abouttextbloghashi

未確定のままだったり。
ストーリー未満の文章……にもなってなかったり。文章的にもつながってないかも、なコーナーです(^^;)
新しいものは上に。

「嵐のあと」別バージョン(書きかけ……)

 「魅上、落ち着いて考えてみてください。そしてこの際、お互いの倫理観は置いておいて、単純に」
 朝、新幹線で東京へ行き、ほとんど間をおかずに今度は車で京都へ戻ってきた。それも外国人の子どもを連れて。
 車中では、事前に飲ませた睡眠薬で眠り続けていた子どもは、目を覚ましても大人しく魅上の部屋までついてきた。そして部屋の灯りの下で改めてみると、白いパジャマのような服はところどころに焼けこげ、白い顔には煤がついていた。「医師に診せる必要はありません。この発疹は夜神に飲まされた薬の影響でしょうが、痛みも痒みもないので問題はないです」
「しかし…薬品のアレルギーは自己判断しないほうがいい」
 少年の首筋に発疹が赤く広がっていたのだ。恐らく胸にまで達している。
「発熱もありません。だから大丈夫です。……考えてください。今、あなたと私の状況は、他人に説明できますか」
「………」
「あなたがただの人間なら、私は喜んで他者に助けを求めます。誘拐されたも同然なんですから」
「……誘拐…いや、ああそうか、そうなるな…」
 頷きつつ、お湯で固く絞ったタオルを拡げて渡した。少年、ニアは言葉を切って、受け取ったものをまじまじと見つめた。
「顔をふいて。煤だらけだ」
 大人びた口調で意見を言っていたのに、不器用に顔を拭う様子はひどく幼く見えた。まったく年齢が分からない。同じ10歳でも東洋人と欧米人とでは印象が異る。それを考えれば、10歳だと思っていても実は7、8歳なのだろうか。
「…しかし、あなたは不審死事件に関してキラと共謀し、手を下していますね。不審死する者が担ぎ込まれる病院には警察関係者がいるでしょう。説明を求められたらどう答えますか」
 少年の断言はすべて事実だ。今は行動を自重すべきなのは分かってはいるが、「誘拐」した少年にそれを促されるとは思わなかった。この少年は一体何者なのだろうか。かの人の話し振りから要注意人物のようだが。
 うまく拭えず、左の頬にはまだ煤が残っている。見かねた魅上はタオルをとって力をかけないように、発疹の部分は触れないようにふき取った。発疹に少し腫れ上がっている箇所もあって痛々しく映る。
 それにしても会話内容としていることの乖離がひどいなと魅上は思いつつ、少年の話の続きを聞く。
「日本警察は組織だってキラを追わなくなる可能性がありますが、今日、警察官が3人、キラに殺されています。命令でキラ捜査を禁止されても、追う者がきっと出ます。もし、あなたに質した者がそういった者だったら、あなたはその者を殺さなければいけませんよ。キラに辿りつくかもしれないのですから」
 少年の言葉が、魅上にキラと敵対する存在を思い出させた。
「………君がキラを追っているという『L』なのか」
「ちがいます」


