密室
(16)
ヒカルが、ぐったりと和谷にもたれかかる。
「お漏らししちゃったね、ヒカルくん・・・」
「とっても可愛いかったよ、ヒカルくん・・・」
「俺、これ壁紙にしようかな・・・」
男たちはハアハア荒い息を吐きながら、携帯に収めた戦利品を眺めている。
「よかったぜ、進藤」
和谷が、ヒカルの細い顎を持ち上げ、唇を吸った。
ヒカルは、和谷の口づけを受けながら、ぼんやりと考えた。
現実感のある唇。ヒカルがセックスを知ったのは、佐為がいなくなってからだった。
いつも、佐為とキスしてた。身体なんてなくてもよかった。
佐為が戻ってこないと知って、囲碁の世界に生きていくことを決めた。
でも、何か、自分の中に空白があった。
アキラとの本当の初対局のあと、ヒカルは初めてアキラに、佐為以外の人間に全てを許した。
初めて生身の身体を重ね合わせる喜びを知った。自分の空白を埋めるのはコレだったんだと理解した。
それから、タカが外れたように男の体を求めた。
アキラに優しく、時に激しく抱かれるのは好きだった。
でも、その分、仕事で会えない日は身体が疼いて仕方なかった。そんなとき、和谷を誘ってしまったのだ。
(17)
多分、今本当に好きなのはアキラだ。
何回も自分の名を呼び、好きだ、好きだ、と熱に浮かされたように何度も繰り返すアキラの声を聞くと、自分が愛されているのが感じられた。その腕の中にいると、安心できた。
でも、同時に、好きでもない和谷に身体を開く淫乱な自分がいる。
和谷だけじゃない。伊角や緒方、行洋とも関係を持った。
彼らは、誘うと激しく自分を求めた。
和谷は、いつも自分を抱くときにこう言う。
「お前は、全身で男を誘っている」と。
ヒカルは、自分が分からなかった。
一番好きな佐為はもういない。
佐為が今のオレを見たら、どう思うかな・・・。嫌いになるかな・・・・。
和谷が怒ったのも、仕方ねェよな・・・・。
ヒカルは、和谷へのせめてもの償いのつもりで、自分からも舌を絡ませた。
和谷は、少し驚いて目を開けると、嬉しそうに笑った。
罪悪感がヒカルの胸を刺した。
あんまり深く考えたくない。もう、どうでもよかった。
今は、この快楽に身を任せてればいいんだ。
(18)
布団に戻されると、ヒカルは、和谷にしがみつき、耳元で甘えるように囁いた。
「ねぇ、おしっこ残ってて気持ち悪い・・・、コレ、外して・・・」
それは男の反抗を奪う、小悪魔の囁きだった。
これ以上ヒカルを焦らし続けるのは、和谷にはできなかった。
「あ、ああ・・・、ごめんな、進藤。すぐ外してやるよ」
和谷は、鍵を取り出すと、拘束具を外してやった。
ヒカルのペニスが男たちの目に晒される。
蜜液と尿で濡れた、ﾎﾟｰｸﾋﾟｯﾂのような可愛らしいペニス。
長時間拘束されていた痛みのためか、ヒカルのソレは完全に起ち上がることができず、新たな快楽を求めて小さく震えていた。
分かってる。オレはインランなんだ。
こんな自分の本当の姿を、和谷に見せつけてやろう。
ヒカルは、そばにいた年長の男に擦り寄ると、男をゆっくりと押し倒し、その上に自ら跨った。
「ねぇ、イかせて・・・」
掠れた少年の声が、男の劣情を誘う。硬さを増した男のソレを、自身の穴に当て、ゆっくりと腰を降ろしていく。
「はぁ・・・っ」
苦しげに眉を寄せ、全てを飲み込むと、呆然とヒカルのなすがままになっている男の上で
腰を揺すり始めた。
「ふぅん・・・はァ・・・、イイ、もっと・・・、もっと突いて・・・」
そのとき、少し腰を浮かした男のソレがちょうどヒカルの感じるところを擦った。
「ああああぁぁぁっ・・・ソコ、やあああぁぁ！！！イ、イイ・・・！！」
明るい前髪を揺らしながら、快楽を貪るヒカルの姿に、和谷も村上も言葉を失った。
それは、飽くなき欲望のために楽園を追放された、美しい堕天使の姿だった。
(19)
「もっと、もっとぉっ！！ああァァァっ！！！イクっ・・・、イッちゃう！！！！！」
ヒカルは、身体を痙攣させると、孤を描いて大量の精液を放った。
ぐったりと男の身体に崩れ落ち、呼吸を整えていたヒカルは、ズルリと男根を抜き取ると、
股間を立たせながらぼんやりしていたカメラの男に這い寄った。
そして、ズボンから勃起したそれを取り出すと、丁寧にしゃぶり始めた
「うわっ・・・！やめ・・・っ」
動揺する男から精を搾り取ると、
ヒカルは、男たちに向かって、M字型に大きく足を開いた。
そして、自ら指を使って穴を広げると、真っ赤な粘膜を見せつけた。
「ねぇ・・・、きてよ」
精にまみれながら、男たちを娼婦の笑顔で誘う。
男たちは、股間が張り詰めるのを感じた。
二本目の蝋燭が灯された。
男たちの精と汗の臭いが充満する密室。
宴は、支配者を代え、これから数時間にも及ぶ始まりを迎えたのだった。
密室・終わり