「寂しがり屋の天邪鬼に10のお題」(配布元Abandon様)
全部甘々かほのぼのです。1〜5は続いてます。
| お題一覧 | |
| 1.どうして素直に寂しがれないかな。 | 6.反対の感情が君の本音。 |
| 2.寂しくない! | 7.「寂しい」よりも多い言葉。 |
| 3.気丈に待つ寂しさ。 | 8.こっそり寂しがり行動。 |
| 4.一人にすると死ぬぞ!と脅された。 | 9. 否定の言葉の中に潜む感情。 |
| 5.寂しすぎると逆切れします。 | 10.寂しがり屋の天邪鬼はだぁれ? |
1.どうして素直に寂しがれないかな。
いつも七時ぐらいに起きる。
フィルシスはまだ寝ていた。すぐ隣で体はこちらに向いている。
起こさないように、そっとベッドから出て着替えた。
昨夜は遅くまで抱いた、まだしばらく起きないだろう。
階下の台所で朝食を作った。
作り終えても保存してまだ食べずに寝室に戻る。
起きた時に自分が隣にいなければ、ほんの一瞬だったが寂しそうにしていたから。
まだ眠っているフィルシスの横に座った。
すやすや眠る寝顔を眺めた。毎朝何回見ても眺めたりないぐらいだ。
しばらくすると目を覚ました。
「おはよう」
そう言って耳を軽くなでた。
「……おはよう」
寝転んだまま、目はあわせずにぼそっと呟いた。
前夜の抱き方で朝の機嫌が決まる。
「朝食はできてますからね。早く着替えなさいね。」
フィルシスが小さく欠伸をしながらベッドから上体を起こした。
「…シャーレンはもう食べたの…?」
どんなに機嫌が悪くても、必ず自分を遠まわしに求める。
でもそんなことを聞かれたら遊びたくなる。
「私はもう食べました。あなたが寝てる間に。」
「そう…」
残念そうな声。無意識のうちに。
「でも、私は洗濯しなければならないけれど、
あなたが食事している間一緒にいてあげてもいいんですよ?」
「ご飯ぐらい一人で食べる…」
自分が残念そうな返事をしたのに気付いたのか、慌ててぶっきらぼうに答えた。
なのに寂しそうな目をする。
なんて愛しいんだろう。
「…嘘ですよ。まだ食べてません。」
「…何でそんな嘘つくんだ」
怒って言った。
嘘をついたことに怒ったのか、
すぐに一緒に食べようとしなかったことに怒ったのかはわからない。
「ついたらいけませんか?どうせご飯ぐらい一人で食べるんでしょう?」
「……っ」
はっとして、さっきの言葉を後悔したように、言葉に詰まる。
「そうだよ…」
小さな声で呟いた。
こんなにわかりやすいのに本当に意地っ張りだ。
たまらなくなって抱き寄せた。
「冗談ですよ。あなたをからかうのって面白いんだもの。」
自分がいつもどんな顔をしているか、わかってないのだろうか?
「面白くないよ…っ」
怒ったように言っても、抱いた腕の中で胸にもたれてきた。
いつもそっぽを向いて自分から決して何も言わないけれど、
こっちから抱いてやるとそっと懐く様に身を任せてくる。
こっちが我慢して放っておいてみたらどうなるかと思っても、
いつも結局自分には我慢できずに抱きしめてしまうから…。
2.寂しくない!
「街に買い物に行ってきます。」
「…一人で行くの?」
「一緒に来たいですか?」
「別に…」
相変わらずな答え。
「あなたは行かない方がいい。暗黒騎士より物騒です。
でも鎖を繋いで裸で四つんばいなら大丈夫だと思いますけど?」
「…」
怒ったように睨まれた。そんな顔もかわいく見える。
別に、と言った割りに玄関までついてきた。
「やっぱり私がいないと寂しいの?」
からかう風に言った。また意地っ張りな返事が返ってくる。
「…別に寂しくないよ、いつまでも子供じゃあるまいし。」
だったら何でそんなにぽつりと言うんだ。
「じゃあ留守番しといてくださいね。すぐ帰りますから。」
わざとそっけなくそう言って返事も聞かずに外に出た。
振り向かなくてもどんな表情かわかる。きっと少し憂鬱な顔。
でもわざと遅く帰ってみることにした。
一緒にいたいけどたまには少し意地悪もしたくなる。
「…シャーレンなんか別にいなくてもいいもん…」
いつもひどいことばかりするのだから。
段々遠ざかっていく後ろ姿がやがて見えなくなった。
「……」
いつまでも子供じゃない…
でも大人とか子供とか関係ない…好きな人と一緒にいたいのは。
3.気丈に待つ寂しさ。
昨夜のシャーレンのせいで朝から腰が痛い。
ベッドの上でごろごろした。
「……」
早く時間が過ぎてほしい時ほど寝付けない。
一人でいると考えたくないことを考えてしまう。
今まで一人でいて寂しいと思った時はいつも、聖騎士団の仲間が一緒だった。
いつでもローナに会えた。
いつもシャーレンが…
「……」
…シャーレンなんか帰ってこなくていい。
どうせ帰ってきたら、また犯されるんだ。
「はー…」
いつも二人で寝ているベッドが広く感じて、何故か哀しくなってもう一度寝るのはやめにした。
いつもなら一緒に昼食を食べて後片付けをしてる時間になった。
でも今日は一人だけ。
剣を持ってきて、広間で剣技の稽古をした。
最初は無心に剣を振っていれた。
段々疲れてくると集中が乱れてくる。
剣を振って練習していても思い出すのは聖騎士団の仲間。
隣で見ている恋人。
゛あなたは左利きだから、敵の意表をつけるかもしれませんよ゛
剣の練習をしていた時のシャーレンの言葉を思い出した。
「……」
昼をだいぶ過ぎているのに帰ってこない。
この屋敷は広いから、ここまで扉を開く音は聞こえないけど、もしかするともう玄関にいるのかも?
