【名人による進藤ヒカル研究会】

其の壱 芹澤の章 (一)

(1)
芹澤は呼び鈴を押さずに格子戸を引き開けた。
塔矢邸で定期的に行われるこの研究会、呼び鈴は押さず、騒がず、急がず玄関に入るしきたりで
ある。玄関に入るといつもの通りしんとしていて、人の気配すらしない。
芹澤自身、何度も塔矢邸に来たことがあるが、いまだにこの薄気味悪いほどの静けさにはどうも
慣れることができないでいる。
「お邪魔いたします。」
誰に言うでもなく、そっと呟いて丁寧に靴を脱ぎ、黒光りのする廊下を先へ先へとすすむうちに、
こめかみの血管がバクバクと大きく脈打つのがいやがおうでもわかる。
薄暗い廊下の空気は心なしかよどんでいてなにやら幽霊でも出そうな雰囲気だ。
渡り廊下のようなところを過ぎて離れにたどりつくと、一寸ばかり開いた小さな板戸を見つけた。
もともとはきっと、茶室かなにかとして使われていたのだろうか、板戸は背をかがめなければ通れ
ない高さで、間口も狭い。
芹澤はつと板戸の前に正座し、「お邪魔いたします」と頭を下げた。
いくばくかして、板戸がカラリと開かれ、紬の単を着た行洋と向かい合う格好になった。
行洋が無言のまま手で芹澤を招きいれようとしたその時、甲高い声がかすかに響いて聞こえた。
「う…ぁん…緒方せんせ…も、もうダメ」
芹澤と行洋の目が合ったが、行洋は眉一つ動かさず小さく頷いただけだった。
さっきから心臓がドキドキとして背中に冷や汗をかいているのは、この屋敷の気味悪さのせいではなく、
これから始まる饗宴への興奮のせいなのだ、と芹澤はいまさらながらに気づいた。
事実、今はこめかみの脈動よりも己の一物のほうが重だるく、それを行洋に悟られまいとすり足気味に
小さな座敷の中央へと進んだ。
畳敷の座敷は六畳ほどしかなく、突き当たった先に白い襖があった。模様もなにもない襖はともする
と一枚の壁に見える。
「うッ…ん…ううんッ…」
襖の向こうから苦しいような甘いような声が漏れ聞こえ、芹澤の男芯をあおりたてた。
行洋はその襖に耳が触れるほどに近寄り、ついで芹澤を振り返った。
「――で、どうする芹澤くん。緒方くんと一緒にやっていくかね?それともゆっくり鑑賞するか。」
そして一呼吸置いて襖に手をかけた。
「ああ、ここで緒方君が“終局”するまで待ってもいいが。」
芹澤はしばし考えた。
前回は若手の畑中が先客で、深くも考えずに畑中に合流したのだが、いかんせん相手が悪かった。
若いだけあって畑中は絶倫そのもので、芹澤が付け入る隙など与えなかった。それを思うとおとなしく
鑑賞でもしながら待ったほうが得策か。

(2)
でも――今日は若手とはいっても落ち着きのある緒方だ。また、襖の向こうから窺うにまだ序盤
と見ていい。だが、芹澤は何と言っていいものやらわからず、目を伏せたままもじもじと畳の目を
数えていた。
「様子見というところかね。」
行洋が襖を開けると、やや陰りのある座敷の中央に緒方の広い背中が見えた。いつものように
白ずくめのスーツ姿でゆったりと胡坐に座っている。その後姿の向こうに藍染の敷布がかかった
布団がのべられ、緒方の背中越しに淡い色をした長い手足が見えた。

胴体の部分は緒方の背中に隠れていて見えない。だが、可愛らしくも艶めいた表情がこちらに向
けられた。
いつもはくるくるよく動くいたずらっぽい瞳が、長い睫毛の下で濡れていた。小さい口の間から舌が
のぞいている。熱を帯びた瞳に芹澤は下半身がいっそうズシリと重みを増すのを覚えつつ、なんと
も場違いなことを口走った。
「や、やぁ進藤くん。」
「芹澤先生…?」
裸に剥かれた状態を前に挨拶もなにもあったものじゃない。その間抜けなやりとりに緒方が振り向
いてクスリと笑い、芹澤は顔を赤らめた。
「進藤君――今日は芹澤九段がキミの検討に加わってくれるそうだよ。」
横で行洋が腕組みをしたままこともなげに言い放ち、ヒカルの身体がもぞもぞと動いた。
少しばかり身を乗り出してよくよく見ると、進藤ヒカルは淡くくすぶった身体を星型に開いている。
大胆な形に開いた裸体に芹澤はぎょっとしたが、よくよく見れば、畳の縁から突き出た絹紐で手足を
固定されているらしかった。
「この子はときどき暴れるのでね。だいぶ、躾けたつもりなんだが――。」
食い入るように見ていた芹澤の横で、行洋はそう言って咳払いを一つすると、畳の擦れる音をさせな
がらヒカルの頭のすぐ脇ににじりよった。

