通りの喧騒も耳に入ってこなかった。
徐々に上昇していく熱を振り払うかのように、互いの衣服を脱がしあう。
先にあるのは更に高い熱だというのに。
深く口付けたままベッドに倒れこもうとしたペッパーだったが、逆にソニーに押し倒されてしまった。
「ソニー?」
「黙ってろ」
ペッパーの日焼けした首筋や胸にキスを落としながら、ソニーの手がペッパー自身を育てていく。
こんなに積極的な相棒は珍しい。だが異議を唱える気はもちろんなく、両手をソニーの背中へと回し
た。同性で、ペッパーと同じだけ日光に当たっているにも関わらず、ソニーの肌はすべらかで白い。
その感触を楽しむようにゆっくりと手を這わす。背骨に沿って下りていき、たどり着いた双丘をやわ
やわと揉み込む。その弾力を楽しみながら指を更に奥へと潜り込ませると、ソニーが先を急かすよ
うに鼻を鳴らした。
「ソニー、いいのかよ…」
興奮に掠れた声で、ペッパーは最後の理性を口にした。
怪我人のソニーに無茶はさせられない、と気遣ったのだが、ソニーはニヤリと笑った。
「今更お前は止められるのか?」
「オーケイ、ソニーさえその気なら大歓迎だ。でも足に響くといけねぇから、体勢を変えようぜ」
膝を立てて上体を起こすと、腹の上に乗っていたソニーを抱きかかえるような姿勢になる。
ソニーは不満そうに唸り、またもやペッパーを押し倒した。
「駄目だ。お前は今日は寝そべってろ」
「ソニー、嬉しいけどよ、お馬さんごっこは今度にしないか」
「これくらいの捻挫で、俺がお前を乗りこなせないと思ってるのか?」
そう言って、部屋の照明に金髪を照らし出されて傲慢に微笑むソニーは、普段の無愛想が嘘の
ように艶かしい。ペッパーは自身がぐんと勢いを増したのを感じ、小さく舌打ちをした。なんだかや
られっぱなしじゃないか? ぺろりと唇を舐め、そそり立ったものをソニーの狭間に擦り付けるよう
に腰を揺らす。小さく身体を震わせたソニーに気を良くし、両手で双丘を押し広げると更に腰を押
し付けた。下品な振る舞いはいつも怒鳴られるのだが、今日に限ってソニーは甘い声を漏らした
だけだった。
「ぁ…ペッパー」
「振り落とされんなよ、ソニー。でないと馬が乗っかるぞ」
「ふん…安心しろよ。8秒間なんて言わないから」
「そう願うぜ」
ペッパーは鼻の下を伸ばしつつも別のことを考えていた。ソニーは、明日のブロンコを欠席する
つもりなのだ。でなければ、大会中は禁止していたセックスを誘いかけるわけがない。女達に「馬
並み」と愛されるペッパージュニアを受け入れるわけがない。
ペッパーはソニーの脛に手をかけ、捻挫している方の足を持ち上げた。これなら、跨ったまま動
いても負担は少ないだろう。ソニーの感謝するような視線にウィンクで返す。
「カモン、バディ?」
どうせならトコトン楽しもうとペッパーは意気込んだ。何せ、こんなに色っぽいソニーは滅多にお目
にかかれないのだから。
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補注)ブロンコは8秒間の乗馬で審査する