「……」
でも行ってみても誰もいなかった。
自分は何をしてるんだろう、ただ待つだけなのに。
「……」
酒を飲んだらすぐに眠れるかもしれない。
用を足したくなったら困るけど…。
そう、別にシャーレンに会いたいわけじゃない、こんなひどいことをするから、いないと困るだけ。
もうすぐ夕方。
すぐ帰るって言ったのに。
「……」
台所に置いてあった調理に使うワインを少しだけ飲んでみた。
少しだけならきっと大丈夫…
せめて夢の中でだけでも、もう一度みんなに会いたいな…。
4.一人にすると死ぬぞ!と脅された。
「フィルシス様?」
陽が完全に沈んだ頃に帰ってきてみると、玄関前の廊下の隅に寝そべっていた。
何でこんな所で寝てるのだろう。
そんなに待ちどおしかったのだろうか。
愛しさがこみあげる。
そっと抱き上げた。
「…?」
顔が赤い。
台所を通り過ぎる時、ワインのボトルが見えた。
少し意地悪しすぎたかな。
「う…」
時折苦しそうに呻く。
寝室に運ぶとベッドに座って膝枕で寝かせた。
耳をなでて気がつくまで待った。
「…シャーレン?」
ぼんやりとこっちを見上げて抱きついてきた。
まだ酔ってる。
今日は何を言うだろう。
「気がつきました?」
「…また私を犯すんだ。」
抱きついてる割りにそんなことを言う。
「まだ何も言ってないでしょう」
「……留守の間に私が逃げたり自害したらどうする?
玩具がなくなって困るだろ?」
やはり遅く帰ったことを怒ってるが、なんてひねくれた言い方だ。
そんな言い方をされるとまた意地悪したくなるのに。
「別にあなたが死んでも私が困るわけではないし。 奴隷はまた探せばいい。
あなたとあなたの大切な人たちが困るだけです。」
笑ってきっぱり言い返すと、哀しそうな顔をした。
「…」
「あなたの死体は防腐処置を施して、新しい性欲処理玩具のできあがりですしね。
暗黒騎士達が喜びそうだ。」
「……っ」
泣きだして今にも部屋を飛び出しそうなところを抱きしめた。
「嘘ですよ、嘘。あなたにいてほしい。」
「……」
そう言って耳をなでているとそのまま寝付いた。
死体がいいわけない。
こんな反応や仕草を見るのが好きだから、ついついやりすぎてしまうのに。
5.寂しすぎると逆切れします。
目が覚めて、頭をなでる手の感触がした。
「大丈夫ですか?」
「…あんまり」
「勝手に飲んだらだめでしょう?それにあんな所で寝て。」
「…」
そう言われても覚えてない。
ただ何か泣いたような気がするだけ。
「自由に動けないように地下室に鎖で繋ぎますよ?」
「だってシャーレンが…!すぐ帰ってくるって…言ったのに…」
思わず顔をあげて怒鳴ってしまった。
恥ずかしくなって最後の方は声が小さくなった。
「そんなに私に会いたかった?寂しくないって言ったのに?」
シャーレンが、しめた、と言うような微笑を見せて言う。
「別に…」
はっとして目を逸らす。
「こんな喜ぶ犬みたいに尻尾をたててるのに?」
「…!」
やさしい手が尾に触れてなであげる。
そのままその手を背中に回されて抱き上げられた。
「やだ…!」
悔しくなって身をよじって逃れようとしたけれど、耳元でささやかれた言葉に鼓動が高鳴った。
「ごめんね」
こんな風に抱かれると安心してしまう。
ずっと昔から知っている感触だから?
「……」
返事をする代わりにそっと寄り添った。
一人にしないで、昔のことばかり思い出すから。
幸せな思い出のはずなのに、時に冷たく胸を刺していく。
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