ミミズ妄想
(6)
ヒカルはパッと顔を輝かせた。
「おじさん治せるの?」
「ああ、おじさんはこういうの治すの、得意なんだよ」
医者か何かかとヒカルは思った。男はヒカルをさらに奥のほうに連れて行く。
公園からは見えない大きな茂みの脇に二人は座った。
「えーと、何くんだっけ?」
「ヒカル」
「じゃあヒカルくん、足を大きく開いてくれるかな? これも脱いじゃおうね」
運動靴を取り、ジーンズと下着を脱がされてしまった。
だがヒカルは大人しくしていた。この胸のうちをざわめかすうずきを消してほしかった。
「う〜ん、これはひどいねぇ〜。ヒカルくん、ちょっとガマンしてくれるかな。男の子だから
大丈夫だよね? 声をたてちゃいけないよ?」
ヒカルは緊張した面持ちでうなずいた。
「おじさんの肩をつかんでいていいよ」
そう言うと男は指でヒカルのペニスをつまみ、揉みほぐしはじめた。
「ん、ん……ッ」
身体がびりびりとしびれたように思えた。ヒカルは男の肩を強くつかんだ。
男は皮を引っ張り、しかめ面して出てきた頭を弾いた。
「ひゃぁっ!」
「ヒカルくん、静かに」
ヒカルはうなずくと、唇を引き結んだ。男はまたペニスをいじりだした。
見ていると、ヒカルのそれはますます腫れていくように思えた。
切ないうずきも一向に消えようとしない。悪くなっているのではないだろうか。
「ねぇおじさん、オレ痛いよ……」
「思ったよりも悪くてねぇ〜。ヒカルくん、何が起きても声を出さないと約束できるかい?」
声をあげるほど痛いことをするのだろうか。ヒカルは怯えたが、それでもうなずいた。
自分は男なのだから、痛いくらいで悲鳴などあげたりしない。
(7)
男の顔が見えなくなった。男は自分の股間に向かっていた。
なにか思う間もなく、ヒカルのペニスはぬるっとした感触に覆われていた。
「あッ……」
口のなかにあると気付いたヒカルは、小さな声をあげてしまった。それを咎めるように、男は
視線を投げかけてくる。慌てて両手をやって、声が出せないようにした。
小さなヒカルのモノはすべて男の口のなかにおさまってしまっている。
「ん、ンン……ッ」
舌と柔らかな口内をすぼめて、男はヒカルのペニスをしごいてくる。
膝がふるえだす。初めての感覚が身体を支配する。
チュウチュウと吸われ、ヒカルは目尻から涙をこぼしてしまった。
「ア……ヤダ……ッ!!」
急にこみあげてきたものにあらがいきれず、ヒカルは背中を大きく反らせた。
何かが出された気がしたが、それに気はまわらなかった。
胸を上下に弾ませ、ヒカルはだらしなく地面に横たわっていた。
男はなにかを飲み下している。その唇の端から垂れたものを指先で取り、舐めた。
くすんだ男の唇が妙に艶めいているように思えた。
「悪いものを出したね。もう大丈夫だよ」
「…………けど、オレまだヘンなかんじが……」
そんなことを言ってはいけない、と頭のなかで警告音がした。
だがヒカルはどこかねだるような目で、男を見つめていた。
男はまた微笑むと、指先を服のなかに入れてきた。
「いた……っ」
きゅっと胸の突起を強くつねられた。男は身体をヒカルの上にのしあげている。
「ここも硬くなってるね? ミミズの毒は全身にまわるんだよ」
すそをめくりあげると、男は先ほどヒカルを含んでいた唇で、乳首に触れた。
(8)
まるで赤ん坊のように吸われ、ヒカルはまた涙を流していた。
痛いような、むずかゆいような、気持ちの良いような、わかのわからない感覚が湧いてくる。
男の手が再びヒカルの下肢に動いていた。小さな性器を大きな男の手が包む。
「ヒカルくん、ここも悪いようだね」
「ん……んん……ッ、んぅ……」
ヒカルは唇を奪われていた。
生臭い男の舌が、ヒカルの逃げようとする舌を追いかけ、からめとってくる。
怖くて、ヒカルは頭を振った。唇が離れると、唾液が糸をひいた。
「ぼくは治してるんだよ? 大人しくしてなくちゃあダメじゃないか」
心外そうに男は言う。ヒカルは自分がいけないのだと思いなおし、目を閉じた。
「ふぅ……ンン……」
男は本当に悪いものを吸い出そうとするかのように、口のなかを吸い上げてくる。
身体の力が抜けていく。ヒカルは男のされるままになっていた。
「あ……おじさぁ……ん……っ」
またなにかが込みあげてきた。男はうなずくと、強く性器をしごいた。
体液が流れ出ていく。漏らしたのかとヒカルは思った。だが男の手を濡らしているのは、白い
ものだった。まるで膿のように見えた。