メロとニア その1

 昨日の午後、ハウスを抜け出して遊びにいったことが知られてしまったと、メロは思った。
 普段から機嫌のよさそうな顔をしていないロジャーが、名前を読んだきり無言で腕を掴んで、メロを執務室まで引っ張っていった。一緒に抜け出したマットは、気の毒そうに見やったが、何も言わない。
『……あのやろ……あとで覚えとけっ』
 ロジャーはメロを執務室に引き入れると、腕を掴んだままドアを閉めた。
「逃げないからはなせってばっ」
「お、おお。すまないすまない。つい考え事をしたままだったよ」
 メロの講義にロジャーは、強引に引っ張っていたことを初めて気付いたようだった。慌てて離す。途端に、掴まれたところから手のひら、指先がじんわりと温かくなった。
「ほんとうにすまない。痛かったか?」
「大丈夫。…ニア?」
 ロジャーの執務机の前に、見慣れた小さな丸い背中があった。ちらりとふりむいたが、すぐに背を向けて丸くなる。白い何も描かれていないジグソーパズルが座り込んだ足下にあった。
 幼いころ、ぶちまけられたあのパズルも、白くて何も描かれていなかったが、その時のものよりもひとつひとつのピースがずっと小さく数が多い。
 ロジャーは、自分の机の上のPCを操作しはじめた。キーボードから硬い音がしている。
 なぜ、ニアがここにいるのだろう?
 まさか、昨日の抜け出しをロジャーに言いつけた?マットと二人で、誰にも見つからないように、白昼に見咎められることを想定して普段着ないような服を着て、セキュリティシステムを誤魔化すプログラムまで作った。実際、同部屋の連中にも知られていないはずなのだが、ニアはどうだったか。いつも一人離れたところにいて、だけど、いつも賑やかな場所の隅にいるのだ。だから自分がニアの小さな丸い背中を見慣れているように、ニアもメロの行動パターンを読んでいたのなら。
 メロは、いつの間にかニアを凝視していた。しかも至近距離だ。
「………なんなんですか、メロ」
 無表情だが、口調は不快さを滲ませていた。頭のてっぺんから覗き込まれては当り前である。
「まさか、お前、言いつけた?」
「……何をやらかしたのか知りませんが、昨日、あなたとマットが外…ッ?!?!」
「だまってろよっ」
 慌てたメロがニアの口を押さえた。突然のことでニアはメロの腕を掴んでじたばたともがく。
「これこれ、メロ、何をしてるんだね。話を始めよう」
「はーい…痛-っ、噛んだな、ニアっ」
 押さえ込んでいた手をニアの口から引きはがした。中指の腹を噛みつかれて赤くなっている。血が出るかと思ったほど鋭い痛みだったが、大丈夫そうだ。ニアは苦しげな息遣いでメロを睨んでいる。
「い、いきなり口を押さえて殺す気ですかっ」
「あれくらいで死ぬかよっ、お前だってオレの指食いちぎろうとしただろっ」
「なんでメロの指なんか食べなきゃいけないんですか、お腹がこわれる」
「あーなんかむかつくぞ、その言い方っ」
 メロがニアの両方の頬をつまむように引っ張るのと、ニアがメロの髪の毛をわし掴んだのはほぼ同時だった。
「はひゃへ、へろっ」
「いだだだっっっ、髪の毛に全体重かけるなっ抜ける、はげるっっ」
 ロジャーはこの光景にあぜんとしながら、止めに入るタイミングをはかっていた。PCのディスプレイにはLの文字が浮かんでいる。


ご飯。

 取り付けられたばかりのドアを開けたり閉めたりをくり返しているのは死神だ。長大な体躯で、窮屈そうに背をまるめてまで夢中になっている。そして、それを座り込んで(片足をたてて、もう片足は蛙のように曲げてぺったりと床に、という変わった座り方)じっくりと凝視しているニアの図は異様かもしれない。月の目には死神、リュークの長大な姿が見えているが、ニアにはドアが勝手に動いている風にしか見えていないのだ。外出する前からそんな状態だったが、帰ってきてからもまだ、二人は夢中になっている。
『…なにが面白いんだ……』
 ニアが凝視するのはわかる。目に見えない何者かがドアを開け閉めしているのだから不思議だろう。そしてそれが死神ならなおさらだ。しかしリュークが夢中になっている意味が分からない。ドアなど人間界にきて数年、イヤというほど見てきたはずだろうに。ノートの持ち主に常に憑いてまわる、という決まり事を忘れるほど没頭できることらしい。
 ため息をつき、買ってきたものを取りだした。夕食の材料だ。外食しようにもニアがいてはままならない。あろうことか、外に出たがらないのだ。どういう被監禁者だ。
 魅上の話では、嫌がるメニューは無いとのことだった。本人も好き嫌いは無いと言っているから適当に買ってきた。料理のレパートリーもそれほどあるわけではないから、あまり考えない。キャベツと肉を取りだしてシンクのほうへ向いた。

