お江戸幻想異聞録・五月雨(さみだれ)
(39)
「すごい…光のここ、めくれあがって赤くなってる…。」
明は上ずった声をあげると、握った光の手で菊座を犯させ続けた。
「あっ…あっあっあ…。」
「きみ、いつも僕のあそこを入れられるのを考えながらこうやって自分を慰め
てるんだろう?」
「ち、違うよッ…!」
後ろでかさりと畳を踏む音がして、明の吐く熱い息がうなじにかかった。
「へえ?違うんだ?――じゃあ、誰のことを考えていたんだ?」
「……。」
云えるはずなどなかった。明の手が光の細い手首を引き抜き、代わりにふのり
で濡れた菊にもっと重い質感のものがあてがわれた。
「やっ…あ…あ…。」
張りつめた魔羅の先が後孔に突き立てられ、ずるりと入ってきた。
「すごい…光のここが先に吸い付いて離さないよ。」
「や…やめて…。」
舌がもつれて、痛いような、痺れるような感触が菊から脚や背へとじわり広がっ
ていく。雁首の張り出した角が浅いところをずりずりとこするたびに、堪えていた
声が漏れそうになる。
(40)
「ふふ…自分から腰を振るなんていやらしいね、光…。」
魔羅をもっと深くくわえ込みたくて光は知らず知らずに尻を振っていた。明の
太い魔羅が奥深くまで差し込まれ、ゆっくりと雁首まで引きずり出される。
「はぁぁぁん…!」
何度も体内に律動が走り、立っているのも辛かった。ことに引きずり出される
たびに高く張ったカサがこすれ、いつしか光の唇のはじから唾液がしたたり落
ちていく。
「どう、光…?気持ちいいだろう?」
明の声がどこか遠くから響いてくるようで、光は喋ろうにもろれつがろくに回ら
ない。代わりにコクコクと頷くと、突然、魔羅が抜かれた。
「あ…!あんん…!」
後ろを振り返ると、眉をうっすらつり上げた明の端整な面立ちが光を見下ろし
ていた。
「どう?もっと入れてほしいんだろう?」
「ん…んん…。」
明は背中に覆いかぶさるようにすると、光の着物のあわせを開いて尖った蕾を
さらし、耳元で囁いた。
「――誰にこうされたかったんだ?」
「ん…ん…おまえと…。」
「フン、嘘をつくな。」
きりりと立った乳首を両手で転がされると、そこから魔羅を抜かれた菊座まで滝
のようにひとすじで繋がるようだった。
(41)
乳首を指先で嬲られ、摘まれると、菊座が口を開けて求めているのさえわかる。
そこが火がついたようになって、光は犬のように鼻を鳴らした。
「後ろの穴が欲しがって動いてるよ。さ、早く云えよ。誰にされるのを考えてた?」
光は必死でかぶりを振った。尖った乳首を転がす指の動きが激しくなり、ぴんと
立ち上がった小さな一物からは淫液が溢れて、明のものが菊をかするたびに狂
おしい。
「正直に云えば好きなだけ入れてあげるよ。」
「う…誰でもないってば…。」
そう答えながら、光は脳裏に鋭い灰色の瞳を思い浮かべる。
溶岩のごとき熱い塊がずぶりと入れられた。腰をしっかりと抑えつけられて打ち
込まれるものが、泥に杭でも打ち込むようにドスン、ドスンと腹にひびく。
「あぁ…!あぁ!ああ!!」
「ほう、じゃあきみは誰でもいいんだ。…淫売。」
そうだ、オレは淫売だったのさ、と胸の中でつぶやきながら、体をくねらせる。
「今まで、何人に抱かれた?」
「…え…ひ、一人…。」
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口をついて出た言葉に、明が激昂するのではないかと光はどきどきしてしまっ
た。だが、明は荒く息を吐きながら体を揺するのみ、考えてみれば明はとぼし
の経験すらおそらくないのだ。光の嘘を見抜くのはおろか、かげま茶屋の存在