「また悪いもの、出たの……?」
「そうだよ。ところで、ヒカルくん。おじさんも、うつっちゃったみたいなんだ」
男はカチャカチャとベルトを外すと、ヒカルの眼前に勃起したペニスを突き出した。
少年たちのものとは全く違った色と形状に、ヒカルは息を飲んだ。
「ホラ、こんなに腫れてるだろ? ヒカルくん治してくれないかなぁ?」
「で、できないよ、オレ……」
繁茂していると言っていい陰毛から飛び出している性器に透明なものが滴り、光っている。
それはまるで生き物のように脈打っていた。
「おじさんのしたように、してくれればいいよ。大丈夫、ヒカルくんならできるよ」
そんなふうに言われて、できないとはいいにくかった。
ヒカルは恐る恐る、唇をペニスに寄せた。
(9)
それは変な味がした。臭みがあり、思わずむせそうになる。
だがヒカルは我慢してその先端をくわえた。とてもじゃないが、すべては入らない。
とりあえず舌で舐めてみる。するとビクンとうごめき、膨張した。
「うん、いいよ、ヒカルくん……」
男の声に励まされ、ヒカルはさらに舌をからませてみる。
小さな口をいっぱい開いて、男のモノを受け入れているため顎が痛くなった。
すると男は一度引き抜き、ペニスの横を唇に触れさせた。
「舐めるだけでも、もっと良くなるから……ね?」
男の息遣いが荒くなっている。少し気味が悪いとヒカルは思った。
いけないことをしているのでは、という考えがよぎる。だが自分は治してもらったのだ。
そしてうつしてしまった。きちんと借りは返さなければいけないと、自分に言いきかせる。
頭に手を置かれ、重さに顔をしかめながらも、ヒカルは舌と唇で男のそれを慰めた。
「うん……ヒカルくん……手でこすってくれないか?」
承諾するまえに手を取られ、ペニスに添わされた。
男のそれはずしりと重く、ヒカルは驚いた。ビクビクとしたものが手のひらにに伝わってくる。
「さあ、いくよ……」
一緒にしごきだした。最初はゆっくりだったが、妙な液体のため滑りが次第に良くなった。
男の息もますます激しくなっていく。ヒカルは呆然と手のなかのモノを見ていた。
「ああ、出そうだ……ヒカルくん、飲んでくれるかい?」
うわずった声で男は聞いてくる。しかしそれはほとんど強要だった。
「オレ……」
「ぼくはのんであげただろう? 大丈夫、ゆっくり少しずつ出すからね……」
両頬をはさまれ、ヒカルは逃げられなかった。
半開きの唇をペニスがこじ開けて侵入してくる。先ほどよりも濃い味と臭いがした。
男は手の動きを早め、急に止めた。勢いよく口内に射精された。
ヒカルはわけもわからず飲み下しながら、心のなかで男をののしっていた。
ゆっくりだと言ったのに、こんなに飲みきれないほど口のなかに放った、と。
(10)
男は口のまわりを白く濡らしているヒカルを、ていねいに舐めてくれた。
ときどき唇を合わせ、噛んできた。
「ヒカルくんのおかげで、おじさんも良くなったよ。ありがとう」
こんな人の良さそうな笑顔で言われて、複雑な気持ちになる。
「オレが、先に治してもらったから……んぅ」
また唇をふさがれた。もう臭いも味も気にならなかった。そのくらい、何度もしたのだ。
もう薄暗く、公園で遊んでいる子供もいないようだ。
「だけどミミズの毒は、すぐには消えないんだよ」
「え!? そうなの?」
男は残念そうにうなずき、耳たぶをしゃぶってきた。
「だからまたおかしくなったら、おじさんのところへおいで。治してあげるよ、何度でも」
ヒカルの服を調えると、約束だと言いながら、もう一度唇を押し付けてきた。
男の顔を見たまま、ヒカルは唇を開き、舌の侵入を許した。
それは秘密事めいていて、ヒカルは少し大人になったような気分がした。
「……で、どうなったんだ、その後」
ヒカルの話を聞いていた少年が、仏頂面で聞いてきた。
「んー、もう会わなかったな。なんかその後、近所で変質者がつかまったんだよ。なんか子供
にワイセツな行為をしようとしてたとこを、おまわりさんに見つかったらしい」
たぶんその人じゃないかなあ、とヒカルはのん気に言いながら、毛布を引っ張った。
「キミはそのころから、考えなしの馬鹿だったんだな」
「バカっていうヤツのほうが、バカなんだよ。っておい、なに押し付けてるんだ」
「ボクのここも、腫れたみたいなんだ。治してくれないか?」
ヒカルは目を丸めたが、おかしそうに笑うと、のりかかってくるアキラに腕をまわした。
―――― 終わり ――――