 突然、うしろでぱたぱたという足音がしたと思うと、ニアが横で他の食材をつかんでいた。
「……どうした?」
「……あなたが食事を?」
「外食は嫌なんだろう、じゃあ仕方ない」
 出前はこの二部屋の状況を外部に知られたくないので最初から考えに入っていない。
「…………」
「毒なんか入れるか、僕も食べるんだからな」
「…………」
 まだ掴んだまま、睨んでくる。月は呆れてまたため息をつくと、ニアをどかして庖丁をとった。ニアはとっさにそばにあった鍋を取り上げてふりかざす。かなり深刻な場面なのだが、人間たちの奇妙な攻防戦に興味津々のリュークが、二人を見比べては面白そうに笑うのだ。何が楽しいのかまったく理解できないと月はリュークを睨み、ついでニアを睨んだ。
「…だから毒も小細工もできるか、大体、何故そんな必要がある、ちょっと考えろ」
「あなたの変人ぶりはよくわかってるつもりです。常識なんかいっさい通用しない」
「………そんなに警戒するなら、手伝え」
 パックされた肉を取りだし、開けた。そして庖丁を渡す。
「ほら庖丁、これを渡すくらいなんだから、少しは理解しろ。それでこの肉を適当に切ってろ」
「………」
 疑心暗鬼の目はそのままに、だが月の言ったことも理解できるのでしぶしぶといった態で鍋をおろした。そして庖丁を手にすると、肉に向いた。そして固まる。
「…今度はなんだ」
「どうやって使うんですか、これ」
「……貸してみろ」
 庖丁を再び手にして、肉を切り出した。とりあえず口に入る大きさでいいのだ。形などどうでもいい。ニアは納得して、手をだした。
「指だけは切らないようにすれば、あとは適当でいいんだ、どうせ炒める」
 そろそろと刃を動かして切り始めた。みるみるうちに目が真剣になっていく。おかしなところで単純なニアの性質に呆れながらも安堵した。

月の料理スキルはそんなにありません。
学校の家庭科のほかは
ミサちゃんが料理しているのを眺めてた程度。
だもんで味つけは関西風味かもしれません。


トラック (5) ケンカのあと。

 慌てたおとなたち、施設の職員たちが、ニアをメロのうえから引きはがした。泣きじゃくるニアは職員たちにも初めてだったらしく、一番に駆けつけた女性職員が驚きつつも、やさしく背中をたたいて落着かせている。
 呆然としたままのメロも抱き起こされた。
「メロ、どこか痛いところはある?」
「………ない」
 メロの言葉にほっとした別の職員は、乱れた髪を整えるように指で鋤いていく。
 他の子どもたちが、わらわらと寄ってきたのが恥ずかしくて、すぐに立上って部屋を飛びだした。

 その日の夕食にニアは姿を見せなかった。
「ニアなら、ねつが出たからって部屋で寝てるよ」
 施設に入所した日に友達になった、同い年のマットが、落着きなく、きょろきょろとしているメロに言った。
「…ニアを探してたんじゃない」
「ふうん、そう」
 目をぱちくりとしてから、マットは目の前のパンを掴んで、あとは何もなかったかのように、たわいのないことを話しだした。

「考えてみれば、メロ。ニアを泣かしたのはお前だけだったんだよなー」
「…泣かしてない。あいつが勝手に泣いたんだ」
 それから十三年後、どんなことが待ち受けていたかなんて自分では想像もしなかっただろうが、ニアはどうだったろう。


ある日の京都府警本部

 本部内のみに限定している、いわばイントラネットで「重要なお知らせ」があった。松田は内容を見て苦笑した。ネット上で自然発生していた情報交換用BBSが削除の憂き目にあったのだが、何の情報交換をしていたかというと、今年三月にやってきて本部の全女性職員の心を奪ったとまでいわれる警察庁の若いエリートのことだった。利用者はやはりというか女性職員たちで、そこかしこで落胆のため息が聞こえてきた。無理もないと他人事ながら松田は思った。
 その件の人物の流麗な線で象られた容姿は、長身だが生まれつきだという茶色の髪と目が涼やかで柔和な印象をもたらし、優艶な花のように美しい青年だった。話してみれば聡明な人物で、気取らず丁寧な物腰は、「日本警察の総本部たる警察庁」からの出向者に何故か戦々恐々としていた本部長以下幹部クラスの者たちも、安堵のため息とともに好感を持った。

 そして、気難しい老獪な刑事たちはといえば−−。実は彼らが一番、かの人物を評価しているかもしれない。

 キラ事件捜査資料に関する質疑応答は、その最前線にいた捜査官本人だけあり適確、無比だった。さらに議題から外れていたが、府警が抱えていた数年来の重要事件の捜査については瞬時に全容を把握し、容疑者像、その潜伏先を仮定と断りながらも意見した結果、その日の午後には検挙にいたったのだ。
 最終日には強引な進行もあったが、彼との会議に参加した者、本部上層部ふくめて、すべての者がその能力に感服し、ぜひ、正式に京都府警本部に迎えたいと話があがったそうだ。

 削除されたBBSは、そんな上層部の話を聞きつけた女性たちが盛り上ってできたものだった。かの人物の個人情報を探る段階まで展開していたのだから、閉鎖、削除は仕方のない処置だろう。キラ事件勃発以降、警察関係者は個人情報が極秘とされ、事件以降に警官となった彼は、表向きには東応大学の大学院生となっていた。あの倉庫炎上で負傷した時もそう報道された。
 あの時、彼と同じ捜査をしていた警官が三人、別の場所で死んでいた。同じ日に四人もの死傷者を出したというのに、日本警察はもう、キラ捜査を終結させようとしている。

