙だけが次々とあふれた。
何故泣いているのかわからない。
「私が、ただの゛処理゛で、抱いてると思ってますか?」
「やだ…」
何も考えられなくて、ただこんな自分が嫌で、フィルシスはただ全てを拒否した。
抱かれる中で、首を振る。
「あなたは知らないんだ…」
幼い頃から教会で、聖職者としての戒律を教えられてきて、゛処理゛という形で初めて抱かれて、
゛処理゛の行為でもあって、背徳の行為でもあって、本当に愛しあう者同士がする行為でもあるということを、
処理で抱くのと、好きで抱くのは違うということを…
「や…」
フィルシスは涙が止まらなかった。認めたくない心の奥に。
他の人にされた時のように、体がたとえ感じてしまっても、心だけはこれからも仕方なくと思っていたかった。
シャーレンが、他の人にも自分を抱かせることの意味がわかった。
他の人に抱かれる時の感触が、ただ犯されるだけと知らないままなら、
例えシャーレンに抱かれても、こんなに他の人と比べることはなかったのに。
体だけではなく、心までも堕とされることはなかったのに。
「やだ…シャーレン…やだぁ…」
どうしよう?
神様は怒る?
でもせめて今だけ赦してほしい。
抱きしめられて、挿れられて繋がった時、いつも一緒だとわかるから。
「シャーレン…」
しがみついて自分を呼ぶ体を、もっと強く抱き締めて口付けて舌を絡ませる。
「んぅ…っ!」
「私が一番良いですか?」
口を離されて、耳をなでられる。
声が出なくて、ただ頷いた。
「今まで抱かれたどんな男よりも?」
ただひたすら頷いた。シャーレンの唇が今度は首筋を舐める。
「あ…っ」
舌の感触にびくりと感じる体。
「口でちゃんと言わないとはずしてあげません」
「…シャーレンが…一番気持ちいい…あぁ…ッ!」
言い切ると、拘束をゆるめられてまた少しだけ解放される。
だがまた、すぐに戒められた。
「んぁ…っ!く…ふ、あ…ぁ…ッ!やああ!」
どんなに泣いても、たっぷり貫かれて、中に出されて、卑猥な言葉を言わされて、また一度だけしか達かせてもらえない。
シャーレンは熱い迸りを、たくさん自分の中に注ぐのに。
「やぁ…もう許し…て…っ」
イかされないまま、前立腺を突かれ続け、あまりの辛さに途中で気絶しても、胸の先端に爪を立てて起こされる。
「あなたは誰のもの?」
もっと言ってほしかった、その口で。
萎えない淫らな性器をなぞった。
「んあっ…シャーレンのもの…」
抱かれて貫かれたまま、まだ言葉でさえも堕とされる。
逃れられない哀しさと、悔しさと、恥ずかしさと、悦びが混ざって、涙があふれ続ける。
「いい子だ」
フィルシスの腰をしっかりつかんで、後孔の中をかきまわす。
ぐちゅぐちゅと、淫らな音が響くそこに、シャーレンは精液を注ぎ込んだ。
「……ッ!あー……ッ!」
何度も何度も自分が欲しいと、自分が1番良いと言わせた。何度でも聞きたかった。
全て出し切るまで、それを何度繰り返したかわからない。
声が枯れるまで泣かせて喘がせた頃、やっと全て出し切って、魔法が切れたようだ。
喘ぎの代わりに小鳥の声が聞こえ始める。
開きっぱなしの口から涎があふれ、爪先までぴんと伸びて痙攣する体を眺めた。
閉じた瞳から、まだ涙があふれていた。
こんなに何度も泣かせて、いつか罰がくだるかもしれない。
それでもどうしようもない程愛しく思う。
体液でべとべとになって、気絶した体を、汚れたシーツごと抱き上げて、浴場に運んだ。
洗い終えて、ベッドに寝かせて髪をなでた。耳がぴくっとする。
布団の中で眠ってる体を抱きしめた。もたれかかってきたような気がした。
いつも離せない。
自分が縛っているようで、本当に縛られているのは自分の方だから。

