初めての体験 ヒカル祭り

(16)
 逆だ!キミの女装姿を想像して、昂奮してしまったんだ!!
「進藤…」
ボクにもその可憐な姿を見せてくれ―――――
 思い切って頼んでみようとしたその時、ヒカルはニッコリ笑ってアキラを見上げた。
「よかった…」
「へ?」
何がよかったと言うのだろうか?間抜け面でまじまじと彼を見つめてしまった。
「塔矢、そーゆーのキライなんだろ?オレも…」
と、ヒカルは恥ずかしそうに頬を染めた。
「え?え?」
「男なのに、何で女の格好しなきゃいけないんだよ!?おかしいんじゃネエの!?あいつら!」
なっ?と、彼は眩しいくらいの笑顔をアキラに向けた。
「……………………………そうだね…ハ…ハ…ハ…」
全身の力が抜けた。頬の筋肉が不自然に捩れた。

(17)
 もしもし、塔矢ですが…いつもお世話になっています。あの、この前進藤が呼ばれた
イベントのことを詳しく教えていただきたいのですが…ええ…連絡先…え?いえ、進藤が、
忘れ物をしたとかで…本人はもういいと言っていたのですが…ええ…そうです…
あ、メモをとりますので…はい…はい…ありがとうございます…はい…よろしくお願いします…
はい…失礼します…

 「さて…と…」
アキラは電話の受話器を置くと同時にジャケットを引っ掛けた。そして、携帯電話を取り出し、
意味ありげに見た。
「最近のものは本当によくできている。」
電源を入れる。と、バチバチと音が鳴った。
 アキラはにやりと笑みを浮かべ、それをポケットに滑り込ませた。


おわり

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