 そこまで思い至って暗い気分になった時、PCがメールを受信した。サブジェクトは「資料」となっている。貼付データは無い。いぶかしんでメールをあけ、そこにある文字列を目で追った。
「…コピペ…もっとあかんのか、うー」
 そのメールを凝視したあげく削除した。そして、休憩と称して席を立った。


 広大な場所に満開の桜が数えきれないほどあり、その木の下では……。
「…アルコールが脳に及ぼす影響の研究には最適な場所でしょうね」
 そんなことを思わず口走ってしまったが、もちろん、誰も聞いてはいない。色とりどりのシートを広げ、人々が笑いさざめき、盛大に酔っぱらっている。人間の泥酔状態を初めて目の当たりにしたニアは、桜よりも人間観察に没頭しそうになっていた。
 ニアは、無数の宴が繰り広げられているところから少し離れた桜の木の下にいた。他の木に比べると細く小さなその木は、花もまだちらほらとしか咲いていない。きっと他に栄養をとられたのだろう、と漠然と思いながら片膝を抱えていた。
「…ここにいたんですか、探しましたよ、ニア」
「大げさですね、ちゃんと言づてしてあったでしょう、桜を見にいくと」
「『どこの』桜か言わなかったでしょう。いえ、ここがどこだか分かってるんですか?」
 ようやく見付けだした、と言うスーツ姿の男を見上げると、拗ねたように口をとがらした。この男の言いようも気に入らない。
「ここは日本の東京でしょう。ちょうど来たタクシーに桜が見えるところとお願いしたんです」
「ああ、じゃあ、ほんとうに東京のどこだかは知らないでここに……まあ、さっきのところからは近所ですが」
 スーツの男、ジェパンニはがっくりとうなだれるように、ニアの隣に座り込んだ。
「ときどき、虫が落ちてくるから気をつけたほうがいいですよ」
「げ」
 思わず見上げたジェパンニは、すぐに隣を見た。ニアの笑っているような泣いているような、以前には見せたことのないような表情だった。そのまま、まばらに咲く小さな花に視線を移した。
「ニア…」
「なんですか?」
 いつもの淡々とした口調がジェパンニを安心させた。

「ジェパンニ?」
「いえ、ところでタクシー代は? お金持って出てこなかったでしょう」
「もちろん、日本警察につけときました」
「………そういう機転がきくようになったんですね。ドル紙幣を束でほうり投げるあの金銭感覚から…」
「……感動しないでください」
 今度こそ、本気でむくれたニアに笑って謝った。
 何を思って桜を見にきたのかは、たぶん教えてくれないだろうと思いつつ、喧騒の中の桜を見上げた。


(炎上事件直後の魅上さんち:
  食事こぎつけるまでにひともんちゃくありました)

「…実際に見たのも初めてです」
 かの人から託された少年は、十歳くらいに見えたが、スプーンを握って目の前の食事を凝視するさまはもっと幼く見えた。しかしテーブルに乗っている諸々を見れば、欧米人としての反応でもあるだろう。
 白菜の漬物、南瓜の煮付け、揚げと豆腐の味噌汁に、小振りの茶碗に白米少量。同じマンションの住人たち
からのおすそ分けのオンパレードである。原材料はすべてテラスの一角を改装して造った家庭菜園から。今年は水田に挑戦するらしい。
 ……近所に大学の農学部があるが、住人たちをそそのかしたのはあそこの連中だろう。
 ともかくも、まさか外国人の子どもを預かることになるとは思っていなかったので、それらしい用意はなにもない。
 かろうじて、レトルトのハンバーグがあったからそれを温めた。食べなければ自分が食べよう。
「……なっとうというのは?」
「は? 納豆?それはないが…」
 匂いと食感がどうにも慣れず、魅上が敬遠している数少ない食物だ。
「日本文化に少し詳しい知人から聞いたものですから」
 目をぱちくりとさせて、今度は少年は味噌汁に鼻を近づけた。仕草は犬より猫に近いかもしれない。と、固まった。
「……強い匂い…ですね……」
「ああ、やっぱり外国人はそうか…じゃあ納豆は到底無理だな」
「これよりきついんですか?」
「比べ物にならないだろうな…まあ、そんな食べ物はいくらでもあるが」

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