「シャーレンなんか大嫌いだ…」
昼頃に気がついて、昨夜を思い出して、フィルシスは体のだるさにぼそっと呟く。
「知ってますよ、そんなに何回も言われたら」
ベッドに座ったままシャーレンは、ぐったりした体を膝の上に寝かせて、垂れた白い尾にそっと触れた。
「じっとしててくださいね」
「ん……」
シャーレンは朝か入浴後はフィルシスの尾の毛並みを整えた。
いつ触れてもふわふわするように。
抜けた毛を、取らずに放っておくと、床に落ちて汚れる。
柔らかな白い尾をゆるく持ち上げて、付け根の飾り毛から裏側をブラシですいた。
膝の上でおとなしくしているフィルシスの、犬のような耳をなでた。
「今日は足の爪も切りましょうね」
あまり長く切らないでいると、床にひっかかるらしい。
フィルシスは爪切りが好きではないらしく、切ろうとすると、いつも少し体を強張らせる。
耳をなでて落ち着かせた。
何度もなでて、どういう風になでれば最も気持ち良さそうにするか、知り尽くしていた。
悪戯で足の指の間や薄紅色の肉球をつつくと、少し身じろぎして嫌がった。
「やだ…っ」
くすぐったいのか、フィルシスの耳がぴくりと跳ねる。
「私は今日は地下を掃除しますから。あなたはまだ寝たいですか?」
その耳をなでながら言った。
まだしんどいのか、切り終えても膝の上に寝転んだままだ。
「当たり前だ…」
だるそうに呟いた。
「そうですか。地下室に行くとあなたで遊びたくなるんですけどね」
フィルシスはあの部屋で今までされたことを思い出した。恥ずかしくて顔が赤くなる。
また殴りたくなったけど、疲れてそんな気もなくなった。
「…ばか、シャーレンなんかずっと掃除しとけばいいんだ」
そんな風に拗ねる様を見せられると可愛くなって、ずっとなでていたくなるが、
しばらく放っておくのも、後で寂しそうな仕草を見せてそれも可愛いから、シャーレンはその場を離れることにした。
「わかりましたよ。」
ベッドに横たえられて、戸の閉まる音が聞こえた。
フィルシスはしばらくそのまま寝ていた。
疲れていて夢すら見なかった。
起きた時、窓の外が視界に入っても、まだ日は暮れていなかった。
まだシャーレンは掃除が終わってないだろうか。
ずっと寝転がっているのも、色々考えてしまうから、だるい体を起こし服を着て、書斎に行った。
暇な時はよくその部屋で本を読んだ。
歴史書から物語、魔術の本までたくさんあった。
言葉がよくわからないものも多かったが、辞書もあった。
「…!」
端から順に手をつけていて、今日見る棚には、隅のほうに懐かしいものが置いてあった…。
アルバムだった。
幼い頃の自分…
異国に行った時の写真…
聖騎士団の仲間と自分…
教会の花壇の前に立つローナと自分…。
ひとつひとつの写真に、また思い出が蘇る。
花壇に植えてあるのはローズマリーの花だ…

「私、ローズマリーが一番好きなの」
「そうなんだ、どうして?」
「ローズマリーの花言葉、知ってる?」
「ごめん、また知らないな」
「゛変わらぬ愛情と思い出゛っていうの」
「……いい言葉だね…」
「そう言ってくれて、嬉しい」
「どうして、その言葉が好きなの…?」
「…ちょっと、暗くて、フィルシスもきっと悲しくなる話だけど、それでもいい?」
「うん、いいよ、ローナの話ならなんでも聞くよ」
「私…お父さんもお母さんもみんな殺されて…
一人になった時、何度も何度も、こんなにも辛いなら全部忘れたいって思ってた」
「…うん」
「こんなにも辛いなら、なかった方が良かったって思ってた。最初から一人だった方が良かったって思ってた」
「……」
「でも、私、気付いた。
本当に大切だったから、こんなに辛いんだって、私がみんなを好きなこと、ずっと消えずに変わらないって。
私の思い出の中で、死んだみんなも一緒に生きてる。だからこの思い出は今は大切な宝物」
強い少女を抱きしめた。
少しためらって、もたれかかってきた。
「フィルシス…」
自分も家族や街の人が殺された時、たまにすべて忘れたくなる時があった。
でもその答えを聞いて、自分も気づくことができた。
「でも私、家族も家も故郷も失ったけど…悪いことばかりじゃないの」
抱きしめた腕の中で、ぽつりと呟いた。
「え…?」
「だってこの国のみんなに…それと」
うつむいていた顔をあげてローナが笑顔を見せた。
「フィルシスに出会えたんだもの」

