「寂しがり屋の天邪鬼に10のお題」(配布元Abandon様)
6〜10です。全部甘々かほのぼのです。9だけちょっとエロありです。
| お題一覧 | |
| 1.どうして素直に寂しがれないかな。 | 6.反対の感情が君の本音。 |
| 2.寂しくない! | 7.「寂しい」よりも多い言葉。 |
| 3.気丈に待つ寂しさ。 | 8.こっそり寂しがり行動。 |
| 4.一人にすると死ぬぞ!と脅された。 | 9. 否定の言葉の中に潜む感情。 |
| 5.寂しすぎると逆切れします。 | 10.寂しがり屋の天邪鬼はだぁれ? |
6.反対の感情が君の本音。
朝からラークが来ていた。
何か、発見したよくわからない物をシャーレンに聞きにきたようだ。
三人で応客間のソファに座る。
シャーレンがそれを見て調べている間、暇なのか、ラークがこっちを見た。
無意識のうちに身構えた。
「何だ…」
「暴れるなよ?」
「な…!?」
いきなりソファの上で押し倒された。
「お前は確かに強いけど、純粋な力の勝負だと、俺には勝てないだろ?」
「ひぁ…っ?!」
そのまま脇をくすぐられる。
「やめ……っ!」
くすぐったくてたまらない。
洩れそうになる笑い声を我慢する。
「やっぱこうされるのも弱いんだな。
お前っていつも仏頂面してるから。
たまには笑った顔も見せてみろよ。」
「や…っ!!」
シャーレンはそんな二人を見て微笑した。
やはりラークは面白い事を考えると思う。
もう笑いかけてくれなくてもいいと思っていた自分には、
無理矢理笑わせようなんて、そんな発想でてこなかったから。
「嫌だ…!お前なんか…っ」
まだ気を許したくない。
笑顔を見せたくない。
シャーレンにさえ見せてないのに。
「強情だな。足の裏の方がいいか?」
片足をつかまれ、肉球の周辺に触れられる。
「…っ!」
少し表情がゆるむ。
「そうそう、おとなしくそうしていれば可愛い可愛い。」
今度は尻尾をつかまれて、柔らかな先端で足の裏をくすぐられた。
「やだ…!」
たまらなくなってラークの腕を、つかまれていない方の足で蹴飛ばした。
狼の爪がその指をひっかいた。
「痛ってぇーっ!!」
ラークが手を放して叫んだ。
「はは!」
二人の様子を見て、シャーレンは思わず声を出して笑った。
「お前が笑うのかよー」
「悪い。薬を持ってこよう。」
そう言って部屋を出ていった。
「…さすが、聖騎士団長様は笑わせるのも一苦労だな」
ラークが、起き上がって身構えるフィルシスに言う。
でもまた今度挑戦してみよう。
「お前みたいにへらへらしていられるか…」
不機嫌そうに言い返す。
「そんなに暗いと女の子にもてないぞ。変な男にしかもてない聖騎士団長様。」
面白そうにラークが言った。
「余計なお世話だ…」
まだ一年もたっていない、昨日の事のように思い出せる故郷の日々での自分は、もちろん笑っていた。
仲間と、ローナと、シャーレンと…。
みんなで笑えたあの日のように…
いつか三人で笑いあってみたいと思うのか、でもそれはまだ、自分すら知らない胸の内。
7.「寂しい」よりも多い言葉。
「お子様が団長だなんて、そんなに人出不足だったんだな。聖騎士団は。」
「馬鹿が団長よりマシだ」
剣のかち合う音が響く。
騎士の稽古が辛くても、志を同じくする者がいたから乗り越えられた。
一人で剣を振ると、そんな昔を思い出して寂しくなることもあるけれど…
今は目の前に好敵手、一人じゃない。
昔に読んだいくつかの物語…
聖騎士と暗黒騎士が一緒に稽古する話なんて聞いたことがない。
戦場で出会った聖騎士と暗黒騎士、最初はもちろん敵同士…
しかしやがて、互いにひかれていく。
だが待っているのは、解りあえた友との別れ。
゛もっと別の形で出会っていればきっと親友になれただろうに゛
゛生まれ変われるなら、今度こそは仲間として…゛
と嘆きながら戦いあって、どちらかが戦死する。
そして墓標となった剣の前で一人呟く
゛お前ともう戦えなくて寂しい…゛
そんな聖騎士と暗黒騎士達の物語…。
どれも悲しい別れの結末。
でも自分の物語は…
「…ひかれてなんかないから違う」
「何か言ったか?」
「…何でもない。」
戦場で出会ったけれど、今まで読んだのとは違う展開。
別の形で出会わなくても…生まれ変わらなくても…
きっと言わなくてすむ、寂しいなんて。
8.こっそり寂しがり行動。
たまには外を散歩しようと、二人で屋敷を出た。
暗い世界で見知らぬ場所を歩く。
後ろからそっと、大人な手を握った。
「何してるのですか」
「別に…」
そう答えても握り返してくれる手。
自分がまだ幼い頃も同じように、その手をつないで色々な場所に行った。
そんな思い出と重なる。
本当の父親と手をつないだことはほとんど覚えてないのに…。
9.否定の言葉の中に潜む感情。
「じっとしなさい」
「嫌だ…!」
逃れようとしても強く抱きしめられて、服を脱がされていく。
敏感な部分を撫でられながら。
「や…ぁッ」
なのに、こんなにも熱くなる体が悔しかった。
「シャーレンなんか嫌いだ…」
ぐったりとベッドに横になったまま呟く。
抱いた後いつも言う言葉。
たまには悪戯をしたくなる。
「あぁ、そう。じゃあ私は違う部屋で寝ます。」
ベッドから離れて、部屋を出た。
「……」
扉を閉める直前、一瞬こちらを見た。
閉めた扉の前でしばらく待ってから、扉を少し開けて中を覗いた。
拗ねたように布団に潜っていた。
「冗談ですよ。」
ベッドの側まで戻り、掛け布団をめくってそっぽを向いた体の隣に寝転んだ。
自分だって一緒にいたい。
「……ん」
抱き寄せられる。
そっぽを向いたまま、そっと尻尾だけ寄せた。
そのまま、まどろむまでやわらかく耳をなでられた。
何をされても好きなままなのが悔しいから、
゛嫌い゛と言葉に何度も出すのがせめての抵抗なのに。
10.寂しがり屋の天邪鬼はだぁれ?
寝る前はどんなに嫌がっていても、
眠り込むと隣で子犬のようにきゅっと丸くなって寄ってくる。
「…シャーレン」
小さな寝言が聞こえて、耳をなでた。
どんな夢を見ているのだろう。
昔の夢だろうか、それとも今の夢だろうか。
うなされていることがよくある。
失った多くのものの夢に。
…夢なんか何でもいい。
所詮夢だ。
例え離れ離れになる夢だとしても、目が覚めれば現実に、いつも側にいてあげる。
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