淫靡礼賛
(36)
* * *
「座間先生、お疲れ様でした。今日も絶好調ですね。」
「あぁ、まあな。」
座間は「流水の間」を上機嫌で出た。今日ははるかに格下が相手とあって、難なく捻りつぶせ
た。検討を少々したのち、足早に去る。
今日はかわいい天使が自宅に訪れる日だ、ぐずぐずしてはいられない。
座間は先週、はじめて味わったヒカルの肌を思い浮かべながらいそいそと自宅へ戻った。
あれから何度、撮影した天使の淫らな姿をモニターで眺めただろうか。
撮影後、風呂場でいやらしくキスを施し、ベッドの上で5回も絶頂を迎えさせてやった。座間も素股
ではあったが達した。そうして明け方まで身体の隅々まで味わい、最後はヒカルが身体をすりよせ
て求めてきた。後孔に中指を入れて中をかき回しながら、門渡りをちろちろ舐め上げると、淫靡な
天使は大股を開いて色っぽい声をあげ、ピンク色のペニスからドクドクと淫汁を溢れさせた。
そして座間の腕の中で日が高く昇るまで眠った。
目覚めた時は呆然として空虚を見詰めていたが、「来週も来なさい」と囁くと素直に頷いた。
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自宅へ戻ると、座間はバスタブに湯をためながら、この一週間の間に買いためたものをベッド
脇に次々と並べた。
新しいローションに、小指の先ほどの粒からブドウほどの粒を数珠繋ぎにしたもの――これで
狭い蕾を徐々に拡張していくわけだが――ほかにも、大小さまざまな大きさの玩具を買った。
ついでに新しい外付けハードディスクも買ったから、こうした異物をかわるがわるあのかわいら
しい蕾に入れて撮影し、あとでゆっくり堪能することもできる。
一番狂うのはどれだろう。
浮き立った気分でそれらを眺めていると、玄関の呼び鈴が鳴った。
「ドアは開いているから、入っておいで。」
インタフォンにそう呼びかけると、監視カメラの向こうで、白黒に映し出された頭が頷いた。
いよいよ天使のお出ましだ。
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リビングに戻ると、目の前にコートとワンショルダーのバッグを手にチェックのシャツを着たヒカ
ルがふらりと立っていた。
「座間先生…お邪魔します。」
「待っていたよ。」
天使は虚ろな目を伏せたまま、ぼんやりと立ち尽くしていた。
「一局、打つかね?」
一瞬だけ、わずかに顔を上げて鋭く目が光った。
だが、しばらく考えてから長い睫毛が伏せられ、ヒカルは首を横に振った。
座間はニヤリと笑ってその肩に手を置いた。
「キミのような素直な子はいいねェ。」
そのまま抱き寄せて唇を奪おうとすると、眉根を寄せて顔を引いたが、座間は構わずふっくらと
した唇に吸い付き、ペロペロと下唇を舌でなぞった。
喉の奥でウグッと息を詰まらせる音が聞こえた。
嫌悪に寄せられた眉根に座間は嗜虐的な興奮を覚えはじめた。唾液をたっぷりとのせて唇を舐
めまわしながら、シャツをたくしあげて乳首をさぐりあてる。
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身体が細かく震えて思わず唇が開いた。すかさずそこに舌を滑り込ませ、口の中を蹂躙しつくした。
「ん…んん…んふぅッ…!」
身体を引こうとしながらも、乳首からさざ波のように押し寄せる快楽に引き戻されるさまを腕の
中で感じ取り、座間はもう一方の手も薄い胸に這わせた。
「んぅ…!んふ…んふぅ…」
甘い喘ぎを漏らしながら、抵抗する力を抜いたのを見て、座間はようやく唇を離した。
「じゃ、洗っておいで。教えたとおりに洗うんだよ。」
ヒカルはうすく頷くと、フラフラと風呂場へ向かった。先週、後ろの洗い方も教えた。本来なら、
座間自身がしてやりたいほどだが、いきなり強い羞恥にさらしてはいけないと己をたしなめた。
座間はスーツを脱ぎ捨て、奇妙な形をしたベッドの中で煙草を吸いながら待った。ちょうどその
向かいに風呂場がある。ときどき、水音がしては止まり、しては止まりしていたが、やがてそれも
止み、バスタオル一枚のヒカルがそっとドアを開けて入ってきた。
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髪も洗ったのか、ふだんは水鳥の羽のような髪が鈍く首筋に貼りついていた。
「きれいにしてきたかい?」
「はい…。」
「こっちへおいで。」
促すと、ヒカルはためらいがちにベッドのはじに腰掛けた。座間は背中からその身体を抱き、
すっきりとしたうなじを舐めながら甘い匂いを吸い込んだ。
「…ッ…!」
「ああ、いい匂いだよ。」
肩を甘噛みし、前に手をまわして両方の乳首をつまみ上げる。バスタオルを剥いで、ベッドに押
し倒すと、クリーム色の肢体がシーツの上に散った。
「おや、ちょっと生えてきているねぇ。」
座間は脚の間をさぐりながら、先週、剃ったところからうすく短い毛がぽやぽやと生えているの
を見つけ、ベッド脇に用意した剃刀とクリームを手に取った。
「ほら、もっと脚を開きなさい。」
「は…はい…」