を知っているかどうかすらあやしい。
ずるりと体から太いモノが抜ける感触がした。明がふのりを次々と舌の上で
溶かしては、菊座にねじこんでいた。
「あ…ァ…やめないで…明がいい…。」
明はぐいと光の体をひきよせて畳に仰向けにすると、細い両足をつかみあげた。
そして、色を帯びた黒い瞳でじっと見下ろす。
「本当に?」
「うん…。」
熱を持った魔羅がふたたび後孔に当てられ、太腿を伝って生暖かい液体が流
れ落ちている。雁首で入り口を焦らすがごとくねちねちと責められると、体の奥
がそれを求めてざわついた。
「後ろの穴がそんなにいいんだ?」
「ん…んん…うぅぅ…。」
たまらないざわめきに、光はだらりと萎えた玉茎を片手で擦りはじめた。手の
ひらにじっとりと淫らな液が当たる。とろとろと流れてくるのはこれなのだろう
か。だが、いくら擦ってもそれは頭を持ち上げるどころか、感触さえ鈍くなって
いる。雁首で擦られる後ろのほうが強すぎて、前がきかなくなっているのだ。
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突如、バチンと肉同士が当たる音が響いた。
「ひぁぁぁぁ…!」
明が一気に根元まで魔羅を突き刺したのだ。鈍い衝撃とともに、脳天の芯が
ビリビリと痺れる。
「はぁ、あぁ…!」
なおも明は猛り狂ったように腰を打ち据えてきた。両手を壁について、震える
足をどうにか踏みとどまる。明が激しく打ちつけるたびに、足の間で柔らかく
しなだれた一物が跳ねる。
「あっ…!あっ!あっ!あっ!あ…!」
光の玉茎は前に後ろにプルッと揺すられて、空気にまで嬲られているような気
がした。
「光は奥のほうがいいんだね…。」
「ん…ん…うん…っ…あ!」
奥を小刻みに責められ、光は畳に爪を立てた。頭の中が真っ白になりそうだ
った。
「…淫乱…。いいかい、きみがぼくを誘ったんだよ。そうだろう?」
「……!」
「――ぼくがきみにたぶらかされたなんてわかったら、きみは破門になってし
まうかもしれないね。」
「や…やめ…。」
「いいよ、コレは二人だけの秘密にしておいても。ああ、いいよ奥をこすると締め
付けてくる…!ねえ、ぼくだけのものになるって誓うなら、秘密にしておくよ。」
「う…。」
「どっちがいいんだい?いいことができるのと、洗いざらいばらされて追い出され
るのと。」
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遠くなっていく意識の中で、光はほぼ反射的に首を振っていた。
「うん…おまえのものになるから…だから…。」
「そう。好きだよ、光。初めて会った時からずっと。」
明の細い指が光の顎を掴み、唇がきつく吸われた。体の芯がパチパチと弾け、
目の前が真っ白になる。
「あ…あ…そこ…いい…いく、いくいく…いかせてッ!」
明の動きが早まり、光はつまさき立ちになりながらぷるぷると震えた。
「いく…!いくいく…いい…!」
やわらかい魔羅から大粒の涙が糸を引いて流れ落ち、ぼたぼたと畳を濡らした。
「あぁ…いいよ、光…締まる…!」
「ひぁあんッ…!いく――!」
喉を締め付けられたような呻きをあげて、光は背中を反らした。後孔から熱い
魔羅がずるりと抜け落ちる。
「は…!はぁ…」
体は震えが止まらず、後孔からはぬるっとしたものが溢れ出している。
「あ…明…。」
ようやく少しばかり視界がひろがりはじめ、畳や壁には光が撒き散らしたもの
が点々と飛び散っているのがうすぼんやりと見えた。
「畳…汚してしまったね。」
クスッと笑った明の赤い唇が見え、激しくなった雨がバタバタと屋根を叩く音
だけが残った。
(五月雨・終)