天の花
(16)
その仕草が意味するものを悟って信じられない気持ちになった。
「待ってくれよ! おまえ、言うだけ言って置いてくのかよ、オレは? なあ、オレ
どうしたらいいんだよ!」
「好きにしてくれればいい。ボクとは話すのも嫌と思うなら避けたって構わない。
できるなら返事が欲しいけど、いつでもいいし、くれないならそれでいい。
今後ボクからはキミに何もしないよ。ただキミを待ってる。ずっと待ってる」
「………」
扉が開いて、入ってきた夕陽が眩しい。
そのまま一歩外に出たアキラが何故か振り返った。
橙の光を背に、陰影の濃くなった顔を見て息が止まりそうだ。
「……な、なに…?」
「見とれた」
「?」
「キミを見るのは久しぶりだ。今日キミの姿を見て、しばらく動けなかった…。綺麗になったね」
声も出ないヒカルにもう一度微笑んで、アキラは去っていった。
「……しん、じられねえ…」
記者室には、へたり込むヒカルと蒼白の佐為が残された。
佐為が、アキラよりももっと震えていたことなど見えなかった。
だって佐為がいることすら頭から消し飛んでしまったから。
そのことが一番彼の顔色を蒼くさせていることも、従ってヒカルは気づかなかった。