密室
(1)
「ん・・・」
ヒカルは、布団の上で目を覚まし、肌寒いことに気がついた。
変だな・・・、と目を擦ろうとするが、両手は、頭の上のほうで縛られている。
身につけているものは、Yシャツと学ランだけだ。ズボンは脱がされている。
ヒカルの頭が、一気に覚醒した。
「おい、進藤君、目が覚めたみたいだ」
周りには、男が5人、獣の目で自分を見ていた。
皆、見たことのある顔だ。確か、対局したことがある若手棋士たちだ。
「進藤、気分はどうだ?」
彼らの後ろから、よく知っている男が現れた。
「わや・・・」
ヒカルは目を見開き、呟いた。
(2)
「おい、マジでヤッていいのかよ」
男の一人が、ハアハアと興奮しながら和谷に尋ねる。
「あぁ、好きにしろよ。コイツ、すげえヤリマンだぜ」
「おい、男もヤリマンって言うのかよ」
ゲラゲラ笑う男たちに囲まれ、ヒカルは怯えながらも、
自分が笑いものにされていることに腹が立った。
ヒカルは、精一杯の虚勢を張って言った。
「ふざけんなよ、和谷!冗談やめろよ!」
和谷は、ヒカルの側にひざまずくと、耳元で囁いた。
「お前、本当に冗談だと思ってんのか?
言っただろ、進藤、お前が悪いんだぜ。」
ヒカルは、絶望的に和谷を見つめた。
「ココの部屋、壁が薄いんだ。隣はいないけど、あんまりでかい声出すなよ」
和谷は、すがるような目をしたヒカルの側から素っ気無く立ち上がると、
カーテンを閉めた。
夕暮れの光が差し込んでいた部屋が暗くなり、一本の安い蝋燭だけが灯された。
密室となった部屋の怪しい雰囲気は、男たちに、これから儀式の起こることを感じさせた。
(3)
蝋燭の光に、ヒカルの身体が淫靡に照らし出される。
影となった、ほっそりとした足の根元に男たちの視線が纏いつく。
ヒカルは、男たちのねっとりとした視線からその部分を隠そうと、太ももを合わせた。
処女のように恥らう少年の姿に、男たちの股間が昂ぶる。
男たちのズボンを立ち上げるその部分を見て、ヒカルは声を震わせて叫んだ。
「お前ら最低だ!オレ、みんなのことライバルだと思ってたのに!」
「へえ、そりゃ光栄だな。進藤のライバルは塔矢君だけで、俺たちなんか眼中にないと思ってたぜ」
ヒカルの復帰第一戦の相手だった村上が、陰湿な笑いを浮かべて言った。
アキラの名前を聞いて、一瞬ヒカルが怯む。
「いっつも一緒にいるもんなぁ。塔矢君のも咥え込んでるんだろ?」
その言葉で真っ赤になったヒカルの頬を、眼鏡の男がいやらしく撫でる。
「やっぱり、進藤君が塔矢君や和谷君と遊んでるって噂、本当なんだね。こんなに可愛い顔して、結構すごいんだ・・・」
「ああ、コイツ、一回始めると、際限ねェんだ」
和谷は男たちの話を聞きながらダンボールの中を漁っていたが、そう言って振向いた手には、見慣れない器具があった。
「なんだよ、それ・・・」
「この前ネットで買ったんだ。貞操帯って知ってるか?」
和谷の瞳は、いつもと違っていた。
ヒカルは、本能的な恐怖に、俊敏な子うさぎのように逃げ出そうとするが、
その小さな身体は、村上の合図で男たちに一斉に押さえつけられてしまった。
(4)
暴れるヒカルの口を、年長の男が手で覆う。
和谷が手早く貞操帯を取り付け、ヒカルの目の前で鍵をポケットにしまった。
「オレの家に塔矢とヤった痕を残してきた罰だ。オレたちが満足したら外してやるよ。
ま、お前いつもすぐイッちまうし、たまにはゆっくり楽しもうぜ」
和谷が優しくヒカルの頭を撫でる。
「ふざけんな!外せよ、和谷!」
ヒカルは、必死に身体を捩るが、両手を縛られていてはどうしようもなかった。
「すごく似合うよ、進藤くん・・・」
眼鏡の男がため息を漏らして感心する。ヒカルはその男を睨みつけるが、それは男たちを煽るだけだった。
「怒った顔も可愛いよ、ヒカルくん・・・」
隣にいる小太りの男の荒い息が、ヒカルの耳にかかる。感じやすいヒカルの身体は、そんな小さな刺激にも感じてしまう。
「っ・・・!」
「あ、感じちゃった?へぇ・・・、ヒカルくん、ココが弱いんだ?」
小太りの男が、ねっとりと耳を舐め始めた。
「っ!・・・このヘンタイ!やめろよ!いっ・・・!」
ヒカルの拘束されたソコが小さく立ち上がる。と、同時にペニスが引っ張られ、小さな痛みが走った。
「おい!オレが合図するまで進藤に手は出すなよ」
和谷がドスの効いた声で男を制する。
(5)
「あ、ご、ごめんね・・・、和谷君」
小太りの男は、オロオロと引き下がり、少しヒカルは安堵した。
「しかし、いい格好だな、進藤。最強の初段にこんな下着が似合うとは思わなかったぜ、ハハハ」
村上が冷やかすように言うと、男たちも笑い出した。
ヒカルは怒りと、中途半端に止められてしまった快感の余韻に頬を染めながら怒りをぶちまけた。
「村上さんがそんな変態だと思わなかった!お前らみんなヘンタイヤローだ!」
しかし、男たちは怯むどころか、ますます息を荒げる。
「ヒ、ヒカルた・・・、じゃなくてヒカルくん、も、もっと罵ってよ」
一番年長の男がヒカルの足元で股間を立たせながら跪く。
気持ち悪い。同じ神の一手を目指す棋士とは思えなかった。
「おい、進藤、そんな格好でそんなこと言っても煽るだけだからやめとけよ。
こいつら、お前とヤルためにカネ払うくらい、熱烈なファンなんだからさ」
さすがにその言葉はショックだった。
「う、嘘だ・・・」
「本当だよ、進藤君。ちょっと高かったけど、進藤君のためならいくらでも払うよ」
眼鏡の男が、心底嬉しそうに目を細めた。
「ま、十分奉仕してやるんだな。時間はたっぷりあるからさ」
和谷の合図で男たちが飢えたハイエナのように、一斉にヒカルに群がった。
学ランとシャツがはがされ、ボタンが弾けとんだ。