ネコミミモード!

(1)
「うわああーー!!」
朝起きて、顔を洗いに行くと、鏡に映った自分にネコミミが生えていた。
ビックリして大声あげたらお母さんがきた。
オレは慌ててバスタオルを頭にかぶってゴキブリが出たと言って誤魔化した。

今日の俺の予定は、10時頃に塔矢の碁会所。
15時頃に、あかりの通う学校での指導碁サービス。
それだけ。

でも、こんなネコミミ生やして誰かに会えるかっつーの!
速攻顔洗って、速攻パンと牛乳だけ持って自室に篭った。

(2)
とりあえず、あかりにメールしといた。
仕事が入ったと言えば、あかりは文句言わないし。
でも、今度埋め合わせはしねーとな〜。

で、塔矢だ。
アイツがドタキャンなんて受け入れてくれるかな〜。
なんか根掘り葉掘り理由を問い詰められそうだなー。
気が重いなー。やだなー。
・・・と思ってたらケータイが鳴った。

『着信:塔矢アキラ』

もう、どうとでもなれ!
と、やけっぱちになりながら電話に出た。
「もしもし?」
「進藤?今日の約束なんだけどさ。碁会所はやめないか?」
なんと塔矢からドタキャン!願ったり叶ったりだ!
「うん、いいぜ。俺も碁会所行けなk…」
「じゃあ、キミの家に行っていいかい?というより、もう来てるんだ」
俺の言葉を遮ってそんなとんでもない事を言い出しやがった。

こっそりカーテンを開けると、マジで塔矢がウチの前に居る。
オレは朝からのあまりの展開に、泣きそうになってしまった。

(3)
仕方なく、オレはタオルを頭に巻いた。
今着てるのジャージだし、タオル巻いててもバランス悪くないだろ。

てゆーか、今は耳さえ隠れりゃ何だって良い。

玄関を開けると塔矢がニコニコしながら立っていた。
「先にあがれよ」
「ありがとう。お邪魔します」
とりあえず、ペットボトルのお茶とコップ、あと、
コタツの上にあったみかんをいくつか持って部屋に入った。

部屋に入ると、塔矢は相変わらずニコニコしていた。
なんか、気味ワリー。
「ほらよ、みかんとお茶」
「ありがとう。ところでキミ、今朝妙な事なかったかい?」
唐突に塔矢が聞いてきた。
オレはすっかり動揺してしまい、何もないと言いつつ、
モロに何かありましたと言っているような態度になってしまった。

当然それは塔矢にもバレる訳で。
「やっぱりあったんだ」
と、すぐにツッコミを入れられてしまった。
かと言ってココで素直に「ネコミミ生えたんだどうしよう」なんて言える訳ない。
オレは何もないとシラを切り通す事に決めた。

「何も無いって言ってるだろ!お前こそ何かあったのかよ」
「ボク?あったよ?」
「へ、へー。何があったんだよ?」
「進藤が教えてくれなきゃ教えない」

塔矢はニコニコした顔を急に意地悪そうな微笑に変えた。
オレは背中に冷や汗が流れる感覚がした。

(4)
オレがビクビクしてると、急に塔矢が言った。
「ところでそのタオル、どうして巻いてるの?」
なんでそんなこと聞くんだよ!別にいーじゃないか、気にするなよ!
「髪が邪魔だったから巻いてるんだよ!」
「じゃ、ピンで留めたら良いじゃないか。きっと可愛いと思うよ」
可愛いとか言うなっていってるのに!!
「バカじゃないの?お前。てゆーか、何で俺んち来たりしたんだよ」
オレは何とか話をそらそうとした。
とにかく、今のオレはネコミミを隠すのに必死だった。
それなのに、塔矢は次の瞬間爆弾発言をしやがった。

「え?キミにネコミミが生えたか確かめに来たんだよ」

どういう事だ、バカッパ!

(5)
「昨日拾ったんだよ、萌えノート」
「もえのーと?」

どうやら、相手の顔を思い浮かべながら名前を書いて、
萌えシチュエーションなんかを書き込むと、
40秒後に効果が現れるという、どこかで聞いたような設定の
ノートだそうだ。

「で、そこにオレの名前書いてネコミミって書いたのか」
「うん。いや〜、萌えノート!本物だ!」
「何言ってんだよ早く消せ!!」
ずっとネコミミ付いたままなんて、冗談じゃない!
オレは塔矢に詰寄った。けれどあっさり、
「ここに萌えノートは持ってきてないよ」
なんてぬかしやがった!
む、むかつく〜〜〜〜!!!

「どうすんだよ!こんなネコミミつけて手合いなんか出来るかよ!」
「ところで進藤、気分はどう?」
「は?何が」
「ボクがネコミミだけ書いて満足すると思うかい?」

なんだか嫌な予感がした・・・。

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