(3)
「芹澤君じゃ不満かね?」
「い――いえ…」
「芹澤君ならやさしくしてくれるだろう――緒方君や畑中君と違ってね。」
「ハハハ、先生、俺はコイツの望み通りにしてあげているだけですよ、人聞きの悪い。」
緒方はすっくと立ち上がると、ヒカルの身体の向こう側へまわり、視線で近づくよう促した。
芹澤は畳の上できっちりと正座して硬く結んだ手をゆるめ、ずるずると這うようにヒカルの身体の
そばに寄っていった。
何もつけていない身体が残酷なまでに芹澤の視線にあますことなく晒される。一日中、畳の上に
座っている職業だというのに、脚はすっきりと長く、膝も出ていない。それに毛もほとんど生えて
いない。
進藤ヒカルといえば、年は16、7になったはずだ。体つきは細いものの頼りなさはなく、芹澤はなぜ
か、高校時代、美術室に置いてあった石膏のヘルメス像を思い出していた。
細身ながらも身体の線はあきらかに女のものではなかったが、脚にも脇にも、そして脚の間にも茶色
がかった柔らかそうな毛がちらちら生えているだけだ。産毛と大差ない。顔つきは年相応とはいえ、
大きくつぶらな瞳が幼く見えた。
まるで身体つきだけ大人びてきた子供だ。――いや、いくらプロ棋士とはいったって目の前にいる
のは普通なら高校生をしている「子供」なのだ。
緒方が人差し指を身体の中央にそそり立つものに這わせた。
「ふぅ…ん…んんッ」
「おやおや、進藤、もうこんなにたらしてるのか?芹澤先生の前で粗相をするんじゃないぞ。」
緒方はわざとゆっくり、裏筋や亀頭のまわりを指一本で撫で回し、そのたびにヒカルは腰を浮かせ
て喘いだ。そそり立ったモノは肌の色より少しだけ濃くやや小ぶりだが、弓なりに反っていて勃ちも
よさそうだ。先端からピンク色の頭をのぞかせて、そこだけが生々しく濡れて光っていた。
芹澤は目を大きく見開き、ヒカルの身体を視線でなめ回すように追った。おそらくは股間がふくれ
きっていたのだろう、緒方が芹澤を一瞥するとフッと笑った。
「芹澤先生もどうぞ。初手はどこからいきますか?」
はっと我に返り、視線をすっと上にずらしていく。まるでチーズケーキのようにしっとりとした肌の上に
ふたつ、薄紅色の星がついている。芹澤は麦粒ほどのそれをそっと摘み上げた。

(4)
「ん――くうぅっ!」
ヒカルは眉間に皺を寄せて鼻を鳴らした。指の間に挟んで転がし、淡く色づいた周りを撫で
上げる。やわやわと弄ぶうちにヒカルが潤んだ目を向けてきた。
「芹澤先生…はぁん…だめ…!」
「ほおぅ―進藤、芹澤先生の前では猫をかぶるんだな。オレの時はああいい、もっともっとって
すぐよがり声を上げるのにな。」
緒方の長い指が反対側の胸の上をはいずりまわり、ヒカルは怯えた目になって緒方を見上げた。
「やだ…緒方せんせ…許して…」
緒方の親指と人差し指が右胸の乳首をきゅっとつまみ上げ、高い悲鳴が長く響いた。
「いやぁあッ…」
両方の乳首をそれぞれ弄り回され、背中が弓のように反った。そそり立った可愛らしい形のペニス
がピクピクと動き、鈴口の小さな穴が息をするように閉じたり開いたりしていた。そのわずかな動き
の間に透明な液体が漏れ出すのまで見える。
緒方が再びククッと含み笑いを漏らし、指の間でぐりぐりと粒を揉みこんだ。
「コイツ、乳首だけで射精するんですよ。――あ、そうだ…これが好きなんだよなぁ、進藤?」
緒方がスーツのポケットから取り出したのは、竹でできたクリップだった。
「緒方くん――それは…。」
「ま、洗濯バサミみたいなもんですよ。」
目の前でクリップをカチカチと開いたり閉じたりしてみせると、ヒカルの表情が凍りついた。
「や…やだ…ダメ…それだけは許して先生…」
だが、緒方はそんなヒカルの懇願など無視して、ツンと尖った乳首を責め具ではさんだ。
「痛いぃッ!やだあっ!」
暴れるとはこのことだったのかと芹澤は後ろを振り返った。
繋がれた手足をバタつかせるヒカルが不憫で、芹澤は行洋に助けを求めたのだが、行洋は何も
言わずただ石像のようにじっとしているだけだ。
「芹澤先生もお一つ、いかがですか?」
緒方にそうすすめられたが、芹澤はびくっとして首を振った。
「遠慮しておくよ。」
「フフ、そのうちわかりますよ。――コイツ、淫乱なマゾなんです。」
左胸の淡く小さな乳輪がガチリと竹バサミが掴みあげる。
「アーーーーッ!」
ヒカルの茶色い瞳から涙がこぼれ落ちた。

(5)
酷い。――これではあまりに無体というものだ。芹澤は反感のこもった眼差しを緒方に向けたが、
緒方は不敵な笑いを浮かべて見返してきた。そうしておいて、今度はヒカルの脚の間に座ると、
両足首のいましめを解いてやった。
ようやく、緒方も正気に返ったかと胸を撫で下ろしたのもつかの間、今度は両膝をつかみあげて
宙に浮かせる。
「ほら、コイツ、こんなにされてアナル疼かせてますよ。」
芹澤の目の前に菊の蕾が晒された。それがヒクヒクと蠢いて、そのたびになぜか透明な液体が
じわりと流れ出ていた。
「はぁんっ!ダメ…芹澤先生っ!」
男でもこんなところが濡れるものなのかと感心する芹澤に緒方はアッハハと高く笑い声をあげた。
「コイツを剥いたついでにローションを仕込んでおいたんですよ。」
なんだ、そうだったのかと溜息をつく。だが、緒方が片手でベルトに手をかけたのを見て、再び緊
張が走った。この体勢で犯すつもりなのだ。
耐え難いものを感じて、芹澤は口を開きかけた。
「あ、あの緒方くん――。」

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