なのにまた一人にしてしまったんだ…
強い罪悪感が襲う。
出立の日の朝、自分の思い出も背負って、生きてくれると微笑んでくれた。
今は自分を失って、今度は誰に出会うのだろう?
自分は今は、ローナも仲間も失ったけど…
「…シャーレンなんか…」
フィルシスは書斎を出て、そっと地下に降りた。
自分がいるとシャーレンならわかるけれど、そっと後ろから抱きついた。
「…何ですか。私なんか嫌いなんでしょう。ずっと掃除してたらいいんでしょう」
振り向かないで言われた。
「うん、そうだよ…」
今なら微笑んでも、前を向いてるシャーレンには見えない。
「はいはい、そうしますよ。まだ庭掃除があるんです」
腕をはなされて、今度は振り向いて抱きしめられた。
「庭…?」
「そうです、荒れ放題ですからそろそろ何か植えます」

次の日の朝、朝食の後、早速庭に出た。
その庭掃除は二日もかかった。
シャーレンは二十年以上も家を空けていたようだから、仕方ないけれど。
広い庭に、枯れた黒百合が放ったらかしで、枯れていないのは伸び放題の状態だった。
一日目はそれを夕方までかかって、植物は全て一旦抜いて、花壇を作り直した。
二日目に、ようやく種を蒔くことができるようになった。
「さあ、何を植えようかな。媚薬の原料とかどうですか?」
「嫌だ…」
「それか、あのイグデュールの屋敷みたいなのがいいかな。気持ち良かったんでしょう?あれ」
「嫌だ…」
恥ずかしいことを思い出して、顔が赤くなったのが自分でもわかる。
「全部搾り取るまで放さないのとかもあるんですよ。後は植物と動物の中間みたいなのとかね。
卵とか産み付けられたらどうなるんでしょうね?
上からも下からも欲しくて欲しくてたまらなくなるみたいですよ。本によると。」
「…っ!」
楽しそうに意地悪を言う。また胸を殴った。
「それが嫌なら手を出して」
シャーレンは微笑んで白い耳をなでてなだめた。
恐る恐る差し出したフィルシスの手の平に、ポケットから出した小さな布の袋を何個か乗せた。
「開けてみてください」
「これって……!」
フィルシスは思わず声を上げた。
昔、ローナに見せてもらったのと同じものだった。
「そう、レンドラント国の植物の種です。」
白い尾が揺れた。
「どうして…」
「一応少し持って来ておいたのですよ。
日光の量や気候が大分違うので上手く育つかわからなったから、植えないままでしたけどね。」
昔、ローナと一緒に植えた種を蒔く。
二人で昼過ぎまでかかって植えた。
今はローナは一人で花を植えているのかな…。
「咲いたらいいな…」
「こまめに世話をすれば大丈夫ですよ。あなたはそういうの、得意でしょう?」
嬉しそうに、少し寂しそうにフィルシスが呟くのを抱き寄せて、シャーレンはやさしくなでた。
「うん…」
フィルシスはそっと抱きつき返した。
今では遥か遠くの、満開に咲く花を思い出す。
いつまでも抱きしめてくれるその腕の中で、ただあのローズマリーの花言葉だけが頭に響いた。


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